サウナの脳科学 脳を科学する

【サウナの脳科学】濡れ頭巾ちゃんから学ぶオーバーフロー 「アハ体験」を脳科学で探る

オーバーフロー-A1

オーバーフローはなぜ多幸感をもたらすのでしょうか?

オーバーフローを脳はどのように感じるでしょうか?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

オーバーフローが多幸感をもたらす要因の1つである「アハ体験」を脳科学で説き明かします。

 

濡れ頭巾ちゃんが愛して止まないオーバーフロー

オーバーフロー-1-min

「アハ体験」の脳科学

  • 銭湯サウナにおけるオーバーフローとは、浴槽が満水となり水が上縁を超えてあふれ出ることです。
  • オーバーフローが多幸感をもたらす理由は、①温度感に加えて視覚、聴覚が刺激される、②オーバーフローの対称性、③オーバーフローの経験と記憶の相乗効果、これらによって脳内麻薬であるエンドルフィンが分泌されることにあります。
  • それに加えて、オーバーフローは「あ、なるほど!」というひらめき体験である「アハ体験」として脳に強い感情的な反応を引き起こし、その結果として脳内の神経細胞が一斉に活動することで脳内麻薬であるエンドルフィンの分泌をうながしています。
  • 脳によって予期せぬ驚きであるオーバーフローを体験して脳を活性化し多幸感を得てみてください。

現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。

 

“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

サウナブーム-A2
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。

 

温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。

 

トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。

 

これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。

 

”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

サウナでととのう-A3
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。

 

サウナでととのうためには、心地よいサウナだけでは不十分であり、水風呂は欠かせない要素です。

 

「サウナトランスの極意は水風呂にあり」とも言えます。

 

“水風呂の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

水風呂-A1
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サウナの情報番組である「サウナを愛でたい」をご存じでしょうか。

 

ちなみに「サウナを愛でたい」はBS朝日で毎週月曜日22時30分から放送されています。

 

「サウナを愛でたい」でも、プロサウナ―である濡れ頭巾ちゃんが水風呂の素晴らしさを伝えています。

 

濡れ頭巾ちゃんはサウナに入る前に水風呂に浸かるという「水通し」を毎回しています。

 

へなお
自分も濡れ頭巾ちゃんを真似して水通しを行うようにしていますが、水通しをするとサウナでの蒸され具合がより一層心地よいものになる感じがします。

 

そして当然サウナから出たあとも水風呂を堪能します。

 

その時に施設によっては、水風呂に水が注ぎ続いていて常に水風呂が満杯になっていることがあります。

 

そんな水風呂にバシャーンと入ると、水が一気にあふれ出します。

 

この現象は「オーバーフロー」と呼ばれますが、濡れ頭巾ちゃんは「オーバーフローのために生きている」「オーバーフローは生き甲斐」と言っています。

 

まさに水風呂に心奪われた男と言えるでしょう。

 

サウナでじっくり蒸された後にみずがあふれだすオーバーフローを楽しみながら水風呂に入る…この時に得も言われぬ快感、そして多幸感が訪れます。

 

自分が最近体感したオーバーフローは、神奈川県横浜市にある「SKYSPA YOKOHAMA」です。

 

オーバーフロー-5

 

へなお
SKYSPA YOKOHAMAでは水風呂のみならずすべての浴槽から絶え間なくお湯や水があふれ出し、まさにオーバーフロー天国です。

 

ではなぜオーバーフローは多幸感をもたらすのでしょうか?

 

そしてオーバーフローを脳はどのように感じるでしょうか?

 

そこには「アハ体験」が大きく関わっています。

 

オーバーフローが多幸感をもたらす要因の1つである「アハ体験」を脳科学で説き明かします。

 

 

オーバーフローとは?

オーバーフロー-2-min

そもそもオーバーフローとはどのような意味なのでしょうか?

 

オーバーフロー

『オーバーフロー』

① 水などがあふれること。

② 余分な液体の放出口。排水口。

③ コンピュータで、四則演算の結果が取り扱い可能な最大値を上回り、正しく計算できなくなること。桁 (けた) あふれ。4人口・商品などの過剰。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

 

建築用語としてのオーバーフローは「洗面器や浴槽や台所の流し台のシンクなどに水を入れた際に、満水になった水がこれらの機器の上縁を超えてあふれ出ること」と説明されています。

 

つまり1番目の意味ですね。

 

自宅のお風呂でオーバーフローを体感することはまずないでしょう。

 

せっかく沸かしたお湯をあふれさせてしまうのはもったいないですよね。

 

ですから銭湯で浴槽に絶え間なくお湯や水が注がれ満タンになった湯船にザバーンと入りオーバーフローを楽しむのは、銭湯の醍醐味の1つと言えるでしょう。

 

 

オーバーフローが多幸感を生み出す理由

オーバーフロー-3-min

それでは、脳はオーバーフローをどのように感じているのでしょうか?

