- 最近のサウナはサウナストーンに水をかける「ロウリュ」ばかりですが、ガス管が剥き出しのあの「遠赤外線ストーブ」の魅力って何なのでしょうか?
- 日本中の銭湯で見かけるあのストーブ、一体どこのメーカーが作っていて、お値段はいくらくらいするのか気になったことはありませんか?
- 遠赤ストーブの前に座ると、室温はそれほど高くなくても体の芯からジリジリと温まり、強烈にととのうのには、明確な医学的・脳科学的理由があるってご存知ですか?
そんなモヤッとした疑問や日常の謎を、サウナ好きの脳神経外科医が脳科学の視点からやさしくひもといていきます。
ロウリュなどの蒸気(対流熱)とは一線を画す「遠赤外線ストーブ」の緻密な熱力学と、皮膚の水分を直接振動させる圧倒的な輻射熱(ふくしゃねつ)。
そのヒリヒリとする力強い熱刺激が、私たちの自律神経を極限までブーストさせ、脳内ホルモン(β-エンドルフィンやアドレナリン)にどのような「極上のスパーク(ととのい)」をもたらすのか。
カラカラの空気なのに体の奥深くから温まる熱の正体を、脳科学と医学のメスで徹底的に説き明かします。
へなお先生ちなみに、ブログ内の画像は実在の遠赤外線ストーブのサウナの施設を描いたものです。
どこの施設のサウナ室かわかりますか?
答えはブログの最後を見てくださいね!
アウフグース全盛期に燦然と輝く「赤いガス管」の美学


私は日々、脳神経外科医として、無影灯の下でミリ単位の神経や血管と格闘しています。
過酷な手術が終わると、極度の緊張から脳を解放するために、近所のサウナへと吸い込まれるように足を運びます。
昨今のサウナブームにより、施設はどこもかしこも「ロウリュ(サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる)」や「アウフグース(熱波師がタオルで風を送る)」、「ブロワー(送風機)による爆風熱波」のエンターテインメントで溢れかえっています。
確かに、あの強烈な熱波を浴びて一気に汗をかくのは素晴らしい快感です。
しかし、私のサウナ遍歴を振り返ると、最も深く脳がリセットされ、最も激しい「ととのい」を迎えたのは、決まって「昔ながらの遠赤外線ストーブ」が鎮座する、渋い銭湯や老舗カプセルホテルのサウナ室でした。
ジュワ〜という蒸気の音も、熱波師の掛け声もありません。
ただ静かに、「ボッ…ボォォォ…」という低い燃焼音を響かせながら、赤いガス管が剥き出しでこちらを睨んでいる。
湿度は低くカラカラ。



これぞまさに、日本のサウナ文化を牽引してきた「昭和ストロングスタイル」の主役です。
エンタメ性ではロウリュに劣るかもしれません。
しかし、遠赤外線ストーブには、細胞を内側から震わせ、脳を静寂のどん底へと突き落とす圧倒的なポテンシャルが秘められています。
今回は、脳外科医のメスを使い、この「遠赤ストーブ」の代表的なメーカーや価格といったハード面から、なぜ私たちがこのジリジリとした熱に抗えないのかという医学的・脳科学的なメカニズムまで、徹底的に解剖していきましょう。
昭和のサウナを支配した大発明!遠赤ストーブの歴史と普及


今でこそサウナストーンに水をかけるフィンランド式の「対流式サウナ」が増えましたが、日本の温浴施設の圧倒的多数は、長らく「遠赤外線ストーブ」を採用してきました。



この歴史の背景には、高度経済成長期の日本ならではのドラマがあります。


1964年の東京オリンピックと「サウナの夜明け」
日本にサウナが本格的に紹介されたのは、1964年の東京オリンピックがきっかけと言われています。
選手村に持ち込まれたフィンランド式サウナが話題となり、国内でも健康法として注目を集め始めました。
しかし、本場フィンランドの「薪を燃やして石を温める」というスタイルは、煙突の設置や薪の管理など、日本の銭湯やビルの中のテナント施設に導入するにはハードルが高すぎました。
「オリンピア工業」の大革命
そこで立ち上がったのが、日本の熱機器メーカーです。
彼らは、日本の都市ガスやプロパンガスを利用して、効率よく、かつ安全にサウナ室を温める画期的なストーブを開発しました。



