他人のことを意識しすぎて気になってしまうのはなぜなのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 他人のことを意識しすぎて気になってしまう「人物本位」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
「人物本位」ってどういう意味?
「人物本位」の脳科学
- 脳は他人の性格や人柄だけを重視する「人物本位」をとても好みます。
- 脳はどのような出来事に対しても、それを象徴する人の顔を見なければ理解できないようにプログラムされています。
- しかし他人のことを意識しすぎて気にしてばかりいると、「人物本位」のワナにはまりこんでしまい出来事の本質を見失ってしまいます。
- 「人物本位」に惑わされず、冷静になって周囲を見渡して出来事の本質を見抜いてください。
企業の採用面接やお見合い企画などでよく見かける言葉です。
最近では大学入試に人物本位の選抜を導入する動きも見られます。
「人物本位」とは簡単に言ってしまえば「その人の性格や人柄だけを重視する」という意味です。
ですから学歴、容姿、財産、血筋、職業、年齢など性格や人柄以外の要素は問わないといことになります。
思いやりのある優しい人
誠実な人
優しくて家庭的な人
一緒にいて楽しい人
包容力があって頼もしい人
このような表現がよく使われます。
しかし「人物本位」には大きなワナがあり、脳はそれを悪用したがります。
みなさんも知らず知らずのうちに「人物本位」のワナにはまり込んでいるのです。
脳は人の顔が見えなければ理解できない
「人物本位」は性格や人柄だけを重視して、それ以外の要素は無視することです。
一見するとその人のことを大切に考え、とてもいい考え方に思えてしまうかもしれません。
しかしそこには大きなワナが潜んでいます。
「人物本位」のワナとは、どのような出来事においても人物本位が行き過ぎると、人物に焦点を当てすぎて、外からの影響や状況といった要因を過小評価してしまうことです。
たとえばある企業が経営悪化に陥(おちい)ると、その原因はCEOにあると考えられ辞職に追い込まれます。
経営悪化の原因は一般的な経済状況によるもので、CEOの指導能力だけが原因ではないとわかっていても、注目されるのはCEOの去就問題です。
スポーツであるチームが優勝すると、そのチームの監督と中心選手だけがクローズアップされます。
優勝するには陰の立役者がたくさんいるとわかっていても、注目されるのは監督の指導能力や中心選手の活躍です。
最近の話題では、ロシアのウクライナへの軍事侵攻はプーチン大統領だけが悪者扱いです。
NATOの問題や旧ソ連からの独裁政権については多くの人は無関心で、ロシアがなぜウクライナに戦争を仕掛けたのか本当の理由をよくわかっていない人は少なくないはずです。
それでもとにかくプーチン大統領は悪い人という考えだけが独り歩きしています。
どのような出来事も、その中心にいる人にだけスポットライトが当てられます。
しかし実際にはさまざまな要因や条件が複雑に関わって出来事は成り立っています。
ところが脳はそのすべてを理解できません。
その出来事を象徴する人だけを「人物本位」で注目して、その他の要因や条件は無視するのです。
新聞やニュースでは「人の顔が見えなければ記事にならない」が決まりごとになっています。
“ニュースの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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最初にも言いましたが「人物本位」と聞くと、その人のことを良く考えてくれていていい印象を持たれがちです。
しかし多くの場合は「人物本位」によって、ほとんどの出来事は特定の人物を評価の基準に仕立て上げているのです。
他人のことを意識しすぎて気になってしまう理由
たとえばクラシック音楽のコンサートに出かけたとしましょう。
注目されるのは指揮者やソリストです。
演奏される作品自体が話題に上ることはあまりありません。
音楽の本来の素晴らしさは作品にあるはずです。
“音楽の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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作曲とは、まっさらな紙の上に旋律を作り出していくことです。
ですから同じ曲を異なる指揮者やソリストで聴き比べるよりも、違う曲を聴く方がはるかに大きな違いに気づくはずです。
しかし多くの人は指揮者やソリストにばかり注目します。
そのようなことを自慢げに話します。
それは作品の楽譜には指揮者やソリストのように顔がないからです。
ある有名な作家が新作を出版したとしましょう。
しかし多くの場合注目されるのは、作品の内容よりも有名な作家がどのような人生や経験を経てその作品を書き上げたのかということばかりです。
いずれも脳が注目するのは出来事の本質よりもそれに関わる人間のことばかりです。
その最大の理由は人間の進化の過程にあります。
大昔の時代に人間が生き延びていくには、グループに属することが必要不可欠でした。
グループから追放されると、その先には死が待ちかまえています。
生殖も敵からの防衛も食糧の調達も1人では不可能な時代です。
自分以外の他人が必要でした。
一匹狼では遺伝子を残すことはできません。
そのため他人に興味を持ってグループに属することが必要だったのです。
“人類史の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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その結果、脳の中には他人のことを意識して気にするプログラムが埋め込まれ、現代までそれが引き継がれているのです。
脳は起きている時間の90%は他人のことを考えています。
つまり他人のこと以外を考えている時間は10%しかありません。
「人物本位」とは、舞台の上の役者に惹きつけられるかのように、他人に関心を持ち他人に焦点を当てて出来事を評価することと言えるかもしれません。
しかし人間は自分の性格や考え方のみにしたがって行動しているわけではありません。
まわりの多くの要因や条件によって大きな影響を受けているはずです。
ですから目も前で起きていることを本当に理解するには、目の前にいる他人に注目するのではなく、その人が受けている影響やその人が置かれている状況にこそ目を向けるべきなのです。
みなさんも「人物本位」という言葉に惑わされ他人のことを意識しすぎないように、冷静になって周囲を見渡す習慣を身につけてみてください。
“「人物本位」の脳科学”のまとめ
他人のことを意識しすぎて気になってしまう「人物本位」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 脳は他人の性格や人柄だけを重視する「人物本位」をとても好みます。
- 脳はどのような出来事に対しても、それを象徴する人の顔を見なければ理解できないようにプログラムされています。
- しかし他人のことを意識しすぎて気にしてばかりいると、「人物本位」のワナにはまりこんでしまい出来事の本質を見失ってしまいます。
- 「人物本位」に惑わされず、冷静になって周囲を見渡して出来事の本質を見抜いてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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