エレベーターが同じようなタイミングで上下するのってどうしてなの?
止まっているエスカレーターに乗ると感じる違和感って何なの?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い手術、血管内治療、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 誰もが体験したことのあるエレベーターのパラドックスと故障エスカレーター現象を脳科学で探り不思議を確かめることの脳科学的な意味がわかります。
エレベーターとエスカレーターの不思議
エレベーターとエスカレーターの脳科学
- 複数のエレベーターがなぜか似たタイミングで上下するのが「エレベーターのパラドックス」です。
- 止まったエススカレーターに乗った時に体と感覚が一致しない違和感を覚えるのが「故障エスカレーター現象」です。
- いずれの現象も脳科学で説き明かすことのできる日常にありふれた現象です。
- 何げない不思議を確かめて解決していくことは自分の知識をアップデートためにとても大切な作業であり脳にとって快感です。
ショッピングセンターでぶらぶら買い物をしていると色々な不思議に遭遇します。
今回は誰もが経験したことのあるエレベーターとエスカレーターの不思議な現象を脳科学で探ります。
しかしどんな些細な現象にもひとつひとつちゃんとした理屈があります。
不思議を確かめて解決していくことは脳にとって快感でありとても大切な作業です。
「エレベーターのパラドックス」を脳科学で探る
「エレベーターのパラドックス」って聞いたことあるでしょうか?
ショッピングセンターには何台ものエレベーターが並んでいますよね。
しかし複数のエレベーターがなぜか似たタイミングで上下するの場面に遭遇したことないでしょうか?
せっかくたくさんのエレベーターがあるのですからもっとバランスよく運行すれば乗客のストレスを減らすことができそうですよね。
エレベーターとエスカレーターの脳科学-その1
高層階にいて下に降りたい時はなぜかやってくるのはのぼりのエレベーターばかり…
低層階にいて上に上がりたい時はなぜかやってくるのはくだりのエレベーターばかり…
この奇妙な現象を「エレベーターのパラドックス」と呼びます。
エレベーターのパラドックスは物理学で証明されている現象で複数のエレベーターの運動は自然と同期していくのです。
ジョージ・ガモフ、マーヴィン・スターン『数は魔術師』
エレベーターとエスカレーターの脳科学-その2
エレベーターのパラドックスを脳科学で考えるならば「自己組織化による創発現象」です。
「自己組織化による創発現象」を簡単に言えばもともとばらばらの物がそれぞれ自分勝手に動いているはずなのに相互作用によっていつの間にか秩序ができあがり予想できないようなシステムが構築される現象です。
「自己組織化による創発現象」をもっと簡単に言えば自由気ままに勝手に動いていても気づかぬうちに同期=シンクロしてしまう現象です。
複数のエレベーターは相互に連絡を取り合うことなくそれぞれが勝手に動いているだけです。
しかしいつの間にか申し合わせたように同期して上下のタイミングがそろっていくのです。
エレベーターAとBの2台を考えてみましょう。
AがBに先行して動いているとします。
Aがまず先に到着します。
待っていた人は先に着いたAに乗ります。
人が乗れば同然時間がかかります。
そのぶん長く扉が開いていますから本来乗り遅れるタイミングだった人も駆け込み乗車が可能となりさらに時間がかかります。
結果的にAの出発は遅れることになります。
一方後からくるBはAが乗客を乗せて出た後に到着するので待ち人が少なく停止時間が短縮し素早く出発します。
結局先行するAよりも後発のBの方が移動スピードは速くなりBはAに追いつき追い越すのです。
Bが先行すると後発になったAの移動スピードが速くなりいずれBに追いつき追い越すのです。
この繰り返しのためAとBはほぼ同じタイミングで上下運動をするようになるのです。
個々は自分勝手に動いているつもりでも集団でいるといつの間にか秩序ができて同じ動きをして同期してしまうことはわたしたちの生活の中でも時折みられる現象です。
「故障エスカレーター現象」を脳科学で探る
みなさんは故障して止まっているエスカレーターに乗ったことはあるでしょうか?
