ピグマリオン効果とはなんですか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い手術、血管内治療、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 恋愛や子育てで期待した通りの成果を生み出す秘伝の方法であるピグマリオン効果とは何なのかがわかります。
ピグマリオン効果とはなんですか?
期待した通りの成果を生み出すピグマリオン効果って知ってる?
- ピグマリオン効果とは期待されることでその通りの成果を生み出す秘伝の方法です。
- ピグマリオン効果は脳科学的に証明された効果です。
- ピグマリオン効果は恋愛や子育て、教育などあらゆるものに効果を発揮します。
- あなたもピグマリオン効果を理解して脳に快感や幸福感を味あわせてみませんか。
ピグマリオン効果とはものすごく強い願望を持つと願いが叶うという効果のことを言います。
なんと1964年に論文が発表されています。
実際にどのようにしてピグマリオン効果を証明しているのかご紹介します。
ネズミを使って記憶力を確かめる研究です。
”ネズミAは頭が良い”と”ネズミBはそうでもない”…そんな情報を学生たちに伝えます。
ちなみにネズミAもネズミBもまったく同じネズミです。
学生たちはこの2匹のネズミを使ってさまざまな実験を行います。
すると学生たちは”ネズミAの方が記憶力は良い”というデータを出してきます。
データは決して偽造されているわけではありません。
ここで実験の様子をこっそりのぞいてみます。
学生たちは頭が良いと言われたネズミAに対する扱いがていねいです。
データのとり方も明らかにネズミAの方に有利になるように無意識で動いています。
“ネズミAは頭が良い”という先入観によって知らず知らずのうちに“ネズミAの方が記憶力は良い”という結論になるように実験を重ねているのです。
結果は当然のことながら“ネズミAの方が記憶力は良い”という期待通りの結果にたどり着くのです。
ピグマリオン効果-その1
先入観による無意識の不平等さこそがピグマリオン効果の根源なのです。
脳は一見複雑なことをしているように見せかけています。
しかし脳に自由なんてなくて単純作業をこなしているだけなんです。
脳が求めていることはつねに快感と幸福感です。
快感と幸福感を生み出すのは脳の報酬系回路です。
“報酬系回路に関する脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
こちらもCHECK
“Get Wild退勤”で仕事の達成感を得る!脳内妄想を脳科学で説く
「”Get Wild退勤”で仕事の達成感を得る」とはどういうことなのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医と ...
続きを見る
ピグマリオン効果-その2
期待された通りの成果が生み出すことは脳にとって快感であり幸せです。
ですから脳は快感や幸福感を味わうためにせっせと働くのです。
では実際にピグマリオン効果がその効力を発揮する例を考えてみましょう。
ピグマリオン効果を恋愛で活かす方法
ピグマリオン効果は恋愛にとても効果的です。
ピグマリオンとはギリシャ神話に登場する王様の名前です。
”ピグマリオン王が自分の好きな女性の彫刻を作って愛する想いをつのらせていたら彫刻が本物の人間になっちゃった!”
