日常の脳科学 脳を科学する

金銭感覚が合う合わないの意味を探る…価値観の違いを脳科学でチェックしよう

2020-10-16

金銭感覚-A1

金銭感覚が合う合わないがあるのってどうしてなの?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 金銭感覚が合う合わないを心理学、経済学、脳科学で探ることでお金の価値観の違いがわかります。

金銭感覚が合う合わないの意味を探る

価値観-1-min

金銭感覚が合う合わないを心理学、経済学、脳科学で探る

  • 経済学から見た金銭感覚は少しでも自分の利益が増えることを良しとします。
  • 心理学から見た金銭感覚はたとえ利益が減ったとしても誰もが公平に利益をあげることを良しとします。
  • 脳科学から見た金銭感覚は誰もがより多くの利益を上げることを良しとします。

金銭感覚の脳科学

金銭感覚は脳科学的に非合理的な判断をし得る魔物である。

 

お金は私たちが現代社会を生きていくためには必要不可欠なものです。

 

現代人の行動はかなりの部分でお金に縛られていると言っても過言ではありません。

 

しかしあまり“お金が大事、お金が一番”を強調しすぎると他人からは敬遠されてしまいます。

 

そんなお金に対する私たちの感覚…金銭感覚は経済学、心理学そして脳科学で大きく異なってきます。

 

まずは経済学と心理学から見た金銭感覚を探ってみましょう。

 

へなお
ここでは難しい話は抜きにして簡単に説明しますので気軽に読んでみてください。

 

経済学から見た金銭感覚

経済学的に金銭感覚はどのようにとらえられているのでしょう?

 

経済学では昔から自分の利益を最大化するエージェントとし人をとらえお金はそのための大切なツールです。

 

つまり人をうまく操作して最終的にはお金が自分のふところにたくさん集まりより多くの利益をあげることこそが理想なのです。

 

へなお
そういう意味では経済学的な金銭感覚は合理的で筋が通っています。

 

現代はお金がたくさんあればあるほど生きやすい世界です。

 

ですから多くの人は経済学的にはお金がたくさん動いて誰もが自分の利益が膨れ上がっていくことを夢見て動き回ります。

 

ある商品を売るのであれば売り手は少しでも高く売って利益を上げたいものです。

 

買い手は少しでも安く買って手元のお金は残しておきたいものです。

 

へなお
この駆け引きが経済学的な金銭感覚の根本です。

 

心理学から見た金銭感覚

金銭感覚は心理学的にはとても微妙な問題です。

 

誰もが生きていくうえで必要なものにあまりに求めすぎると非難される…そんなものはお金くらいでしょう。

 

へなお
心理学ではお金に目がくらんで自分の利益ばかりを追い求めることには否定的です。

 

お金がすべてではない、もっと大切なものがあるはず…

 

そんな心理が自分の利益だけを追い求めることを非難するのです。

 

高く売る、安く買うではなく誰もが公平に利益をあげることが求められるのです。

 

心理学ではあくまでもお金に固執しない心が善とされるのです。

 

ですからお金を儲けて利益をあげる人を見て嫉妬や恨みが生まれ犯罪が起こるのです。

 

へなお
経済学と心理学から金銭感覚を探ってみると両者には大きな違いがあることがよくわかります。

 

金銭感覚-その1

金銭感覚の合う合わないはお金に対する経済学的な価値観と心理学的な価値観とのズレから生まれるのです。

 

ここまでは良くある話でしょう。

 

へなお
では脳科学的な金銭感覚はどうでしょう?

 

最初に書きましたが“金銭感覚は脳科学的に非合理的な判断をし得る魔物である”とはどういうことなのでしょう?

 

経済学、心理学にはない脳科学の金銭感覚を探ってみましょう。

 

脳が感じる金銭感覚

価値観-2-min

脳はお金がたくさん集まり自分の利益が増えることに当然快楽を感じます。

 

ですからお金に対して脳の報酬系回路は敏感に作用します。

 

“報酬系回路の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。

 

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へなお
しかしお金は他の報酬とはちょっと違う刺激を脳に与えます。

 

例えば美味しい食事、大好きな人との大切な時間、ゆっくり眠ること…

 

へなお
これら食欲、性欲、睡眠欲は三大欲求として有名ですよね。

 

三大欲求を求めて脳は報酬系回路を働かせて快楽を感じます。

 

このようにヒトが生きていくうえで欠かせない欲求を得ることで得られる快楽を“一次報酬(生物学的報酬)”と言います。

 

一方で金銭欲はこれらとはちょっと違った異質の欲求です。

 

ただお金があってもなにも幸せにはなりません。

 

お金を食べてもおいしくありませんしいい匂いがするわけでもありません。

 

お金を使うことで初めて自分の欲求を満たすことができます。

 

脳はお金をたくさん持っていれば自分の欲求を自由に満たすことができることを知っています。

 

お金は一次報酬を手に入れるためのツールであり一次報酬と関連づけられた“高次報酬(心理的報酬)”と呼ばれる快楽になります。

 

一次報酬はたいてい触れたり味わったりと感覚的に感じることのできる快楽です。

 

ですからわかりやすい快楽です。

 

へなお
目の前に美味しい食事が並んでいれば幸せな気分になってほおばりますよね。

 

一次報酬は脳の報酬系回路の中では視床下部と側坐核と言う部分が活発に働きます。

 

一方高次報酬であるお金は快楽のためのツールでありそれ自体に触れても快楽を感じることはありません。

 

へなお
中にはお金を触っているだけで幸せを感じる人もいるかもしれませんが…

 

日本のお金であればその価値が一目でわかりますから目の前に山積みにされれば幸せです。

 

しかし価値のわからない外国のお金を山積みにされてもそれほどまでの幸せは感じないののではないでしょうか?

