頭を切らずに治すガンマナイフって副作用とか合併症ってないの?
そんな疑問に脳神経外科専門医であるアラフィフおじさんのへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科専門医の視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療について解説していきたいと思っています。
基本的な知識については、ネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉を用いてわかりやすく解説します。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 頭を切らずに脳の病気を治す放射線治療機器であるガンマナイフの副作用や合併症がわかります
ページ内目次
頭を切らずに脳の病気を治すガンマナイフ
脳の病気を治療するためだけに開発され、体の他の部分の放射線治療とくらべて圧倒的な効果と安全性を備えた放射線治療機器がガンマナイフです。
今までガンマナイフについて解説をしてきました。
どのようなものでも長所と短所があります。
治療においても同じです。
それぞれの治療で優れている点もあれば、副作用や合併症がおきてしまうこともあります。
短所が長所を上回ってしまえばそれは使い物にはなりません。
治療においても副作用や合併症が多い方法は使い物になりません。

しかしまったく副作用や合併症のない薬はありません。
薬を買うと必ず効果効能は当然確認すると思いますが、それとともに副作用や合併症についても説明書に細かく記載されています。
また薬剤師さんが薬のいいところだけではなくて、注意しておかなくてはならないこともちゃんと細かく説明してくれますよね。
ココがポイント
ガンマナイフも放射線治療としての優れた治療効果をしめす反面、副作用や合併症もあります。

ガンマナイフの短所である副作用と合併症を知ることで、逆に安全性を再認識できることと思います。

この記事を読み終わったときにそのように思ってもらえるように説明していきます。
ガンマナイフの治療後すぐにみられる副作用と合併症
ココがポイント
ガンマナイフでは治療後すぐになにか大きな問題となる副作用や合併症がおこることはほとんどありません。
ガンマナイフは定位放射線治療の1つで、脳の病気をピンポイントで治療するために正常な脳やそのほかの体に対する放射線被ばくがとても少ないのが特徴です。そのため、
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ガンマナイフでは治療後に、全脳照射といって脳全体に放射線をあてる治療の方法のように、髪の毛が抜けてしまったり、骨髄抑制といって骨髄で作られる白血球(体の抵抗力を高める免疫機能に関係します)や赤血球(赤い血の成分です)や血小板(血を固める働きをしています)が下がることが起こったりすることはほとんどありません。

ココがポイント
少ない確率ですがガンマナイフを行ったあとに起こる可能性があるものとして最も多いのは吐き気です。
「放射線宿酔」といって放射線に酔ってしまうといった症状が出ることがあります。
その1つが吐き気です。体がだるくなったり、疲れやすくなったり、食欲が落ちたりすることもあります。

ガンマナイフの場合はこの中で吐き気がが10%に満たない確率でおこります。
そのほかには治療した脳の病気の場所によってはてんかんの発作がおこることも稀にあります。
ガンマナイフの治療後しばらくしてからみられる副作用と合併症
ガンマナイフを行ってから数週間あるいは数か月たってから起きてくる副作用や合併症です。
これにはいくつかありますが、治療した脳の病気の種類や大きさ、場所などによってさまざまですので一概に言えることではありません。しかし、

といった一般的な副作用や合併症はいくつかあります。
どのような副作用や合併症が起こり得るか解説していきます。
脳神経の障害
脳神経
人間の脳には脳神経と呼ばれる特殊な働きをもった神経が12本あります。

ガンマナイフは脳の病気をピンポイントで治療して、正常な脳の被ばくはとても少ないのが特徴です。しかし、
ココがポイント
脳の病気に脳神経が巻き込まれてしまっていたり、脳の病気に脳神経がくっついてしまっていたりする場合などはどうしても脳神経もそれなりの放射線被ばくをおこします。
脳神経は脳の中でも放射線被ばくにとても弱いとされていて、”これぐらいは放射線被ばくしても大丈夫だけど、これ以上被曝すると神経が死んでしまうよ”、という上限がそれぞれの神経でだいたい決まっています。
この放射線被ばくの限界量を耐容線量といいます。
ココがポイント
もっとも放射線被ばくに弱い脳神経は視神経です。
視神経は目とつながっていて目から入ってきた情報を脳の後頭部に伝える仕事をしています。
ですから視神経が死んでしまうと目が見えなくなります。
ココがポイント
視神経に次いで放射線被ばくに弱い脳神経は聴神経と顔面神経です。
聴神経が死んでしまうと耳が聞こえなくなります。
顔面神経が死んでしまうと顔面を動かすことができなくなり顔が曲がってしまいます。

