日常の脳科学 脳を科学する

理不尽なことに言い訳をして正当化する~パラドックスな世界でのモラルハラスメントを脳科学で探る

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理不尽なことに言い訳をして正当化するのってどうしてなの?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い手術、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • パラドックスに満ちあふれた世界でのモラルハラスメントの脳科学的な意味がわかります。

 

脳にひそむモラル正当化効果

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パラドックスに満ちあふれた世界でのモラルハラスメントを脳科学で探る

  • 脳はモラルのある善行をすると反モラル的な悪行を許容するモラル正当化効果に縛られています。
  • パラドックスに満ちあふれた世界でモラル正当化効果によって理不尽なことに言い訳をして正当化することでモラルハラスメントが生み出されます。
  • モラルハラスメントは他人から自分を守る脳の防御反応です。
  • 人は自分の善行と他人の悪行を好む傾向があります。
  • あなたも自分を見つめなおし「他人への思いやり」を考えてみませんか。

モラルハラスメントの脳科学

脳は自分をモラルのあるタイプの人間であると自認するとつじつまを合わせるように反モラル的な理不尽なことであっても言い訳をして正当化しようとします。

これがモラルハラスメントを生み出す根源になっています。

 

しかし一方で自分が社会的に認められたモラルに準じた良い行動をとった後は

 

へなじんさん
少しくらい羽目を外しても許されるだろう…

 

などとモラルにかける行動をとる確率が高まります。

 

いわゆる「善行後の愚行」です。

 

週末にたっぷり家族サービスをすると翌週はつい遅くまで飲み歩いて帰宅時間が遅くなる。

 

環境に優しいエコ商品を買った後はつい利己的な振る舞いが増えてしまう。

 

カロリーゼロのダイエット飲料を飲むとそれに合わせてつい甘いケーキを食べてしまう。

 

モラルハラスメントの脳科学-その1

ある事柄についてよいことをした後は「つい~してしまった」などと言い訳してモラルの高くない意思決定をした自分を正当化しがちです。

これを「モラル正当化効果」と言います。

 

モラル正当化効果は脳科学でもちゃんと証明されています。

 

血縁関係のある偉大な人物が亡くなり突然莫大な遺産をあなたが相続することになった場面を想像してみてください。

 

遺産を相続した後に慈善団体から寄付の依頼がきます。

 

そんな仮想状況を設定すると多くの人は「喜んで寄付をする」と答えます。

 

これは遺産を相続するのが自分ではなく知人であったとしても同じです。

 

「きっと知人は喜んで寄付をするだろう」と多くの人は答えます。

 

ではこの仮想状況での寄付の話をした後に算数のテストを行います。

 

「自分が遺産を相続して寄付をする」とした場合と「知人が遺産を相続して寄付をする」とした場合とどちらの方がカンニングをする確率が高くなるでしょうか?

Brown RP, et al, Ethics Behav 21:1-12, 2011

 

へなお
答えは「自分が遺産を相続して寄付をする」とした場合です。

 

この場合には30%もカンニングが増えたのです。

 

自分が善行を行った後は自分に甘くなり「これくらいは許されるだろう…」というモラル正当化効果が強く働きます。

 

一方で知人であっても他人に対してモラル正当化効果は働きません。

 

へなお
どのような状況であっても愚行は許さないのです。

 

善行によってモラルが破られることが許されてしまえばモラルの一貫性が崩れてしまいます。

 

間違えているはずの反モラル的な行為が正当化されてしまうようであれば何が正しくて何が間違えているのはわからなくなってしまいます。

 

へなお
まさにパラドックスです。

 

パラドックスとは一見すると正しいように思えることでも正しいと認識されないことあるいはその逆で一見間違っているように思えることでも実は正しいことです。

 

へなお
それでは次にパラドックスについて探ってみましょう。

 

モラルハラスメントを引き起こすパラドックスに満ちあふれた世界

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「パラドックス」と言う言葉を一度は耳にしたことがあると思います。

 

しかし「パラドックスの実態がどういうものか詳しくはよくわからない」という人のためにパラドックスについて簡単に説明しましょう。

 

へなお
「アキレスと亀」の話をご存じでしょうか?

