脳を科学する 自己の脳科学

「孤独のグルメ」の“ちょっかんを研ぎ澄ます”に学ぶ~直感と直観の違いを脳科学で説く

2020-09-06

「孤独のグルメ」-A1

「孤独のグルメ」で井之頭五郎さんがお店を探している時の決めセリフ「焦るんじゃない。落ち着け。”ちょっかん”を研ぎ澄ますんだ。」の“ちょっかん”って直感と直観のどっちなんでしょう?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、主に一般の方に向けて脳の病気、治療から脳の科学まで幅広くわかりやすく解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 直感と直観の違いがわかります。

 

「孤独のグルメ」から学ぶ

直感と直観の脳科学

  • 「孤独のグルメ」は最高のグルメドラマです。
  • なんと言っても井之頭五郎さんの食べっぷりははんぱないです。
  • 五郎さんがお店を選ぶ際には必ず自分の”ちょっかん”を研ぎ澄まします。
  • その”ちょっかん”は直感でもあり直観でもあります。
  • 思いつくままの直感も理屈の通ったへらめきの直観もいずれも大切な”ちょっかん”です。
  • あなたも自分の”ちょっかん”を研ぎ澄まして生きていきましょう。
へなお
皆さんは「孤独のグルメ」を知っていますか?

 

主役の井之頭五郎(いのがしらごろう)が仕事の合間にいろいろなお店に立ち寄ってひたすら食事を楽しむという単純なストーリーのグルメドラマです。

 

マンガを原作として2012年にテレビ東京でドラマ化されました。

 

現在まで10回のシリーズが放送され、毎年12月31日には大晦日スペシャルが放送されるという人気グルメドラマとなっています。

 

とにかく主役の井之頭五郎にふんする松重豊さんの食べっぷりがすさまじいのです。

 

実際に食べているシーンも多く放送されているので間違いなく大食いですね。

 

ちなみに「なんでこんなに食べられるの?」なんていう”大食いに関する脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。

 

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この番組はいつも深夜に放送されるのでちょうど小腹がすいてくる時間帯でもあり食欲を刺激する“夜食テロ”としても人気を博しています。

 

へなお
自分はこよなく「孤独のグルメ」を愛しています。

 

あくまでもグルメドラマなのですがこのドラマの魅力は食だけではありません

 

主役の五郎さんのセリフにも大きな魅力があります。

 

ドラマのセリフはほとんどが五郎さんの心の声です。

 

数々のお決まりの名セリフがあるのですがその中でお腹が減ってお店を探すシーンで必ず出てくるのが

 

へなお
焦るんじゃない。落ち着け。“ちょっかん”を研ぎ澄ますんだ。

 

というセリフです。

 

五郎さんが道の真ん中で立ち止まって脳をフル回転させて考えるのですが、いつも気になるのはこの“ちょっかん”という言葉です。

 

五郎さんの”ちょっかん”はいつもどんぴしゃで必ず美味しいお店にたどり着きます。

 

へなお
この“ちょっかん”とは直感?直観?どっちなの?

 

まあどっちでもよい言えばばよいのですが…

 

こんなにもいつも美味しいお店にたどり着ける五郎さんの“ちょっかん”に今回はスポットをあてて脳科学で探ってみたいと思います。

 

へなお
皆さんも“ちょっかん”に頼って生きている部分は多少なりともあると思います。

 

そんな“ちょっかん”って何なのか知ってます?

 

そもそも直感と直観の違いとは?

直感と直観-その1

今まであまり意識したことはなかったかもしれませんが同じ“ちょっかん”でも直感と直観は大きく違います

脳の中で働く場所も全然違います

 

へなお
まずは言葉の意味を辞書で調べてみましょう。

 

【直感】

説明や証明を経ないで、物事の真相を心でただちに感じ知ること。

すぐさまの感じ。

「―を働かす」「―的に知る」

引用元:広辞苑

 

【直観】

一般に、判断・推理などの思惟作用の結果ではなく、精神が対象を直接に知的に把握する作用。

直感ではなく直知であり、プラトンによるディアレクティケー(問答法)を介してのイデアの直観、フッサールの現象学的還元による本質直観等。

引用元:広辞苑

 

