
このブログでは脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんの視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。
基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説していきいます。
前回は「怖いめまいを見逃すな!~脳の病気によるめまいの特徴を知っておこう~」と題して中枢性のめまいの特徴を解説しましたが、今回の『脳の病気』ではめまいの原因となる脳の病気について解説しますのでよろしくお願いします。
この記事を読んでわかることはコレ!
- こわいめまいの原因となる脳の病気がわかります。
脳のめまいはこわいめまい!
めまいは脳神経外科を受診される方のなかでとても多い症状の1つです。
めまいの原因としては大きく分けると脳と耳があります。
脳のめまいは中枢性のめまいと呼ばれます。
ココがポイント
脳のめまいの特徴は、めまいだけではなく目の動きが障害されて物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、手足の力が入りづらくなったり、しびれがおきたりとさまざまな症状を伴っていることがほとんどです。
しかし症状が軽い場合は末梢性のめまい、つまり耳のめまいと勘違いしてそのまま様子をみてしまうこともあります。

ココがポイント
脳のめまいの場合は最初症状が軽くても放置することで病状が進行して時間がたつにつれて悪化していくことが多いのです。
耳のめまいは時間がたてば徐々におさまってきます。
最終的にはめまいはなおってしまいます。
しかし脳のめまいは自然にめまいがおさまることはほとんどなく悪くなる一方です。
しかもめまい以外の症状も進行性に悪くなっていきます。
中枢性のめまいは脳で問題がおきていることの1つのサインです。
しかしさまざまな症状の中の1つにすぎません。
ですからめまいだけでなく他の症状も気になるような場合には必ず脳神経外科を受診して調べる必要があるのです。
それでは実際にどのような脳の病気がめまいを引き起こすのか解説します。
中枢性のめまいの原因
中枢性のめまいの原因となる脳の障害が起きている場所としては、そのほとんどが脳幹あるいは小脳です。
脳幹や小脳が障害される原因としては以下のものがあります。
急に症状がはじまる脳卒中(脳出血や脳梗塞)
週あるいは月単位で症状が悪化する脳腫瘍
年単位で症状が悪化する変性疾患

脳卒中のめまい
脳卒中とは脳出血や脳梗塞などの脳の血管障害です。
もっと詳しく
血管が裂けて脳の中に出血するとのが脳出血で、血管が詰まって血液が脳に流れなくなるのが脳梗塞です。

血管が切れたり詰まったりして突然脳出血や脳梗塞を発症します。ですから、

と聞くと、

そんなふうに具体的な発症時間を自分で覚えています。
寝ている間に脳出血や脳梗塞を発症した場合は起きたらすでにめまいがしているの発症時間は不明ですが、それ以外はおおよその発症時間がはっきりしていることが多いのです。
耳が原因の末梢性のめまいも多くは突然発症するので両者を区別するのは意外と難しいです。
しかし中枢性のめまいはそのほとんどがめまい以外の症状をともなっていることがほとんどなので、めまいがしてろれつがまわらない、物が二重に見えるなどの場合はまずは脳卒中によるめまいを疑います。
脳卒中を起こすと切れたり詰まったりした血管が本来血液を送るべき脳に血液が送られなくなるので、その部分のみが障害されて症状がでてきます。
そのため症状を細かく診察するとおおよそ脳幹や小脳のどの場所の血管に問題がおきているのか推測されます。
めまいがした最初にはこれらさまざまな症状があったのに様子を見ていたら徐々に治ってしまったということも稀にあります。
一度脳の血管が詰まったものの自然に詰まったものが流れ去ってしまい、血管が再開通して脳梗塞にいたらずにことなきを得た状況です。