故障エスカレーター現象は簡単そうで実は複雑な脳の働きが関係しています。
故障エスカレーター現象は視覚認知と運動命令が別の脳回路で処理されていることが原因となって生じる現象です。
視覚認知とは目で見て「エスカレーターが止まっている」と認識することです。
しかし体はエスカレーターに乗るといつもの習慣で脳は運動の命令を出してつい重心を前に移動させて前のめりになります。
視覚と運動で食い違いがおきて整合性が取れなくります。
エレベーターとエスカレーターの脳科学-その3
意識と無意識のちょっとしたすれ違いが「故障エスカレーター現象」と呼ばれる違和感を引き起こしているのです。
わたしたちは「自分」という存在が世の中に1人しかいないと信じています。
しかし脳の中では複数の「自分」が同居していて並行して作業をしています。
簡単な動作ならば無意識的にもう1人の「自分」が代行してくれます。
この時本来の「自分」は働いていません。
これは脳にとってとても大切なことです。
もし体のすべてを「自分」1人で制御していたら脳はたちまちパンクしてしまいます。
食事しながら会話したり歩きながら考え事をしたりといった並行処理は複数の自分が脳内に同居しているからこそできるいわば曲芸です。
複数の「自分」がさまざまな視点から自分の行動を処理してくれているからこそ多くのことを同時にしながらも平然と生きていられるのです。
“視点の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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しかしたくさんの「自分」を脳の中に抱えていれば時にはそれぞれの「自分」の足並みがそろわずに妙な違和感を覚えることもあるでしょう。
エレベーターとエスカレーターから「不思議を確かめたい」を学ぶ
エレベーターとエスカレーターの脳科学-その4
「エレベーターのパラドックス」も「故障エスカレーター現象」もどうしてこのような現象が起こるのか知らなくても別に生きていくうえで何の支障もありません。
しかしヒトの脳は不思議と感じることに対して「確かめたい」という心理が働きます。
そして真実を知ることに快感を覚えます。
“快感の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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真実を探求することは実は生きていく上で大きな利点があります。
たとえば足の裏が痛い時に単に痛がるのではなく痛みの原因を探し出して足の裏に刺さってたとげを抜いたり今後その場所を裸足で歩くのを避けたりと何らかの対処をします。
この「確かめたい」という欲望は新たな道具を発明したり改良したり科学技術を発展させたりの下地になって「学習意欲」につながっていきます。
「確かめたい」という確認作業の本能は赤ちゃんにもすでに備わっている能力です。
赤ちゃんに動くおもちゃで遊んでもらい赤ちゃんの反応を確認する研究です。
動くおもちゃが壁にぶつかって止まる場面やテーブルから落ちる場面を見せます。
続いてちょっとしたトリックを使って物理の法則に反するような場面を見せます。
動くおもちゃが壁にぶつからずそのまま通り抜ける場面やテーブルから落ちても床にぶつからず宙に浮きあがる場面です。
赤ちゃんははたしてどんな反応をするのでしょうか。
動くおもちゃが壁を通り抜けたり宙に浮きあがったりと不思議な場面に遭遇すると赤ちゃんは不思議な物体に近づきおもちゃを手に取って壁にぶつけてみたり落としてみたりといった行動を何度も繰り返します。
赤ちゃんであってもすでに物理の法則を習得していて法則に反することは不思議に感じ確かめるのです。
そして予期と確認を何度も行うことで自分の知識を更新しようとする本能がすでに備わっているのです。
エレベーターとエスカレーターの脳科学-その5
不思議なことを確かめる作業はどんな場面であっても単なる遊びや興味ではなく自分が生きている世界のありようを自分の脳に取り込むための必須の確認作業なのです。
普段何気なく利用しているエレベーターやエスカレーターであっても何げなく感じる不思議を確かめることは実は生きていくうえで深い意味があるのです。
日常の世界はさまざまな不思議で満ちあふれています。
“エレベーターとエスカレーターの脳科学“のまとめ
誰もが体験したことのあるエレベーターのパラドックスと故障エスカレーター現象を脳科学で探り不思議を確かめることの大切さを脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 複数のエレベーターがなぜか似たタイミングで上下するのが「エレベーターのパラドックス」です。
- 止まったエススカレーターに乗った時に体と感覚が一致しない違和感を覚えるのが「故障エスカレーター現象」です。
- いずれの現象も脳科学で説き明かすことのできる日常にありふれた現象です。
- 何げない不思議を確かめて解決していくことは自分の知識をアップデートためにとても大切な作業であり脳にとって快感です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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