脳を科学する 自己の脳科学

計画通り進まず軌道修正することは善か悪か?「修正力」を脳科学で探る

修正力-A1

最初の計画通りに進まず途中で軌道修正することは良いことなのでしょうか?それとも悪いことなのでしょうか?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 柔軟に軌道修正するために必要な「修正力」をわかりやすく脳科学で説き明かします。

 

完璧な条件設定など存在しない

修正力-1-min

「修正力」の脳科学

  • 完璧な条件設定を整えてからスタートするのではなくまずはスタートして途中で軌道修正するほうが物事はうまくいきます。
  • 「いかに軌道修正するか」ではなく「軌道修正することを決断する」ことこそ大切でありそれが真の「修正力」です。
  • 脳は失敗を認めたくないので修正することをひどく嫌います。
  • しかし計画通り進まず軌道修正することは間違いなく善でありそれを実行してこそ目の前の未来は切り開かれるのです。

修正力

修正力とは最高の結果を手に入れるために「自分を柔軟に変える力」のこと。

 

修正力と聞くと「予定通りに進んでいない状況に対してうまく軌道修正して予定通り、あるいは予定以上の結果を手に入れるための能力」と考えがちです。

 

確かにその通りです。

 

へなお
しかし脳科学的に考えると修正力の意味合いがちょっと変わってきます。

 

たとえば飛行機に乗っている場面を想像してみてください。

 

飛行中機体が予定されたルート上を飛んでいるのは飛行時間全体のどのくらいの割合だと思いますか?

 

へなじんさん
飛行時間全体の90%? 80%? 50%くらいかな…

 

へなお
いえいえ、正解はほぼ0%です。

 

飛行機の窓から外をのぞいて見ると翼のふちで補助翼がしきりに動いているのが見えるはずです。

 

補助翼の役割は飛行ルートを絶えず修正することにあります。

 

自動操縦装置は毎秒何回も予定位置と現在位置とのズレを感知して舵の役目を果たす翼を軌道修正しています。

 

つまり補助翼によって微調整をひたすら繰り返し続けているわけです。

 

1秒でも微調整を怠れば大きく飛行ルートをはずれることになりかねません。

 

車の運転も同じです。

 

一直線に伸びる道路を運転していてもハンドルから手を離すと車はまっすぐ進まず車線からはみ出して事故を起こしてしまいます。

 

同じことはわたしたちの人生にも当てはまります。

 

理想は予定通り、計画通りに進むスムーズで快適な人生です。

 

そのために完璧な条件設定を整えることに精を出すわけです。

 

しっかりとした教育を受け、理想の職業に就き、恋人や家族との人間関係を円滑に進め、すべてにおいて完璧な状況を整えようとします。

 

それは何とかして予定通りに人生の目的地に到着するための必要不可欠な作業です。

 

しかし誰もが知っているように物事がすべて予定通りうまく運ぶことなどほとんどありません。

 

人生は常に乱気流の中に合ってわたしたちはありとあらゆる種類の横風や、予想外の急激な天候の変化と闘い続けなければなりません。

 

それでも脳は浅はかにも晴天の空を飛び続けているパイロットのように振る舞いがちです。

 

最初の条件設定ばかりを重視して軌道修正することに重要さを軽んじてしまうのです。

 

へなお
そこで求められるのが修正力です。

 

「いかに軌道修正するか」ではなく「軌道修正することを決断する」ことこそが大切であり、それこそがまさに修正力なのです。

 

へなお
それでは脳科学的な修正力についてくわしく探っていきましょう。

 

大切なのはスタートではなくメンテナンス

修正力-2-min

いくらいいスタートをきってもゴールまで順風満帆に進むことなどほとんどないはずです。

 

スタートのための準備は当然大切です。

 

しかしもっと大切なのは常に軌道修正し続けることです。

 

そもそも生物は軌道修正の大切さを何億年も前から理解し実践してきています。

 

生物が生きていくためには細胞分裂は欠かせない作業です。

 

しかし細胞分裂においては遺伝子の複製エラーがたびたび起こります。

 

そのためどの細胞にもこのようなエラーを修復するための分子が組み込まれています。

 

この修復機能が備わっていなければ生物はあっという間に死んでしまいます。

 

このように予期せぬエラーを修正するシステムはどのような場面においても重要な意味を持っています。

 

世界中を脅かしているウイルスは何度も突然変異を繰り返し増殖し続けます。

 

ですから事前に予測を立てて排除する機能を作り出すマスタープランは存在しません。

 

常にウイルスを排除する方法を修正し続けなければ体を防御することはできません。

 

恋愛だって同じです。

 

付き合い始めは理想の性格や容姿を追い求めて「はじめの条件設定」を重視するものです。

 

その結果誰が見てもお似合いの非の打ちどころのないようなカップルが成立するわけです。

 

しかしそんなカップルでもあっけなく別れてしまうなんてことはよくある話ですが、それはさほど驚くことではありません。

 

誰かと数分間でもパートナーになってみた経験のある人ならきっとわかるはずです。

 

カップルと言っても他人とうまく付き合っていくには常に微調整や修正を繰り返さなければパートナー関係はうまくはいきません。

 

どんな関係にもメンテナンスは必要不可欠です。

 

「よい人生とは安定した状態が長く続くこと」と思っている人がいたらそれは大きな間違いです。

 

真によい人生とは修正を繰り返し続けてある時ふと振り返った時に「よい人生だった」と思えるような生き方です。

 

そう思えるためには常にメンテナンスをし続けることが大切なのです。

 

修正を嫌う脳を黙らせろ!

