「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という人がいますがこれは本当なのでしょうか?
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想を生み出す心理的、脳科学的な要因はどこにあるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
サウナと妊娠の関係を脳科学で説き明かします。
サウナと妊娠
サウナと妊娠の関係の脳科学
- サウナに入りすぎると、精子の数が減ったり、機能が落ちたりして、男性側の要因として妊娠しにくくなる可能性があります。
- サウナが直接的に卵子の機能を著しく低下させるという証拠はありません。
- しかし、女性が長時間高温のサウナに入ると、排卵や着床に影響し、妊娠しづらい状態になる可能性があります。
- 「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想は、妊活特有の心理的要因が複雑に絡み合って生じます。
- サウナと妊娠に関するリスク情報は、脳に対して実際以上に強く意識されやすくなっています。
- 実際にはサウナの妊娠への影響は、一時的かつ可逆的であり、妊娠率への直接的な影響は明確ではありませんが、正確な知識を身につけてサ活を行いましょう。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
しかしサウナ室はきわめて高温多湿であり、ある意味とても異常で過酷な環境です。
脳はサウナトランスによって快感を得ますが、一方で体の生殖機能に悪影響を及ぼすことが心配されます。
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という声をたまに耳にします。
「サウナの高温多湿によって精子や卵子がダメージを受けるのではないか?」
このように心配される方も決して少なくないはずです。
では、「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という意見は医学的に真なのでしょうか?
それとも偽なのでしょうか?
また、「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想を生み出す心理的、脳科学的な要因はどこにあるのでしょうか?

サウナと性欲の関係
妊娠に性欲は必要な要素です。
とはいえ、現代医療においては人工授精が可能となっていますので、必ずしも性欲は妊娠の絶対条件ではなくなってきています。
しかし、男性にとっては人工授精においても精子採取のためには性欲は必要です。
では、サウナでととのった後、性欲は強くなるのでしょうか?
それとも弱くなるのでしょうか?
日本で有名な人間の三大欲求は、食欲、性欲、睡眠欲です。
サウナ後は食欲と睡眠欲は高まることが知られています。
”サウナと食欲の関係の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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では、サウナと性欲の関係はどうなのでしょうか?
サウナでととのう状態は脳科学的には性欲が満たされた状態に近いため、サウナ後は性欲が減退する人が多いと言えます。
しかし、サウナでととのう状態は脳にとって予想外の行動であり、脳がバグってより至高の快楽を求めて性欲が高まる人もいます。
”サウナと性欲の関係の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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結論としては、性欲は脳科学のみでは説明しきれない禁断の領域であり、自分自身でサウナと性欲の関係を体感してみるしかないのが実情かもしれません。
サウナと精子の関係
それでは、「サウナと妊娠」について探っていきましょう。

結論から言えば、サウナに入りすぎると、精子の数が減ったり、機能が落ちたりして妊娠しにくくなる可能性があると言われています。
精子は約35℃の低めの温度で最もよく作られますが、サウナは80~100℃と高温です。
このため、サウナに長時間、そして頻繁に入ると、精巣の温度が上がり、精子の数や運動性(泳ぐ力)が一時的に減少します。
たとえば、週2回、1回15分のサウナを3か月続けた場合、精子の数や濃度、運動性が50%以上低下したという研究結果があります。
また、この研究では精子のDNAやミトコンドリア(エネルギーを作る部分)にもダメージが及ぶことが報告されています。
以上の研究から、サウナによって精子の数や質が下がることで、妊娠しにくくなる可能性は考えられます。
とはいえ、これはあくまでも可能性の問題であって、サウナによる精子減少が直接妊娠率にどれほど影響するかは医学的には正直はっきりわかっていません。
ただし、妊活中の方は念のためサウナや長風呂を控えめにするのが安心でしょう。
ちなみに、サウナの利用をやめると、精子の数や質は3~6か月程度で回復することが多いと報告されています。
