頭を切らずに治すガンマナイフって安全なの?どのくらい効果があるの?
そんな疑問に脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんのへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科専門医の視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。
基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説します。
今回の記事をこの記事を読んでわかることはコレ!
- 頭を切らずに脳の病気を治す放射線治療機器であるガンマナイフの良いところがわかります。
ページ内目次
頭を切らずに脳の病気を治すガンマナイフ
脳の病気を治療するためだけに開発され、体の他の部分の放射線治療とくらべて圧倒的な効果と安全性を備えた放射線治療機器がガンマナイフです。
ガンマナイフの基本的な知識についてはこちらをご覧ください。
ガンマナイフが今までの頭を切る手術や、ほかの放射線治療とくらべて優れていると評価されている点は、
ココがポイント
治療を受ける方の肉体的な負担が少ないこと
放射線治療の脳の病気に対する位置精度が高いこと
他の放射線治療と違いかなり大きな放射線量を用いること
放射線治療の回数が少ないこと
があげられます。

という方がほとんどだと思います。

この記事を読み終わったときに

と少しでも思ってもらえるようにわかりやすく説明していきます。
ガンマナイフは治療を受ける方の肉体的な負担が少ない
ガンマナイフは脳の病気を、頭を切らずに治す魔法のメスです。
頭を切って治す手術は開頭(かいとう)手術と呼ばれます。言葉のごとしで、
もっと詳しく
開頭手術とは、全身麻酔をかけて頭にメスを入れて皮膚、頭蓋骨を切り、頭を開いて、脳の病気を切りとる手術です。
そのためまず全身麻酔を行うことで体に負担がかかります。
健康な若年者であれば全身麻酔の負担はまだ少ないですが、高齢の方やいろいろと持病を抱えている方にとってはそれなりの負担となります。
またメスが入りますので頭に大きな傷をつけることになります。
手術が終わっても体の負担が大きいのですぐに退院することは難しく、最短でも1週間程度の入院は必要ですし、場合によっては数週間の入院を必要とします。
一方でガンマナイフは大きな傷は残りません。

ココがポイント
ガンマナイフは、頭を固定するための金属製のフレームを付ける必要があります。
おでこ2か所と後頭部2か所の合計4か所をネジで固定します。
治療後にはネジの刺した痕(ほんの数ミリの痕)が一時的に残りますが数週間もすればほぼわからなくなります。

ガンマナイフは脳の病気に対してピンポイントで放射線のビームを複数集めて最終的には高いエネルギーを生みだして治療を行います。
1本1本の放射線のビームはとても弱いものです。
これが複数集まって1点に集中するので、脳の病気に対してのみ被ばく量が高くなります。そのため、

ココがポイント
通常の放射線治療では放射線があたった部分の皮膚が赤くただれて皮膚炎をおこしたり、毛が抜けてしまったりすることがありますが、ガンマナイフではそのようなことはほとんど起こりません。
ココがポイント
ガンマナイフは体に対する負担が少ないので通常は治療を行った翌日には歩いて帰れます。
場合によっては日帰りの治療も可能です。

ガンマナイフは脳の病気に対する位置精度が高い
ガンマナイフでは正確に脳の病気をピンポイントで治療するために、治療を行う際にはベッドに頭をしっかりと固定する必要があります。
0.1mm単位での治療を行うために少しのズレも許されません。そのため、
ココがポイント
ガンマナイフでは頭に金属のフレームを装着します。これはネジ4本で頭に固定します。


通常はネジを刺す皮膚に麻酔をするのと、点滴から全身麻酔で使うよりは弱めの薬を流しますので、


そんな感じです。
現在ではガンマナイフ以外にもガンマナイフとほぼ同様の治療効果を持った放射線治療機器が数多く存在します。
サーバーナイフ、ノバリス、トモセラピー…などなどたくさんあります。
これらの治療機器では、頭の固定はプラスチック製のフェイスマスクで行います。
ココがポイント
ネジで金属のフレームを頭に固定するのはガンマナイフのみです。

そのため治療中に話をしたり、咳をしたり、つばを飲み込んだりしても頭の位置がずれて放射線のビームがずれてしまうことはありません。
しかし、

ココがポイント
最新のガンマナイフであるアイコンではネジによるフレーム固定に代わってフェイスマスクで頭を固定することが可能となりました。
頭の形、大きさは人それぞれですが、ひとりひとり頭の型をとってオリジナルのフェイスマスクを作製します。

ベッドに上を向いて寝た状態で顔の表面にフェイスマスクをあてて頭を固定します。
頭の後ろからはひとりひとり後頭部の形にあった枕を作り、前からと後ろからでしっかり頭の固定を行います。