それが「ガス遠赤外線サウナヒーター」です。
これは日本のサウナ史における産業革命でした。
何が凄かったかというと、「空気を温めるのではなく、直接人体を温める」という遠赤外線の特性を利用したことです。
これにより、サウナ室全体の空気を無理に超高温にしなくても、お客さんをしっかり発汗させることができるようになりました。
日本中に爆発的に普及した「3つの理由」
1970年代以降、日本の銭湯やカプセルホテルで遠赤ストーブが爆発的に普及したのには、施設側にとっての明確なメリットがありました。
- 圧倒的なランニングコストの安さ: 電気や薪に比べて、都市ガスを使う遠赤ストーブは燃料費が驚くほど安く済みました。
- メンテナンスの容易さ: サウナストーンのように石が割れて交換する手間もなく、スイッチ一つで点火し、安定した熱を長時間供給し続けるタフさを持ち合わせていました。
- 乾燥を好む衛生観念: 当時の日本は「湿気が多い=カビが生えやすい・不衛生」という感覚が強く、カラッと乾燥した100度超えの「昭和ストロングスタイル」のサウナ室が、清潔で男らしいと支持されました。



こうして、赤いガス管が光る遠赤ストーブは、日本の高度経済成長を支えた企業戦士たちの汗と疲れを吸収し続ける、不動の玉座に就いたのです。
シェアNo.1はどこ?遠赤ストーブの種類・代表メーカー・驚愕の価格設定


サウナ室に入ってストーブの形を見れば、それがどのような熱を出しているのかが一目でわかります。
遠赤ストーブには大きく分けて「ガス式」と「電気式」の2種類が存在し、それぞれに日本のサウナを支える代表的な企業が存在します。



サウナーなら絶対に知っておきたい「ストーブのハード面」に迫りましょう。
ガス遠赤外線ヒーター(絶対的シェアNo.1:オリンピア工業)



銭湯や老舗サウナで最もよく見かける、あの縦に並んだ「赤い管」が燃えているストーブです。
このジャンルにおいて、日本国内で圧倒的、いや「ほぼ独占状態」と言っても過言ではないのが『オリンピア工業株式会社』です。
ストーブの下部に輝く「OLYMPIA」というロゴのエンブレム。
サウナーであれば、一度はあのロゴに向かって手を合わせたことがあるはずです。
- 特徴: バーナーで都市ガスやLPガスを燃やし、特殊な金属の管(放射管)を800度近くまで赤熱させます。この管の表面には遠赤外線を効率よく放射する特殊なコーティングが施されており、強烈な遠赤外線をサウナ室の客席に向けてビームのように放ちます。「ボッ、ボォォォ…」という低い燃焼音が特徴です。
- 価格帯: 施設の広さ(出力kcal/h)によりますが、業務用ヒーターの本体価格のみでおおよそ80万円〜250万円以上。これに大掛かりなガスの配管工事や、一酸化炭素中毒を防ぐための厳重な排気ダクト工事が加わるため、初期投資は数百万単位になります。しかし、ガスは電気に比べてランニングコスト(毎月の燃料費)が安いため、長期的に見ると施設側にとって非常にコスパが良い、まさに「働くプロのストーブ」なのです。
電気式遠赤外線ヒーター(メトスなど)
ガスの配管が引けないテナントビルや、比較的コンパクトなサウナ室、あるいは家庭用サウナで導入されることが多いタイプです。
サウナ・温浴設備の総合トップメーカーである『METOS(メトス)』などが有名です。
- 特徴: 電気を使ってセラミックなどの発熱体を温め、そこから遠赤外線を放射します。ガス式ほどの視覚的な迫力(真っ赤に燃える管)や重低音はありませんが、音が静かで温度管理がしやすく、大掛かりな排気設備が不要で安全性が高いのが最大のメリットです。
- 価格帯: 業務用でおおよそ50万円〜150万円程度。ガス式と比べて導入のハードルは低めですが、昨今の電気代高騰により、ランニングコストは施設を悩ませる種となっています。
遠赤ストーブ2大巨頭の比較表
| 比較項目 | ガス遠赤外線ヒーター | 電気式遠赤外線ヒーター |
| 代表的メーカー | オリンピア工業など | メトス(METOS)など |
| 日本の普及率 | 圧倒的No.1(銭湯・カプセル等) | 小型施設・ビル内テナントに多い |
| 本体価格の目安 | 約80万〜250万円以上 | 約50万〜150万円程度 |
| ランニングコスト | 比較的安い(ガス代) | 高め(電気代高騰の影響大) |
| 設置工事ハードル | 高い(ガス配管・排気ダクト必須) | 比較的低い(電気配線のみ) |
| サウナー的魅力 | 「ボォォ」という燃焼音と赤い管の迫力 | 静音性が高く、マイルドで安定した熱 |
魔法の熱伝導!遠赤外線が「芯から温まる」物理学的メカニズム





