脳を科学する 自己の脳科学

「先延ばし」してしまう癖はなぜ治らないのか?「先延ばし」の意味と克服する方法を脳科学で探る

2021-09-26

先延ばし-A1

目標をかかげても先延ばししてしまうのはなぜなのでしょう?

先延ばししてしまう癖を克服して改善する方法はあるのでしょうか?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 「先延ばし」の意味と克服する方法をわかりやすく脳科学で説き明かします。

 

大事なことを「先延ばし」してしまう本当の理由

先送り-1-min

先延ばしの脳科学

  • 目の前にある重要なのに厄介なことになかなか手をつけられない現象を「先延ばし」と言います。
  • 「先延ばし」をしてしまう脳科学的な原因は「始めてから成果が出るまでに時間がかかるので意識的に回避してしまう」ことにあります。
  • 「先延ばし」を避けるためには目標を達成するまでの強靭な精神力が必要でありそうそう克服できることではありません。
  • しかし「先延ばし」癖を克服するするための方法はちゃんと存在します。
  • 「先延ばし」を克服ためには脳のバッテリーを充電して課題に期限を設定することです。

目の前にある重要だが厄介な行為になかなか取り掛かれない傾向のことを「先延ばし」と言います。

 

たくさん食べながら「次の食事からダイエットを始めよう」と言ってしまう

 

タバコを吸いながら毎回「このタバコは最後の1本」と言ってなかなか禁煙できない

 

新年の抱負で大きな目標をかかげたところで達成したためしがない

 

このように「先延ばし」は日常生活にあふれかえっています。

 

へなお
夏休みの宿題も「先延ばし」してしまう典型例ですよね。

 

“先送り症候群の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

夏休みの宿題-A2
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物事を先延ばしするとなんだか自分に言い訳しているようですっきりせずストレスを生みこともあります。

 

へなお
そもそも先延ばしは不毛な行為です。

 

すべきことを先延ばししたところでそれがひとりでに片付くことなどあり得ません。

 

それらを実行すれば自分のためになることが分かっていないわけでもありません。

 

やらなければいけないと分かっていてもなかなか実行できない…それが先延ばしです。

 

ではなぜ先延ばしをしてしまうのでしょう?

 

目先の誘惑についつい負けてしまう。

「今日中にこの仕事をまとめよう」と思っていたのに友人から飲み会に誘われるとつい仕事を後回しにして飲み会に参加してしまう…そんな状況です。

 

「やる気になれば自分ならすぐにできる」という根拠のない自信に負けてしまう。

一度でも成功体験をして自信を持ってしまうと「自分が本気を出せばいつでも達成できる」と勘違いをしがちになります。

 

完璧を求めすぎるがあまり目標実現までのプロセスを大事にしすぎて本来の目標を見失ってしまう。

例えばダイエットのためにジムに通おうとしても

 

「まずはスポーツウエアを買わないといけない」

 

「吸収性の高いタオルが必要」

 

などとトレーニング開始までのタスクが多すぎてジムに行くまでに膨大な時間がかかってしまいます。

 

すると「ジムに行ってダイエットする」という本来の目的がいつの間にか先延ばしされてしまいます。

 

責任から逃れたくなる。

自分のミスや決断を他人に責められることに恐怖感を感じてしまい責任から逃れるために先延ばししてしまう。

 

 

これらが主な先延ばしの心理ですが他にもさまざまな心理が働きついつい「先延ばし」してしまうわけです。

 

しかしこれらはあくまでも心理的な要因です。

 

へなお
では脳科学的に「先延ばし」を考えるとどのよう理由が考えられるのでしょうか?

 

脳科学的な「先延ばし」してしまう原因は「始めてから成果が出るまでに時間がかかる」ことを分かっているので意識的に回避してしまうからです。

 

実行してすぐに成果が出ることであればきっと多くの人は先延ばししないでしょう。

 

しかしダイエットや禁煙はすぐに目標を達成して成果を出すことはできません。

 

目標達成までのあいだの時間を切り抜けるには強い精神力を必要とします。

 

へなお
これこそが「先送り」を生み出す最大の要因なのです。

 

「先延ばし」癖はなぜ治らないのか?

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「先延ばし」をしてしまう人は

 

優先順位を考えられない

 

「今が良ければそれで良し」と考えて未来のことを考えていない

 

自分に自信がなく物事から逃げている

 

などなどネガティブな印象をもたれがちです。

 

“ネガティブ思考の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

ネガティブ思考-A1
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それでは「先延ばし」をしない人はポジティブでできる脳を持った人なのでしょうか?

 

決してそんなことはありません。

 

どんな立派な人でも先延ばし癖は多かれ少なかれ必ずあります。

 

先ほどご説明したように「先延ばし」してしまう最大の原因は「目標を達成するまでの精神力を持続することの難しさ」にあります。

 

これは脳科学的な研究で証明されています。

 

アメリカの社会心理学者であるロイ・バウマイスター氏は興味深い実験で「先延ばし」癖を調べています。

 

その詳細はこちらの本をご参照ください。

 

 

研究の1つをご紹介しましょう。

 

実験参加者を2つのグループにわけて、片方のグループはチョコレートクッキーを焼くいい香りが漂うオーブンの前に座らせます。

 

そしてそのグループの前にたくさんのラディッシュが入ったボウルを置きます。

 

「ラディッシュは好きなだけ食べてもいいですがチョコレートクッキーを食べるのは厳禁です。」

 

そのように伝えます。

 

もう一方のグループは好きなだけチョコレートクッキーを食べることができます。

 

その後どちらのグループにもすぐに難しい数学の問題を解いてもらいます。

 

どちらのグループの方が良い点数がとれたでしょうか?