 

アキレスというものすごく足の速い人と恐ろしいほど足の遅い亀がいました。

 

アキレスが100m先にいる亀と徒競走で対決します。

 

当然アキレスがあっという間に亀を抜き去ると想像しますよね。

 

しかしアキレスは不思議なことになかなか亀に追いつけません。

 

アキレスが100m先の亀がスタートした地点に着く頃には亀はのろのろとではありますが10m先を進んでいます。

 

アキレスが10m先の亀を追いかけて10m進むと亀はそれより1m先にいます。

 

アキレスが1m先の亀を追いかけて1m進むと亀はそれよりも10cm先にいます。

 

この繰り返しでアキレスが亀のいた地点に到着しても亀はゆっくりとですが確実にその少し先に進んでしまっているので永遠に追いつけないのです。

 

へなお
これがパラドックスです。

 

一見理論的には正しいように思えますが現実的にはアキレスはあっという間に亀に追いつきます。

 

なぜならこの理論は根本的に間違えているからです。

 

しかしパラドックスを論理的に否定することは非常に難しいことです。

 

へなお
実際に「アキレスと亀」の間違えを誰もが納得するように説明することはいまだにできません。

 

パラドックス一見簡単そうには見えて実はかなりの難問なのです。

 

数学的にこの難問を解くことは可能です。

 

しかし誰もが納得するように説明することはなかなかできないのです。

 

もっと身近なパラドックスとしては

 

急がば回れ

 

負けるが勝ち

 

などがあります。

 

急いでいるのであれば近道を選んだ方が速いに決まっています。

 

負けは負けで勝ちではありません。

 

しかし世の中はこのような不思議なパラドックスで満ちあふれています。

 

だからこそうまく回っていることもたくさんあります。

 

モラルハラスメントの脳科学-その2

パラドックスに何かと言い訳をつけて理不尽なモラルを押し付けて正当化しようとする人がいます。

それがモラルハラスメントを生み出しているのです。

 

モラルハラスメントとは

モラル=心に働きかける

ハラスメント=嫌がらせ

相手に精神的なダメージを与えることを目的とした加害行為です。

 

“ハラスメントの脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。

 

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自分で意図していようとしていまいと人と人とのコミュニケーションにおいて一方的で害意のある発言や行為はハラスメントととらえられます。

 

話しかけられても無視をする

 

仲間の中で特定の人だけに情報を流さない

 

小さなミスをしつこく指摘する

 

暴言をあびせる

 

モラルハラスメントは目に見えないハラスメントなのでなかなか理解してもらえず精神的に追い詰められてしまいます。

 

へなじんさん
ではなぜ人はモラルハラスメントをするのでしょうか?

 

先ほども言いましたが世の中はパラドックスで満ちあふれています。

 

矛盾したことだらけです。

 

その中で人は自分のモラルにしたがって善悪を判断しながら生きています。

 

へなお

そうなんです。

モラルはそれぞれ個々の脳の判断にゆだねられているのです。

 

ですからある人は正しいと言っても他の人は間違えていると判断することもたくさんあります。

 

しかし状況によっては善悪をひっくり返してでもうまくいくように曖昧(あいまい)に世の中は出来ているのです。

 

そんなゆがみがさまざまなパラドックスを作り上げています。

 

へなお
曖昧なことは曖昧にしておけば良いのです。

 

しかし時に人は自分を正当化するために正義を振りかざします。

 

モラルハラスメントの脳科学-その3

理不尽なことに言い訳をしてでも自分のモラルを正当化してパラドックスのゆがみをさらにねじ曲げるのです。

その結果ゆがみがさらに増強されてハラスメントとなって他人に襲いかかるのです。

 

