「これって前に見たことあるような気がするけど気のせい?」…そんな経験したことありませんか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- デジャヴ(既視感)はなぜ起こるのかを脳科学で探ります。
一度は経験したことがあるデジャヴ
デジャヴの脳科学
- デジャヴが起きる理由はさまざまですが基本的には脳のバグが原因です。
- デジャヴは若い時にはよく経験されますが年をとると起こらなくなります。
- デジャヴは神秘的な体験でもあり時にはつらい体験でもあります。
- デジャヴは日々書き換えられる記憶の影響を受けて変化していきます。
そのような経験をしたことが今まで何度かあるのではないでしょうか。
知らない土地に行った時に一度見た景色ではないかと思ったり…
夢に見た知らない光景を現実に体験したこととして感じたり…
ココがポイント
一度も体験したことがないのに以前どこかで体験したことのように感じてしまう。それを「デジャヴ(Déjà-Vu)」と呼びます。
デジャヴはフランス語で「すでに見た」という意味であり和訳すると既視感になります。
デジャヴは以前から文学や映画などに描かれていて心理学や脳科学の分野でもさかんに研究が行われてきました。
最初に見た夢は知らない土地での体験でしたが、それを繰り返すうちに現実のものと思えるようになり、ついには確信に変わっていく…
そんな話の展開はデジャブの局面を表わしています。
デジャヴ-その1
デジャヴは、自分が過去に実際に体験したという確信的な感覚があり、単なる夢や物忘れとは根本的に違います。
過去に同じ体験をしたという記憶そのものが、体験と同時に自分の中で作り上げられていることも多くあります。
夢の中で体験をしたと思っている場合でも、そもそもそんな夢自体を見ていないのに確固たる感覚として夢を見たと感じてしまいます。
そのため、
と誤解する人もいます。
デジャヴは、過去と現在の時間的認識がごちゃごちゃに混ざり合っています。
その上、そのような過去は実際には存在していないわけですから、なかなか複雑なことが頭の中で起きているのです。
今まで多くの研究が行われてきましたが、その原因はなかなか突き止められませんでした。
しかし徐々にそのメカニズムが解明されてきています。
デジャヴは脳のバグが原因
しかし実際には、
デジャヴ-その2
デジャヴはそんな稀な現象ではなく、70%くらいの人が経験したことがあるのです。
しかも小さなものから大きなものまで全部ひっくるめて考えると、
デジャヴ-その3
数週間~数か月に1度はデジャヴは訪れます。
つまりデジャヴはありふれた体験で誰にでも起こり得る現象なのです。
なんてがっかりされた人も多いでしょう。
デジャヴはどんな人に起こりやすいかもわかっています。
デジャヴ-その4
デジャヴは若い時に多く経験され、年をとるとあまり起こらなくなります。
デジャヴの原因としては色々な説があります。
目から入った情報は最終的に頭のうしろの後頭葉という部分に到達して認識されます。
しかしそれ以外にもさまざまな脳の領域に目から入った情報は伝えられます。
その過程で問題が発生してデジャヴは起こるのです。
デジャヴの原因-その1
1つ目の説は、記憶の食い違い現象です。
記憶は頭の前の方にある前頭葉で管理されています。
間違えた記憶をするとその後、脳の中で修正されていきます。
この間違えた記憶と修正された記憶が混ざり合ってしまい、記憶の回路が混乱をおこします。
すると間違えた記憶がデジャヴとなって表れてくるのです。
以前見たことのある景色でもスマホをいじりながら何となく視界に入っている程度の景色であれば鮮明な記憶としては残りません。
ただ何となくぼんやりと覚えている程度です。
そのため別の場所で似たような景色を見た時に、以前スマホ越しに見た景色と勘違いを起こして、あたかも以前見たことのある景色と認識してしまうのです。
デジャヴの原因-その2
2つ目の説は、情報の誤差現象です。
目から入った情報はまず後頭葉に到達しますが、わずかに遅れて脳の色々な領域にその情報が到達します。
このごくわずかな誤差がそれぞれを別の情報と誤って認識してしまい、ある情報をデジャヴと感じてしまうのです。
デジャヴの原因-その3
最後の説は、感情の誤情報現象です。
本来感じるべきではないところで生まれた感情に対して、脳がその感情は間違っていますよという指令を出して、デジャヴを引き起こしているという説です。
例えば自分の理想とする人に初めて出会ったとします。
嬉しくてあまりにも感情が高まってしまうと、”自分はその人ととても親しくて仲がいい”という自分が期待して切望する感情を誤情報として脳は発してしまいます。
しかし即座に脳は「いえいえこの人と会うのは初めてですよ」とアラートを出します。
この2つの情報が混乱を招きデジャヴが引き起こされるというものです。
しかしいずれの3つの説には共通点があります。
デジャヴ-その5
デジャヴは外から脳に入ってくる情報を脳がうまく処理しきれなくなって起こる脳のバグなのです。
デジャヴ-その6
年齢を重ねると脳の中で発生したバグを脳があまり気にしなくなり無視するようになるので、混乱が起こらずデジャヴは起こらなくなっていくのです。
デジャヴ-その7
人によってはデジャヴを前世の記憶であったり、未来の予知であったりと、神秘的な体験と思っている人もいます。
しかしこれは現在でも科学的に完全に否定されているわけではありません。
デジャヴは変化する
デジャヴは何度でも体験すると言いましたが、日々経験することの影響を受けてデジャヴは変化することがあります。
人は物事や景色などさまざまなものを記憶するのに、ただ丸暗記するのではなく、何かに紐づけして記憶していたり特徴的なことだけをかいつまんで記憶していたりします。
”記憶の仕組みの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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これらの記憶は、最初は脳に深く刻み込まれていますが、記憶が薄れていくと微妙に間違えた記憶となって残っていきます。
しかも記憶は自分の都合のいいように再構築されていきます。
特に、思い出そうとした時に再構築が行われ、思い出すタイミングやその状況で組み換えが行われ、新しい記憶となって保管されます。
そしてまた次に思い出されるときに都合よく再構築されていくのです。
記憶は生まれては変わり、また生まれては変わり、その繰り返しによってどんどん変化していくわけです。
デジャヴ-その8
変化し続ける記憶はたびたびデジャヴに影響を及ぼします。
何か重大なことを目撃したとします。
その後、色々な人から何回も質問をされて記憶を呼び起こしていくたびに記憶が書き換えられていきます。
頭の中ではだんだん最初目撃した時の情報とはかけ離れた人物像が出来上がっていってしまいます。
しまいには実際に違う人を見て、「この人絶対に前に見たことある人だ…」というデジャヴが作り上げられてしまうのです。
デジャヴ-その9
デジャヴはなにも神秘的なことばかりで起こるものではありません。
嫌な体験や忘れたい体験をデジャヴとして感じてしまうこともあります。
しかしそんなデジャヴも年をとれば起こらなくなります。
”デジャヴの脳科学”のまとめ
今回はデジャヴを脳科学的に解説しました。
今回のまとめ
- デジャブが起きる理由はさまざまですが基本的には脳のバグが原因です。
- デジャヴは若い時にはよく経験されますが年をとると起こらなくなります。
- デジャヴは神秘的な体験でもあり時にはつらい体験でもあります。
- デジャヴは日々書き換えられる記憶の影響を受けて変化していきます。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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