脳の手術

頭にあなをあける手術~慢性硬膜下血腫について~

へなお
こんにちは、脳神経外科医のへなおです。

 

このブログでは脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんの視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。

基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説していきいます。

 

 

今回の『脳の手術』は「頭にあなをあける手術~慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)について」と題して解説していきますのでよろしくお願いします。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 脳神経外科の手術で最も多い頭にあなをあける手術がわかります。
  • 頭にあなをあける手術が必要な病気である慢性硬膜下血腫がどのような病気かわかります。

 

頭にあなをあける!?

「頭にあなをあける」…そんな恐ろしくも思えることができるのは脳神経外科医だけだと思います。

 

ちょっと…というかかなり怖い印象を持たれてしまうかもしれませんが、

 

ココがポイント

脳神経外科の手術で最も多いのがこの「頭にあなをあける」手術なんです。

 

頭にあなをあける手術を医学的には「穿頭術(せんとうじゅつ)」と言います。

 

街中の一般的な総合病院の脳神経外科では年間200-300件程度の手術が行われていますが、そのうち約1/3近くはこの手術なんです。

 

へなお
自分の勤務する病院でも年間50件近く頭にあなをあけています。

 

脳腫瘍の手術や、脳出血やくも膜下出血などの脳血管障害の手術は脳神経外科の代表的な手術で、一般的に”脳神経外科の手術”といえばそれらのイメージが大きいかと思います。

 

しかし実際には頭にあなをあけて、そのあなを通して手術をおこなっていることが多いのです。

 

ココがポイント

脳神経外科医となって最初に覚える手術手技は頭にあなをあける穿頭術であり、脳神経外科医はこの手術をマスターして次のステップへと駆け上がっていきます。

 

へなお
穿頭術は脳神経外科としての第一歩ですね。

 

この手術を必要とする代表的な病気は「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」です。

 

へなじんさん
慢性硬膜下血腫…こんな病名聞いたことないなあ。

 

なんて方がほとんどだと思いますが、中年から特に高齢者に非常に多くみられる病気です。

 

しかし皆さんも知らず知らずのうちにテレビなどで一度は耳にしているはずです。

 

特に救急医療系のドラマで頭を強くぶつけて倒れた患者さんを道端などでドリルを使ってあなをあけて、

 

へなじんさん
たまった血が頭から噴き出してきてびっくりしたあ!

 

なんてシーンが時々見られます。それが穿頭術です。

 

テレビドラマの「JIN -仁-」の第4話では主人公の南方先生が吉原でこの手術をしています。

 

意識がなくなった患者さんのあたまにあなをあけて血を取り除くことで見事に救命することに成功しています。

 

この時の病気が慢性硬膜下血腫です。

 

ドラマでもこの病名が登場してきます。

 

ただこの時代にはCTがなく慢性硬膜下血腫の位置がうまくわからなかったため南方先生はあなを2つあけていましたが、通常は1つで大丈夫です。

 

どうやって頭にあなをあけるの?

頭にあなをあけるとはどういうことでしょう。

 

正確には頭蓋骨にあなをあけて脳の手術を行います

 

ココがポイント

穿頭術では、頭の皮膚に局所麻酔をして皮膚を数センチ切開して、穿頭器と呼ばれる手動のドリル、または最近では電動ドリルで頭蓋骨にあなをあけます。

 

だいたい1円玉のひとまわり小さいサイズ程度のあなをあけます。

 

使用する電動ドリルは穿頭術専用の器械ですすが、見た目も使った感じも基本的には通常の工具とほぼ同じ感じです。

 

 

へなお
電動ドリルであければ数秒であながあきます!

 

頭蓋骨にあけたあなは非常に小さいので、あながあいたままにして皮膚を閉じる場合がほとんどですが、場合によっては人工の骨で閉鎖する場合もあります。

 

なんで頭にあなをあけるの?

さまざまな病気に対して穿頭術は行われます。

 

ココがポイント

基本的には穿頭術は、頭蓋骨の内側にたまった血や水(髄液と呼ばれる脳の中を循環している液体)を抜き取ったり、脳の中の組織を一部採取したりする場合に用いられます。その中で最も多い病気が慢性硬膜下血腫です。

 

頭蓋骨に小さなあなをあけるだけで、手術は通常1時間以内には終わるので、基本的には局所の麻酔ですみ、全身麻酔は必要ないことがほとんどです。

 

へなお
患者さんの負担は全身麻酔で行うおおがかりな脳の手術と比較して格段に少ないです。

 

頭にあなをあける手術の歴史

もっと詳しく

頭にあなをあける手術は人類最古の手術に挙げられるほど歴史が古く、古代ギリシャの時代から行われていたとされています。

 

当初は頭の中の血や水を抜く治療のための方法ではなく、精霊的な儀式の要素が強かったと言われています。

 

その後世界中で脳の治療として行われるようになりました。

 

特に14~16世紀のペルー、つまりマチュ・ピチュで有名なインカ帝国が栄えていた時代には盛んに行われていました。

 

遺跡からはあなの開いた頭蓋骨がたくさん見つかっており、その時代からすでに頭の治療が数多くおこなわれていたこがうかがえます。

 

今のような画像技術も手術道具も麻酔もなかった時代に、現代につながる医療がすでに行われていたのです。

 

へなじんさん
インカ帝国ってすごいね!

