
このブログでは脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんの視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。
基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説していきいます。
今回の『脳の病気』は「その頭痛って片頭痛(へんずつう)?」と題して片頭痛について解説していきますのでよろしくお願いします。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 片頭痛がどのような頭痛かわかります。
- 片頭痛にどう対処したらよいかがわかります。
頭が痛いんですけどその原因ってなに?
こんな訴えをもって脳神経外科の外来に受診される方はとても多いです。
新規に初めて脳神経外科の外来を受診される、いわゆる「新患」の方の半数以上は頭痛の原因を調べることと、痛みをとって欲しいことを願って来院されます。

頭痛で命に係わる怖い病気としては、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞などのいわゆる脳卒中によるもの、あるいは脳腫瘍などの脳の中に発生したできものによるものなどです。

しかし外来に歩いてきた患者さんでこれらの病気が見つかることは実際には稀です。
画像で明らかな病気が見つからなかった場合には、患者さんからひたすら問診(いろいろな質問をして患者さんの訴えを聞く)をして診断しなくてはいけません。
片頭痛はCTやMRI検査ではほとんどの場合で異常は見られません。
そのような中で多くの方々が口にするのは、

しかし片頭痛の病態を充分に理解したうえで自分が本当に片頭痛だと思っている人は意外と多くはありません。

なんて思っている人が多いのではないでしょうか。そこで、


片頭痛ってそもそもなに?


もっと詳しく
片頭痛は天地創造のアダムとイヴの時代、すなわち5000年前からある病気です。


実際に片頭痛の人は頭痛の患者さんの約10%程度とされていて、その他の多くの患者さんは緊張型頭痛と言われるタイプの頭痛とされています。しかし、

なぜなら片頭痛は緊張型頭痛から連続して起こるともいわれていて2つの頭痛を切り離して考えることはできないからです。
緊張型頭痛とは精神的肉体的なストレス、疲労などによって、頭~首~肩の筋肉(後頭部~首~肩の筋肉はずっとつながっています)が緊張状態となり“こり固まった感じ”となり痛みが起こります。

ですから緊張型頭痛は誰にでも起こりえます。
一方片頭痛はまったく違う痛みです。
ココがポイント
片頭痛は脳が異常に興奮状態になりやすいという遺伝的な素質を持った人に起こりやすいとされているので、誰にでも起こるものではありません。

ココがポイント
片頭痛は脳に異常な興奮が起こり、それが脳の一部の血管に伝わり血管が拡張(血管がふくらむ)して頭痛のまえぶれが起きます。
その後血管が収縮(血管がちぢむ)して頭痛が起こります。
このような現象は片頭痛の患者さんにしか起こらないので、片頭痛は特定の人にしか起こりえません。
片頭痛の人の家系には片頭痛の人が多くみられます。
この情報だけでも片頭痛かどうかの診断の1つの助けになると思います。

片頭痛の特徴ってなに?

ココがポイント
片頭痛は女性に多いです。
これは問診しなくてもカルテを見ればたいていの場合はわかります。


ココがポイント
片頭痛は10~20歳ころの若年で発症することが多いです。


ココがポイント
片頭痛は頭痛の前にきらきらした光が見えて(これを閃輝暗点(せんきあんてん)と言います)、そのあと目の前が暗くなった感じがします。


ココがポイント
片頭痛はずきんずきんとした心臓の鼓動のような拍動性の頭痛が1時間くらい続きます。
これが典型的な症状ですが、必ずしもそうとは限らないのが診断を難しくしている点です。
ココがポイント
片頭痛といっても頭の片方が痛い人はほぼ半数で、両側痛い人も半数にいます。

実際に診察していて、もっとも簡便に片頭痛と緊張型頭痛を見分けるコツの1つとしては、


ココがポイント
片頭痛は頭痛が始まるきっかけがあることが多く、歩いたり階段を昇り降りしたりなど動いた時に起こりやすい、痛みが強くなりやすいとされています。
ですから頭痛が起きた時に自分でお辞儀をしてみて頭痛がひどくなるか試しにやってみるのもよいと思います。
皆さんが心配されることの1つに、

と心配される方がいます。
ココがポイント
片頭痛は10~20歳ころの若年で発症することが多く、30歳台でピークを迎え、その後徐々に改善してきます。
たいていの人では40歳をすぎたころから片頭痛はおさまってきます。
しかし片頭痛がなかなかおさまらず長引いて慢性化してしまう人もいます。

頭が痛いのはとてもつらいことです。
ココがポイント
痛み止めを頻繁に飲むと片頭痛は長引いてしまいます。
肥満も片頭痛を長引かせる要因の1つです。
これらの情報をもとにご自身でも自分の頭痛と照らし合わせてみてください。

片頭痛の薬はあるの?
ココがポイント
片頭痛には2つのタイプの薬があります。
頭痛を予防する薬と頭痛が起きた時に痛みを抑える薬です。
予防薬は定期的に内服することで、痛みの発作回数を減らし、目がきらきらするまえぶれを軽くする効果があります。また痛み止めの飲む量を減らすことが可能です。
頭痛が起きた時に飲む薬は、頭痛が始まったら早めに飲みましょう。
痛みが続いてがまんできなくなってから飲んでもあまり効果は期待できません。
片頭痛には特効薬として、トリプタン系薬剤というものがあります。
かなり高価な薬ですが、その効果は非常に高く多くの片頭痛の患者さんが使用しています。
しかし片頭痛にしか効きませんので、この薬を服用しても痛みが全然取れない人は片頭痛ではない可能性が考えられます(必ずしもそうとはかぎりませんので主治医の先生に相談しましょう)。
また痛みの程度がある程度軽ければ通常の市販の痛み止めでも効果は期待できます。
なかでもバファリン(アスピリン)を使用する人が多いとおもいますが、この薬は100年くらい前に開発された薬です。

まとめ
今回は脳神経外科の外来で非常に多い頭痛、なかでも片頭痛について解説してみました。


厳しいお言葉をいただいたところで、今回の内容をまとめてみました。
今回のまとめ
- 片頭痛は遺伝的な体質があり、誰でも起こるものではありません。
- 自分自身の頭痛を理解し、脳神経外科に受診して適切な診断を受けましょう。
- 片頭痛には様々なタイプの薬がありますので、脳神経外科医と相談して自分に合った薬を処方してもらいましょう。
- 頭が痛いからと言って痛み止めを頻回に服用することはお勧めいたしません。効果が低いようであれば別の痛み止めを処方してもらいましょう。

と決めつけるのではなく、正しい診断のもと正しい薬の内服によって片頭痛はある程度おさえられます。
ご心配な方は早めに病院を受診してみましょう。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
最後にポチっとよろしくお願いします。