未練を断ち切って好きな人を忘れる方法ってありますか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い手術、血管内治療、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 未練を断ち切って心の痛みを和らげるための脳科学的な忘れる方法がわかります。
好きだけど忘れたい人
未練を断ち切って心の痛みを和らげるための脳科学的な忘れる方法
- 『好きだけど忘れたい!』を叶えるためには新たな『好きな人』をつくり脳に刻み込むのが最適な方法です。
- 脳回路から過去の記憶を完全に消し去ることは不可能です。
- しかも忘れようと努力するほどかえって忘れられなくなるのが脳の宿命です。
- ですから忘れたいのに忘れられない『シロクマ抑制目録』は決して避けられません。
- 忘れようとするのではなく新たな記憶を脳に刻み込むことで古い記憶へのアクセスルートを遮断してしまうことこそが“未練を断ち切って心の痛みを和らげるための脳科学的な忘れる方法”です。
幸せな恋もあればつらい恋もあります。
心から好きになったのに忘れなくてはならない状況におちいることだってあるでしょう。
しかし一度好きになった人のことはそう簡単に忘れられるものではありません。
“好きだけど忘れたい人のための心理学”なるものは世の中にたくさんあります。
仕事や趣味に打ち込んで好きな人のことを考える時間をなくす。
好きな人との思い出をすべて消去して捨ててしまう。
などなど色々と紹介されています。
しかし実際そんなにうまくいくものでしょうか?
そもそも“忘れる”ってどういうことなのでしょうか?
好きな人の存在自体を忘れてしまうこと?
好きな人を嫌いになること?
忘れるの脳科学-その1
脳科学的に“忘れる”とは脳の中に保管された記憶の情報へのアクセスを遮断させるような“新たな記憶”を刻み込むことです。
もっと簡単に言い換えれば
“忘れる”とは“新たな『好きな人』”という別の記憶を脳回路に保存することで“好きだけど忘れたい人”の記憶にたどり着けないように仕向けてあげることです。
つまり完全に脳回路から記憶自体を消し去ることなんてできないのです。
ですから忘れようと努力することは脳科学的にはまったく無駄…というかそもそも逆効果の努力なのです。
それでは脳科学的な視点から“忘れる”を探って『未練を断ち切って好きな人を忘れる方法』を説き明かしていきましょう。
忘れたいのに忘れられないシロクマ抑制目録
忘れるの脳科学-その2
忘れたいのに忘れられない現象を『シロクマ抑制目録』と言います。
被験者に5分間の時間を与え2つの実験を行います。
いずれの実験でも自由にものごとを思い出してもらうのですができるだけシロクマにまつわる何かを想像してもらいます。
1つ目の実験では何の準備もなくいきなり5分間思い出してもらいます。
2つ目の実験ではまずシロクマについて考えないように努力する時間を5分間おいた後に5分間思い出してもらいます。
どちらの実験の方がシロクマにまつわる何かを想像できたでしょうか?
あえて考えないようにしたり忘れるように念じたりすることは脳科学的には“考える”と同じことです。
もっと言えば忘れようとすることは普通に考える以上に逆に考えているのかもしれません。
“考える脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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実際に実験ではシロクマについて考えないように努力する時間を設けた後には3倍ものシロクマにまつわることを思い出していました。
“覚える”ことは努力で何とでもなりますが“忘れる”ことは気合や根性だけではどうにもなりません。
忘れようと努力するほどかえって忘れられなくなるのが脳回路の宿命です。
しかもこの効果は何か月も何年も持続します。
ちなみに『シロクマ抑制目録』は“忘れたいモノ”だけでなく“好きなモノ”にも起こる現象です。
好きになってはいけないと思えば思うほどハマってしまうものですよね。
食べていけないと思えば思うほど食べてしまうものですよね。
ですから“忘れたいのに忘れられない”のは脳科学的には当たり前のことですしそもそも忘れられるはずがないのです。
そうは言っても『好きだけど忘れたい!』を叶えるためにはどうしたらよいのでしょう?
未練を断ち切って好きな人を忘れる方法
『忘』という漢字をよく見ると「心を亡くす」と書きます。
つまり”忘れる”では亡くなっているのは心であって脳の情報ではありません。
忘れるの脳科学-その3
忘れた記憶は完全に脳の中から消え去ってしまったのではなく脳のどこかに蓄えられています。
一度脳に刻み込まれた記憶は痕跡として脳回路に残っているのです。
ただその記憶にたどり着けないために表面上“忘れる”と感じているだけなのです。
記憶にたどり着けないのは“忘れる”と感じる心であって脳ではありません。
1年前でしょうか?
10年前でしょうか?
これについてはいろいろな研究があります。
多くの研究では本人が覚えている自覚がないようなかなり昔の記憶まで脳には痕跡として残っていることを証明しています。
ある研究では生まれる前の記憶さえも残っていることを証明しています。
妊娠中に母親のお腹に向けて「きらきら星」のメロディを毎日聴かせ続けたところ生後4か月になって「きらきら星」を聴いた時にだけ脳波に反応が現れること示しました。
Partanen E, et al, PLoS One 30;8(10):e78946. doi: 10.1371/journal.pone.0078946, 2013
わたしたちが“記憶”と聞いて想像するよりもはるか古くからの経験がすでに脳回路に刻み込まれているのです。
記憶がよみがえることは脳科学的には“思い出す”というよりも脳に刻み込まれた記憶の痕跡に心がアクセスして情報が浮かびあがってくる現象なのです。
わたしたちは古くから脳に刻み込まれた記憶に基づいて感じたり考えたり発言したり行動したりをしています。
記憶は自分の人格そのものとも言えます。
記憶はこの世界に生まれる前から脳に痕跡を残し続けてきた大切な宝物です。
忘れるの脳科学-その4
忘れようとするのではなく新たな記憶をどんどん脳に刻み込むことで古い記憶になかなかたどり着けないようにしてしまえばいいのです。
“好きだけど忘れたい人”の記憶を消し去るのではなく“新たな『好きな人』”を脳に刻み込むのです。
そうすることで心が脳に問いかけてきた時に“新たな『好きな人』”だけに通じるアクセスルートを作り上げてあげるのです。
脳には確かに刻み込まれていますが新たな記憶によって薄らいでいく“忘れる”記憶を『消去記憶』と呼びます。
脳の中には消去記憶がたくさん眠っています。
あなたの忘れたい記憶も新しい記憶の山の中に埋もれさせてしまえばよいのです。
今この瞬間だって新たな記憶を脳に刻み込んで少し前の記憶は薄らいでいっています。
しかし忘れたい記憶があるからこそ新たな記憶を刻み込もうとする意識が芽生えることも忘れてはなりません。
過去の自分にどんどん記憶の味付けをしてこそ輝ける未来が待っているのです。
“未練を断ち切って心の痛みを和らげるための脳科学的な忘れる方法“のまとめ
未練を断ち切って好きな人を忘れる方法を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 『好きだけど忘れたい!』を叶えるためには新たな『好きな人』をつくり脳に刻み込むのが最適な方法です。
- 脳回路から過去の記憶を完全に消し去ることは不可能です。
- しかも忘れようと努力するほどかえって忘れられなくなるのが脳の宿命です。
- ですから忘れたいのに忘れられない『シロクマ抑制目録』は決して避けられません。
- 忘れようとするのではなく新たな記憶を脳に刻み込むことで古い記憶へのアクセスルートを遮断してしまうことこそが“未練を断ち切って心の痛みを和らげるための脳科学的な忘れる方法”です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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