「拾ったお金」と「貯めたお金」で使い方が違うのはどうしてなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- どうやって手に入れたかでお金の使い方が変わってしまう「ハウスマネー効果」をわかりやすく脳科学で説き明かします。
お金は感情の衣服にくるまれている
「ハウスマネー効果」の脳科学
- 脳は幸運で手に入れた利益は粗末に扱う傾向がありこの心理傾向を「ハウスマネー効果」と呼びます。
- 「拾ったお金」は「貯めたお金」とは違い散財しやすくなります。
- 「思いがけず手に入ったお金」にはくれぐれも注意しましょう。
ハウスマネー効果
脳は予想外の利益を手にするとリスクに無頓着になる傾向があります。
これを「ハウスマネー効果」と呼びます。
リチャード・セイラ―(アメリカの経済学者)
それまでに貯めていた10万円ともらった10万円を同じように扱うでしょうか?
もらった10万円でもしPCを買ったとして、今まで貯めていた貯金の10万円で同じPCを買おうと考えたことがあったでしょうか?
自分の行動の不合理さに気づくのは、きっとPCを買った後でしょう。
「拾ったお金」=「もらったお金」も「貯めたお金」も同じお金で変わりはないはずです。
しかし脳はすべてのお金を同じようには扱いません。
“金銭感覚の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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「そのお金をどうやって手に入れたか?」によってお金への向き合い方は大きく変わってきます。
言うならばお金は「裸」ではなく、わたしたちの「感情の衣服」にくるまれているのです。
宝くじに潜む「ハウスマネー効果」
ひとつ目の質問です。
あなたは1年間一生懸命働いて頑張って貯金をしました。
その結果あなたの口座に入っている金額はこの1年で200万円増えていました。
あなたはそのお金をどうしますか?
A そのまま口座に入れておく
B 投資にまわす
C 傷んだ自宅のリフォームなど必要なことに使う
D 奮発して豪華クルーズに申し込む
あなたが大多数の人と同じように考えたとしたらきっとAかBかCのどれかでしょう。
ふたつ目の質問です。
宝くじで200万円当たりました。
あなたはそのお金をどうしますか?
先ほどのA、B、C、Dのうちどれでしょう?
この質問をするとたいていの人はCかDを選びます。
そしてそう答えた人はたいてい「思考の誤謬(ごびゅう)」におちいっています。
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「誤謬」とは思考内容と対象との一致しない思惟(しゆい)や判断のことです。
簡単に言えば自分が意図しない間違いや誤解です。
同じ200万でも脳にとっては違う200万円なのです。
他人はそう思うかもしれませんが、当人にとって宝くじで当たった200万円は頑張って働いて手に入れた200万円とはまったく違うお金なのです。
高額の宝くじに当たった人は数年後には前よりも貧しくなっていることはめずらしい話ではありません。
“宝くじの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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「ハウスマネー効果」が一般的には“悪銭身に付かず”ということわざでよく知られているのはこのためです。
「思いがけず手に入ったお金」には注意しよう
学生をふたつのグループにわけます。
ひとつ目のグループには「たった今5000円手に入った」と仮定して次のようなコイン投げに参加するかどうかを選んでもらいます。
コイン投げで裏が出たら1000円もらえます。
しかし表が出たら1000円失うことになります。
すると学生の70%はコイン投げに参加すると答えました。
ふたつ目のグループには特にお金が手に入ったわけではないが、確実に手に入る5000円か、コイン投げに参加するかのどちらかを選んでもらいます。
コイン投げでもらえるお金は裏が出たら6000円、表が出たら4000円もらえます。
するとリスクの大きいコイン投げを選んだのは学生のわずか43%にすぎませんでした。
どちらのグループも獲得できる見込みのある金額はまったく同じです。
ただ伝え方が違うだけです。
しかしふたつ目のグループはひとつ目のグループよりも保守的な選択をするのです。
このような差が出るのは「ハウスマネー効果」が働いているからです。
マーケティングの戦略家は「ハウスマネー効果」の有用性をちゃんと把握しています。
入会すると5000円分のボーナスポイントがもらえます
入会すると入会金と1年間の年会費が無料です
一定額までは通話無料、通信料無料でお得です
このようなフレーズを聞くと必要でもないのに入会したり無駄に通話・通信をしたりしてしまうものです。
このようなサービスのほとんどは「ハウスマネー効果」を利用したものです。
期せずしてお金が入ったり、どこかの会社から何かを進呈されたりした時には注意が必要です。
つい気が大きくなってそれを上回る支出をすることにもなりかねません。
「拾ったお金」から扇動的な衣服を引きはがして銀行口座という衣服を着せて「貯めたお金」に意識して衣替えしてみてください。
“貯蓄の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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“「ハウスマネー効果」の脳科学”のまとめ
どうやって手に入れたかでお金の使い方が変わってしまう「ハウスマネー効果」をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 脳は幸運で手に入れた利益は粗末に扱う傾向がありこの心理傾向を「ハウスマネー効果」と呼びます。
- 「拾ったお金」は「貯めたお金」とは違い散財しやすくなります。
- 「思いがけず手に入ったお金」にはくれぐれも注意しましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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