脳を科学する 自己の脳科学

なぜ自分の誤りを認めず都合のいいように物事を処理しようとするのか?「確証バイアス」の意味を脳科学で探る

確証バイアス-A1

自分の誤りを認めず、自分の都合のいいように物事を処理しようとするのはなぜなのでしょう?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 自分の都合のいいように世界を回そうとする「確証バイアス」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。

 

目を背けても、真実はなくならない

確証バイアス-1-min

「確証バイアス」の脳科学

  • 新しい情報を自分の意見や信念に無理やり合わせて解釈する脳の本能を「確証バイアス」と呼びます。
  • 「確証バイアス」にはまり込むと、自分に都合の悪い“反対の証拠”を無視するようになります。
  • さまざまな予測は「確証バイアス」が強く作用していて、あいまいな表現によって当たる確率を上げています。
  • 「確証バイアス」を働かせて自分の都合のいいように物事を処理しても、決して真実にはたどり着けません。
  • 自分の都合の良さを捨てて、自分の誤りを認めてこそ、本当の世界は回るのです。

確証バイアス

『確証バイアス』

確証バイアスとは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。

認知バイアスの一種。

またその結果として稀な事象の起こる確率を過大評価しがちであることも知られている。

出典:確証バイアス - Wikipedia

 

へなお
たとえばダイエットを始めたとしましょう。

 

どのような方法でダイエットをしようかと迷った結果、「ABCダイエット法」というものを見つけたとしましょう。

 

へなお
ちなみにこれはあくまでも仮の話であり、「ABCダイエット法」なるダイエット法は存在しませんのでご注意ください。

 

詳しく調べると、ABCダイエット法はとても簡単にかなりの効果が期待されると評判のようです。

 

ABCダイエット法を始めてからは、毎日何度も体重計に乗りたくなります。

 

前日よりも体重が減っていれば、ダイエットはうまくいっていると嬉しくなります。

 

しかし逆に体重が増えていた時はどうでしょう。

 

ダイエットがうまくいっていないと落ち込むよりも、この程度の体重変動はよくあることで誤差範囲だと考えてしまいます。

 

こうして何か月か経過して結局体重はほとんど変わっていなくても、ABCダイエット法は効果があったと思い込むようになります。

 

“思い込みの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

思い込み-A1
参考#名前一文字変わってても気づかないだろ~思い込みをなくす方法を脳科学で説く

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へなお
これが「確証バイアス」です。

 

「確証バイアス」とは、新しい情報を自分の意見や信念に無理やり合わせて解釈する傾向のことを言います。

 

もっとわかりやすく言えば、「確証バイアス」とは、自分の考えと一致しない情報=“反対の証拠”を見て見ぬふりをして、自分を正当化しようとする脳の本能です。

 

「確証バイアス」はさきほどのダイエットのように、たいして害にならないパターンもありますが、時に大きな落とし穴となり危険を呼び込むこともあります。

 

たとえば会社の経営戦略会議のような重要な場面でも確証バイアスはよく登場します。

 

会議の出席者の前に並べられた資料には“新たな戦略が成功する可能性が高いことを示す証拠”ばかりが書き並べられています。

 

失敗する可能性、つまり“反対の証拠”についてはなにひとつとして記されていないので、その戦略に反対する人など誰もいません。

 

たとえその戦略がうまくいかなかったとしても、“特殊なケース”や“予測不能な事態”といった便利な言葉であっさりと片付けられてしまうでしょう。

 

へなお
これはとても危険なことです。

 

『目を背けても、真実はなくならない』

 

オルダス・ハクスリー(イギリスの作家)

 

しかしわたしたちは日常茶飯事、真実に目を背け続けています。

 

そもそも脳は危険が大嫌いなので、自分の都合の良いようにフィルターをかけて、自分に都合の悪い情報を取り除くことがとても得意です。

 

脳はたとえ“反対の証拠”を見つけても30分後には記憶から消し去ってしまうと言われています。

 

へなお
では真実に目を背けずに、自分に都合の悪い“反対の証拠”を脳にとどめるにはどうしたらよいのでしょう?