 

そして、なぜオーバーフローは多幸感を生み出すのでしょうか?

 

「サウナを愛でたい」の番組では、脳がオーバーフローをどのように感じるのかを2人の先生が解説しています。

 

1人目は精神科の樺沢紫苑(かばさわしおん)先生です。

 

樺沢先生は映画評論家、作家、YouTuberとしても活躍されています。

 

2024年1月には『月間 樺沢紫苑』が発刊されました。

 

番組内で樺沢先生はオーバーフローが脳に快感を生み出す理由を以下のように説明しています。

 

そもそも湯船や水風呂に浸かるだけでは脳は温度感しか感じません。

 

熱いとか冷たいとかそのような感覚です。

 

そこに入浴時にオーバーフローの要素が加わると、水があふれだす目からの情報=視覚情報と、バシャーンと水があふれだす音の情報=聴覚情報が加わります。

 

つまり人間の本能である五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうちの3つ(触覚、視覚、聴覚)が刺激されることによって、普通では感じ得ない快感が生み出される。

 

もう1人は脳科学者の澤口俊之先生です。

 

澤口先生は高次脳機能の研究を専門とする認知神経科学者です。

 

番組内で澤口先生はオーバーフローが脳に快感を生み出す理由を以下のように説明しています。

 

オーバーフローが脳に快感を生み出す理由は、脳内麻薬であるエンドルフィンにあります。

 

エンドルフィンは脳内で産生され活性化される物質で、麻薬であるモルヒネと同様の働きをします。

 

エンドルフィンは脳の中で報酬系の回路に深く関わり、快感、多幸感をもたらします。

 

また鎮痛効果も示します。

 

満杯の浴槽に入ると、水は前後左右にきれいな対称性をもってあふれ出します。

 

この対称性は脳にとって心地よくエンドルフィンの分泌をうながします。

 

また自分の過去の経験として「オーバーフローは快感である」という記憶が脳に刻み込まれていると、同じ経験をした時に相乗効果によって、より多くのエンドルフィンが分泌されて、快感、多幸感をもたらします。

 

濡れ頭巾ちゃんはオーバーフローについて、「昔から気持ち良く感じる」「なぜオーバーフローが気持ちいいか考えてもわからない」「水の上層部の余分なものがあふれ出すことに多幸感を感じるが、頭で考えているわけではなく自然に湧き出る感情」、このように語っています。

 

これはまさに2人の先生方が解説している脳の働きに合致していると言えるでしょう。

 

 

へなお流オーバーフローの脳科学

オーバーフロー-4-min

物事の見方はさまざまであり、脳がどのように感じ、そしてどのような反応をするのかを説明することは簡単なことではありません。

 

研究では説明しきれないような、不思議な反応をするのが脳です。

 

そこで2人の先生方とは違った視点で、お風呂にためたお湯や水があふれるオーバーフローを体験すると脳はどのような反応を示すのかを脳科学で探ってみましょう。

 

そこでキーワードとなるのが「アハ体験」です。

 

ココがポイント

浴槽から水があふれるオーバーフローは、予期せぬ出来事や驚きの要素を含み、物理的な法則や常識に反するように脳は感じるため、脳の認知系が刺激され、問題解決や理解のために神経細胞が一斉に活動し、脳の報酬系が活性化しエンドルフィンが分泌されやすくなると考えられます。

 

エンドルフィンは先ほども説明しましたが、快楽や興奮を感じる神経伝達物質です。

 

これは、「アハ体験」と呼ばれるひらめきの瞬間に似ている状況と言えます。

 

へなお
では「アハ体験」とはなんなのでしょう?

 

「アハ体験」とは?