一過性脳虚血発作は数日~数週間以内に何度もめまいとろれつが回らなくなるなどの症状を繰り返し起こします。
血管が詰まったりなおったりを繰り返し、最終的に詰まってしまい脳梗塞になる危険信号とも言われていますので要注意です。
ココがポイント
脳卒中の検査としてはCTやMRIを行うと脳出血や脳梗塞はすぐにわかります。
しかしどこの血管に問題が起きているのかまではなかなかわかりません。
血管を評価するには肘や足の付け根の血管からカテーテルという細いストロー状の管を動脈の中に挿入して血管撮影を行う必要があります。
治療としては、
ココがポイント
小脳に脳出血を起こした場合のみ開頭手術の適応があります。
開頭手術とは全身麻酔をかけて脳の中の血を取り除く手術です。
ココがポイント
脳幹に脳出血を起こした場合は基本的には手術適応はありません。
脳幹は脳の中でも最高の中枢部分ですので脳出血を取り除くにはあまりにも危険性が高いためです。
脳梗塞の場合は基本的に点滴と内服による治療が行われます。しかし、
ココがポイント
脳梗塞を発症して間もない場合には緊急で血管撮影検査を行い、血管に詰まっているものを取り除き血管を開通させる治療が行われる場合もあります。これを血栓回収療法と言います。
これには細かい基準が定められていますが、なによりも大切なのは発症してからの時間です。
ココがポイント
脳梗塞は血管が詰まってからいかに早く病院に来て血管撮影の台の上に上がれるかが勝負です。
脳卒中を起こす原因にはさまざまな要因が関わっています。
高血圧、糖尿病、喫煙、肥満などのいわゆる成人病が危険因子とされていますが、そのような要因がなくても運悪く脳卒中をおこすこともめずらしくありません。
危険因子を取り除いて健康的な生活を送っている方は脳卒中を起こす可能性がぐっと低くなります。
しかし“ゼロ”にはなりません。

脳腫瘍によるめまい
脳腫瘍によるめまいも脳卒中と同様に、脳腫瘍が発生した場所によってめまい以外のさまざまな症状をともなっていることがほとんどです。
ココがポイント
脳卒中との大きな違いはめまいの起こり方です。脳腫瘍は発生してから徐々に大きくなりめまいが起こります。そのため数週間、人によっては数か月かけてめまいが悪化していきます。
とても緩やかな進行です。
ですからなかなか気づかれにくい病気です。
めまいがでてもあわてて病院にかけ込むようなことはあまりありません。
しかしめまいは確実に悪化していきます。

という感じで受診されます。
脳腫瘍はCTやMRIを行えばほとんどの場合は発見できますので、急なめまいでなくても長時間めまいに悩まされている方は、一度脳の検査をお勧めいたします。
変性疾患によるめまい

とお思いの方も多いかと思います。
もっと詳しく
変性疾患とは、原因不明はよくわかりませんが長年かけて神経が徐々に変化していってしまい、本来の機能を失ってさまざまな障害がおきてくる病気です。
変性疾患も脳腫瘍と同様に徐々にめまいが進行していきますので最初はなかなか気づかれにくいです。
ココがポイント
変性疾患の病状の進み方は脳腫瘍よりもさらに進行ゆるやかで、いつの間にか発症して、その後何年もかけて徐々に症状が進行していきます。
脳幹や小脳が障害されるようになるとめまいが徐々に悪化していきます。
変性疾患もめまいだけで進行することはほとんどなく、その他にさまざまな障害を伴って悪化していきます。
病名としてはパーキンソン病や脊髄小脳変性症などの病気があります。

まとめ
今回は中枢性のめまいの症状について解説してみました。


ここで今回の内容をまとめてみました。
今回のまとめ
- めまいには末梢性のめまいと中枢性のめまいがありますが、こわいめまいは中枢性のめまいです。
- 中枢性のめまいの原因には脳卒中、脳腫瘍、変性疾患などがあります。
- 脳卒中のめまいは突然発症することがほとんどで治療開始までの時間が勝負です。
- 脳腫瘍や変性疾患のめまいは緩やかに進行していき、自然によくなることはほとんどなく時間の経過とともに悪化していきます。長期間のめまいにお困りの場合には病院を受診して調べてもらいましょう。
めまいはめずらしい症状ではありません。よく起こる症状です。
しかしその中にこわいめまいがまぎれ込んでいる可能性があります。
ご自身のためにも、また自分のまわりでめまいがおきて困っている方のためにも、少しでも知識をみにつけていただき、お役にたてていただければうれしい限りです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
最後にポチっとよろしくお願いします。