サウナが日常生活に定着しているフィンランドでは、不妊治療の件数は日本よりも少ないという報告があります。
具体的には、人口100万人あたりの体外受精件数はフィンランドが870、日本が1,323と報告されています。
医学的には、サウナに入りすぎると、精子の数が減ったり、機能が落ちたりして妊娠しにくくなる可能性があるのは事実です。
しかし、実際にはサウナの利用が直接的に不妊につながるとは断定できません。
かなりあいまいな結論になりましたが、妊活中の方がより確実に妊娠の可能性を高めたいのであれば、一時的にサウナを控えることも選択肢の一つと言えるでしょう。
サウナと卵子の関係

結論から言えば、サウナが女性の不妊に直接影響するという明確な医学的根拠はありません。
ただし、高温環境は体に負担をかけ、ホルモンバランスが乱れることで月経や排卵に影響する可能性があると言われています。
長時間高温のサウナに入ると、体温が上がりすぎてホルモンの分泌が乱れたり、自律神経が不安定になったりすることがあります。
これが排卵や着床に影響し、妊娠しづらい状態になる可能性があると考えられています。
特に排卵期や着床前の高温環境は注意が必要です。
とはいえ、サウナが直接的に卵子の機能を著しく低下させるという証拠はありませんのでご安心ください。
逆に妊活中は、サウナによる血行促進やリラックス効果によって、ストレス緩和などプラスになる面もあります。
ただし、妊活中にサウナを利用する場合でも短時間・適温を守ることをおすすめします。
ちなみに、妊娠した後は、サウナの利用はできるだけ控えたほうが良いとされています。
高温環境は、胎児に影響を与える可能性があり、特に妊娠初期は流産のリスクが高まるため注意が必要です。
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想を生み出す心理的要因
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」と思っている人は少なくないはずです。
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想の心理的要因には、以下のような背景が考えられます。
妊活・妊娠への強い願望と不安
妊活中は「少しでも妊娠率を上げたい」「リスクを減らしたい」という強い気持ちが生まれやすくなります。
サウナの高温が精子の質や数に悪影響を及ぼす可能性があるという医学的情報を知ることで、「もしかしたら妊娠しにくくなるのでは」という不安が強くなります。
わずかなリスクも避けたいという防衛本能
妊活は結果が出るまで時間がかかることも多く、原因がはっきりしない場合もあります。
そのため、「少しでも妊娠の妨げになるかもしれない要素は排除したい」という心理が働きやすくなります。
サウナだけでなく、食事や生活習慣、ストレスなども含めて「できることは全部やりたい」という気持ちが強まります。
情報過多と不確実性への不安
インターネットやSNS、医療機関などからさまざまな情報が得られる現代では、「サウナは精子に悪い」という断片的な情報だけが強調されやすい環境と言えるかもしれません。
研究によっては「サウナをやめれば精子の状態は回復する」「生殖能力自体には大きな影響はない」といった報告もありますが、確実な答えが得られない不確実性が不安を増幅させます。
パートナーへの協力要請と関係性
妊活はパートナーの協力が不可欠なため、「自分だけでなく相手にも努力してほしい」「一緒に頑張りたい」という思いが強くなります。
サウナの利用を控えてもらうことで「妊活に協力してくれている」という安心感や、共に取り組む一体感を得たいという心理も働きます。
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想は、「妊娠への強い願い」「わずかなリスクも避けたい防衛本能」「情報過多による不安」「パートナーと協力したい気持ち」など、妊活特有の心理的要因が複雑に絡み合って生じるものです。
お互いの気持ちをよく理解し合って行動することが何よりも大切です。
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想を生み出す脳科学的要因
続いては、「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想の脳科学的要因です。
不安やリスク回避を強調しやすい脳の働き
人間の脳は、生殖や健康に関わるリスク情報に対して特に敏感です。
進化的に「子孫を残す」ことが重要だったため、妊娠や生殖に関するリスク情報は、脳の中の扁桃体(感情や不安を司る脳部位)を通じて強く印象づけられやすくなっています。
たとえば「サウナ=精子や卵子に悪影響」という情報を一度知ると、脳はそのリスクを過大評価しやすくなり、「妊娠しづらくなるかもしれない」という発想が強化されます。
”人類史の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ネガティブバイアスと確証バイアス
ネガティブバイアス:脳はポジティブな情報よりもネガティブな情報(リスクや危険)を重視しやすい傾向があります。