「アハ体験」は、ドイツの心理学者カール・ビューラーが提唱した心理学上の概念で、「未知の物事に関する知覚関係を瞬間的に認識すること」を指します。

 

この体験は以下の4つの特徴から導かれます。

 

① アハ体験は突然起こる。

 

② 問題解決がスムーズに行われる。 

 

③ アハ体験は肯定的な感情を引き起こす。

 

④ ひらめいた人はそのひらめきの正確さに疑いを持たない。

 

これらの特性は、研究上では、分割されておらずお互い結びついています。

 

高度な円滑な処理は、突然それが予想外に起こると、肯定的感情が高まるような評価に導くだけでなく、判断に対してより高い正確性、あるいは真偽の洞察をもたらします。

 

また、「アハ体験」は「あ、なるほど!というひらめきの体験」のことで、画像を見続けて変化を当てる問題や、なぞなぞなどで手軽にできるものです。

 

アハ体験の「アハ」は英語の「aha」で、「なるほど」という意味をもっています。

 

したがって、「アハ体験」は新しい洞察や理解を得たときに脳が感じる特別な瞬間であり、これによりわたしたちの思考や学習が深まると言えます。

 

「アハ体験」の脳科学

「アハ体験」の瞬間、脳内では特別なことが起こります。

 

人間の脳は、「アハ!体験」時にはっきりと異なる反応を示します。

 

具体的には、0.1秒ほどの短い時間に、脳の神経細胞が一斉に活動します。

 

これは、私たちが何かをひらめいた瞬間のメカニズムそのものといえます。

 

また、この神経細胞の一斉活動と同時に、報酬系の物質であるエンドルフィンがタイミングよく分泌されることが知られています。

 

この神経細胞の一斉活動と、エンドルフィンの分泌こそが、「アハ体験」の「わかった!」という感覚の正体だと考えられています1

 

したがって、「アハ体験」は、新しい洞察や理解を得たときに脳が感じる特別な瞬間であり、これにより私たちの思考や学習が深まると言えます。

 

このような体験を通じて、脳の全細胞が活動を活発化させ、幸せを感じるホルモンが大量に分泌されるとも言われています。

 

これが「アハ体験」の脳における感じ方です。

 

オーバーフローによる「アハ体験」

浴槽から水があふれるオーバーフローは、通常の生活ではあまり起こり得ない現象です。

 

例えば、自分の家のお風呂で浴槽からお湯があふれるようなことをすると、水道代や掃除の手間などを考えて、ストレスを感じたりや不快感や罪悪感を生じる人もいるはずです。

 

しかしよくよく考えると、わたしたちの生活の中にはオーバーフローが時々登場します。

 

日本酒を注ぐ時にお皿の上や升の中にグラスを置いて、グラスからあふれるように注ぐ「日本酒の盛りこぼし」。

 

どんぶりのご飯の上にあふれるようにいくらを注ぐ「こぼれいくら丼」。

 

自然の中では川や湖から水が流れ落ちる「滝」も一種のオーバーフローと言えるでしょう。

 

いずれも脳にとっては決まった容量の器から液体があふれ出すという予期せぬ驚きであり、そこからは新鮮さや興味が湧き出て、脳は「アハ体験」として強い感情的な反応を示すわけです。

 

オーバーフローによって脳の神経細胞が一斉に活動することが重要であり、これにより脳の報酬系回路が一気に活性化して、脳内麻薬であるエンドルフィンが多量に分泌されるのです。

 

当然オーバーフローを脳がどのように感じるかは、様々な要因によって変化します。

 

しかし、浴槽から水があふれだすオーバーフローは、脳にとって刺激的な「アハ体験」であると言えるでしょう。

 

みなさんもぜひ銭湯でオーバーフローによる「アハ体験」をすることで脳を活性化してみてください。

 

へなお
「サウナ」についてもっと知りたい方は、こちらの書籍を参照してみてください。

 

 

へなお
ぜひ参考にしてみてください。

 

 

“「アハ体験」の脳科学”のまとめ

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オーバーフローが多幸感をもたらす要因の1つである「アハ体験」を脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 銭湯サウナにおけるオーバーフローとは、浴槽が満水となり水が上縁を超えてあふれ出ることです。
  • オーバーフローが多幸感をもたらす理由は、①温度感に加えて視覚、聴覚が刺激される、②オーバーフローの対称性、③オーバーフローの経験と記憶の相乗効果、これらによって脳内麻薬であるエンドルフィンが分泌されることにあります。
  • それに加えて、オーバーフローは「あ、なるほど!」というひらめき体験である「アハ体験」として脳に強い感情的な反応を引き起こし、その結果として脳内の神経細胞が一斉に活動することで脳内麻薬であるエンドルフィンの分泌をうながしています。
  • 脳によって予期せぬ驚きであるオーバーフローを体験して脳を活性化し多幸感を得てみてください。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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