虚言癖(嘘つき)は治らないの?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 虚言癖(嘘つき)の意味と原因と特徴を脳科学で探ることで虚言癖(嘘つき)は治るのか?またどのように対応したらよいの?がわかります。
虚言癖(嘘つき)の脳科学
“虚言癖(嘘つき)の意味と原因と特徴の脳科学”
- 虚言癖(嘘つき)の人の脳には虚言で塗り固められた理想のバーチャルな世界が広がっています。
- そしてその自己世界に陶酔しているのです。
- 相手の目を見ることで相手の嘘を見抜くこともありますしあなたの目からウソがばれることもあります。
- 嘘つきは病気ではないので脳科学的にはおそらく治りません。
- 嘘つきは脳の個性のひとつとして受け入れることが一番の対応法です。
虚言癖の脳科学
虚言癖(きょげんへき=嘘つき)とはどうしても嘘を繰り返してしまう性質のことを言います。
しかし日常的に嘘をつくような嘘つきの人には困ってしまいますよね。
嘘つきの人は信用できませんし時にはトラブルの種にもなります。
虚言癖の原因や特徴について心理学的に探った記事はよく見かけます。
“他人から注目され認められたい“
“自分の弱点やミスを隠してプライドを保ちたい=自分に自信がない“
これが虚言癖の2大原因です。
そして虚言癖の特徴は“嘘をつくことに罪悪感がないので当たり前のように嘘をつく“ことです。
嘘つきの人は自分でも何が嘘で何が現実なのかわからなくなっていることさえあります。
嘘つきの人の脳では自分の記憶がうまくコントロールされています。
脳の中の記憶はその正確性と真偽の観点から4つのパターンに分けられます。
① 自分の脳では正しい記憶だという確信が高くて実際にも正しい場合
② 自分の脳では正しい記憶だという確信が高いのに実際には間違えている場合
③ 自分の脳では正しい記憶だという確信が低いのに実際は正しい場合
④ 自分の脳では正しい記憶だという確信が低くて実際にも間違えている場合
つまり確信犯的に嘘をついているのです。
虚言癖の脳科学-その1
嘘つきの人は自分の脳の正しい記憶の世界と実際には間違えている自分で作り上げた理想のバーチャルな世界を持っています。
しかも理想のバーチャルな世界の比重が非常に高いので時には自分自身すらだまされてしまうのです。
理想のバーチャルな世界に浸っている時はたいがいテンションが高くなります。
嘘をついている自分の言葉や行動が脳にフィードバックされてますますバーチャルな世界が築かれていくのです。
それでは正しい人の脳の①と嘘つきの人の脳の②では脳の働くはどのように違うのでしょうか?
正しい人の脳の①では脳の中の海馬が活動します。
海馬は脳の中で記憶をつかさどる中枢部分です。
“記憶の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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海馬の正しい記憶が働いているので正しい言葉や行動が選択されるのです。
嘘つきの②の脳では海馬は活動していません。
代わりに側頭葉、後頭葉、前頭葉などの脳の中のさまざまな部分が活動しています。
虚言癖の脳科学-その2
嘘つきの脳では海馬にある正しい記憶は働かずそれを代償するように脳の色々な部分が働いてバーチャルな世界を作り上げているのです。
嘘つきの脳は通常とは違う脳の活動をしていますので心理的にどうこうできるような簡単な問題ではないのです。
ここで脳の活動を調べなくとも嘘つきかどうかがある程度わかってしまう方法があります。
あなたの嘘は目でバレている
人は嘘をつくときに表情でその嘘を隠そうとします。
顔の表情を作る顔面の筋肉は随意筋といって意図的に自由に動かすことができます。
笑顔であったりヘン顔であったりドヤ顔であったり自由自在です。
作った表情で本心をいくらでもカモフラージュできます。
特に嘘つきの人は顔の表情を作るのが得意です。
敏感な人は相手の嘘を顔の表情で気づくことができます。
そんな感じです。
“目”で嘘がバレているのです。
顔の中でも目の周りの筋肉だけは不随意筋といって意識的に制御ができません。
虚言癖の脳科学-その3
相手の嘘を見抜くには目や目の周りの表情をじっくり観察することで本心を探ることができるのです。
ちなみに“目を読む”能力は男性よりも女性の方が得意です。
なんて言いますがこれは脳科学的に証明された事実です。
男性が相手の心理状態をうまく認識できないことを示すデータは数多く示されています。
さらにおもしろい研究があります。
男性は同姓よりも異性を相手にした時の方が目から感情を読み取るのが下手です。
相手が男性の場合は90%近く相手の感情を読み取れました。
しかし相手が女性の場合には75%に低下します。
相手の心を察する時に活発に働くはずの脳の中の前帯状皮質が女性の目を読み取る時には全然働いていませんでした。
男性の脳は異性よりも同姓の感情や表情を読むことに特化しているのです。
ですから男性は一生懸命女性の目を見て嘘を見破ろうとしてもうまくいかないことが多いのです。
虚言癖(嘘つき)は治らない?
最後は嘘つきにはどのように対応したらいいのか?という問題を考えてみましょう。
赤ちゃんの脳は現実と夢の世界を区別できていません。
成長するにつれて現実と夢の区別がついていきます。
それに伴い脳の記憶もしっかりしていきます。
ですから子供はまだ脳の中の世界が完成していませんので簡単にバーチャルな世界を作り上げることができます。
記憶に関しても子供の脳ではまだ正しい記憶をしっかりとどめておくことができません。
子供の言うことが二転三転したりするのは何も嘘を言いたくて言っているわけではなく脳が完成していないため仕方ないのです。
虚言癖の脳科学-その4
嘘つきの脳は子供の未完成の脳の状態に似ています。
リアルな世界とバーチャルな世界が混在していて記憶も定かではありません。
言うならば嘘つきの人は子供っぽさが抜け切れていないのかもしれません。
リアルとバーチャルの世界感の境界認識が不得意なまま成長してしまったのでしょう。
そもそも治る治らないではなく一つの個性的な脳の特徴としてとらえるしかありません。
心理的には様々な提言がされています。
あまり関わらないようにする。
話に聞き入らない。
聞いているフリをして聞き流す。
色々な対応法がありますがどれも決定的ではありません。
虚言癖の脳科学-その5
ただ1つ脳科学的に嘘つきの人にできることがあるとすればそれは相手に虚言癖があることを伝えることです。
嘘つきは自覚症状がないことがとても多いです。
リアルとバーチャルな世界が入り混じっているので本人さえも何が本物で何が嘘かわからなくなっていることがたびたびです。
ですから脳の中にバーチャルな世界が広がっていることを教えてあげることは一つの対応法になるかもしれません。
そうなるとそれこそ何がリアルで何がバーチャルか誰もわかりません。
嘘つきもその人の個性なのですから最終的にはどんな形であれあなたの脳が嘘つきを受け入れることができるかどうかにかかっているのです。
医学の常識も意外と嘘だらけですのでくれぐれもご注意くださいね。
“虚言癖(嘘つき)の意味と原因と特徴の脳科学”のまとめ
虚言癖(嘘つき)の意味と原因と特徴を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 虚言癖(嘘つき)の人の脳には虚言で塗り固められた理想のバーチャルな世界が広がっています。
- そしてその自己世界に陶酔しているのです。
- 相手の目を見ることで相手の嘘を見抜くこともありますしあなたの目からウソがばれることもあります。
- 嘘つきは病気ではないので脳科学的にはおそらく治りません。
- 嘘つきは脳の個性のひとつとして受け入れることが一番の対応法です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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