嫌いな人や苦手な人にはどのように接して対処したらよいのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 嫌いな人、苦手な人との接し方、対処法についてわかりやすく脳科学で説き明かします。
必ずいる嫌いな人、苦手な人
嫌いな人、苦手な人の脳科学
- 脳は安全に生きていくために「好き嫌い」を無意識にそして瞬時に判断しています。
- いくら言葉で取りつくろおうとしても自分のかもし出す雰囲気や態度で相手に「嫌い」「苦手」は伝わっています。
- 「嫌い」「苦手」な人にうまく接するには割り切って適切な距離感を保って付き合うことが大切です。
- 「嫌い」「苦手」ではなく「普通」という中立的な感情に変えてみてください。
- 「嫌い」「苦手」な人への悪口は人間関係を泥沼に引きずり込むだけです。
- 「嫌い」「苦手」な人の長所を見つけ出してぜひ「嫌い」「苦手」を克服してみてください。
あなたのまわりにも「嫌いな人」あるいは嫌いとまではいかなくても「苦手な人」がいて人間関係に悩んでいませんか?
もし自分のまわりから嫌いな人や苦手な人がいなくなったらもっと楽で生きやすくなるのに…なんて思っている人もいるはずです。
ある調査によると「嫌いな人や苦手な人がいるか?」という質問に約70%の人が「いる」と答えています。
職場、学校、趣味のサークル、町内会…など人がたくさん集まる場に参加すればそのメンバーの中に「好きな人」もいれば「嫌いな人」や「苦手な人」もいるのが普通でしょう。
全員を好きになるということはあり得ませんし逆に全員を嫌いになるということもないはずです。
なぜ「好き嫌い」があるのか?
ではそもそもなぜ脳は他人に対して「好き嫌い」の区別をするのでしょう?
「好き嫌い」を生み出す脳のメカニズム
人と会った時に「この人、好き」「この人、嫌い」「この人、ちょっと苦手」とまず相手の好き嫌いを瞬時に感じてしまうことがあるはずです。
ではなぜ脳は「好き嫌い」を判断してしまうのでしょう?
それは脳には人に対して「好き嫌い」を無意識に判断してしまうメカニズムが存在してるからです。
その中核となるのが脳の中にある「扁桃体」と呼ばれる部分です。
“扁桃体の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考刑事ドラマが時代を超えて人気の理由を脳科学で説く
刑事ドラマっていつの時代でもどうしてこんなに人気があるのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年…多 ...
続きを見る
何か出来事が起こるとそれが“安全なのか?危険なのか?”を瞬時に判断します。
そして危険と判断されると赤信号を出すのです。
「好きと嫌い」の根源は「安全と危険」にあり
脳は「安全と危険」を最重要事項として設計されています。
それは生き残っていくためにとても大切なことです。
ですから脳が自分にとって敵で危険なモノと判断した場合には瞬時に危険を察知して対応をとれるように信号を出します。
扁桃体はなんと0.02秒という一瞬の速さで「安全と危険」を判断すると言われています。
じっくりと考えるのではなく瞬間的、ほとんど条件反射的に「安全と危険」を判断しているのです。
脳は「安全=好き」「危険=嫌い」と認識するので「安全と危険」と判断すると同時に「好きと嫌い」を判断します。
この脳の反応は人と会った時も同じです。
その人が自分にとって「安全なのか危険なのか?」「好ましいのか嫌いなのか?」の判断は瞬間的に行われます。
こうして人の第一印象は決まります。
“第一印象の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考見た目で第一印象が決まる!~メラビアンの法則を脳科学で探る
第一印象は見た目で決まるって本当なの? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務 ...
続きを見る
脳が蓄積してきた経験則から嫌いな人、苦手な人の見た目や表情などの特徴をとらえて「嫌い」を判断します。
いったん「嫌い」と判断してしまうとそのあとは「嫌い」という偏見で相手を見てしまうので余計に相手の悪い所ばかり目についてしまいますます「嫌い」になってしまいます。
最終的には嫌いな点がたくさん見えてきて「本当に嫌い」になってしまうのです。
「嫌い」「苦手」は相手に見抜かれている
人がコミュニケーションをとる方法としては2通りあります。
言語を用いる“言語的コミュニケーション”と言語を用いない“非言語的コミュニケーション”です。
“コミュニケーションの脳科学“についてはこちらの記事もご参照ください。
参考コミュニケーション能力を高めるためのコツを教えます!言葉の魔力を脳科学で探る
コミュニケーション能力を高めるためのコツって何ですか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気 ...
