
このブログでは脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんの視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。
基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説していきいます。
今回の脳の病気は「認知症について考えよう~若くても認知症!?若年性認知症を知ろう~」と題して、若い方の認知症について解説しますのでよろしくお願いします。
今回の記事をこの記事を読んでわかることはコレ!
- 若年性認知症についてわかります。
若くても認知症になる!?
脳神経外科の外来には認知症が心配で受診される方が非常に増えています。

そんな訴えをよく聞きます。
一概に認知症といっても色々な種類があります。
認知症の半数以上は皆さんよくご存じのアルツハイマー型認知症です。
しかしそのほかにもレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)など色々なタイプがあります。
認知症の種類についてはこちらを参照してみてください。

認知症は65歳の高齢者に多い病気です。しかし、
ココがポイント
65歳未満の若年性認知症と言われる中高年の認知症は増加傾向にあります。

ただの物忘れと思われてしまい、仕事で失敗が増えたり精神的に不安定になったりしても、

であったり、

などと勘違いして流されてしまいます。

まさか自分が認知症なんてことはないです!
忙しくてちょっとした物忘れなんかでいちいち病院なんて受診していられないです!
などの考えで病院を受診するまでに時間がかかってしまい認知症の診断になかなかいたらないケースが見受けられます。

若年性認知症の特徴を知ろう
ココがポイント
若年性認知症は人口10万人当たり50人くらいの発症率です。
これが高い数字なのか低い数字なのかはわかりません。
しかし確実にいることは確かです。
ココがポイント
若年性認知症は女性に多く、平均年齢は50歳前後です。
高齢者の認知症はその半数以上がアルツハイマー型認知症で、

と思われるくらいです。

ココがポイント
若年性認知症は脳血管性認知症が最も多く次いでアルツハイマー型認知症でこの2つで半数以上を占めています。

そのほかの特徴としては、
ココがポイント
若年性認知症は、交通事故などで脳にダメージをおってしまったために起こる頭部外傷後遺症やアルコールの多量摂取で脳が委縮してしまうアルコール性認知症が多いです。
若年なので、認知症に特有なタンパク質が加齢に伴って脳に異常に蓄積してしまい脳の萎縮を来す高齢者特有の認知症は比較的少ない傾向にあります。
若年性認知症の症状を知ろう
若年者は高齢者よりも社会参加している方が多いと思います。したがって、
ココがポイント
若年性認知症では最初に物忘れが目立ち始めます。
仕事の予定を忘れてしまう、大事な会議を忘れてしまう、料理の作り方を忘れてしまう、買い物したものをどこに置いたか忘れてしまう…などなどさまざまな物忘れが増えてきます。
最初は、「疲れているんだなあ…」とか、「集中してなくて気合がはっていなかったなあ…」とか、「寝不足かな…」とか、「ストレスがたまっているんだなあ…」などと色々な言い訳を考えます。

周りにはうまくごまかしたり、隠したりしてなんとかその場をやり過ごします。
周りの人も最初はあまり気に留めないでしょう。
そんな程度のことは誰にでもある物忘れと思うでしょう。
しかしそのうちに忘れていることを忘れてしまうので話のつじつまが合わなくなってきます。
仕事や家事に支障を来すようになり、出かけても帰ってこれなくなります。
さすがにここまで症状が進行すると、

と周りの人も気づき始めます。
しかしその時にはすでに認知症を発症してしまっているのです。
50歳前後は人にとってさまざまなことに忙しい時期です。
仕事、家事、育児などに走り回り、その中で社会的役割を担い、上の年代にも下の年代にも頼りにされている方が多いでしょう。
そのためついうっかり程度の物忘れですと、