しかしこれだけしっかり固定してもやはりネジ4本で頭を固定する正確性には当然かないません。
そこで放射線のビームを脳の病気にあてて治療を行っている間は、頭がずれて動いていないかを赤外線のビームで頭の位置を確認して追跡し続けます。
ズレが出ると放射線のビームが止まり治療は中断するようになっています。

ネジの固定とくらべて多少手間はかかりますが、それによって体の負担を軽減しつつも誤差を減らして正確な位置の精度を保っているのです。

ガンマナイフはかなり大きな放射線量を用いる
ガンマナイフは定位放射線治療の治療装置です。
定位放射線治療の詳しい説明はこちらをご参照ください。
定位放射線治療
定位放射線治療を簡単に言えば、頭をしっかりと固定して脳の病気にピンポイントで放射線のビームをあてる治療です。
何となくこのあたりに放射線のビームをあてたという感じではなく、0.1mm刻みで正確にビームをあてていきます。そのため、
ココがポイント
ガンマナイフは脳の病気に対してかなり高いエネルギーの放射線をあてることが可能です。脳の病気だけピンポイントで被ばくして、病気の周りの正常な脳はあまり被ばくしません。
高いエネルギーを一気にあてるので、効率よく脳の病気を倒して高い効果を上げるのです。しかも、
ココがポイント
ガンマナイフは通常の放射線治療と比較して、治療が終わってから病気が小さくなり始めるまでの期間が比較的短く、早い段階から治療の効果が得られます。

つまり放射線治療をおこなってもすぐに効果は見られないということです。
病気の種類にもよりますが、通常1-2ヶ月くらいかけて病気はじわじわ小さくなっていきます。
病気によっては半年、1年、3年、5年とゆっくり時間をかけて小さくなっていきます。
ガンマナイフも同様で治療をしてすぐに病気が治るわけではありません。
しかし治療の効果がでてくるのは通常の放射線治療と比較すると早い段階で効果が認められます。また、
ココがポイント
脳の病気の周辺の正常な脳に対する被ばくがとても少ないので、通常の放射線治療後に多くの方が心配される認知機能の低下はほぼありません。

ということがありません。

ガンマナイフは放射線治療の回数が少ない

ココがポイント
放射線治療において何回も治療を続けていく方法を分割照射といいます。
1回で強い放射線のビームをあてると病気には大きいダメージを与えられますが、まわりの正常な部分にも強い放射線があたってしまいダメージを受けてしまいます。
そのため1回の放射線のエネルギー量を減らしてダメージを少なくして、それを何回も繰り返すことで病気にはダメージを与えて正常な部分にはなるべくダメージが残らないようにします。しかし、
ココがポイント
ガンマナイフではピンポイントで病気にだけ強いダメージを与えて周りの正常な部分の放射線被ばくをおさえることができるので、1回のみの治療で高い効果を上げることが可能です。
何度も治療を受けなくて済むので肉体的にも精神的にも負担は少なくてすみます。
ちょっと難しい話になりますが、
もっと詳しく
放射線生物学的にはいろいろな問題点があり、1回での放射線治療が本当に効果が高くてしかも安全であるかは必ずしもすべての病気に対して当てはまるわけではないので、それぞれの病気の状態に応じて治療回数を考えることが必要です。
ガンマナイフでも場合によっては無理をして治療の回数を1回にしないで、2回、3回、5回、10回とさまざまな回数で治療を行うこともあります。
現在では、治療回数の違いによる治療効果や安全性の違いが研究されています。

まとめ
今回は頭を切らずに脳の病気を治す魔法のメスであるガンマナイフの良いところについて解説してみました。


ここで今回の内容をまとめてみました。
今回のまとめ
- ガンマナイフは治療を受ける方に対して肉体的にも精神的にも負担をおさえた治療です。
- ガンマナイフはかなり正確に脳の病気をピンポイントで治療します。
- ガンマナイフは高いエネルギーの放射線を使うことで高い治療効果をあげています
- ガンマナイフは少ない治療回数で有効で安全な効果をあげることができます。
ガンマナイフは頭を切らずに脳の病気を治す放射線治療の機器です。
今回はどのようにして高い治療効果をあげて、また正確で安全な治療が行えるのかを解説しました。
今後ガンマナイフは実際のそれぞれの脳の病気に対するガンマナイフの治療効果や安全性や問題点などについて順次解説していきたいと思っています。
今回の記事がみなさんに少しでもお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
最後にポチっとよろしくお願いします。