 

へなお
答えはチョコレートクッキーをたくさん食べたグループです。

 

チョコレートクッキーを食べることを禁止されたグループは数学の問題を解くのをもう一方のグループの半分の時間であきらめてしまいました。

 

へなお
ではどうしてこのような差が出たのでしょうか?

 

へなじんさん
チョコレートクッキーを食べて脳がさえわたったから?

 

へなお
ん~…残念ながら違います。

 

チョコレートクッキーを食べることを禁止されたグループは自制心を働かせてクッキーを食べたい気持ちをがまんしたことで精神力を使い果たしてしまったのです。

 

そのため数学の問題を解くための意思の力が残されていなかったのです。

 

脳において意志力はバッテリーのように機能します。

 

ですからエネルギーを消費しつくしてしまうと少なくともその後しばらくは難題をこなせるだけの力はなくなってしまうのです。

 

へなお
ではこの実験から「先延ばし」について何がわかるのでしょう?

 

「先延ばし」を避けるためには「目標を達成するまでの精神力」が必要です。

 

しかしそのような精神力を絶えず維持し続けることは不可能です。

 

精神力を維持するにはエネルギーが必要でありそのためにはバッテリーを充電する必要があります。

 

リラックスしたり横道にそれたりして脳を休ませる必要があります。

 

ですから「先延ばし」せずに全力で走り続けることはそもそもできないのです。

 

へなお
そのように考えると「先延ばし」癖を治すことは脳科学的には不可能であることがおわかりいただけたでしょう。

 

「先延ばし」を克服して改善する方法

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前項では「先延ばし」癖を治すことは脳科学的には不可能であると説明してきました。

 

へなお
しかしそうは言ってもできることならば「先延ばし」は避けたいですしできることならば克服して改善したいですよね。

 

「先延ばし」をとりあえず手っ取り早く改善する方法としては以下のような方法があげられます。

 

ToDoリストを活用する

 

とにかく今すぐできることから手をつける

 

生活習慣を変えてしっかり睡眠をとる

 

どれももっともらしい方法ですが、そうはいっても「先延ばし」癖を治すことはなかなか至難の業でしょう。

 

へなお
そこでここでは脳科学的に「先延ばし」を克服して改善する方法を2つご紹介しましょう。

 

1つは前項でも説明したように時にリラックスしたりリラックスしたり横道にそれたりして脳を休ませてエネルギーを充電する方法です。

 

目標に向かってひたむきに努力し続けることは確かに大切なことですがこれでは途中で息切れしてしまい失敗しがちになってしまいます。

 

“失敗学の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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実際に多くの人は疲れたら無意識的に脳を休めようと横道にそれる術を心得ています。

 

集中して仕事や勉強をしていてつかれたらスマホを手にとってSNSに没頭したり音楽を聴いたりするでしょう。

 

しかしうまく横道にそれないと逆に「先延ばし」癖を悪化させている要因にもなりかねません。

 

へなお
そこで重要になってくるのが「先延ばし」を克服して改善するもう1つの方法です。

 

それはエネルギーを充電するために横道にそれた時に横道にそれたままになるのを防ぐための手をあらかじめ打っておくことです。

 

たとえば注意が逸(そ)れる原因になるものをあらかじめ排除しておくもの一つの方法です。

 

手元にスマホを置いておかないことはかなり効果的です。

 

“集中力の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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しかしなんといってももっとも効果的なのは「期限」を設定することです。

 

アメリカの作家であり心理学および行動経済学者であるダン・アリエリー氏が「期限」の重要性を説いています。

 

「先延ばし」をもっとも効果的に防ぐためには外部から「期限(たとえば教師や税務署が決める課題や書類の提出期限など)」を設定することである。

 

 

外部からでなく自分で「期限」を設定するのであれば行うべきことをいくつかのパートに分けてパートごとに期限を設けておくのがもっとも効果的です。

 

へなお
明確な中間目標もなしに新年の抱負だけを掲(かか)げても失敗に終わるのは目に見えているでしょう。

 

「先延ばし」よ、さようなら

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「先延ばし」することは人生においてとても不毛なことではありますが、一方でとても人間的です。

 

そしてそんな「先延ばし」を防ぐためにはあらかじめ下準備が必要です。

 

たとえば原稿を書かなければいけないような場合には、まず電話もインターネットもない部屋を準備することです。

 

そして書くべき原稿を3つのパートに分けてそれぞれに期限を設定するのです。

 

原稿の話を聞きたがる人には必ず自分が決めた期限について話をして個人的な期限を公的なものに変化させてください。

 

その一方でランチタイムや就寝前にはスマホをいじったり雑誌を眺めたりしてリラックスしてから十分な睡眠をとりましょう。

 

“睡眠の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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そうすることで脳のバッテリーはしっかりと充電されます。

 

このようなスタイルを貫けばあなたも簡単に「先送り」からおさらばできるはずです。

 

へなお
難しく考える前にまずは実行してみてください。

 

 

“先延ばしの脳科学”のまとめ

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「先延ばし」の意味と克服する方法をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 目の前にある重要なのに厄介なことになかなか手をつけられない現象を「先延ばし」と言います。
  • 「先延ばし」をしてしまう脳科学的な原因は「始めてから成果が出るまでに時間がかかるので意識的に回避してしまう」ことにあります。
  • 「先延ばし」を避けるためには目標を達成するまでの強靭な精神力が必要でありそうそう克服できることではありません。
  • しかし「先延ばし」癖を克服するするための方法はちゃんと存在します。
  • 「先延ばし」を克服ためには脳のバッテリーを充電して課題に期限を設定することです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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