「遠赤外線は体の芯から温まる」とよく言われますが、これは単なるキャッチコピーではありません。
物理学と熱力学に基づいた、非常に明確な仕組みが存在します。
「対流熱」と「輻射熱」の決定的な違い
サウナストーンを使うヒーターや、家庭のエアコンは主に「対流熱(たいりゅうねつ)」を利用しています。
空気を温め、その熱い空気が肌に触れることで体を温める仕組みです。
一方、遠赤ストーブが主役とするのは「輻射熱(ふくしゃねつ:放射熱とも言います)」です。
冬場、外の空気は冷たくても、太陽の光を浴びるとポカポカと温かく感じるのと同じ原理です。


なぜ芯から温まるのか?「共鳴吸収」のメカニズム



遠赤外線とは、光(電磁波)の一種です。
この電磁波は、空気の層をスルーして一直線に飛んでいき、人体に直接ぶつかります。
人間の体の約60%は「水分」でできています。
遠赤外線の波長(特に育成光線と呼ばれる帯域)は、人間の体内の水分子を揺らす(振動させる)のに最も適した波長を持っています。
遠赤外線が体に当たると、体内の水分子やタンパク質がその電磁波のエネルギーを吸収し、激しく振動し始めます。
これを物理学で「共鳴吸収(きょうめいきゅうしゅう)」と呼びます。
水分子がブルブルと激しく震えることで、分子同士が摩擦を起こし、そこから熱(摩擦熱)が発生します。
つまり、外の空気が熱いから体が温まるのではなく、「自分自身の体の内側の細胞(水分)が震えて、自ら熱を発している」のです。



電子レンジで食べ物が内側から温まるのと同じような原理ですね。



ただし、脳外科医として正確を期すならば、遠赤外線が直接届くのは皮膚の表面からわずか数ミリ(約0.2mm)の深さまでです。
そこで摩擦によって発生した熱が、毛細血管の血液に伝わり、それが全身を巡ることで結果的に「体の芯から温まる」という現象が起きているのです。
ここが違う!遠赤ストーブの圧倒的な魅力(長所)と短所





最近流行りのサウナストーン式(対流式)ヒーターと比較して、遠赤ストーブにはどのような魅力と弱点があるのでしょうか。
遠赤ストーブの圧倒的な長所(メリット)
- 速攻発汗!温まるスピードが異常に早い:空気を温めるステップをすっ飛ばして、直接人間の細胞を震わせて熱を発生させるため、「サウナ室に入ってから汗が噴き出すまでのスピード」が尋常ではありません。時間がないビジネスマンがサクッと汗をかきたい時、遠赤ストーブは最強のタイパ(タイムパフォーマンス)を発揮します。
- 息苦しさが少ない(呼吸が楽):空気を無理に超高温にしなくても体が温まるため、サウナストーン式に比べて室内の温度設定をやや低め(80度〜90度台)に保つことも可能です。そのため、「顔が熱すぎて鼻呼吸すると痛い」「息苦しくて長く入っていられない」という現象が起きにくく、快適に過ごせます。
- ストーブ前の「特等席(アリーナ)」が存在する:遠赤外線は「光」と同じで直進する性質があるため、ストーブの真正面に座ると、強烈な遠赤外線ビームを全身でダイレクトに浴びることができます。この「ジリジリと焼かれるような特等席」を確保するのも、遠赤サウナの大きな楽しみの一つです。
遠赤ストーブの宿命的な短所(デメリット)
- 絶対にロウリュ(水かけ)ができない!:これが最大のデメリットであり、近年ロウリュサウナに押されている最大の理由です。遠赤ストーブの高温のガス管やセラミックに水をかけると、金属が急激に収縮して破損したり、ガスバーナーの火が消えて一酸化炭素中毒などの大事故に繋がります。絶対に水をかけてはいけません。そのため、アウフグースなどのイベントは開催不可能です。
- 湿度が低く、乾燥しやすい(昭和ストロングの弊害):ロウリュで蒸気を足せないため、サウナ室は湿度が10%台の「カラカラ状態」になりがちです。肌のバリア機能が弱い人や、喉が弱い人にとっては、長時間入るとヒリヒリとした乾燥ダメージを受けることがあります。最近の施設では、遠赤ストーブの前に水風呂のお湯を張った洗面器を置いたり、壁に水を撒いたり(ウォーリュ)、あるいはストーブの上に特製の水受け皿を設置したりして、独自に湿度を保つ工夫をしている素晴らしい銭湯も増えています!



