半沢直樹はどうしてあんなに怒って土下座して謝罪させるのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 半沢直樹から学ぶ理想的な謝罪の仕方を脳科学で説き明かします。
半沢直樹にみる謝罪
半沢直樹から学ぶ理想的な謝罪の仕方
- 謝罪は信頼関係の崩壊を修復するために行う行為です。
- 信頼関係はお互いの脳が快楽を感じることで育っていきます。
- 脳がうまくバランスをとりながら育てた信頼関係も脳の誤作動が起こると一瞬で崩壊します。
- 自分の意図しない脳の誤作動で信頼が失われた時の謝罪は誠意が同情となって相手の脳に伝わります。
- しかし信頼が意図的に失われた時の謝罪は誠意が同情として脳に伝わりづらく相手の脳には屈辱的な快楽さえも与えてしまいます。
- ですから相手との信頼関係を常に育んでいくことを噛みしめて生きていきましょう。
ドラマ『半沢直樹』の続編が2020年7月から9月に放送されました。
初回の放送は2013年…それから7年の時を経ても半沢直樹の人気ぶりは健在でした。
ドラマ『半沢直樹』の見どころはなんといっても半沢直樹の流儀である性善説…
ですよね。
とくかく悪人を次から次へとひっ捕まえて謝罪させる…そんなシーンの連続です。
時には土下座させてまで謝罪させる…なんてシーンもありちょっとやりすぎ感も否めませんが…
それでは,
そもそもなぜ謝罪をするような状況におちいってしまうのでしょう?
あなたの思う理想の謝罪の仕方とは何でしょう?
一般的に理想の謝罪とは真摯な態度でひたすら誠意を持って謝りまくることですよね。
そして迅速に対応する姿勢を示し実際に行動することです。
誠意を言葉や姿勢だけでなく行動で示すことがなによりも大切です。
しかしこれはあくまでも一般論であってどのような状況でも通用するものではありません。
ここでは謝罪の仕方の一般論ではなくちょっと違った角度…脳科学の視点から、
ここが疑問!
なぜ謝罪をするような状況におちいったのかを考え、そして理想の謝罪の仕方について探っていきます。
誠意のある謝罪は信頼に左右される
信頼とは-その1
そもそも謝罪しなければならない状況におちいらないようにするためには信頼関係を築き上げておくことがなによりも大切です。
しかし信頼関係は一方方向では成り立ちません。
お互いに信頼し合っていなければ信頼関係は成り立ちません。
脳は相手の信頼度を判定する時にどのように働いているのでしょうか?
見知らぬ人とお金のやりとりをするゲームです。
あなたは10000円持っていて相手は1円も持っていません。
あなたは相手にある金額を渡します。
いくら渡してもよく制限はありません。
渡さなくても大丈夫です。
ゲームのルールは相手にお金を渡すと金額が3倍に増えることです。
例えば1000円渡すと相手には3000円が入ります。
さらに相手は受け取った金額の一部を自分に返します。
例えば2000円返すとするとあなたのお金は
10000円―1000円+2000円=11000円
となり結果的に1000円得をします。
一方相手はのお金は
3000円―2000円=1000円
となり結果的に1000円得をします。
これでゲーム終了です。
このゲームを10回繰り返します。
このあと2人はどのようなお金のやりとりをするでしょうか?
お互いにもっとも儲けが出るのは毎回全額を移動させることです。
もっと詳しく
毎回全額を移動させるとお金は毎回3倍の金額となりながら2人の間行ったり来たりします。
しかしゲームの途中でいったん自分の持ち金はゼロになります。
それでも全体のお金はどんどん増え続けます。
そして最後のゲームで増えたお金を2人で山分けするようにすればいいのです。
このもっとも儲けが出る戦略はお互いが充分に信頼し合っている時にだけ成り立ちます。
もっと詳しく
もし途中で相手が裏切って1円も返してくれなかったらその時点でゲームオーバーとなりあなたは10000円を失い相手だけが儲けることになるのです。
これはあなたと見知らぬ相手の信頼関係がどれくらいのものなのかが試されるゲームなのです。
それではその時脳はどのように働いているのでしょう?
ここからが本題です!
脳の働きを解析するとおもしろいことがわかります!
あなたが高額の金額を相手に渡して相手に好意を示せば示すほど相手の脳の“尾状核”という部分の働きが活発になり返金する金額も増えるのです。
尾状核は快楽を生み出す報酬系回路の一部です。
”報酬系回路に関する脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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つまりあなたが高額の金額を相手に渡すことで相手の脳は快楽を感じているのです。
当然と言えば当然ですが、この快楽が信頼を生み出すのです。
信頼はいきなり大きな形で生み出されるものではありません。
多くの経験をすることで信頼は徐々に育っていきます。
その証拠にゲームがお互いにとって得をする好ましい展開で進行していくとあなたが相手に渡す金額を提示する前にすでに相手の尾状核は活発に働くようになってきます。
つまりあなたから高額の金額が渡されることをすでに期待して快楽を感じているのです。
信頼とは-その2
信頼関係はお互いの脳が快楽を感じることで発生し快楽を積み重ねていくことで育っていくのです。
ちょっといじわるな発想をしてみましょう。
あなたが多くの金額を相手に渡すのも相手があなたに多くの金額を戻すのもお互いの利益が増えるためという信頼関係があってこそのことです。
しかしそれはあくまでもお互いの利益であってまさか相手の利益だけを考えているわけではありませんよね。
自分に少しでも多くのお金が入ることを当然何よりも望んでいますし自分の快楽を少しでも大きくしたいと脳は望んでいます。
信頼とは-その3
信頼は一見すると人情味あふれる尊い感情と思われがちです。
しかし一方では利己的で冷徹な感情とのせめぎあいの中で生まれるものでもあります。
その微妙なバランスを脳がうまくとることで初めて信頼は生まれるのです。
ですから信頼は育てるのは時間がかかりますが崩れ去るのは一瞬です。
信頼とは-その4
脳がうまくバランスをとりながら苦労して育てた信頼も脳の誤作動が起こるとその瞬間に消え去ってしまいます。
長い時間をかけて育まれた信頼ほどそれが崩れ去った時の代償は大きいものです。
ここがポイント!
