脳を科学する 自己の脳科学

「井の中の蛙」が外の世界に出るために知っておきべきこととは?「ダニング=クルーガー効果」を脳科学で探る

2021-07-27

井の中の蛙-A1

「井の中の蛙」が外の世界に出るために知っておきべきこととはなんなのでしょう?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 「井の中の蛙」が外の世界に出るために知っておきべき「ダニング=クルーガー効果」についてわかりやすく脳科学で説き明かします。

 

「井の中の蛙」って知ってる?

井の中の蛙-1-min

ダニング=クルーガー効果の脳科学

  • 「井の中の蛙」は正確には「井の中の蛙大海を知らず」であり「視野が狭くありきたりの知識しかない」というネガティブ思考の”ことわざ”です。
  • 「井の中の蛙」になるのは脳科学的には「ダニング=クルーガー効果」というバイアスが働くことが原因です。
  • 「ダニング=クルーガー効果」とは知識のない人ほど自分を過大評価し、知識のある人ほど自分を過小評価する作用です。
  • 「ダニング=クルーガー効果」から抜け出すためには「されど空の青さを知る」という強い意志を持つことが何よりも大切です。

学生のころバンドを組んだ経験がある人は結構多いのではないでしょうか?

 

身近な友人と一緒に学校の文化祭で演奏してたくさんの声援を浴びて達成感を得た…なんていい思い出になっていたりしますよね。

 

へなじんさん
自分たちは結構イケてるんじゃない?

 

自分たちの中だけでそのように感じているのならいいのですかより広い世界に出ていこうとする人もいるはずです。

 

学校の文化祭から始まり、町の人達が通りすがりに見ていくような地元のイベント、音楽好きな人が集まるライブハウス…

 

へなじんさん
どうせならオーディションにデモテープを送ってみよう!

 

そんな感じで話はどんどん広がっていきます。

 

しかしそうした過程で必ずと言っていいほどほとんどの人が直面する出来事があります。

 

「自分たちよりもうまい人が世の中にはたくさんいるということを思い知る」ということです。

 

とは言え外に出ようとしたバンドはまだいい方です。

 

問題なのは狭い世界で「自分たちはすごい!」と思い続けているバンドです。

 

もちろんアマチュアとして楽しむのであればそれでよいでしょう。

 

しかしプロを目指したいと考えている場合「井の中の蛙」になってしまうことが一番怖いことです。

 

「井の中の蛙」で居続けている限りプロデビューは決してやってきません。

 

へなお
このように「井の中の蛙」という言葉を使いますがどのような意味か正確に知っていますか?

 

『井の中の蛙』

(読み)いのなかのかわず

自分の狭い知識や経験にとらわれ、他に広い世界があるのを知らない者のたとえ。

コトバンク

 

へなお
「井の中の蛙」は正確には「井の中の蛙大海を知らず」という“ことわざ”です。

 

これはそもそも日本で生まれたものではなく中国で生まれました。

 

中国の思想家である荘子の「秋水篇」に「井蛙不可以語於海者、拘於虚也」と言う文章があります。

 

わかりやすく説明すると「井戸の中にいる蛙(かえる)はずっと狭い世界しか見たことがなく海を見たことがないため視野が狭くありきたりの知識しかない」という意味になります。

 

すなわち「人はとかく狭い見識にとらわれて他に広い世界があることを知らないで自分の住んでいるところがすべてだと思い込んでしまっている。自分の知らない世界があることを意識しましょう。」というある意味戒(いまし)めです。

 

ですから「井の中の蛙だね」と言われたらそれは「視野が狭くて見識のない人だね」とネガティブな言葉として受け取ったほうがよいでしょう。

 

へなお
しかし実は「井の中の蛙大海を知らず」には続きがあります。

 

これは意外と知られていないことです。

 

「井の中の蛙 大海を知らず されど井の中を知る」

 

「井の中の蛙 大海を知らず されど空の青さを知る」

 

「井の中の蛙 大海知らねども 花は散りこみ 月は差し込む」

 

荘子の「秋水篇」には続きの記載がないのでいずれも日本に伝わったのちに付け加えられたものだと考えられています。

 

この中でもっとも有名なのは

 

「井の中の蛙 大海を知らず されど空の青さを知る」

 

でしょう。

 

続きが付け足されると「狭い世界で自分の道を突き詰めればその世界の深いところまで知ることができより深い知識を得ることができる」とという意味が加わります。

 

広い視野をもって世界を見渡すことで自分の小ささや愚かさに気づくことがあります。

 

しかしたとえ狭い世界だったとしても地道にその道を究めていけばその世界の深いところまで達することができることも同時にあるはずです。

 

広い世界を見ることもとても大切ですが愚直にある世界を見続けて努力をしていればちゃんと成長が出来る…というポジティブな“ことわざ”に意味合いが変わってきます。

 

“ネガティブ思考の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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「何ごともネガティブばかりに気をとられるのではなくポジティブに切り替えることも大切」という日本人独特の考え方かもしれませんね。

 

へなお
“ことわざ”ひとつをとっても突き詰めればほんと奥が深いものです。

 

「井の中の蛙」を生み出す「ダニング=クルーガー効果」

井の中の蛙-2-min

話がちょっとそれてしまいましたが「井の中の蛙」とは知識不足から自分の能力を過大評価してしまう一種のバイアスです。

 

これを脳科学的には「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。

 

「ダニング=クルーガー効果」は提唱者2人の研究者の名前をとって名付けられました。

 

「ダニング=クルーガー効果」が作用すると知識のない人ほど自分には能力があると過大評価してしまいます。

 

一方で知識が豊富だったり能力が高かったりする人は周囲も自分と同じだけのものを持っていると考え自分を過小評価してしまいます。

 

Kruger J, Dunning D. J Pers Soc Psychol 77(6):1121-1134, 1999.