へなみさん
なんだかわかったようなわからないような…

 

直感も直観も“ふと思いつく”という状況は似ています。

 

しかし思いついた後の状況はまったく違ってきます

 

直感とは-その1

”直感”本人にも理由がわからないのですがなぜか答えがわかるのです。

ただなんとなくとしか言いようがない曖昧(あいまい)な感覚根拠ははっきりしないのですが、その答えの正しさが漠然(ばくぜん)と確信できるのです。

そして大切なことは“直感は意外と正しい”ということです。

 

直感は単なる勘ではないのです。

 

なぜか答えがわかる、わからないのにできてしまう…

 

それが直感です。

 

直感は守護霊が送ったメッセージでありスピリチュアル能力とも言われています。

 

理由はうまく言えないけどこれって当たり前のことだよね…

 

そんな発想…いわゆる人の能力を超越した”第六感”です。

 

ですから直感力が優れている人は日常をほとんど直感で過ごしているなんて言われます。

 

”スピリチュアルと脳科学”について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

 

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なんだかちょっと霊の存在すらただよう直感ですがちゃんと脳のどの部位が関係しているのかはわかっています。

 

脳の中では“基底核”という場所が活発に活動して直感が生まれます。

 

それでは”直観”はどうでしょう。

 

直観とは-その1

”直観”思いついた後にその答えの理由をちゃんと説明できます

ですから直観には直感のようなスピリチュアルの発想はありません。

直観は”ひらめき”とも言われます。

 

直感を“動物的な感覚”と例えるのであれば直観は“知的な推論”とでも言うのでしょうか。

 

直観は理屈や論理に基づいて最終的な判断がなされていています。

 

脳の中では“大脳皮質”という場所が活発に働いて直観が生まれます。

 

このように同じ“ちょっかん”でも直感と直観では脳の機能的にも大きく違うことがわかります。

 

へなお
ではここで「孤独のグルメ」五郎さんの言葉を思い出してみましょう。

 

空腹の五郎さんが美味しい食事のお店を探している時は必ず「”ちょっかん”を研ぎ澄ますんだ!」と心の中で叫びます。

 

ネットで検索するとこの場合の“ちょっかん”は直感となっているのですがこれは本当に直感で正しいのでしょうか

 

五郎さんの“ちょっかん”が直感であった場合

まずは五郎さんの“ちょっかん”が直感であったと仮定してみましょう。

 

へなお
直感はそもそも研ぎ澄ますことができるのでしょうか?

 

多くの方は“パブロフの犬”という言葉を聞いたことがあると思います。

 

ベルを鳴らすとエサがもらえるシステムを作ると最終的に犬はベルが鳴るだけでエサがもらえると感じてよだれが出るようになります。

 

“ベルが鳴る=エサがもらえる”という無意識での条件反射が脳に埋め込まれて起こる現象です。

 

へなお
この現象は人でも同じようにおこります。

 

直感とは-その2

無意識の中でも自分の人生経験から物事をパターン化していきます。

このような場合にはこれが答えである確率が高いと瞬時に判断できるようになっていきます。

ただしこのような無意識での判断=直感は本人にはほとんど自分が学んで成長したという実感がないのでなかなか気づきません。

しかし意識的に学んだことよりも無意識で学んだことの方が人の人格や成長に与える影響ははるかに大きいのです。

 

芸術やデザインや企画の考案、料理のセンス…

 

これらのものはいくら教科書で学んでもなかなか成果を上げられるだけの能力を全員が同じように得られるものではありません。

 

このような能力は無意識の学習によって得られる成果の方がはるかに高いと言えます。

 

ですから五郎さんの“ちょっかん”は今まで五郎さんが数々食べ歩きをしてきた経験から無意識的に生み出された“直感”なのかもしれません。

 

店構え、お店の看板の感じから“このお店は美味しいに決まっている”というなんとなく生み出される直感。

 

へなお
五郎さんはそんな直感を研ぎ澄ましているのかもしれません。

 

五郎さんの“ちょっかん”が直観であった場合

次に五郎さんの“ちょっかん”が直観であったと仮定してみましょう。

 

へなお
直観もそもそも研ぎ澄ますことができるのでしょうか?