続きを見る
脳はコミュニケーションをとる時にはこの2つをうまく使い分けています。
たとえば言葉では「好き」と言っていても態度は「嫌い」を示しているようなことはよくあることです。
ではこのように言語と非言語で異なるメッセージが発せられた場合相手はどちらのメッセージを優先するのでしょうか?
言葉の方が印象が強いように感じますが、実際にこの場合優先されるのは言語ではなく非言語的なメッセージです。
たとえば職場で嫌いな上司に対して「いつもご指導していただいて感謝しています」とおだてたところで自分のかもし出す雰囲気や態度によってあなたの「嫌い」という感情は相手に見抜かれています。
しかも「好き」よりも「嫌い」や「苦手」はより相手に伝わりやすいとされています。
さらに言えば脳は「好き」に対しては「好き」で返答しようとします。
同じように「嫌い」「苦手」に対しては「嫌い」「苦手」で返す傾向があります。
つまり相手に「嫌い」「苦手」という感情が持っていると相手も「嫌い」「苦手」という感情を返してくるのです。
あなたが上司を「嫌い」「苦手」と思えば思うほど上司はあなたの非言語的なサインを無意識的に察知します。
すると上司はあなたに対して厳しく冷たい態度をとるようになっていきます。
そうなると当然仕事は楽しくないものになりモチベーションも下がってしまうでしょう。
あなたはますます上司が嫌いになり上司もあなたをますます嫌いになり人間関係はどんどん悪化して深刻な状況となってしまいます。
では「嫌い」「苦手」の負の連鎖を断ち切るのはどうしたらよいのでしょう?
嫌いな人、苦手な人との接し方
人が生きていく上で人間関係は永遠の課題でありどこに行ってもつきまとう悩みの種でしょう。
特に職場や趣味のサークル、部活動などでは自分が関わらなければならない人が苦手なタイプであったり何らかの理由で嫌いになったりしても自分の都合で相手を取り換えることはできません。
ではどのように嫌いな人や苦手な人と接していくのが理想なのでしょう?
嫌い、苦手で何が悪い
人間関係が良好で嫌いや苦手がなければすべてが円滑に進み問題はないでしょう。
しかし世の中そううまくはいきません。
人が集まれば確率的に嫌いな人や苦手な人は必ずと言っていいほど登場してきます。
しかし何も必ずしも全員を好きになって仲良しになる必要はないのです。
必要なコミュニケーションがとれて仕事やサークル活動の成果に影響しない限りは嫌いな人や苦手な人がいても何も問題はありません。
脳が「嫌い」「苦手」と判断したのであればそれを「好き」に変えるのは至難の業です。
ですから無理に「好き」になる必要などないのです。
しかしこれはあくまでも「好き嫌い」でトラブルが起こることなく円滑に物事が進むことが前提です。
嫌いな人、苦手な人との距離感
嫌いや苦手と感じている相手とどうしても付き合っていかなければならない場面は必ずあります。
そのような時にもっとも大切なことは適度な距離感を保つことです。
そもそも嫌いという感情は相手を強く意識しているからこそ生まれます。
嫌いであることを意識しすぎると逆に嫌いな人の存在感がどんどん増していってしまいます。
ですから先ほどご説明したように「嫌い、苦手で何が悪い」という考えでいられれば相手に対する意識が弱くなり適切な距離感をとりやすくなります。
適切な距離感を保つために必要なことはいくつかあります。
好き嫌いの感情を極力出さないようにする。
好き嫌いで相手に対する対応を変えない。
好き嫌いに関係なく自分の達成すべき目標に向けて努力を怠らない。
この他にもいろいろな距離感の取り方はありますがまずは実践してみてください。
嫌いな人、苦手な人への対処法
最後は嫌いな人、苦手な人に対する対処法です。
うまく距離感を保とうとしても密に関わらなければならない場面はどうしても訪れてしまうものです。
そんなときの対処法を探っていきましょう。
嫌い、苦手を克服する
「嫌い」「苦手」に対する根本的な解決法は嫌いでなくなることです。
人となりを知ることで好きに離れなくてもマイナスの感情をなくすことはできるかもしれません。
必ずしもうまくいくとは限りませんがそのようなことを繰り返していれば良い経験となるはずですので挑戦してみる価値はあるはずです。
突きつめてみると自分の思い込みや誤解であったり、時には相手にやむを得ない事情があったり…なんてこともあるかもしれません。
好きでも嫌いでも苦手でもない「普通」
脳は何に対しても「好き」と「嫌い」のいずれかに区別したがります。