 

とても驚きですね。

 

さらにこの時代に行われていた手術の手法や道具は、現在行われている穿頭術に基本的に受け継がれており、その能力の高さがうかがえます。

 

慢性硬膜下血腫ってどんな病気なの?

穿頭術の代表的な病気は慢性硬膜下血腫です。

 

ほとんどの方が聞いたことのない病名と思いますが、頭をぶつけることで生じる病気の中ではとても多く発生します。

 

ココがポイント

頭をぶつけてすぐに頭蓋内に出血するものは急性ですが、慢性硬膜下血腫は慢性であり、通常頭をぶつけからじわじわとゆっくり頭蓋内に出血してきます。

血がたくさんたまってくると固まって血腫といって血の固まりになります。

血腫は徐々に大きくなり、通常1-2か月くらいかけて脳を圧迫するようになります。

 

脳が血腫によって圧迫されると様々な症状がでてきます。

 

へなじんさん
そんなに時間がかかるんだね。

 

ココがポイント

脳が血腫によって圧迫されるまでは基本的には無症状なのでほとんどの人は症状が出るまで血がたまってきていることには気づきません。

 

強く頭をぶつけていなくても、軽くぶつけただけでもいわゆる頭の打ちどころが悪いとじわじわとした出血を起こしてしまいます。

 

そのため、頭をぶつけたことをすっかり忘れてしまい、

 

へなじんさん

頭ぶつけたかなあ?

覚えてないなあ…

 

なんて人もよく見かけます。頭をぶつけて病院を受診した時に、

 

へなお
1-2か月くらいして具合が悪くなったらまた病院に来なさいね。

 

なんておそらく言われていると思います。

 

それがこの病気です。

 

ココがポイント

慢性硬膜下血腫の一番多い症状は頭痛です。その後手足に力が入りづらくなり、歩けなくなり、そのまま放っておくと命にかかわることもあります。

 

頭に血がたまっていることはCTあるいはMRI検査を行わなければわかりません。

 

有名な音楽家のモーツァルトは35歳で亡くなっていますが、その死因には様々な説があります。その1つに慢性硬膜下血腫が挙げられています。

 

へなじんさん
CTもMRIもなかった時代では慢性硬膜下血腫はわからなかったんだろうね…

 

慢性硬膜下血腫は子供でも大人でも誰でも発症する可能性がありますが、特に起こりやすい人はわかっています。

 

ココがポイント

慢性硬膜下血腫は高齢者、アルコールをよく飲む人、心筋梗塞・狭心症や脳梗塞などでいわゆる血液がサラサラになるような薬を飲んでいる人、血液透析をしている人などに発生しやすいです。

 

ここまで聞くととてもとても怖い病気に思えてしまいますが、頭にあなをあける手術でほとんどの人は治ります

 

あなをあけて血を抜くと頭痛がとれて手足の動きは回復します。

 

劇的な効果を上げる手術と言えます。

 

ココがポイント

慢性硬膜下血腫は約10%程度の人に再発する可能性があります。

 

したがって数か月後に再度同じ手術を受ける人がまれにみられます。

 

へなお
手術をしてもしばらくは外来に通う必要があります。

 

手術後は数か月おきに外来でCTを行い再発がないか経過を見る必要があります。

 

まとめ

今回は頭にあなをあける手術と慢性硬膜下血腫について解説してみました。

 

へなお
途中難しい言葉が出てきて難しかったかな?

 

へなじんさん
もっとうまく解説できるようにまだまだ日々努力が必要ですね。

 

厳しいお言葉をいただいたところで、今回の内容をまとめてみました。

 

今回のまとめ

  • 頭にあなをあける手術は穿頭術と言います。
  • 穿頭術はとても歴史が古いです。
  • 穿頭術は現代にも受け継がれる脳神経外科手術の基本中の基本です。
  • 穿頭術は慢性硬膜下血腫の治療で用いられます。
  • 高齢者でよくお酒を飲む人、血液がサラサラになるような薬を飲んでいる人では慢性硬膜下血腫に気を付けましょう。

 

今回は皆さんほとんどなじみのないと思われる「頭にあなをあける手術」について紹介させていただきました。

 

非医療者の一般の方はもとより、医療者であっでも脳神経外科に精通していない方にとっては初めて聞いたり知ったりしたことも多かったのではないかと思いますが、テレビを注意深く見ていると頭にあなをあける場面は時折登場してきます。

 

へなお
そんな時は今回の内容を思い出してくださいね。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。

 

引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、放射線治療を中心に勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、脳の病気や治療から脳科学まで幅広い分野にわたって長年の経験からつちかった情報を提供していきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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