
このブログでは脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんの視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。
基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説していきいます。
今回の『脳の病気』では「てんかんと運転」について解説しますのでよろしくお願いします。
この記事を読んでわかることはコレ!
- てんかんがどのような病気なのかがわかります。
- てんかんと診断された方が運転免許を取得あるいは更新するために必要な情報がわかります。
てんかんってなに?
“てんかん”という言葉を一度は耳にしたことがある方も少なくはないかと思います。しかし、

という方が多いではないでしょうか。

ココがポイント
てんかんとは脳の神経細胞の活動が突然乱れて激しく興奮した状態になっていることです。
いわゆるひきつけやけいれんなど手足ががくがく震えたり、力が常に入った状態になったりすることもありますし、ぼーっとしてきて意識がない状態になってしまうこともありますし、脳の電気活動が異常をきたした場所によって様々な症状を引き起こします。
ココがポイント
てんかんは繰り返し何度も起こることも特徴です。
てんかんは古くから知られている病気ですが、中には誤った診断でてんかんと診断されて薬を内服している人も少なからず外来で見ることがあります。
てんかんには様々な種類があり、その診断には専門的な知識が欠かせません。
もっと詳しく
日本てんかん学会では専門医の制度を設けて、てんかん専門医を認定していて、内科、小児科、精神科、脳神経外科のそれぞれの専門医資格をもった医師がなることができます。
しかし全国にてんかん専門医はいまだ1000人に満たない程度しかいないため、充分な診療が行き届いていないのが現状です。
自分も外来でてんかんの患者さんを診察することは多いですが、初回のてんかんと思われる発作を認めた人に関しては、てんかん専門医のいる病院を紹介して、てんかん専門医に正確な診断をしてもらい、服用する薬を本人にあった量に調節してもらってから、また自分の外来で診察と薬の処方を続けるように心がけています。
脳神経外科医といってもてんかんを専門としていない自分はてんかんの知識が充分ではありません。
しかし、近隣のてんかん専門医の先生方に紹介することは可能です。
ココがポイント
まずはてんかん専門医の診察を受けることをお勧めします。
てんかんと運転ってどういう関係?
てんかんにまつわる問題はいろいろとありますが、その中の1つに運転の問題があります。
てんかんの方が運転をして死亡事故を起こしたというニュースを時々目にします。
数年前にてんかんで自分の外来にかかりつけの患者さんが患者さん自身の自己判断で薬の服用を中止した状態で車を運転して死亡事故を起こしました。
最終的に裁判となり、自分も法廷に呼ばれて証人として発言しました。

その後てんかん専門医の先生方とお話をさせていただく機会に何度か恵まれていろいろうかがいました。
てんかん専門医
てんかんの患者さんでもてんかん専門医の診察を受けて正確な診断のもとで適格な薬を服用することで、てんかんはコントロールすることが可能なことが多く、その場合安全に運転することが可能です。
何度も繰り返しおっしゃっていました。
誤った認識で、てんかんだから運転はできない…とあきらめている人や、てんかんだから運転してはいけないと主張する人が中にはいます。しかし、
てんかん専門医
てんかんの方はまずはてんかん専門医のもとをおとずれて相談してほしい!

てんかんと診断された人が運転する条件
てんかんの方が運転免許を取得する条件はいくつか示されていますが、簡潔に言えば、
ココがポイント
運転に支障するおそれのある発作(目覚めて意識がしっかりしている状態で、意識や運動が障害されるようなてんかんの発作)が2年間ないこと(薬の服用の有無は関係ありません)。
つまり自分に合った薬をきちんと内服しててんかんの発作が2年間なければ運転は可能です。
ただし大型免許と第2種免許に関しては薬を飲まない状態で5年間てんかんの発作がなく、今後も発作をおこす可能性がないものと厳しく限定されておりこの点は注意が必要です。
そのため運転することを職業とする仕事に就くにはハードルが高いと思います。
この基準は医学的、科学的に根拠が示されたものではなく、であくまでも法律の問題であり、医師が別の判断をくだせば運転は可能です。
しかしこの基準に反するにはよほどの医学的な根拠が必要で、充分な根拠がなく運転を許可することは難しいのが現実です。
知って得する情報
たとえてんかんが原因で運転免許が取消になっても、その後治療を受けて正しく薬を内服して発作が起こらなくなり運転する基準を満たせば、取消から3年以内に申請をすれば試験は免除されるなんて特典もあります。
とにもかくにも主治医の先生とよく相談されることをお勧めいたします。
自己判断はだめです!
ココがポイント
てんかんと診断されている方は、運転免許の取得や更新の時にいろいろな質問票の提出を求められますが、そこに虚偽の回答をして運転をして事故を起こすと、最終的には警察に捕まって重い罪になります。
またそのような方が、自分で運転中に事故を起こす危険があることを分かっていたのに周りからの声を無視して無謀にも運転を続けた場合は、主治医が警察に通報することができます。
ですから、

自分のみでなく周りの多くの人々に迷惑がかかってしまいます。
ココがポイント
自己判断で運転をするのではなく、まずは正しい診察をうけて正しい薬を処方しててんかんの発作を抑えることが何よりも大切です。
まとめ
今回はてんかんと運転について解説してみました。


ここで今回の内容をまとめてみました。
今回のまとめ
- てんかんの疑いのある方、またすでにてんかんと診断されている方でも、一度てんかん専門医の先生の診察を受けて、正しい検査をして、正しい診断のもとで、正しい薬を処方してもらいましょう。
- てんかんの方が運転免許を取得する条件はいくつか示されています。てんかんだからと言って絶対に運転できないわけではありません。
- 自己判断で運転するのはやめましょう。
運転は楽しいですし便利です。生活に欠かせないものとなっている人も多いかと思います。
しかし運転は時に自分の思っている以上の力で自分や他人を気づつけてしまう危険があります。
てんかんと診断されていても、正しい判断のもとで正しい治療を行えば運転は可能です。
自分のため、他人のためにも正しい知識を身に着けて安全な運転を心がけましょう。
今回の記事がみなさんの知識の助けに少しでもなれれば幸いです。
てんかん専門医の第1人者であります東北大学てんかん学分野 中里 信和教授の『「てんかん」のことがよくわかる本』がぜひお勧めです。
医療者のみならず一般の方でもとても分かりやすく理解しやすく解説されています。
今回解説しました「てんかんと運転」についてもばっちり解説されています。
てんかんのバイブル的な本として皆さんにぜひお勧めしたい1冊です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
最後にポチっとよろしくお願いします。