 

それは“特殊なケース”や“予測不能な事態”という言葉が出てきたらより注意深くなることです。

 

そのような場合にはほぼ間違いなく、その背後に“反対の証拠”が隠されています。

 

ですから自分の推測と矛盾するような事態が起きた場合には、注意深く自分の意見に反する証拠を探し出して書き留めておきましょう。

 

もっと言えば、自分の考えが正しいと思えば思うほど、その考えと矛盾する情報を積極的に探し出すくらいがちょうど良いのです。

 

へなお
ダイエットしているのに体重が減らない…そのような場合には、目を背けずに「ダイエットは失敗した」という真実に正直に向き合うべきなのです。

 

自分の誤りを認めてこそ真実は見えてくる

確証バイアス-2-min

自分の考えに疑いの目を向けることはとても難しいことです。

 

多くの人は「確証バイアス」によって、自分の誤りを認めず都合のいいように物事を処理しようとします。

 

しかしこれは脳の本能であり、ある意味仕方がないことです。

 

とはいえ、真実に目を背けてばかりでは決してうまく生きてはいけません。

 

へなお
では自分の誤りを認めるにはどれほどの自制心が必要なのでしょうか?

 

へなお
ここである研究をご紹介しましょう。

 

「2、4、6」と数字の書かれた紙があります。

 

被験者はそれに続く数字を予測することで、数字がどのようなルールで並んでいるかを当てます。

 

ルールに当てはまる数字を言い当てた場合には、「正解」と告げます。

 

一方で、ルールに当てはまらない数字であった場合には「不正解」と告げます。

 

数字は何度も挙げることができます。

 

そして数字を何度か挙げた後に、最終的にどのようなルールであるかを答えます。

 

へなお
ちょっとした謎かけです。

 

ほとんどの被験者は、続く数字を「8」と答え、「正解」と告げられます。

 

念のためにさらに「10」、「12」、「14」と数字を挙げていき、「正解」と告げられます。

 

これに基づいて被験者のほとんどが単純な結論を導き出します。

 

へなこさん
ルールは、最後の数字に2を加えた数字です。つまり偶数の並びです。

 

ところがこれは正しいルールではありません。

 

この課題の正しいルールにたどり着くには知恵を絞る必要があります。

 

ある被験者は続く数字をまずは「4」と答えます。

 

すると「不正解」と告げられます。

 

つぎに「7」と答えると「正解」と告げられます。

 

この後も、この被験者は時間をかけてありとあらゆる数字を挙げていきます。

 

被験者は「正解」となる数字だけでなく、「不正解」となる数字をさんざん挙げたすえに、ようやくルールを導き出します。

 

へなじんさん
ルールは、次に来る数字は前の数字よりも大きい数字でなければならない。

 

これが正しいルールの答えです。

 

へなお
では単純な答えを出した多くの被験者たちと、正解を導き出した被験者の違いは一体何なのでしょう?

 

単純な答えを出した多くの被験者たちが見つけようとしていたものは「自分の推測の正しさを証明するもの」です。

 

一方で正解を導き出した被験者が見つけようとしていたものは「自分の推測の誤りを証明するもの」です。

 

しかも意識的に“反対の証拠”を探し出していました。

 

「確証バイアス」にはまり込むと決して正解は見えてきません。

 

へなお
自分の誤りを認めてこそ真実は見えてくるのです。

 

あいまいな予測が当たる理由はどこにある?

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わたしたちが生きていくうえで“予測”はとても大切です。

 

自分の将来、世の中の流れ、今後の経済の状況などなど、あらゆることを予測しなければうまくは生きてはいけません。

 

“予測の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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予測は、多くの場合あいまいであり確実なものではありません。

 

しかし予測があいまいであればあるほど、予測は「確証バイアス」の影響を強く受けています。

 

ある予測をした場合、その予測が正しいことを証明する情報ばかりを手に入れようとします。

 

予測が間違えているという“反対の証拠”を一生懸命探す人はいないでしょう。

 

そのため予測は非常にあいまいになります。

 

逆に予測はあいまいにすることでよく当たるように仕向けられている感すらあります。

 

“占いの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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へなよさん
あなたは数週間以内に悲しい体験をするでしょう。

 

このようなあいまいな占いは、実際には何を意味しているのかよくわかりません。

 

へなお
数週間とは一体どれくらいの期間を意味するのか?

 

へなお
悲しい体験とは一体何なのか?

