あなたは加齢臭をケアしているでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
加齢臭を脳科学で説き明かします。
サウナと加齢臭
加齢臭の脳科学
- 狭く閉鎖されたサウナ室で加齢臭の嫌なにおいが立ち込めると最悪です。
- 加齢とともに発生するくさい体臭には、加齢臭の他にミドル脂臭があります。
- 加齢臭とミドル脂臭の主な原因は、生活習慣病とストレスですが、医学的には加齢に伴う正常な反応であり、完全に予防することはできません。
- 脳はくさいにおいを1度記憶すると、その人のことを敵と判断して嫌い続けます。
- 加齢臭は予防できなくとも、極力抑え込むことは努力次第でいくらでも可能です。
- ぜひ自分の体臭をセルフチェックして、加齢臭対策をしっかりしてからサウナに行きましょう。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
ところで、ほとんどのサウナ―はサウナ室に入る前に、まずは頭、顔、体をよく洗っているはずです。
またサウナでしっかり汗をかいた後も頭、顔、体をよく洗っているはずです。
しかし中にはあまり洗わずにサウナ室に入ったり、サウナ後に洗わずに済ませてしまったりする人もいるはずです。
頭、顔、体をしっかり洗わずにサウナ室で汗をかくと、自分では気づかなくても汗臭い嫌なにおいを発する可能性があります。
特に気になるのが加齢臭です。
加齢臭は自分では気がつかないうちに、嫌なにおいを発していることもあるので要注意です。
加齢臭を良く知らないと、正しい対策をすることもできません。
自分はまだまだ大丈夫…なんて思っていませんか?
加齢臭が脳にどのような影響をおよぼすかご存じでしょうか?
加齢臭を脳科学で説き明かしていきましょう。
加齢臭とは?
人には誰にも、もともとの体臭があります。
私たち人間の体には、皮膚のうるおいを保つための皮脂や体内の熱を調節する汗を分泌する皮脂腺があります。
”汗の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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分泌された直後の皮脂や汗はほとんどにおいませんが、皮膚表面に存在するさまざまな菌の働きで酸化・分解が起こると、においの原因となるガスを放つようになります。
このにおいのもととなる成分は、数百種類以上にもおよぶと言われています。
この中で、年齢を重ねて、特に中高年になると、男女問わず特有の体臭がするようになります。
加齢臭は有名ですが、もう1つ知っておくべきなのが「ミドル脂臭」です。
「ミドル脂臭」は主に汗に含まれる成分が原因で発生しますが、多くの人はこれらをまとめて加齢臭と認識しています。
いずれにしても自分のにおいの原因が何なのかをしっかりと理解しないで、場当たり的な対応をしていると、においの問題はなかなか解決しません。
加齢臭
年齢を重ねると、皮脂腺の中のパルミトオレイン酸と呼ばれる脂肪酸が増加し、同時に過酸化脂質も増えはじめます。
この過酸化脂質がパルミトオレイン酸と結びつくことで、酸化・分解されてできるのが加齢臭の元である「ノネナール」という物質です。
加齢臭は「油くさいにおい」と「青くさいにおい」を合わせたようなにおいで、主に頭皮や耳の裏、背中などから発生します。
加齢臭は生活習慣病と大きな関係があると言われています。
生活習慣病になりやすい生活…食べ物は肉類が好き、お酒もたばこも大好き、運動不足、仕事で不規則な生活にストレスなど、年齢を重ね、不摂生を重ねていると、血管中にコレステロールが蓄積されていきます。
同様に皮脂腺にも脂肪分が増えていきます。
分解される脂肪分が多くなるということは、加齢臭の元となるノネナールの量が多くなるということです。
ですから生活習慣病予備軍の人たちは、加齢臭も強くなりやすくなります。
また加齢臭にはストレスも大きく影響します。
ストレスを感じると体内の活性酸素が増えます。
ノネナールは脂肪酸(パルミトオレイン酸)と過酸化脂質が結びついて作られますが、活性酸素が大量に発生すると、過酸化脂質が増えます。
つまりストレスが増えると加齢臭も強くなるのです。
ミドル脂臭
最近の体臭研究で新たに発見されたのが「ミドル脂臭」という体臭です。
ミドル脂臭は「ジアセチル」という物質が原因です。
ジアセチルは、汗に含まれる乳酸が皮膚常在菌によって代謝され作り出される物質です。
「使い古した油のようなにおい」で、加齢臭と比較できないくらい強いにおいが後頭部や首の後ろ側などから発生します。
加齢臭が発生するのは40~50代以上の人が多いとされますが、ミドル脂臭は30~40代の比較的若い世代に多いのが特徴です。
ミドル脂臭も加齢臭と同じく、生活習慣やストレスが原因で発生します。
加齢臭のセルフチェックをしよう!
