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【失敗は成功のもと~失敗学のすすめ】ツァイガルニク効果から完璧主義の短所を脳科学で探る

2020-11-08

失敗学-A1

「失敗は成功のもと」なんて言いますが本当なのでしょうか?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 失敗学と脳科学から見た「失敗は成功のもと」の意味がわかります。

 

失敗は成功のもと~失敗学のすすめ

失敗学-1-min

ツァイガルニク効果から失敗学を脳科学で探る

  • 失敗学と脳科学からみて「失敗は成功のもと」はある意味正しい言葉です。
  • 完璧主義を求めないツァイガルニク効果によって脳は失敗することで成長していきます。
  • 失敗から成功を勝ち取れるかはあなたの脳にかかっていると言えます。
  • 失敗学と脳科学の知恵を振り絞りあなたも失敗を積み重ね成功を勝ち取りましょう。

失敗学

失敗のマイナス面ばかりに目を向けるのではなく失敗をプラスに転化する考え方と方法を探るのが『失敗学』です。

 

人は誰でも失敗します。

 

そんな失敗から学ぼうとするのが『失敗学』です。

 

脳は成功体験よりも失敗体験から多くのことを学習します。

 

失敗を通じて得られた体感や実感が人を進歩させます。

 

失敗を分析し新しい知識を生み出すことで新しい技術が生まれ社会が豊かになります。

 

人はなにか新しいことをしようとするとたいていの場合は失敗します。

 

「千3つ」という言葉があるようにうまくいくのは1000回のうちたかだか3回くらいです。

 

へなこさん
えええ…そんなに失敗するの?

 

へなお

ですから失敗したことをいちいち悔やんでいても前には進めません。

失敗して当たり前なのです。

 

しかし失敗にも「許される失敗」「許されない失敗」があります。

 

許される失敗とはプラスに転化できる未来につながる失敗です。

 

一方で許されない失敗とは何度も同じ失敗を繰り返しそこから何も生み出されない失敗です。

 

へなお
ですから無条件に失敗を許容しているわけではありません。

 

通常失敗の原因は1つではありません。

 

未知、無知、不注意、手順の不順守、調査不足、周囲の環境などさまざまな要因が何層にも重なって発生します。

 

ですからその1つ1つをしっかり分析し解決していかないと成功にはつながりません。

 

そのために大切なことの1つは「成功までの道筋をしっかり見据えること」です。

 

ゴールまでのルートが見えていないとなかなか成功にはたどり着きません。

 

最初は知識も技術も未熟であるので失敗して当然です。

 

しかし失敗を積み重ね知識や技術が身についた状態になってくると無駄がそぎ落とされ洗練された状態になるのでそこでの失敗は大事故につながる可能性もありより慎重さが求められるようになります。

 

成功に近づけば近づくほど失敗の重みが徐々に変わってくることを理解していないといけません。

 

もう1つは「失敗から学んだ情報の知識化」です。

 

失敗するとその時は失敗した事象や原因などの情報を認識しています。

 

しかししっかりと知識化してとどめておかないとまた同じ過ちを繰り返すことになります。

 

新たな知識を積み重ねることによって成功への道が開かれるのです。

 

「失敗は成功のもと」

 

これはある意味正しいですがある意味では間違えています。

 

失敗を積み重ねそれを認め理解し成功につなげていくことは大切です。

 

ですから失敗は決して無駄ではありません。

 

しかしいつでも失敗が成功につながるとは限りません。

 

失敗の脳科学-その1

自分が失敗したことを認め他人が失敗したことを受け入れて次は失敗しないようにと務めて行動してこそはじめて成功への道が開かれるのです。

 

失敗を恐れ隠すことはひずみやゆがみを生じ次の失敗の元となり失敗の連鎖が発生します。

 

失敗学をしっかり理解しそれを実践してはじめて「失敗は成功のもと」となり得るのです。

 

ここまでは『失敗学』について一般的な知識を考えてきました。

 

次は視点を変えて『失敗学』を脳科学的に考えていきましょう。

 

ツァイガルニク効果を脳科学で説く

失敗学-2-min

人は誰でもはじめから失敗を望んではいません。

 

しかしいくらがんばって考えて行動してもどうしても失敗してしまいうまくいかないことはたくさんあります。

 

ですから『失敗学』なる学問が誕生し“失敗から学び成功への道しるべ”を示してくれているのです。

 

しかしこれはあくまでも失敗に対する一般論で建前的な考えです。

 

へなお
では実際に脳は失敗をどのように考えているのでしょう?