その程度の物忘れは誰でもあることですよ…。そんなことで時間をつぶしてわざわざ病院で検査するなんて時間がもったいないですよ…。
なんて思ってませんか?
ココがポイント
若年性認知症では精神的に不安定になり、怒りっぽくなったり、不安でひどく落ち込んだり、やたらと喜んではしゃいだりなどの感情の起伏が激しくなります。しかし忙しいから仕方がない、更年期障害なのかもしれない…などとなにかのせいにして片付けようとしてしまいます。

そのため、
ココに注意
若年性認知症では、症状が進行して認知症の症状がある程度完成されて日常生活に支障を来さすようになるまで病院をなかなか受診しないことになります。その結果治療開始が遅くなり症状の進行を止めづらくなってしまいます。
また、
ココがポイント
若年者では脳委縮ではなく、脳腫瘍や水頭症(すいとうしょう:脳に水が溜まってしまう病気)などの脳の病気によって認知症の症状がみられる場合があります。
この場合も認知症は徐々に進行していきます。

若年性認知症の治療を知ろう
ココがポイント
若年性認知症も高齢者と同様に、認知症に対しては早期に診断して早期に治療を介入することで完治にいたらずとも認知症の進行を緩やかにすることは可能です。また生活習慣や生活リズムを変えて症状を安定させることも可能です。
治療に関しては若年者だからといって特別なことはありません。
しかし周囲の方の負担は大きく違います。
ココがポイント
若年性認知症が高齢者と違う点は、若年であるために今後の治療および介護が長期間に及ぶことです。
身体機能や脳以外の内臓系に特別な問題を抱えていなければ認知症の症状が徐々に進行しても健康状態を保つことは可能です。
若年者であれば高齢者と比較してもともとの持病も少ないので認知症であっても比較的健康な状態の人が多いです。
そのため周りの人のサポートが是非とも必要です。
それは家族であり、知人であり、病院の医療者であり、地域の支援サービスの方でありさまざまですが、多くの人のサポートが必要です。
ココがポイント
若年性認知症を早期に発見することができていれば、まだ症状が軽度のうちに今後のさまざまな準備を落ち着いた状態で整えていくことが可能です。
しかし症状がある程度進行してしまってからでは落ち着いて準備なんて言っていられなくなり、周りの方の負担が増えて疲弊しうまく回るものも回らなくなってしまいます。
自分の物忘れの症状に気づいてもなかなか病院に行くのは敷居が高いものです。
もしかして認知症と診断されてしまうのではないかという不安な気持ちもあるでしょう。

認知症と診断されたら家族はどうするの?
仕事はどうするの?
などとさまざまな不安がよぎるでしょう。

そのような時こそ勇気を出して人を頼って、そして病院を頼ってください!
またそのような人を見たらぜひ支えて協力してあげてください!
自分1人で抱え込んでしまうのがもっとも苦しいです。
そのためにも日ごろから認知症予防を考慮した正しい「ヘルシー・ブレイン・ライフスタイル」を送るように心がけましょう。
まとめ
今回は若年性認知症について解説してみました。


ここで今回の内容をまとめてみました。
今回のまとめ
- 中高年の若年性認知症は増加傾向にあります。特に50歳前後は危険ゾーンです。
- 認知症は早期発見、早期診断、早期治療介入によって症状の進行を遅らせることが可能です。
- 認知症は1人では乗り越えられません。多くの方のサポートが必要です。人を頼り、人に頼られる社会が大切です。
- 認知症予防のためにも、ヘルシー・ブレイン・ライフスタイルを実践しましょう。
人は1人では生きていけません。
気づかぬうちに多くの人に支えられ、支えて生きています。

金八先生も、
「人という字は、ひとと、ひととが支えあっているから人なんですよ!」
そのように言ってました。
認知症は1人では乗り越えられない病気です。
そんな時こそ多くの人に支えられ、また自分が支えてあげていくことが大切です。
少しでも認知症の知識を身につけておくことが、今後の自分を守り、まわりの方に迷惑をかけない生活を送る手助けになると思います。
今回の記事がみなさんに少しでもお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
最後にポチっとよろしくお願いします。