脳の病気

くも膜下出血の原因となる脳のこぶ…脳動脈瘤を知ろう

くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤-A1

くも膜下出血ってなんですか? 

脳動脈瘤ってなんですか?

 

そんな疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い手術、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、主に一般の方に向けて脳の病気や治療についてわかりやすく解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • こわい頭痛の原因の1つであるくも膜下出血の症状や原因がわかります。
  • くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)がどんな病気なのかがわかります。

 

こわい頭痛を引き起こすくも膜下出血の症状を知ろう

くも膜下出血-1

 

皆さんは今までにくも膜下出血という言葉をどこかで聞いたことがあるでしょうか?

 

へなよさん
くも膜下出血なんて聞いたことない…

 

なんて人もいるでしょうが、多くの方は1度くらいは聞いたことがあるかと思います。

 

有名な方では、ジャニーズ事務所の喜多川社長さん、globeのKEIKOさん、星野源さん…などなど

 

とても多くの方がくも膜下出血になってニュースになっていますね。

 

へなお
脳の病気ではとても有名なくも膜下出血ですが、いったいどんな病気なのでしょう。

 

脳はとても大切なので何重にも守られています。

 

表面から考えると、まずは皮膚、皮膚の下の脂肪や筋肉、骨です。

 

ここまでは想像がつくと思います。

 

さらに骨の下では髄膜(ずいまく)という膜におおわれて守られています。

 

髄膜には何種類かあって骨のすぐ下には硬膜(こうまく)という硬い膜があります。

 

その下に脳があるのですが、脳の表面には薄い膜であるくも膜がおおっています。

 

へなよさん
脳は何重にも守られているんですね。

 

ココがポイント

脳の表面のくも膜の下に出血が起こると“くも膜下出血”と呼ばれます。

くも膜下出血脳の表面に出血がこびりついた状態になります。

 

この出血がさまざまな症状を引き起こし命に関わってくることもあります。

 

へなお
それではくも膜下出血になるとどのような症状が出るのでしょうか?

 

ココがポイント

今まで経験したことのないような、バットで頭をなぐられたような激しい頭痛突然襲ってくる

これがくも膜下出血の典型的な最初の症状です。

 

へなよさん
そう言われてもなかなか想像できないです…

 

へなお
バットで頭をなぐられるなんて恐ろしくて想像できませんよね。

 

でもそれぐらい頭が痛くなります。

 

しかも急に痛くなります。

 

ココがポイント

警告頭痛といって前触れのような軽い頭痛が起こる人も20%くらい起こります。

 

へなお
軽い頭痛だとまさか自分がくも膜下出血になっているなんて思いもよらないですよね。

 

くも膜下出血では頭痛のあとに意識が悪くなってぼーっとしてきたり、気持ち悪くなって吐いてしまったり、手足が動かなくなったりします。

 

もっと重症ではてんかんの発作が起きたり、意識が完全になくなったりと命に関わってくることもあります。

 

これらがほんの短時間の間に起きてきます。

 

くも膜下出血はとてもこわい頭痛なんです。

 

へなお
次になぜくも膜下出血が起きるのかを解説していきますね。

 

こわい頭痛を引き起こすくも膜下出血の原因を知ろう

くも膜下出血-2

 

ココがポイント

くも膜下出血脳の表面の血管が何かしらの原因で切れてくも膜という薄い膜の下に出血を起こしてきます。

 

通常正常な血管が突然切れて出血を起こすことはほとんどありません。

 

何かしらの脳の血管の異常があって、それが切れて出血を起こします。

 

へなお
この血管の異常でもっとも多いのが脳動脈瘤です。

 

ココがポイント

脳動脈瘤くも膜下出血の原因の80%くらいを占めています。

脳動脈瘤とは血管の壁が血豆のように膨らんで“こぶ”を作っている状態です。

 

へなお
このこぶが突然破裂して出血を起こします。

 

脳動脈瘤は破裂して出血を起こさない限り多くの場合は無症状ですので気づかれません。

 

破裂してはじめて脳動脈瘤がわかります。しかし、

 

ココがポイント

脳動脈瘤あらかじめ検査で発見することは可能です。

 

MRI検査の中で血管をきれいに描出する方法があり、それをMRA検査と言います。

 