モラルハラスメントはゆがんだ世界の中で自分を見失った時に他人を傷つけてでも自分の非を認めず自分を正当化することで生き延びようとする脳の一種の防衛反応なのです。

 

モラルの脳科学

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へなお
最後は人の脳はモラルをそもそもどのように認識しているのかを探ってみます。

 

モラルにまつわる脳の研究はなかなかの難問です。

 

そもそも人はモラルにとても敏感なので自然なモラル行動を観察することはなかなかできません。

 

へなお
ここでモラルの脳科学についての研究をご紹介しましょう。

 

研究対象者に1日に5回モラルに関する質問をします。

 

過去1時間以内にモラル行動(善行)や反モラル行為(悪行)を自分が行ったり巻き込まれたり見聞きしたりしたかを答えてもらいます。

 

これらのデータから日常的なモラルの実態を研究しました。

Hofmann W, Science 345:1340-1343, 2012

 

何らかの形でモラルに関係した行動に接したという報告は全体の約30%の人に見られました。

 

へなお
30%が多いのか少ないのかは人それぞれですが決して低い数字ではありません。

 

モラルに関係した行動の中で「自分が行った行動」に注目すると善行が悪行の2倍以上でした。

 

しかし「他人が行った行動」に関しては善行と悪行はほぼ同数でした。

 

つまり自己申告では「自分が行った行動」は不自然に善行が多いのです。

 

自分が行った善行は積極的にアピールしたい一方で悪行は教えたくないという心理が強く働いているのかもしれません。

 

もしかしたら自分が悪行を犯したこと自体に気づいていないだけなのかもしれません。

 

へなお
この研究にはさらに続きがあります。

 

最初に説明したモラル正当化効果(善行をした後は悪行を働きやすくなること)善行伝染効果(他人から善行を受けた後は他人に善行をほどこしやすくなること)も証明されました。

 

また他人からモラルに関して見聞きした回数について悪行は善行の2倍でした。

 

つまり悪いうわさは良いうわさよりも広まりやすいということです。

 

信仰心についても触れていて信仰の深い人とそうでない人では善行の回数には差はありませんでした。

 

つまりモラルに信仰心は無関係なのです。

 

一方で信仰の深い人の方が「他人が行った行動」について悪行が極端に少ない結果でした。

 

モラルハラスメントの脳科学-その4

信仰心は善行を生み出すものではなく「他人を悪く思わない」、「他人の悪いうわさをしない」、「他人の足を引っ張らない」というある意味消極的な良心を生み出すものだというのです。

 

さまざまな教えの元は「他人への思いやり」に集結しているのかもしれません。

 

自分のモラルを正当化するのは自然なことですし自由で構いません。

 

しかし他人にモラルを押し付けたりゆがんだモラルを求めたりすることを脳は望んでいません。

 

あなたも今一度立ち止まって自分のモラルについて見つめなおしてみてください。

 

へなお
自分を正当化することで精一杯になっていませんか?

 

脳は善行を求めているのはありません。

 

悪行を嫌っているのです。

 

そのことに気づいてください。

 

へなお
あなたもこの機会に脳についてもっと学んでみませんか?

 

 

 

“パラドックスに満ちあふれた世界でのモラルハラスメントを脳科学で探る“のまとめ

まとめ-conclusion1-N1

モラルハラスメントを脳科学で説き明かしてみました。

 

今回のまとめ

  • 脳はモラルのある善行をすると反モラル的な悪行を許容するモラル正当化効果に縛られています。
  • パラドックスに満ちあふれた世界でモラル正当化効果によって理不尽なことに言い訳をして正当化することでモラルハラスメントが生み出されます。
  • モラルハラスメントは他人から自分を守る脳の防御反応です。
  • 人は自分の善行と他人の悪行を好む傾向があります。
  • あなたも自分を見つめなおし「他人への思いやり」を考えてみませんか。

 

今回の記事がみなさんに少しでもお役に立てれば幸いです。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も『脳の病気』、『脳の治療』、『脳の科学』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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