 

果たしてこのお金でどのくらいの自分の欲求が満たすことができるのかわからないので脳も即座に快楽を感じることはありません。

 

お金は一次報酬と関連付けることによってはじめて価値があがって快楽を感じることができるのです。

 

つまりお金の価値観を決めるのはお金によって得られる欲求によるのです。

 

お金のような高次報酬は脳の報酬系回路の中では帯状皮質と前頭連合野という部分が活発に働きます。

 

同じ快楽でも一次報酬と高次報酬では脳の報酬系回路の中で活発に働く場所が異なるのです。

 

このように報酬系回路が複雑に働くと起こることは何でしょう?

 

へなお
脳はバグを起こすのです。

 

脳は経済学や心理学では想定外の非合理な金銭感覚の判断をするのです。

 

それでは非合理な金銭感覚ってどんなことなのでしょう?

 

“タダより高いものはない”から学ぶ価値観

価値観-3-min

ここまで経済学、心理学、脳科学それぞれからみた金銭感覚を解説してきました。

 

ここで3つの視点から見た金銭感覚の違いを分かりやすく説明した研究があります。

 

この研究を理解することで“金銭感覚は脳科学的に非合理的な判断をし得る魔物である”ことの意味がお分かりいただけると思います。

 

観光ボートに乗っている乗客をカメラマンが撮影して観光後に写真を販売します。

値段は3つのパターンを設定します。

 ① 1500円

 ② 500円

 ③ 自分の好きな金額を払う

ただしどの場合にも“本来の定価は1500円です”と伝えます。

どのパターンの時が買う人が一番多い結果になるでしょうか?

Gneezy A, et al, Proc Natl Acad Sci USA, 109(19):7236-7240, 2012.

 

当然1500円よりも500円の方が買う人は増えます。

 

1500円で販売した時買う人は23%でした。

 

500円で販売した時買う人は64%もいました。

 

1500円で販売するのが経済学から見た金銭感覚です。

 

たとえ購入者が少なくても少しでも高い値段で売ってより多くの利益をあげようとする感覚です。

 

一方500円で販売するのは心理学から見た金銭感覚です。

 

出来る限り値段を抑えることで売る人の1枚当たりの利益は減りますが多くの人が買うことで最終的な利益は上がります。

 

買う人も手ごろな値段で購入できより多くの人が購入できる値段設定です。

 

つまり少しでも安い値段で売って誰もが公平に利益をあげる感覚です。

 

ここにはお金に対する経済学的な価値観と心理学的な価値観とのズレがありそこから金銭感覚の合う合わないが生まれます。

 

へなお
それでは“自分の好きな金額を払う”場合はどうだったでしょう?

 

“自分の好きな金額”で買った人は55%でした。

 

“本来は1500円するものを500円で売りましょう”

 

と提案されたらきっと

 

“なんてお買い得なんだろう”

 

という心理が働きますよね。

 

へなお
では“本来は1500円するものを好きな金額で売りましょう”と提案されたらどう思いますか?

 

いくらでも安い値段で買うことは可能です。

 

しかしあまり安い値段ですと自分の良心がとがめます。

 

売り手から見れば少しでも高い値段で買ってくれるに越したことはありません。

 

ですから安い値段を提示することで“善良な自己像”を壊すくらいなら買わない方がマシだと感じても不思議ではありません。

 

ところが “自分の好きな金額”で購入した人は半数以上もいました。

 

しかも“自分の好きな金額”で実際に支払った金額の平均は640円でした。

 

さらに興味深いのは結局3つの金額の提示で売り手の利益が最終的に一番多かったのは“自分の好きな金額”だったのです。

 

この“自分の好きな金額”で販売するのが脳科学から見た金銭感覚です。

 

買う人は“タダ”でも構わないのに640円も払ったのです。

 

そして売り手にもっとも高い利益を生み出したのです。

 

へなお
“タダより高いものはない”…まさにその通りです。

 

そして“タダ”でも構わないものにお金を払う非合理さは心理学や経済学では予測できません。

 

結局買い手はそれなりの金額を提示することで“善良な自己像”を保持しつつも売り手も充分な利益を得ることに成功しているのです。

 

一見すると金銭感覚としては“非合理的な判断”が最終的にはもっとも適切な判断となっているのですからなんとも不思議です。

 

金銭感覚-その2

脳は金銭感覚が合う合わないをうまい値段の設定で折り合いをつけてお互いの価値観をすり合わせることで心理学や経済学にはない価値観を作り出しているのです。

 

そう考えると”金銭感覚は脳科学的に非合理的な判断を導き出す魔物である”の意味が少しはお分かりいただけたのではないでしょうか?

 

リベラルアーツ大学学長の両@学長の『本当の自由を手に入れるお金の大学』を読んでもっとお金のことに詳しくなりましょう。

 

へなお
この本は自分のバイブルです!

 

 

“金銭感覚から学ぶ価値観の違いの脳科学”のまとめ

まとめ-conclusion1-N1

金銭感覚が合う合わないを心理学、経済学、脳科学で探りお金の価値観の違いを説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 経済学から見た金銭感覚は少しでも自分の利益が増えることを良しとします。
  • 心理学から見た金銭感覚はたとえ利益が減ったとしても誰もが公平に利益をあげることを良しとします。
  • 脳科学から見た金銭感覚は誰もがより多くの利益を上げることを良しとします。
  • そのため金銭感覚において脳は単純には説明しきれない非合理的な判断をします。
  • ですから金銭感覚は脳科学的に非合理的な判断を導き出す魔物なのです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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