もっと詳しく

最近のMRAの画像は解像度が飛躍的に向上しているので、1mm程度の脳動脈瘤でも90%以上の確率で発見されます。

 

へなお
健常な状態でMRA検査を受けるためには、脳の健康診断である脳ドックを受診することをお勧めいたします。

 

脳動脈瘤以外にもくも膜下出血の原因となる血管の異常はいろいろあります。

 

脳動脈瘤の仲間で解離性(かいり)性脳動脈瘤というのがあります。

 

もっと詳しく

脳の血管の壁はもともととても薄いのですが、この血管の壁が裂けて破れて出血してしまうのが解離性脳動脈瘤です。

 

血管の壁が裂ける時に電気が走るように痛みが首や頭をかけぬけた感じがします。

 

ココに注意

解離性脳動脈瘤は突然血管の壁が裂けるので事前にMRAの検査をしていてもほぼ見つけることはできません

 

へなよさん
解離性脳動脈瘤はとても怖い病気ですね。

 

ジャニーズ事務所の喜多川社長はこの解離性脳動脈瘤によるくも膜下出血でした。

 

そのほかにも脳動静脈奇形もやもや病などさまざまな病気があります。

 

へなお
それぞれの脳の血管の異常には特徴がありますので今後改めて解説していきますね。

 

もっと詳しく

くも膜下出血を起こしていて、いろいろ脳の血管の検査をしてみたのに何も異常が見つからないことも数%見られます。

このように原因不明のくも膜下出血の場合はほとんどが頭痛のみの症状で軽症のことが多いです。

 

へなお
次にくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤について解説していきますね。

 

こわい頭痛を引き起こすくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤を知ろう

くも膜下出血-3

 

もっと詳しく

まだ破裂してくも膜下出血になっていない脳動脈瘤を未破裂脳動脈瘤と言います。

 

へなお
では未破裂脳動脈瘤はどのくらいの人が持っているものなのでしょうか?

 

未破裂脳動脈瘤についてはいろいろ研究されています。

 

ココがポイント

何も持病を持っていない平均年齢50歳の男女50%ずつの極めて平均的な場所があったと仮定します。

そのような場所においては3.2%の人に未破裂脳動脈瘤が発見されます。

 

へなお
100人におおよそ3人くらいの割合ですね。

 

この数字が大きいのか小さいのはさまざまな意見があるでしょう。しかし、

 

へなお
脳動脈瘤は決してめずらしい病気ではないということはお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

脳動脈瘤は破裂して出血しなければほとんどの場合は何も症状がありません。

 

しかし破裂するとくも膜下出血を起こし、半数の人はそのまま命を落とします

 

残りの半数の人が病院に運ばれてきて治療を受けますが、治療を受けた人の半数は最終的に何かしらの後遺症を残してリハビリテーションを行うことになります。

 

社会復帰できるのは残りの4分の1の人のみです。

 

脳動脈瘤が破裂するにはさまざまな因子が関係してきますので、どのくらいの確率で破裂してくも膜下出血になるのかは断言できません。しかしおおまかに概算しますと、

 

ココがポイント

1年間に脳動脈瘤が破裂する確率は日本人においては1%程度とされています。

 

数字としてはとても小さいです。

 

しかしくも膜下出血を起こしてしまうととても危険な状態になることを考えるとこの確率は低いに越したことはありませんよね。

 

脳動脈瘤が破裂する確率を下げることはなかなか難しいのですが、この確率を上げないようにすることは可能です。

 

日常生活において危険な因子とされているものがいくつかあります。

 

ココに注意

脳動脈瘤を破裂させる確率を上げる危険な因子の代表

 ✔ 高血圧(2.9倍)

 ✔ 喫煙(3倍)

 ✔ 動脈硬化(1.7倍)

どうにも防ぎようがない危険な因子の代表

 ✔ 性別:女性(1.6倍)

 ✔ 年齢:50歳以上(2.2倍)

 ✔ 血のつながった家族にくも膜下出血の方がいる場合(3.4倍)

脳動脈瘤を破裂させる確率を下げる因子の代表

 ✔ 高コレステロール(0.5倍)

 ✔ 週3回以上の適度な有酸素運動(0.6倍)

 

ここで家族にくも膜下出血の方がいる場合は脳動脈瘤が破裂しやすいことに少しふれておきます。

 

皆さんが気にされることの1つに病気の遺伝があります。

 

へなよさん

自分の病気は遺伝してできたの?