 

皆さんは『ツァイガルニク効果』と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?[/st-kaiwa1]

 

へなこさん
そんな難しい言葉聞いたことない…

 

しかし私たちの日常生活はツァイガルニク効果による現象にあふれかえっています。

 

テレビを見ていて

 

「この続きはCMの後で…」

 

「60秒後必見!秘密を大公開…」

 

なんてセリフで見どころを先延ばしにすることはよくありますよね。

 

これがツァイガルニク効果です。

 

失敗の脳科学-その2

『ツァイガルニク効果』とは達成できたことよりも達成できなかったことや中断したことの方をよく覚えているという現象です。

 

先ほどのテレビのセリフは知りたい内容や興味の対象をいったん中断することでより一層強く気になってしまうツァイガルニク効果を利用した策略です。

 

ネットの情報でも宣伝を長々と記していよいよ核心にせまる内容になるところで会員登録が必要になり有料になるというのもツァイガルニク効果をうまく利用した戦略です。

 

最初から有料にしておくよりも無料の記事を読み進めて途中で有料に切り替わることでついつい記事の続きが気になってお金を払ってしまうのです。

 

“金銭感覚の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。

 

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ツァイガルニク効果は脳科学でもちゃんと証明されている現象です。

 

ここでツァイガルニク効果についての研究をご紹介しましょう。

 

パズルを解く、粘土細工をする、計算をする…など簡単にできるさまざまな課題を1時間の間に20種類行います。

このうち無作為に選んだ10種類の課題については最後までやり遂げてもらいます。

残りの10個の課題は未完成のまま途中で中断してもらいます。

1時間の作業が終了した後にどのような課題を行ったのかを説明してもらいます。

この時完結した10個の課題と未完成の10個の課題ではどちらの課題の方をより詳しく思い出せるのでしょうか?

Zeigarnik BV, A Source Book of Gestalt Psychology. Humanities Press, 1967

 

へなお
答えはもうお分かりですよね。

 

未完成の10個の課題の方が詳しく思い出せるのです。

 

短時間で20種類もの課題を一気にこなすと内容を詳しく思い出すのことは難しいものです。

 

しかし中断して中途半端で終わってしまった課題の内容は完結した課題の内容よりも2倍も思い出しやすいのです。

 

へなお
この研究を行ったツァイガルニクは自分の名前をとって『ツァイガルニク効果』と名付けました。

 

目標に向かって課題をこないしている最中は脳は緊張状態であるため心のどこかで課題を気にかけています。

 

しかし目標が達成されてしまうと緊張感から解放されて記憶が薄らいでしまうのです。

 

“記憶の上塗りの脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。

 

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キリの良いところで仕事を切り上げるよりも次の仕事に手を付けてから帰る方が翌朝に仕事をスムーズに始められる。

 

締め切りが先だからと書類を放置するよりもいったん書類に目を通してから放置する方が締め切り直前に効率よく仕事が片付けられる。

 

新しい仕事の手順を人に説明する時は事前に多くを説明するよりも仕事を多少こなした後で説明した方が相手に伝わりやすく記憶に残りやすい。

 

気になる異性には自分の情報はあえて小出しにして相手に中途半端な情報のみを与える方が「もっと知りたい」という感情を生みやすくなり気にしてもらいやすくなる。

 

へなお
仕事や恋愛でもツァイガルニク効果はとても効果的です。

 

中途半端な状態で放置することはなんか気持ち的には落ち着きませんが実際には無意識の脳回路が代償して働き続けより意識を強くするのです。

 

