なぜ新しい商品やサービスを見つけると欲しくなってしまうのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 新しいもの好きの人の性格である「最新性愛症」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
新しいものが大好きな「最新性愛症」
「最新性愛症」の脳科学
- 新しいものを見ると欲しくてたまらくなってしまう脳の性質を「最新性愛症」と呼びます。
- 新しいものは決して最善のものとは限らないので、50年前も現在も50年後もわたしたちの生活は大きく変わりません。
- 「最新性愛症」は新しいものが欲しいだけでなく、新しいものの価値を見つけ出し、それを世の中に広めるアーリーアダプターとしての役割を担っています。
- 50年後の未来を切り開くのは誰の脳にも潜んでいる「最新性愛症」なのです。
新しいiPhoneが発売されると、今使っているiPhoneが壊れたわけでも、調子悪いわけでも、気に入らないわけでもないのに欲しくなって買ってしまう…
脳はとにかく新しいものが大好きです。
新しいものを見ると欲しくてたまらなくなり思わず飛びついてしまいます。
新しいものがどのような利益を生み出すかは重要ではなく、とにかく「新しい」という一点のみが重要なのです。
このように最新技術の役割を過大評価して愛して止まない脳の傾向を「最新性愛症」と呼びます。
50年後の未来を想像してみよう
日常生活はどのように変わっているのでしょうか?
わくわくして想像する人もいるでしょう。
しかし50年前に未来を想像した人々は、今わたしたちが生きている現代社会に対して奇妙なイメージを抱いているでしょう。
50年前に想像した未来予想図は、
ガラス張りの超高層ビル群の中を空飛ぶ車が飛び交っている未来都市
プラスチックのカプセルが人々の住居
職場は海底都市にあり海中を走るリニアモーターカーで通勤
月でのんびり過ごす夏のバカンス
食事は錠剤で栄養補給
親友はロボットで面倒なしがらみは一切なし
買い物はジェットパックでスーパーまでひとっ飛び
そんなイメージだったでしょう。
しかし残念ながらあなたのまわりの世界はまったくそのようにはなっていません。
あなたはイスに座っています。
イスは古代エジプトにファラオがいたころの発明品です。
あなたはズボンをはいています。
ズボンは5000年以上前に発明され、紀元前750年ころにゲルマン人によって現代の形態に改良されました。
あなたは靴をはいています。
靴は氷河期に発明されたものです。
本棚は先端技術のプラスチックではなく、世界最古の建材である木製です。
あなたは紀元前2世紀ころに発明された紙に印刷された文章を読んでいます。
あなたは古代ローマ時代に生まれたフォークを使って死んだ動物の断片と植物を食べています。
あなたの生きている現代社会は50年前とほとんど何も変わっていません。
しかしこれから先の50年後は違うかもしれません。
素晴らしい未来が待っているかもしれません。
もしかしたらあなたはそのような期待を持っているかもしれません。
しかしそれもきっと期待外れに終わるでしょう。
50年以上前から存在しているテクノロジーは、50年後もおそらくまだ現役で存在しているはずです。
ところが登場してからまだ数年にしかならないテクノロジーは、何年か先にはすでに過去の産物となっているでしょう。
数百年もの間、技術革新の荒波を乗り越えてきたものは、これから先も生き残っていきます。
長い間存在しているということは、それが何か特別なものを備えているという証拠に他なりません。
その特別なものが何なのかをわたしたちが常に理解しているとは限りません。
新しいものが最善のものとは限らない
わたしたちが未来を想像する時には必ず最先端の発明に必要以上に重きを置いてしまいがちです。
そして昔からあるテクノロジーの役割を過小評価してしまいます。
宇宙旅行や、今とはまったく違う近代的な未来都市を夢見がちです。
脳は新しいものをこよなく好む「最新性愛症」の傾向があります。
しかし最先端をいくものは、わたしたちが思うよりもはやく消滅してしまいます。
ですから50年後の未来もきっと現在の生活とほとんど変わらないはずです。
“未来予想図の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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もちろん魔法のようなテクノロジーを用いたとされる新しい商品やサービスの出現はいたるところで見られるでしょう。
しかしそのほとんどは短い命しか授けられていません。
新しいものはただ新しいだけで決して最善のものとは限らないのです。
ほとんどの新しいものは時間がたてば歴史の中で無価値なものとしてあっという間にフィルターにかけられて除去されてしまうのです。
「最新性愛症」の存在価値はアーリーアダプターにあり
「最新性愛症」はただただ新しいもの好きという性質ですが、実はイノベーションの世界では重要な役割を担っています。
それは「最新性愛症」の人は「アーリーアダプター」であることです。
アーリーアダプターとは、新しい商品やサービスを比較的早期の段階で使う人のことを指します。
とにかく新しいもの、革新的な製品を早い段階で手に入れて、そしてそれを評価していきます。
ですからアーリーアダプターは他の潜在的なユーザーに大きな影響をあたえるオピニオンリーダーと評されています。
アーリーアダプターは新商品やサービスの導入期に発生して、市場の13.5%を占めると言われています。
流行に敏感であり、常に情報収集をしていて、先見の明があるビジョナリーとされています。
ですから新しいものを流行させるにはまずはアーリーアダプターの心をつかむことが重要なのです。
アーリーアダプターは社会の価値観との合意やズレにとても敏感です。
ですからアーリーアダプターの口コミの評価は他の消費者層へ大きな影響をもたらします。
新しいものは買うべきなのか?買うのを控えるべきなのか?
新しいものを使うとどのように生活が豊かになるのか
新しいもので自分に利益は発生するのか
アーリーアダプターに受け入れられるか否かによって、新商品やサービスが普及するかしないかが決まると言っても過言ではないでしょう。
アーリーアダプターはイノベーションの世界において重要な位置を担っているのです。
”イノベーションの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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誰の脳にも備わっている「最新性愛症」ですが、それをアーリーアダプターとして活用するかしないかはあなた次第です。
しかし一部の「最新性愛症」の性質が強いアーリーアダプターたちによって未来が切り開かれていることは確かなことです。
新しいものを見ると欲しくなってしまう…これは脳の本能です。
脳に潜んでいる「最新性愛症」を表に出すか出さないか…それだけの違いです。
“「最新性愛症」の脳科学”のまとめ
新しいもの好きの人の性格である「最新性愛症」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 新しいものを見ると欲しくてたまらくなってしまう脳の性質を「最新性愛症」と呼びます。
- 新しいものは決して最善のものとは限らないので、50年前も現在も50年後もわたしたちの生活は大きく変わりません。
- 「最新性愛症」は新しいものが欲しいだけでなく、新しいものの価値を見つけ出し、それを世の中に広めるアーリーアダプターとしての役割を担っています。
- 50年後の未来を切り開くのは誰の脳にも潜んでいる「最新性愛症」なのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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