 

へなお
自分が悲しいのか、他人が悲しいのか?

 

たとえ悲しい体験がなかったとしても、“特殊なケース”や“予測不能な事態”という便利な表現で片付けられてしまうでしょう。

 

これは「確証バイアス」が強く作用している証拠です。

 

へなお
ジャーナリストたちも「確証バイアス」にはまり込んでいると言えるでしょう。

 

“フェイクニュースの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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あいまいな予測をしていくつかの“証拠”を書き足して記事を完成させます。

 

たとえば、「Googleがこれほどまでに成功したのは、同社が創造性を育てる力があるからだ」という記事があったとしましょう。

 

その記事には、同じように創造性にあふれて成功している会社を数社選び出して、“証拠”を裏付けして記事の信憑性(しんぴょうせい)を高めようとします。

 

しかし決して記事の質を落とすような“反対の証拠”を探し出す努力はしません。

 

創造性にあふれているのに成功していない会社、成功しているものの創造性のない会社を探すようなことは決してしません。

 

しかし実際にはそのような会社はたくさん存在しているはずです。

 

ところがそのような会社には見て見ぬふりをするのです。

 

“特殊なケース”や“予測不能な事態”を引き起こす会社は記事を台なしにするだけです。

 

本来であればこういった会社こそ注目すべきでしょう。

 

そもそも創造性を育てる力とは一体どのような力なのでしょう?

 

へなお
結局、脳にとってはあいまいであることこそが都合がよく美徳なのです。

 

自分の都合の良さを捨ててこそ世界は回る

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自分の都合のいいように世界を回そうとする「確証バイアス」は脳の本能であり、自分ではなかなか気づきません。

 

誰だって自分の信じていることに反論されたらいい気分はしないはずです。

 

ですから自分にも他人にも反論はしないのです。

 

“正しい評価の方法の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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インターネットの世界では自分の探している情報が真っ先に提供されます。

 

一方で“反対意見”はほとんど検索されません。

 

SNSでも自分と考えが同じ人とは簡単につながることができます。

 

自分の主張が正しいことを証明してくれるブログや記事を読むことも簡単です。

 

しかし自分の意見を否定する情報にはフィルターをかけて、自分のレーダースクリーンには映らないようにしてしまいます。

 

このように脳は自分の都合のいい偏(かたよ)った情報ばかりを集めて、自分と同じ考えを持つ人々の集団の中でだけ行動することを好みます。

 

しかしこのような世界は当然のことながら決して正しくはありません。

 

いくら自分の信念の盾を立てていても、銃声の聞こえないサイレンサーのついた銃で不意に打たれることだってあるはずです。

 

へなお
では、このような状況を打破するにはどうしたらよいのでしょう?

 

『お気に入りを殺せ』

 

アーサー・キラークーチ(イギリスの小説家、文芸評論家)

 

へなお
「自分の好きな言葉や考えを手放して、自分の都合の良さを捨てなさい」ということです。

 

自分の都合の良さで「確証バイアス」のぬるま湯に浸るのではなく、「確証バイアス」とは闘うべきです。

 

へなお
自分の都合のいいように物事を処理するのではなく、あえて都合の悪い“反対の証拠”を探し出してみてください。

 

“自分のお気に入り”を消し去るのはつらい作業です。

 

しかし“反対の証拠”に目を向けて、自分の誤りを認め、自分の都合の良さを捨ててこそ、本当の世界は回るのです。

 

へなお
「確証バイアス」についてもっと知りたい方は、こちらの書籍がお勧めです。

 

 

へなお
ぜひ参考にしてみてください。

 

“「確証バイアス」の脳科学”のまとめ

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自分の都合のいいように世界を回そうとする「確証バイアス」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 新しい情報を自分の意見や信念に無理やり合わせて解釈する脳の本能を「確証バイアス」と呼びます。
  • 「確証バイアス」にはまり込むと、自分に都合の悪い“反対の証拠”を無視するようになります。
  • さまざまな予測は「確証バイアス」が強く作用していて、あいまいな表現によって当たる確率を上げています。
  • 「確証バイアス」を働かせて自分の都合のいいように物事を処理しても、決して真実にはたどり着けません。
  • 自分の都合の良さを捨てて、自分の誤りを認めてこそ、本当の世界は回るのです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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