失敗することに関してもツァイガルニク効果は効果的に働きます。

 

脳はいつでも快感を求めています。

 

“快感の脳科学” についてはこちらの記事をご参照ください。

 

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成功して物事が完結すると脳は快楽を感じます。

 

しかし記憶としては成功した途端に薄らいでいってしまいます。

 

場合によっては成功した物事の知識までも薄らいでいってしまいます。

 

一方で失敗から快感は得られないので成功して快感を得るまでは脳は必死に働き続けます。

 

失敗はとても中途半端な状態ですから失敗したことから得られる知識はなかなか忘れないのです。

 

脳は失敗する方が学ぶことが多いのです。

 

脳は完璧主義を求めず失敗を求めている

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へなお
それでは最後にもう少し失敗から学ぶ脳科学を掘り下げてみましょう。

 

何でも吸収してすぐに学習できることは優れた頭脳の典型に思えますよね。

 

失敗の脳科学-その3

しかし実は脳にとって「学習が速くて記憶が正確」なことは必ずしも好都合ではありません。

完璧主義を脳は望んではいないのです。

 

へなお
たとえば初めて出会った人のことをどのくらい覚えているかを考えてみましょう。

 

相手の顔や髪形や衣装の細部を写真のように素早く完璧に覚えてたとしましょう。

 

しかし別の日に再会した時に同じ髪形や服装をしているとは限りません。

 

この場合前回会った時の記憶と照合しても合致しないので脳は「別人」と判定してしてしまいます。

 

つまり目で見えている情報をあたかも写真のように厳密に記憶することは日常的な記憶としては無意味なのです。

 

記憶は正確であっても高速であっても不都合です。

 

へなお
ゆっくり曖昧(あいまい)な記憶ほど役にたつのです。

 

学習も同じです。

 

学習が速すぎると表面的な情報に流されてしまいその裏に潜んでいる本質的な情報を見過ごしてしまいます。

 

コンピューターのような完璧な能力は人にとっては不要なのです。

 

へなお
よく大人になると「記憶力が落ちて脳が退化した」と嘆く人がいます。

 

しかしこれは間違えています。

 

確かに歳をとると正確に記憶し情報を脳に刻み込む能力は低下します。

 

曖昧な記憶がどんどん増えてきます。

 

しかし脳は年齢を重ねるとファジーな記憶を好むように仕組まれているのです。

 

正確に情報を記憶しておくことよりも曖昧な記憶として情報を脳に残しておきこれによって融通を効かせたり応用させてその場をうまく取りつくろったりすることの方がより難しい作業です。

 

このような作業はコンピューターにはまねできません。

 

失敗の脳科学-その4

何度も失敗してそこから得られた情報をゆっくりと曖昧に習得してこそ脳は深く記憶として刻み込みます。

ですから脳は失敗経験を通じてこそ上手に学習するのです。

 

さまざまな分野にはそれぞれその道を極めたプロフェッショナルが存在します。

 

そのような人たちはあらゆる失敗を知っているからこそ”その道”を極めることができたのでしょう。

 

ですから完璧主義である必要はないのです。

 

失敗から学ぶことを脳は求めているのです。

 

『失敗は成功のもと』

 

へなお
失敗学と脳科学の知恵を振り絞りあなたも失敗を積み重ね成功を勝ち取ってください。

 

『失敗学』といえば畑村洋太郎先生です。

 

畑中先生の本で『失敗学』を学び成功を勝ち取りましょう。

 

 

“ツァイガルニク効果から失敗学を脳科学で探る“のまとめ

まとめ-conclusion1-N1

ツァイガルニク効果から失敗学を学び完璧主義の短所を脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 失敗学と脳科学からみて「失敗は成功のもと」はある意味正しい言葉です。
  • 完璧主義を求めないツァイガルニク効果によって脳は失敗することで成長していきます。
  • 失敗から成功を勝ち取れるかはあなたの脳にかかっていると言えます。
  • 失敗学と脳科学の知恵を振り絞りあなたも失敗を積み重ね成功を勝ち取りましょう。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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