 

直観には脳科学的には2つのタイプがあります。

 

それは論理的思考と推論的思考です。

 

へなみさん
なんだかむずかしいなあ…

 

へなお
それぞれを簡単に説明してみましょう。

 

論理的思考とはまさに理詰めで導き出された思考です。

 

そこにはちゃんとした理由があってそれによりひらめきが導き出されています

 

お店の前がきれいに清掃されていてのれんや看板に汚れがなくて清潔感がある…

 

このようなお店の出す料理はていねいで味もしっかりしている…

 

だからこのお店はきっと美味しいに違いない…

 

そんなひらめきです。

 

一方推論的思考は相手の出方を推測しながら行われる思考です。

 

ぱっと見た感じ店構えはちょっと古めかしいけど味があってなんだか懐かしい感じがする…

 

こういうお店はきっと美味しいんだろう…

 

しかしこういうお店は1人で入るにはちょっと勇気がいる、常連さんばかりかもしれない、変な目で見られたくない…

 

こういうお店はやめておいた方がよいだろう…

 

そんなひらめきです。

 

この2つの直観のひらめきは脳の中では大脳皮質でも違う場所が活動しています。

 

自分本位で考えるのか他人の思考も巻き込んで考えるのか…

 

しかしいずれにしても一瞬のひらめきとして脳に強い刺激を与えることは同じです。

 

直観とは-その2

直観を支えているのは情報です。

自分が今まで得てきた多くの情報から物事の本質を見抜いて自分の持っている本能と照らし合わせて適格な判断を下すそれが直観です。

 

そう考えると直感よりも直観の方が人生経験によってより磨き上げられ研ぎ澄まされていくものなのかもしれません。

 

五郎さんの“ちょっかん”を直観とするのであればそれはなんとなくの感覚ではなく、

 

お店の本質を五郎さんの本能が見抜いて“美味しいお店”という答えを導き出しているということになります。

 

へなお
まさに五郎さんはそんな直観を研ぎ澄ましているのかもしれません。

 

あなたも自分の “ちょっかん”を研ぎ澄ませよう

直感と直観-その2

五郎さんの“ちょっかん”について脳科学的に色々と考えてきましたが…結局“ちょっかん”は直感でもあり直観でもありどちらとも言えませんね

文字にしてしまうと直感か直観かということになりますが、言葉にすればどちらの”ちょっかん”かは見る人の受け止め方次第なんでしょうね。

 

へなお
受け止める人のまさに“ちょっかん”にゆだねられているのかもしれませんね。

 

五郎さんはじぶんの”ちょっかん”を感じとる時には必ず一度立ち止まります

 

そして自分の脳に言い聞かせるのです。

 

“ちょっかん”を研ぎ澄ますんだ!

 

多くの情報の波が渦巻く現代社会を生き抜くのは大変です。

 

時には自分の”ちょっかん”を信じて進まなくてはならないことも多くあると思います。

 

へなお
あなたも自分の“ちょっかん”を磨生き上げ研ぎ澄ませてみませんか。

 

ちなみに「孤独のグルメ」は全話Paraviで配信されています。

 

へなお
まだ見たことのない人はお勧めですよ。

 

こちらの本で予習復習もしてみましょう。

 

 

”直感と直観の脳科学”のまとめ

まとめ-conclusion1-N1

「孤独のグルメ」から直感と直観の違いについて脳科学的に解明してみました。

今回のまとめ

  • 「孤独のグルメ」は最高のグルメドラマです。
  • なんと言っても井之頭五郎さんの食べっぷりははんぱないです。
  • 五郎さんがお店を選ぶ際には必ず自分の”ちょっかん”を研ぎ澄まします。
  • その”ちょっかん”は直感でもあり直観でもあります。
  • 思いつくままの直感も理屈の通ったへらめきの直観もいずれも大切な”ちょっかん”です。
  • あなたも自分の”ちょっかん”を研ぎ澄まして生きていきましょう。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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