 

ではなぜ「ダニング=クルーガー効果」なるものが生じてしまうのでしょうか?

 

「ダニング=クルーガー効果」が生じる理由

「ダニング=クルーガー効果」が生じる理由のひとつに「メタ認知」ができていないことがあげられます。

 

“メタ認知の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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「メタ」とは「より高次の」という意味です。

 

「メタ認知」とは自分自身が認知していることを客観的にとらえるということ、すなわち「認知を認知すること」という意味になります。

 

ですから「メタ認知」ができていないということは自分自身を客観的に見られていないということです。

 

そのため自分の能力が不足していることやその程度を正確に認識できないわけです。

 

またそのような人は自分についてだけでなく他人に対しても正しく把握することができません。

 

「ダニング=クルーガー効果」から抜け出す方法

「ダニング=クルーガー効果」にはまり込むとまさに「井の中の蛙」で井戸の中から外の世界に抜け出すことができないように思いますよね。

 

しかし適切な訓練をすれば「ダニング=クルーガー効果」を解消することは可能です。

 

「ダニング=クルーガー効果」によって「井の中の蛙」におちいっている人は外の世界を知らないだけでなく自分の実力を正確に評価するための知識や技術が欠けています。

 

ですから「井戸の中の蛙」から外の世界に抜け出すために必要なものを身につけさえすればこのバイアスから抜け出すことは可能なのです。

 

これは難しそうに思えてとても簡単なことです。

 

最初のバンドの話で言えば文化祭でうまく演奏できたことで満足してしまいプロを死亡するのではなく、自分たちの演奏と他のバンドの演奏を聴き比べたり、より高度な技術を習得したりすることで「ダニング=クルーガー効果」を解消することは簡単にできます。

 

「ダニング=クルーガー効果」から抜け出すにはその方法を学ぶのではなく抜け出そうとする意思を磨くことがなによりも大切なのです。

 

「ダニング=クルーガー効果」から学ぶべきこと

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「ダニング=クルーガー効果」は先ほども言いましたがなにも「井の中の蛙」で自分を過大評価するだけでなく時には過小評価してしまうこともあります。

 

「ダニング=クルーガー効果」が提唱された論文にはある実験が紹介されています。

 

実験では学生たちに知的スキルや英語の文法力・ユーモアセンスを自己評価させてクラス内で順位を予想させます。

 

その結果正確に言い当てることができた実験参加者は非常に少ないことは分かりました。

 

この結果について論文では「ある事柄について未熟であると慣れていないために正確な判断ができず自分の力を過大評価しがちである」と結論づけています。

 

またその後「ダニング=クルーガー効果」をさらに掘り下げた実験が行われました。

 

その論文では「簡単な課題においては成績の悪い人ほど好成績だと錯覚し、好成績な人ほど正確に自分の結果を評価する」ことが明らかにされ「ダニング=クルーガー効果」が改めて証明されました。

 

さらには「難しい課題においては結果が少々異なり、好成績な人ほど成績が悪いと錯覚し、成績の悪い人ほど正確に自分の結果を評価する」ことが明らかにされました。

 

Burson KA, et al. J Pers Soc Psychol 90(1):60-77, 2006.

 

 

つまり課題の難易度で「ダニング=クルーガー効果」のあらわれ方は異なるのです。

 

井の中の蛙-M1-min

 

自分が成し遂げたいと思う事柄について自分が未熟であり能力が足りないと思い知るのは誰にとってもつらいことであり目を背けたくなります。

 

しかし本気で上達したいと願うのであれば「ダニング=クルーガー効果」にとらわれず強い意志を持つことがなによりも大切です。

 

ここで勘違いしないでいただきたいのは自分に実力がないからといって「井の中の蛙」になって井戸の中に閉じこもっていた方が良いと言っているわけではないことです。

 

今は第一線で活躍しているバンドであってもかつてはヤジを飛ばされたり非難されたりして思い出したくもないような過去を持っているという話も少なくありません。

 

しかし思い切って外の広い世界へ足を踏み出して努力を重ねたからこそ今の活躍があるはずです。

 

へなお
「井の中の蛙」で終わるのか外の世界へと羽ばたけるかはあなたの意思次第なのです。

 

 

“ダニング=クルーガー効果の脳科学”のまとめ

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「井の中の蛙」が外の世界に出るために知っておきべき「ダニング=クルーガー効果」についてわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 「井の中の蛙」は正確には「井の中の蛙大海を知らず」であり「視野が狭くありきたりの知識しかない」というネガティブ思考の”ことわざ”です。
  • 「井の中の蛙」になるのは脳科学的には「ダニング=クルーガー効果」というバイアスが働くことが原因です。
  • 「ダニング=クルーガー効果」とは知識のない人ほど自分を過大評価し、知識のある人ほど自分を過小評価する作用です。
  • 「ダニング=クルーガー効果」から抜け出すためには「されど空の青さを知る」という強い意志を持つことが何よりも大切です。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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