ちなみに横浜市金沢区の亀遊舘では遠赤ストーブの脇の壁にアロマの水蒸気が噴出するシステムがあるので、湿度は常に20%近くに保たれています!
医学的アプローチ:遠赤がもたらす「深部体温のイノベーション」





ここからは、現役の脳神経外科医としての視点から、遠赤ストーブが私たちの体に引き起こす「医学的なイノベーション」について深くメスを入れてみましょう。
「頭寒足熱」の黄金バランスを実現しやすい
サウナストーンに水をかけて発生した蒸気(ロウリュ)は、非常に軽いため、一気に天井付近へと駆け上がります。
そのため、ロウリュサウナでは「頭や顔ばかりが猛烈に熱く、足元は意外と冷たい」という状態に陥りがちです。
これは、医学的に自律神経を安定させる「頭寒足熱(頭を涼しく、足を温かく)」の真逆を行ってしまいます。


一方、遠赤ストーブは「輻射熱」で光のように直進するため、ストーブの前に座れば、足先やスネのあたりにも直接熱のビームを届けることができます。



大切な脳(頭部)を無駄に高温ストレスに晒すことなく、効率よく全身の血液を温めることができる、極めて理にかなった入浴法なのです。
毛細血管の大拡張と「ヒートショックプロテイン(HSP)」の大量産生
「魔法の熱伝導!遠赤外線が「芯から温まる」物理学的メカニズム」の章で解説した通り、遠赤外線によって皮膚のすぐ下の水分が振動して熱を持ちます。
この熱が毛細血管内の血液に伝わり、温められた血液が心臓のポンプによって全身を巡ります。
血液の温度が上がる(深部体温が上がる)と、血管の内壁から一酸化窒素(NO)という物質が分泌され、全身の毛細血管がグワッと拡張します。
これにより、筋肉に溜まった疲労物質(乳酸)や発痛物質(ブラジキニン)が猛スピードで回収され、肩こりや腰痛が劇的に改善します。
さらに、細胞に直接熱というストレスがかかることで、傷ついた細胞を修復する魔法のタンパク質「ヒートショックプロテイン(HSP:熱ショックタンパク質)」が体内で大量に産生されます。
遠赤ストーブの「細胞を直接震わせる熱」は、ただ表面を炙るだけの熱よりも、このHSPの産生スイッチを強力に押し、免疫力の向上や究極のアンチエイジング効果をもたらすのです。
心理学的考察:エンタメ化を拒む「孤独と静寂」のマインドフルネス





心理学の視点から見ると、遠赤ストーブを好むサウナーたちの心理には、非常に深い「内観(自分の内面と向き合うこと)」の欲求が隠されています。
アウフグースの「動」と遠赤ストーブの「静」
ロウリュやアウフグースは、素晴らしいエンターテインメントです。


熱波師の華麗なタオルさばき、アロマの良い香り、手拍子や歓声。これは心理学的には「外部の刺激に意識を向ける(外向的)」行為であり、一種のフェスやイベントに参加するような「動」の快感です。
一方、遠赤ストーブのサウナ室には、テレビの音(あるいは無音)と、ガス管が「ボッ…」と燃える微かな音しかありません。
派手なイベントがないからこそ、意識は自然と「自分の内側」へと向かいます。
「今日の体調はどうかな」「足先からジリジリ温まってきたな」「心臓の鼓動が早くなってきたな」というように、自分自身の体の微細な変化に集中するしかなくなるのです。
「マインドフルネス瞑想」の究極の装置
これこそが、心理学や瞑想の世界で言われる「マインドフルネス(今、ここにある自分自身の感覚にだけ100%集中する状態)」です。