他人の体臭は気になるものです。
しかし意外と自分の体臭に関しては無頓着な人は少なくありません。
においのケアとして、頭や顔や体を洗うことは、 清潔な身だしなみの基本ですが、とかくパパッと、そしてササッと洗っておしまい…という自己流の人が多いようです。
20~50代のビジネスパーソンを対象とした体臭に関する調査では、職場で気をつけている身だしなみのトップは「自分の体から発するにおい(42.2%)」でした。
また、「自分のにおいの変化を感じたことがある(口臭以外)」とし た人は全体の6割(59.4%)で、男女ともに多くの人が過去のにおいとの変化を実感しています。
一見すると多くの人が自分の体臭を気にしているように聞こえますが、悪く言えば半数程度の人しか自分の体臭を気にしていないということになります。
一方で他人の体臭を気にする人は7割を超えています。
そもそも自分のにおいは普段から嗅ぎ慣れているので、なかなか感じにくいものです。
ですから普段から意識していないと、まわりの人から指摘されて初めて気づくことも少なくありません。
指摘してくれる人がいる場合はまだいい方で、体臭に関して他人に指摘するのはなかなか難しいものです。
ですから普段からの体臭のセルフチェックはとても大切です。
加齢臭は、一般的に頭皮や耳の裏、背中などから生じます。
以前は「加齢臭=男性」のイメージがありましたが、当然女性にも加齢臭は発生します。
女性の場合はブラジャーによる締め付けやムレによって胸元付近の皮脂に雑菌が繁殖しやすく、においが発生しやすくなります。
また襟口からも加齢臭が強く出ることがあります
首や耳の後ろ、背中は皮脂腺が多いとされていますが、洗い忘れや手が届きにくく洗いにくいなどの理由で加齢臭が特に発生しやすい場所とされていますので、ぜひ確認してみましょう。
汗の性状でも加齢臭はチェックできます。
べたつく汗が出る場合は、汗の中に血液中のミネラル成分が含まれている可能性があります。
ミネラル成分が皮膚に残り、それが皮脂腺にたまって酸化した古い皮脂と結びつくと、雑菌が繁殖し、加齢臭などのにおいが発生しやすくなります。
便秘も加齢臭の原因となります。
腸内のバランスが乱れて悪玉菌が優位になると便秘の原因になります。
便秘によって長時間体内に停滞した便から発生したにおい物質は血液に溶け込み、全身をめぐって汗や皮膚から体臭として外に出ます。
加齢臭は予防できる?
困りものなのに自分ではなかなか気がつきにくい厄介者の加齢臭ですが、では加齢臭を予防することはできるのでしょうか?