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どのようなスタートをきったとしても常に修正を繰り返していくことが大切であることを説明してきました。

 

しかし脳は何かを修正したり見直したりすることにとても反抗的です。

 

つまり脳は修正することをひどく嫌うのです。

 

へなお
脳が修正を嫌うのはなぜなのでしょう?

 

脳が修正を嫌う最大の理由は、脳はどんな些細(ささい)な修正に対しても「そもそもの最初の計画が間違えていたことを証明する」ことのように思えてしまうからです。

 

その結果、計画は失敗だったと落ち込み自分は無能な人間だと感じてしまうのです。

 

実際には物事がすべて計画通りに進んで順風満帆なんてことはまずありえません。

 

例外的にまったく修正しないで計画通りに実現できたとしたらそれはまったくの偶然にすぎません。

 

「計画そのものに価値はない。計画し続けることに意味があるのだ。」

 

ドワイト・D・アイゼンハワー 第34代アメリカ合衆国大統領

 

重要なことは「完璧な計画を立てること」ではなく「状況に合わせて何度でも計画に変更を加えること」なのです。

そしてもっと重要なことは「いかに修正を加えるかをあれこれ考える」よりも「とりあえず修正を加える決断をすること」なのです。

 

へなお
それこそが真の「修正力」です。

 

修正をすることは決して不名誉なことではありません。

 

しかし世の中の多くのことには積極的に修正を施す態勢が整えられているとは言い難いでしょう。

 

特に学校制度の大半は条件設定のために存在しているようなものです。

 

“独学の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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小さいころからなかば強制的に勉強させられているうちに、人生で重要なのはできるだけ高い学歴を手に入れて、できるだけよい条件で社会人生活をスタートさせることだと思い込まされてしまいます。

 

現実社会では学歴と職業的な成功の関連性はどんどん弱くなる一方なのにいまだ学校制度は変わらないままです。

 

修正力に対する需要はどんどん高まっているのに修正力を学校で身につけられる機会などほとんどありません。

 

最初の計画通りに行かず失敗して何が悪い…

 

修正して別の方法で成功すればいいじゃないか…

 

へなお
今こそ失敗学を学ぶべきなのです。

 

“失敗学の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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計画通り進まず軌道修正することは善か悪か?

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へなお
最初の質問である「計画通り進まず軌道修正することは善か悪か?」の答えはもうお分かりですよね。

 

生きていくうえで修正力は欠かせない能力です。

 

あなたのまわりにもきっと“成熟した賢明な人物”と形容したくなるような人が少なくともひとりはいるはずです。

 

その人が賢くなった理由はどこにあるのでしょう?

 

生まれの良さ?

 

模範的な家庭環境?

 

一流の教育?

 

そのような完璧な条件設定の成果なのでしょうか?

 

へなお
答えは当然「NO」でしょう。

 

自分の欠点を自分で克服したり、自分に足りないところを自分で補ったりし続けた修正力の賜物と言っていいでしょう。

 

わたしたちは脳に染みついた「修正」に対する悪いイメージを断ち切らなければなりません。

 

あれこれと考える前に早いうちに軌道修正できた人は、長い時間をかけて完璧な条件設定を作り上げ計画がうまくいくのをいたずらに待ち続けている人よりもずっと得るものが大きいはずです。

 

理想的な人生の目的地は1つだけとは限りませんし唯一無二のゴールなど空想の産物にすぎません。

 

何ごともある条件のもとでとりあえずスタートして、それが進んでいく過程で持続的に調整を施していくのが正しいやり方です。

 

世の中が複雑になればなるほど出発点の重要性は低くなります。

 

ですから仕事でもプライベートでも条件設定を完璧に使用などと力を注ぎこみすぎない方が得策です。

 

それよりもダメだとわかったことはそのつど修正していけるような決断力を身につける方がよっぽど得策です。

 

“決断力の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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後ろめたさを感じずにスパッと迅速に物事を軌道修正して修正できるような勇気をぜひ身につけてください。

そうすれば一瞬で目の前の世界が変わるはずです。

 

 

“「修正力」の脳科学”のまとめ

まとめ-conclusion1-N1

柔軟に軌道修正するために必要な「修正力」をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 完璧な条件設定を整えてからスタートするのではなくまずはスタートして途中で軌道修正するほうが物事はうまくいきます。
  • 「いかに軌道修正するか」ではなく「軌道修正することを決断する」ことこそ大切でありそれが真の「修正力」です。
  • 脳は失敗を認めたくないので修正することをひどく嫌います。
  • しかし計画通り進まず軌道修正することは間違いなく善でありそれを実行してこそ目の前の未来は切り開かれるのです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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