確証バイアス:一度「サウナは妊娠に悪いかも」と思うと、それを裏付ける情報ばかりを集め、逆の情報(「必ずしも妊娠率が下がるわけではない」など)は無視しやすくなります。
これらのバイアスにより、サウナのリスク情報が頭から離れず、「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想が強まります。
”確証バイアスの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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不確実性への不安とコントロール欲求
妊活や妊娠は結果が見えにくく、「どうすれば確実に妊娠できるか」が分からない不確実性が大きい分野です。
この不確実性に対し、脳は「自分でコントロールできることはすべてやっておきたい」と考えやすくなります。
そのため、サウナのように「少しでもリスクがあるかもしれない」と思う行動を避けることで、不安を減らそうとします。
”不確実の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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情報の印象操作と記憶の強化
インターネットやSNS、医療機関から発信される「サウナは精子に悪い」「妊活中は控えた方がいい」という断片的な情報は、脳の記憶に強く残りやすいとされています。
特に妊活中は「妊娠できない原因を自分で作りたくない」という心理が働き、リスク情報を繰り返し思い出すことで、その発想がさらに強化されます。
”情報過多の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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参考情報過多に疲れてストレスを感じていませんか?「情報過多」の意味を脳科学で探る
情報は多い方が良いのでしょうか? それとも最低限の情報さえあればよいのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医 ...
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サウナと妊娠に関するリスク情報は、脳の「不安」「リスク回避」「ネガティブバイアス」「確証バイアス」「コントロール欲求」などの働きによって、実際以上に強く意識されやすくなっています。
その結果、「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想が根強く残るのです。
実際には妊娠へのサウナの影響は、一時的かつ可逆的であり、妊娠率への直接的な影響は明確ではありませんが、脳の仕組みがこのような発想を強める要因となっています。
「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という意見は医学的に限りなく偽に近いと言えるでしょう。
とはいえ、サウナと妊娠についての正確な知識なしに長時間高温のサウナに高頻度で入り続けることは、心理的、脳科学的におすすめできません。
ぜひ正確な知識を身につけて、そしてよくパートナーと話し合い、お互いに理解をし合ってうえでサ活を行いましょう。
そもそも妊娠が脳にどのような影響をおよぼすかについても学んでみてください。
”妊娠の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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参考妊娠が女性と男性の脳に及ぼす影響と変化を脳科学で探る
妊娠は女性と男性の脳にどんな影響と変化を及ぼすの? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と ...
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“サウナと妊娠の関係の脳科学”のまとめ
サウナと妊娠の関係を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- サウナに入りすぎると、精子の数が減ったり、機能が落ちたりして、男性側の要因として妊娠しにくくなる可能性があります。
- サウナが直接的に卵子の機能を著しく低下させるという証拠はありません。
- しかし、女性が長時間高温のサウナに入ると、排卵や着床に影響し、妊娠しづらい状態になる可能性があります。
- 「サウナに入りすぎると妊娠しづらくなる」という発想は、妊活特有の心理的要因が複雑に絡み合って生じます。
- サウナと妊娠に関するリスク情報は、脳に対して実際以上に強く意識されやすくなっています。
- 実際にはサウナの妊娠への影響は、一時的かつ可逆的であり、妊娠率への直接的な影響は明確ではありませんが、正確な知識を身につけてサ活を行いましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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