残念ながら、加齢臭の原因となるノネナールやミドル脂臭の原因となるジアセチルの分泌を完全に防止することはできません。
逆に、これらの物質が分泌されることは医学的には正常な反応であり、エネルギーがしっかりと代謝されている証明でもあります。
つまり、加齢臭やミドル脂臭は発生して当たり前であり、完全に予防することは不可能に近いと言えます。
しかし加齢臭を予防するのではなく、極力抑えることは可能です。
先ほども説明したように、加齢臭、ミドル脂臭ともに生活習慣やストレスが大きく影響していますので、体の内側からケアすることが大切です。
肉類、マヨネーズ、バターなどの脂質摂取を控え、活性酸素を減らす効果のあるビタミンCやEを含む野菜や果物類を充分に摂るようにします。
また活性酸素によってダメージを受けた細胞を再生する「抗酸化物質」を多く摂取することも重要で、主に緑茶のカテキン、ゴマに含まれるセサミノール、赤ワインに豊富なポリフェノール、大豆のイソフラボンなどに含まれています。
朝食時に梅干しを食べるのも効果的です。
梅干しは口臭予防だけでなく、すべての体臭を減少させます。
食事にはわさび、ショウガ、ごま、ねぎ、大根おろしなどの薬味を取り入れてみるのもお勧めです。
これらには胃液の分泌を高めて、血液を浄化する作用があるので、加齢臭防止につながります。
また加齢臭のセルフチェックをこまめに行い、特に頭皮、首や耳の後ろ、胸元や脇、背中をしっかりと洗うことが効果的です。
入浴する時は、体を洗ってから湯船に浸かるという人が多いかもしれません。
しかし実際は、湯船に浸かってから体を洗う方が、効果的に汚れを落とすことができます。
まずは全身をざっとシャワーで流し、体が温まるまで湯船に浸かって毛穴を開きます。
それから頭、体、顔の順番で洗うと、全身の汚れをきれいに落とすことができます。
頭皮はお湯でしっかりすすぐだけでも汚れの80%は落とすことができます。
残りの20%の汚れの洗浄と頭皮のマッサージがシャンプーの役割です。
シャンプーやコンディショナーはしっかりと洗い流してください。
すすぎ残しは雑菌を繁殖させやすくさせるので逆効果となりかねません。
また入浴後は髪をしっかりと乾かすことも大切です。
髪を塗れたままにしておくと、雑菌が繁殖しやすく加齢臭の原因となります。
顔や体の洗い方についても、加齢臭予防にはそれなりの対策が必要です。
また、ただ洗いっぱなしではなく、入浴後は保湿などのスキンケアも忘れずに行いましょう。
加齢臭を予防することはできなくとも、極力抑えることは努力次第でいくらでも可能です。
加齢臭が脳におよぼす影響とは?
加齢臭はまわりの人にくさいにおいを発散して不快にするだけでなく、脳にも影響をおよぼしています。
心理的に人の印象を決定づける一番の要因は“におい”です。
しかも、脳はひとたび「くさい人」と認識すると、その人を見るたびに自動的に「くさい」という記憶を呼び起こすようになります。
つまり「くさい」という印象を相手の脳に1度でも与えてしまったら、いくらきれいに頭や顔や体を洗っても、ずっと「くさい人」だと思われ、嫌われ続けてしまうことになるのです。
この脳の作用は、脳科学的に証明されていて、「プルースト効果」と呼ばれています。
“プルースト効果の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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プルースト効果
『プルースト効果』
ある特定の香りから、それにまつわる過去の記憶が呼び覚まされる心理現象。
2013年、この現象により脳の一部の働きが活性化し、健康状態も改善するという検証結果を、花王感性科学研究所や愛知医科大などの研究グループがまとめ、日本ストレス学会で発表した。
プルーストとはフランスの作家のマルセル・プルーストのことです。
彼はその半生をかけて執筆した大作『失われた時を求めて』の中で、「マドレーヌが焼けた匂いとともに昔の記憶が甦(よみがえ)る」という一節を記していますが、ここから「プルースト効果」という言葉が生まれました。
においで記憶がフラッシュバックする事は、私たちの日常においてもよくある出来事です。