これは先ほど説明した「安全」と「危険」に区別する必要があるからです。
しかしここに好きでも嫌いでもない「普通」を加えると状況は大きく変わります。
ある研究では「好き嫌い」の二択で人を判断した場合嫌いな人の数は平均して2~3人ですが、そこに「普通」を加えた三択にすると0~1人に減ると示しています。
顔も見たくないし会いたくもない、話もしたくない…本当に大嫌いというはたまにいるかもしれません。
しかしそれ以外の「嫌い」な人は「普通」でよいでのです。
「普通」という概念を取り入れるだけで「嫌い」な人は確実に減少します。
「好き嫌い」の二者択一は先ほどご説明したように脳の扁桃体で行われる条件反射であり原始的な脳の働きです。
人間は他の動物とは異なり脳が特異的に発達しているので“じっくり考える論理的思考”をすることができます。
また最近の脳科学の研究では言語情報によって扁桃体の興奮を抑えることが可能であることがわかっています。
つまり言語で扁桃体をコントロールしてじっくり考えることで「好き嫌い」のレッテルを修正することができるのです。
扁桃体が一度「嫌い」と判定してもとりあえず「普通」という中立的な立場に変更してあとでじっくり考えていけばよいのです。
この新しい二者択一を身につければ「嫌い」な人が減ってもっと楽に生きられるはずです。
嫌い、苦手でも悪口はNG
いろいろやってみたけどやっぱり「嫌い」「苦手」…そんな時に絶対にやってはいけないことがあります。
それは悪口を言うことです。
しかし悪口はアウトプットなので繰り返していると記憶として強化されていってしまいます。
“アウトプットの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考アウトプットが苦手な人のための効果的なトレーニング方法~脳科学にこだわった勉強法
アウトプットとインプットではどちらを重視した方が脳科学的により効果的な勉強法なの? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医 ...
続きを見る
悪口を言うことでストレスを発散しているように感じている人もいるかもしれません。
しかし実は悪口は逆の効果をもたらしています。
悪口を言うことで本来忘れていたような些細(ささい)なエピソードを思い出して相手の短所や欠点のイメージは強化されます。
その結果その人をよりいっそう嫌いや苦手になってしまいます。
嫌い、苦手のスパイラルで人間関係はどんどん泥沼の深みにはまっていきます。
自分では気づいていないかもしれませんが泥沼の人間関係の原因の多くは悪口にあり自分自身で災いを招いている可能性があるのです。
どんな人にも長所もあれば短所もあります。
人よりも優れた点もあれば劣った点もあります。
「相手の長所を10個言ってください。」
そんな質問をよく耳にしますがこれはとても有効な方法です。
嫌い、苦手な人に対しては「見たくもない」と思っているのでそもそもちゃんと観察できていないことがほとんどです。
また短所、劣った点と思っていたものの裏返しが長所であったり優れた点であったりなんてこともよくあることです。
これは短所に対する悪口です。
しかし言い方を変えれば
そんな長所になります。
「人の悪口を言う時は、それが自分に返ってくることを予期しておけ。」
古代ローマ創作家プラウトゥス
あなたもまずは自分自身を振り返って見つめなおしぜひ「嫌い」「苦手」な人を克服してみてください。
きっと今までにない世界が見えてくるはずです。
“嫌いな人、苦手な人の脳科学”のまとめ
嫌いな人、苦手な人との接し方、対処法についてわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 脳は安全に生きていくために「好き嫌い」を無意識にそして瞬時に判断しています。
- いくら言葉で取りつくろおうとしても自分のかもし出す雰囲気や態度で相手に「嫌い」「苦手」は伝わっています。
- 「嫌い」「苦手」な人にうまく接するには割り切って適切な距離感を保って付き合うことが大切です。
- 「嫌い」「苦手」ではなく「普通」という中立的な感情に変えてみてください。
- 「嫌い」「苦手」な人への悪口は人間関係を泥沼に引きずり込むだけです。
- 「嫌い」「苦手」な人の長所を見つけ出してぜひ「嫌い」「苦手」を克服してみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
最後にポチっとよろしくお願いします。