自分の病気は遺伝するの?

 

もっと詳しく

脳の血管の病気の多くは遺伝することはほとんどありません

しかし脳動脈瘤遺伝する可能性のある数少ない脳の病気の1つです。

 

2親等以内(自分から見て血のつながった親、祖父母、孫、兄弟姉妹)の家族に脳動脈瘤を持った人がいる場合には10%以上の確率で脳動脈瘤が発生すると言われています。

 

へなお
100人に10人の確率ですが決して低い数字ではありません。

 

通常では脳動脈瘤を持っている確率は100人に3人程度ですから3倍以上と言えます。

 

また両親いずれかがくも膜下出血になったことがある人の場合は、脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血になる確率は9倍になると言われています。

 

通常では脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血になる確率は100人に1人程度ですから家族歴があると100人に9人の確率になります。ですから、

 

へなお
くも膜下出血の家族歴のある方はぜひ脳ドックを受診してMRAの検査を受けることをお勧めいたします。

 

これらの情報は以下の論文のデータを参考にしています。

Valk MH, et al: Prevalence of unruptured intracranial aneurysms, with emphasis on sex, age, comorbidity, country, and time period: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol 10:626-636, 2011

 

Valk MH, et al: Independent risk factors for intracranial aneurysms and their joint effect: a case-control study. Stroke 44:984-987, 2013

 

このようなことを聞くととてもこわく感じてしまうかもしれません。しかし、

 

へなお
現在ではさまざまな研究がすすみ脳動脈瘤のことはかなりわかっていますしかなりの予想が可能です。

 

もっと詳しく

脳動脈瘤を破裂する前に見つけることを目的の1つとして、1988年に日本独自の脳ドックが世界に先駆けて始まりました。

1992年脳ドック学会が創設され、1997年には脳ドックのガイドラインが作られました。

脳ドックのガイドラインは5回の改訂を行い最新版は2019年に発行されています。

 

興味のある方は参照してみてください。

 

 

脳ドックによって脳動脈瘤が破裂する前に見つかることがとても多くなりくも膜下出血は年々減っています

 

しかし破裂していなくても脳動脈瘤があるとわかったことで、不安が強くなり日常生活が今までのように送れなくなってしまう方もなかにはいらっしゃいます。

 

へなお
不安を少しでも解消するためには脳動脈瘤の知識を身につけておくことが大切です。

 

2012年に日本医科大学脳神経外科の森田明夫先生が中心となって日本人の脳動脈瘤についての全国調査が行われました。

 

調査の結果は世界的に権威の高い医学雑誌である”The New England Journal of Medicine””UCAS Japan”という名前で掲載されました。

 

今では全国の脳神経外科のほとんどでこのUCAS Japanの結果をもとに未破裂脳動脈瘤治療の方針が決められています。

 

へなお
次回はUCAS Japanの解説をしますね。

 

UCAS Japan Investigators, Morita A, et al: The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med 366:2474-2482, 2012

 

まとめ

まとめ-conclusion1

 

今回はこわい頭痛を引き起こすくも膜下出血の症状とその原因となる脳のこぶ…脳動脈瘤について解説しました。

 

今回のまとめ

  • くも膜下出血は今まで経験したことのないようなバットで頭をなぐられたような激しい頭痛が突然襲ってくる症状で始まります。
  • くも膜下出血の原因でもっとも多いのは脳動脈瘤です。
  • 脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こす確率はおおよそ年間1%です。
  • 脳動脈瘤が破裂する危険な因子は色々ありますのでそれらを理解しておくことが大切です。
  • 脳動脈瘤は脳ドックでMRA検査を受けることで破裂する前に発見することが可能です。
  • 脳動脈瘤をただ恐れるのではなく正しい知識を身につけておくことが大切です。

くも膜下出血はとてもこわいことで有名な病気です。

 

その原因の多くは脳動脈瘤にあります。

 

ただ恐れるのではなく、正しい知識を身につけて健康のために高い意識をもって生活していくこととても大切です。

 

へなお
今回の記事がみなさんに少しでもお役に立てれば幸いです。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も『脳の病気』、『脳の治療』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、放射線治療を中心に勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、脳の病気や治療から脳科学まで幅広い分野にわたって長年の経験からつちかった情報を提供していきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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