遠赤ストーブの真っ赤な管をぼんやりと見つめながら、肌を刺すジリジリとした熱に耐える。
この「孤独と静寂」の時間こそが、仕事のプレッシャーや人間関係のモヤモヤといった、脳のワーキングメモリを占拠している雑念を完全に強制シャットダウンしてくれるのです。
遠赤ストーブを愛する人々は、決してマゾヒストのように熱さだけを求めているのではありません。
派手な演出の無い、己と向き合うための「座禅の場」を求めているのです。
脳科学が暴く遠赤の魔法:ジリジリ熱が生む「エンドルフィン」の暴走





いよいよ、脳神経外科医としてのハイライトです。
なぜ私たちは、遠赤ストーブの「ジリジリとした熱」にあれほどの快感を覚え、強烈にととのうのでしょうか?
その秘密は、脳内ホルモンの「スパーク(爆発)」にあります。
TRPチャネル(温度センサー)のダイレクト・ハック
人間の皮膚には、温度を感じるための「TRP(トリップ)チャネル」というセンサーが無数に存在しています。
中でも「TRPV1」というセンサーは、43度以上の強い熱や、唐辛子のカプサイシンなどに反応して「熱い!痛い!」という信号を脳に送ります。


ロウリュサウナのような「湿度の高いフワッとした熱」は、全身を柔らかく包み込みます。
しかし、遠赤ストーブの輻射熱は、光線のように飛んできて皮膚に直接ぶつかり、細胞の水分を振動させます。
この「肌を直接焼かれるようなジリジリ、チリチリとした鋭い熱刺激」は、皮膚のTRPV1センサーを強烈に、かつ局所的に叩き起こします。
「天然のモルヒネ」β-エンドルフィンの分泌
この「ジリジリとした熱い(痛い)刺激」が脊髄を通って脳の視床下部に届くと、脳は「やばい!強いダメージを受けている!」とパニックになり、交感神経をフルスロットルで稼働させます。
そして、その熱の「痛み」を麻痺させるために、脳内麻薬である「β-エンドルフィン」を大急ぎでドバドバと分泌し始めます。



β-エンドルフィンは、医療用モルヒネの数倍の鎮痛作用と、強烈な快感(多幸感)をもたらす物質です。
遠赤ストーブの前に座って、肌がジリジリと焼かれるのを感じながら「あぁ…たまらない…」と恍惚の表情を浮かべている時、あなたの脳内はこの天然の麻薬物質で満たされています。
この強烈な刺激があるからこそ、その後の水風呂と外気浴に出た時の「落差(振り子の揺り戻し)」がとてつもなく大きくなり、ディープなサウナトランス(ととのい)へと突き落とされるのです。
発汗の「視覚的フィードバック」とドーパミン



もう一つの脳科学的な魅力が「汗」です。


湿度の高いロウリュサウナでは、空気中の蒸気が肌について結露するため、自分がかいた汗なのか、ただの蒸気(水滴)なのかが分かりにくいという欠点があります。
しかし、湿度の低いカラカラの遠赤サウナでは、肌に浮かび上がる水滴は間違いなく「自分自身の体内から絞り出した純度100%の汗」です。
毛穴からジワッ…と丸い汗の玉が吹き出し、それがツーッと腕や脚を伝い落ちていく。
この明確な「視覚的・体性感覚的なフィードバック」は、脳の報酬系を刺激し、「よし、今日もこれだけ老廃物を出し切ったぞ!」という強烈な達成感(ドーパミンの分泌)を生み出します。



遠赤ストーブは、皮膚のセンサーをハックしてエンドルフィンを引き出し、視覚情報でドーパミンを分泌させる、極めて優秀な「脳内スパーク製造機」なのです。
まとめ:赤いガス管は今日も無言で現代人の脳を焼く