脳のむくみ
ココがポイント
ガンマナイフの副作用と合併症として最も多いのは脳のむくみです。

脳の病気がガンマナイフによって死んでいき消えてなくなってしまえば問題は起こりません。
しかし病気が死んだ後、その死骸が脳の中に残ってしまう場合があります。
特に問題が起こらない場合がほとんどなのですが、時々、
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病気の死骸が変化を起こして液体がしみだしてきてまわりの正常な脳に液体がたまってしまいむくみがおこります。

また脳の病気が完全に死にきらずその一部がなんとか生き残っている場合があります。
この場合も、かろうじて生き残っている病気や死にかけている病気が変化を起こして液体のしみだしがおこります。
脳がむくんでも何も症状が出ない場合もあります。しかし多くの場合は、
ココがポイント
脳のむくみは頭痛や吐き気、てんかんの発作など引き起こしたり、さらにむくみが悪化すると手足が動かしづらくなったり意識が悪くなることもあります。
このような現象はガンマナイフ後3~6か月後から起こりはじめ、1~2年続くこともあります。
脳のむくみがおこる確率はさまざまな要因によって左右されますが、だいたい3~5%以下です。逆に、

ココがポイント
脳のむくみに対しては点滴や飲み薬で脳にたまった液体を尿として体の外に出すような治療が行われます。
多くのむくみは薬でよくなりますが、それでもよくならなかったり逆に悪くなったりした場合には、手術をして脳の病気を切り取る必要があります。
脳の病気が別の病気を引き起こす
ココがポイント
脳の病気に対してガンマナイフによる治療を行い、病気自体は死んだ状態なのですが、その死骸が変化していき嚢胞(のうほう)といって液体がたまった風船のような袋ができてきたり、血腫(けっしゅ)といって血のかたまりのようなものができてきたりすることがります。
かなり低い確率ですが、嚢胞や血腫ができると数年かけてゆっくりゆっくりと大きくなってくることが多く、その場合には最終的に手術が必要になることがあります。
また時には死骸が悪性の病気に変化することもあります。
もともと良性で悪い病気ではなかったのに、ガンマナイフを行ったためにそれが悪性の病気にかわってしまうのです。
しかしその確率は極めて低く0.1%未満です。

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ガンマナイフ後に悪性の病気に変化する確率は、脳の中に自然に悪性の病気が発生する確率とほぼ同じかそれ以下とされているので、ガンマナイフを行ったから悪性の病気になりやすくなったとは言えません。
しかし確率がゼロでない限りは注意が必要です。
たとえガンマナイフを行い脳の病気が完治しても、引き続き外来に通ってもらい定期的にMRI検査を行い別の病気ができてきていないかを確認することが大切です。
まとめ
今回は頭を切らずに脳の病気を治す魔法のメスであるガンマナイフの副作用と合併症について解説してみました。


ここで今回の内容をまとめてみました。
今回のまとめ
- ガンマナイフの治療後すぐにみられる副作用はほとんどありませんが、吐き気やてんかんはまれにみられる副作用です。
- ガンマナイフの治療後しばらくしてからみられる副作用としては、脳神経の問題、脳のむくみ、脳の病気が別の病気を引き起こすことなどがあります。
- ガンマナイフの治療後は脳の病気がなおっても副作用、合併症が数年してから起きてくることがありますので、医師の指示通り定期的な通院を続けましょう。
ガンマナイフは頭を切らずに脳の病気を治す放射線治療の機器です。
ガンマナイフは治療の効果が高く、また安全性が高いため、現在ではとても多くの方が脳の病気に対してガンマナイフの治療を受けています。
しかしガンマナイフといえども必ずしも良いところばかりではありません。
副作用や合併症もあります。
そのために個々の脳の病気についてより適切な治療を行うことが大切です。
いろいろ副作用や合併症のことを聞くと怖くなってしまう方も多いでしょう。
しかしそれをはるかに上回る高い効果があることも確かなことです。
ガンマナイフは放射線治療機器としてとても安全であり安心してうけられる治療です。
今後はさまざまな脳の病気に対するガンマナイフの治療効果や安全性や問題点などについて病気ごとにわけて順次解説していきたいと思っています。
今回の記事がみなさんに少しでもお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
最後にポチっとよろしくお願いします。