「街ですれ違った人の香水の香りを嗅いだら、昔の恋人を思い出した」
「塩素のにおいを嗅ぐと、子供時代にプールで遊んだ思い出がよみがえる」
そのような経験をしたことがある人は少なくないはずです。
それと同じように、「くさい」という印象は脳の中に残り続けます。
その原因として考えられているのが、嗅覚の情報を処理する第1次嗅覚野が存在する位置です。
脳の中で第1次嗅覚野は記憶を司(つかさど)る海馬と隣り合わせになっていて、においは記憶と非常に強く結びついています。
その証拠に、認知症ではまずにおいにまつわる感覚や記憶から失われていくと言われています。
においは、におい成分の分子が空気中を飛んできて、鼻の粘膜にある受容体でキャッチされます。
その後、におい成分の分子と受容体の化学反応が起きて、脳に信号が送られて、「いいにおいがする」「くさい」などと感じ、判断するようにできています。
またこれと並行して、扁桃体という場所に情報が送られ、意思とは関係なく感情が起こります。
このため嗅覚は生物的な本能を引き起こしやすいとされています。
本能の中でも生き残っていくために、特に重要なのが危険を察知することです。
視覚や聴覚は「遠受容性感覚」と呼ばれ、対象物が遠いところにあっても感じたり、察知したりすることができます。
それに対して、味覚や触覚は「近受容性感覚」と呼ばれ、実際に対象物に触れないとそれがどのようなものかわかりません。
嗅覚はその間にある感覚…つまりにおいを嗅いでから安全か危険かを判断していると、敵の危険にさらされてしまうことになります。
そのため知らないにおいや今までと違うにおい、また脳が嫌うにおいを察知すると、脳の中で記憶などの情報を処理して判断する過程を通り越して、理屈抜きで本能的に逃げないといけないという嫌な気持ちにさせるのです。
そしてその情報はしっかりと脳に刻み込まれます。
このようにして人類は地球上で反映してきたのです。
ですから、脳はひとたび「くさい人」と認識すると、その人を見るたびに自動的に「くさい」という記憶を呼び起こし、危険を回避するわけです。
さらに言えば、においに対する判断力は男女でも違いがあります。
一般に、女性は男性よりもにおいの閾値が低く、敏感だと言われています。
かつて男性は狩りに出かけたり、労働作業をしたりする活動を中心に生活していたので、他人と密接に関係する状況があまりありませんでした。
そのため、においに注意するよりは、見たもの、聴いたものを重視するように進化してきました。
一方で、女性は集落に残り、狭い空間で他人と一緒に作業することが多く、視覚や聴覚よりもにおいに注意する環境で生活をしてきました。
このように敵味方を、男性は視覚、聴覚で判断し、女性は嗅覚で判断して生き残ってきました。
そのため女性の方がにおいには敏感であり、自分の加齢臭もしっかりセルフチェックしてケアできるのです。
相手の脳に敵と思わせてしまう加齢臭。
個人差はありますが、加齢臭は誰にでも起こりうる加齢現象です。
自分で加齢臭を自覚したり、他人に加齢臭を指摘されたりした時は、よりよい生活を送るための「ありがたいきっかけ」として認識し、しっかりと加齢臭対策をしましょう。
“加齢臭の脳科学”のまとめ
加齢臭を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 狭く閉鎖されたサウナ室で加齢臭の嫌なにおいが立ち込めると最悪です。
- 加齢とともに発生するくさい体臭には、加齢臭の他にミドル脂臭があります。
- 加齢臭とミドル脂臭の主な原因は、生活習慣病とストレスですが、医学的には加齢に伴う正常な反応であり、完全に予防することはできません。
- 脳はくさいにおいを1度記憶すると、その人のことを敵と判断して嫌い続けます。
- 加齢臭は予防できなくとも、極力抑え込むことは努力次第でいくらでも可能です。
- ぜひ自分の体臭をセルフチェックして、加齢臭対策をしっかりしてからサウナに行きましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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