見えない光が体を芯から焦がす『昭和ストロング』の魔法!…いかがでしたでしょうか。
ロウリュやアウフグースという華やかなエンターテインメントの陰で、日本のサウナ文化を長年支え続けてきた「遠赤外線ストーブ」。
その正体は、オリンピア工業をはじめとする日本のものづくり企業の叡智の結晶であり、物理学の「共鳴吸収」を応用して細胞の奥底から熱を生み出し、心理学的な「マインドフルネス」の場を提供し、そして脳科学的に「エンドルフィンとドーパミン」を意図的に暴走させる、とてつもないスペックを秘めた魔法の赤い管でした。
もちろん、良い香りとともに熱波を浴びるロウリュサウナも最高です。
しかし、もしあなたが仕事や人間関係で脳がパンクしそうになった時、誰の声も聞かず、ただ静かに自分自身の細胞と対話したくなった時は、渋い銭湯の暖簾をくぐり、遠赤ストーブの鎮座するサウナ室の扉を開けてみてください。
「ボッ…ボォォォ…」という低い燃焼音とともに、赤いガス管があなたを優しく、そして力強く迎えてくれるはずです。
ジリジリと肌を刺すその熱が、あなたの疲れた脳のノイズを完全に焼き尽くしてくれることを、脳外科医の私が保証します。
- シェアと価格: 日本の銭湯サウナの絶対的シェアNo.1は「オリンピア工業」のガス式。本体価格は80万〜250万円以上と高額だが、ガス代が安くコスパに優れる。
- 温まるメカニズム: 空気を温めるのではなく、「輻射熱(遠赤外線)」が体内の水分子に直接当たって振動(共鳴吸収)し、摩擦熱を発生させるため芯から温まる。
- 遠赤の長所: 温まるスピードが異常に早く、空気が熱くなりすぎないため息苦しさが少ない。「頭寒足熱」の黄金バランスを作りやすい。
- 遠赤の短所: 水をかけると故障や一酸化炭素中毒の危険があるため、ロウリュやアウフグースは絶対に不可能。湿度が低く乾燥しやすい。
- 心理学的な魅力: エンタメ性がなく静寂に包まれているため、自分の内面や体の変化に意識を向ける「究極のマインドフルネス瞑想」の場となる。
- 脳科学的バグの正体: 皮膚の温度センサーを直接刺激する「ジリジリとした熱」が、脳に緊急事態を知らせ、強力な鎮痛・快感ホルモンである「β-エンドルフィン」を大量分泌させる。
さて、ここまで読んでいただいたあなた。
今夜のサウナは、華やかなロウリュの風を浴びますか?
それとも、遠赤ストーブの前の特等席で、ジリジリと脳内麻薬を分泌させに行きますか?
サウナストーブの「ハード面」を知ることは、サウナライフの豊かさに直結します。
ぜひ、あなたのお気に入りの「赤い管」を見つけてみてくださいね!



ブログ内の画像のロッキーサウナの施設の答えです。
いくつわかりました?
- 表紙:亀遊舘の男湯(神奈川県横浜市)
- 昭和のサウナを支配した大発明!遠赤ストーブの歴史と普及:サウナ東京(東京都港区)
- 山脈の如くそびえ立つ石。ロッキーサウナの歴史と開発秘話:ファンタジーサウナ&スパおふろの国(神奈川県横浜市)
- シェアNo.1はどこ?遠赤ストーブの種類・代表メーカー・驚愕の価格設定:反町浴場(神奈川県横浜市)
- 魔法の熱伝導!遠赤外線が「芯から温まる」物理学的メカニズム:おふろの王様 大井町店(東京都品川区)
- ここが違う!遠赤ストーブの圧倒的な魅力(長所)と短所:白水湯(東京都台東区)
- 医学的アプローチ:遠赤がもたらす「深部体温のイノベーション」:新生湯(東京都品川区)
- 心理学的考察:エンタメ化を拒む「孤独と静寂」のマインドフルネス:ユーランド鶴見(神奈川県横浜市)
- 脳科学が暴く遠赤の魔法:ジリジリ熱が生む「エンドルフィン」の暴走:ひだまりの泉萩の湯(東京都台東区)
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。



「こんな日常のモヤモヤやサウナの疑問、脳科学で解明して!」というリクエストもお待ちしています。



