自分の脳の誤作動で信頼を崩壊させてしまった時には自ら謝罪する気持ちにもなるでしょう。
ですからこんな時の謝罪には誠意が込められているのでたとえ土下座までしなくても相手の脳には謝罪の気持ちが充分に伝わるはずです。
しかし脳の誤作動ではなく自分が意図的に脳の快楽を優先することで信頼を崩壊させた時はどうでしょう。
きっといくら謝罪してもあなたの誠意は相手にはなかなか伝わらないでしょう。
このように考えると…
信頼とは-その5
謝罪することで誠意が伝わるか伝わらないかは信頼の崩壊の仕方にかかっているといえます。
ここが疑問!
それでは脳にとって誠意が伝わる理想的な謝罪の仕方とはどのようなものなのでしょうか?
理想的な謝罪の仕方とは?
自らあやまちを認めて謝罪をすることは多々あることです。
そのような時は自分の意図しない信頼の崩壊が起きています。
そんな場合です。
脳の中に“島皮質”という部分があります。
島皮質は同情、苦痛、不安などに関係する脳の領域です。
島皮質が脳の中で行うどのような働きをしているかについてはこちらの記事をご参照ください。
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理想の謝罪-その1
島皮質は“同情系回路”と呼ばれる脳のネットワークの中にあります。
同情回路が働くと相手に対して“気の毒だなあ…”という同情の感情移入が強くなります。
つまりあなたの脳は謝罪を受け入れる状態になっているのです。
そして謝罪を受け入れて同情するのです。
しかし相手が意図的に自分の快楽を優先するばかりに信頼を崩壊させた時はそうはいきません。
あるいは、
相手がそんなフェアとは言えない行動をとった場合です。
そのような時は謝罪してこないかもしれないですし、たとえ謝罪したとしてもきっとあなたに謝罪の誠意は伝わらないでしょう。
理想の謝罪-その2
相手がフェアとは言えない行動をとった場合の謝罪では謝罪されたあなたの脳では先ほどの同情回路の島皮質は働きません。
つまり脳は相手に同情を示さないのです。
脳が同情しない謝罪は心理的には誠意のない謝罪と感じられます。
もっと詳しく
女性はフェアとは言えない行動をとった相手の謝罪に対して同情回路が働かないとはいえ40%程度低下するだけで同情回路はそれなりに働いています。
相手の善悪に関わらず罰を受けている人に対しては多少なりとも感情移入して同情する傾向が強いのです。
もっと詳しく
男性はフェアとは言えない行動をとった相手の謝罪に対しては同情系回路の活動はほぼゼロになります。
つまり脳は一切同情していないことになります。
それは“側坐核”です。
側坐核は先ほどの尾状核と同様に快感を生み出す脳の“報酬系回路”の一部です。
もっと詳しく
男性はフェアとは言えない行動をとった相手の謝罪の言葉やその姿に同情するどころか相手にとっては屈辱的ともいえる快楽を感じているのです。
罰を受ける姿をながめて快楽を感じているのです。
側坐核の反応が強く出る人は、
“反則的な行為に対しては大きな罰をあたえなければいけない”
そんな不正に対して強い制裁の気持ちが働く傾向があります。
そしてそれに対してさらに快楽を感じるのです。
こんな人にはどう謝罪してもなかなか謝罪の誠意は伝わりませんから決して信頼を裏切ってはいけないのです。
ひたすら謝罪して相手の脳に快楽をあたえてあげるしかありません。
理想の謝罪-その3
信頼と謝罪…そこにはさまざまな脳の回路が関わっていて男女差、個人差があります。
ですから一時の快楽に惑わされることなく相手との信頼を育んでいくことの大切さを忘れずに生きていくことがなによりも大切なのです。
理想の謝罪の仕方を考える前に信頼関係をこつこつと築き上げていくことが大切なのです。
しっかりと結ばれた信頼関係があればたとえあなたの脳が誤作動を起こして一時的に信頼の崩壊が起こったとしても、
あなたの謝罪は誠意のある理想の謝罪となり相手の脳にきっと届くはずです。
”理想的な謝罪の仕方の脳科学”のまとめ
半沢直樹から学ぶ理想的な謝罪の仕方について脳科学的に解明してみました。
今回のまとめ
- 謝罪は信頼関係の崩壊を修復するために行う行為です。
- 信頼関係はお互いの脳が快楽を感じることで育っていきます。
- 脳がうまくバランスをとりながら育てた信頼も脳の誤作動が起こると一瞬で崩壊します。
- 自分の意図しない脳の誤作動で信頼が失われた時の謝罪は誠意が同情となって相手の脳にちゃんと伝わります。
- しかし信頼が意図的に失われた時の謝罪は誠意が同情として脳に伝わりづらく相手の脳には屈辱的な快楽さえも与えてしまいます。
- 謝罪の受け止め方は男女、個人でとても違ってきます。
- ですから相手との信頼をいつでも育んでいくことを噛みしめて生きていくことがなによりも大切です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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