そんな伝説から”ピグマリオン効果”という言葉が生まれました。
ですからピグマリオン効果が恋愛に有効なのは当然なのです。
恋愛のピグマリオン効果-その1
まずは自分がどれくらい相手のことを好きなのか、どこが好きなのかをしっかりと確認することから始めましょう。
そこがスタートなので肝心なところです。
そしてその想いを相手に伝えて相手の脳に快感や幸福感を味あわせてあげるのです。
恋愛についても同じです。
恋愛のピグマリオン効果-その2
相手を褒めたり相手を肯定したりするようなポジティブな言葉や行動を常に意識してください。
特に効果的なのはありきたりではなくさりげないちょっとした言葉や行動です。
”仕事ができる”
”かっこいい”や”可愛い”
”頭が良い”
そんな言葉では相手の脳はたいして刺激されません。
仮に相手に快感や幸福感を一時的に与えても他の人が同じような言葉を投げかけてきたらあっという間にあなたの言葉はかき消されてしまいます。
それよりも、
”指先が綺麗”
”服のボタンが可愛い”
”シャツの襟のデザインが素敵”
そんなちょっとした言葉の方がずっと刺激的なのです。
それではただ相手を不快な気分にさせてしまうだけです。
それよりも、
“待っている時間がとても淋しくて不安でつらかった…”
そんな言葉を投げかけてみてください。
“遅れてごめんなさい。次はちゃんと時間を守って淋しい思いや不安にさせないようにするね。”
なんて返事が返ってきたら効果ありです。
仕事の愚痴を聞かされても、
“そんな大変な中で頑張って仕事している姿を尊敬するし素敵と思う。”
ちょっと言い争いになっても、
“好きな人の前だとついつい気を許して自分をさらけ出して言いたいことを言いすぎてごめんなさい。”
そんな風にうまく言葉を選ぶことで自分の期待した恋愛は成就していくのです。
恋愛のピグマリオン効果-その3
相手の好きなところ、いいところを見つめて褒めてあげる。
相手も褒められればますます自分のことを好きになってくれる。
それがピグマリオン効果を活かした恋愛方法です。
ピグマリオン効果なんて堅苦しい言葉を使うとちょっと戸惑ってしまうかもしれません。
しかし恋愛上手な人たちは無意識でピグマリオン効果を実践しています。
ピグマリオン効果を子育てで活かす方法
ピグマリオン効果は子育てや教育にもとても効果的です。
ピグマリオン効果は別名“ローゼンタール効果“や”教師期待効果”とも呼ばれています。
先ほどネズミの研究でご紹介したローゼンタール氏は別の研究でピグマリオン効果が教育に有効であることを証明しています。
知能テストを行ないます。
今後成績が伸びる可能性のある生徒を割り出すテストと説明します。
しかしテストにはそんな深い意味はありません。
テストの結果とは関係なく適当に選んだ生徒数名を今後成績が伸びる可能性のある生徒として先生と生徒本人に伝えます。
そして数か月がたつとその生徒たちは本当に成績が向上しました。
この研究の結論は成績が向上した要因は先生が選ばれた生徒に対して無意識に期待をもった特別な対応をしたこと、生徒自身も期待に応えるために頑張って勉強したことと主張しています。
Rosenthal R, et al, The Urban Review volume 3, pages16–20, 1968
脳は快感と幸福感が大好きです。
”子育てや教育が結果的にうまくいって優秀な子供が育った…”
このような場合にも当然脳は快感や幸福感を味わいます。
しかしこれではゴールにたどり着かないと快感や幸福感を味わえません。
しかし最初から快感や幸福感を味わっていたらどうでしょう。
“あなたは頭が良いのだから勉強ができるはず”
“あなたは天才なのだから負けるはずがない”
子育てののピグマリオン効果-その1
すでにスタートの時点で脳の報酬系回路は活発に働いています。
脳はほんと単純なので一度快感や幸福感を味わうとさらにもっと上の快感や幸福感を味わいたくなります。
その欲求は何かが達成されるとさらに大きなものになっていきます。
報酬系回路の無限ループ状態です。
これが子育てや教育における”ピグマリオン効果”です。
子育てののピグマリオン効果-その2
ピグマリオン教育は教える教育ではなく子供が自ら学ぶ教育です。
子供だって期待されればその期待に応えようと頑張ります。
ピグマリオン教育では50点をとったことをまず褒めます。
50点分の学習がちゃんとできていたんですからそのことをちゃんと評価してあげます。
できなかった50点分はこれから学んでいくべき課題が見つかっただけなのです。
ですから50点分の不足した能力を補うためのトレーニングを促します。
そしてトレーニングを積んだあとにテストの問題を再挑戦させます。
1点でもとれれば自分がテストの時よりも向上したことを子供は実感できるでしょう。
それによって子供の脳が快感や幸福感を味わえばさらに自ら学習する意欲がわいてくるのです。
ピグマリオン効果に対する反論や批判
ここまでは“ピグマリオン効果はいかに素晴らしいか”を説明してきました。
ピグマリオン効果も同じです。
ピグマリオン効果の基本は相手を褒めて期待することにあります。
ですからむやみに“あなたはやればできる”と期待ばかりしていると“自分ができる人間だ”と勘違いを起こして何もしないなんて人も当然でてきます。
逆に“あなたはやればできる”と期待されたのに期待を裏切るのではないかという不安、できる人への妬みや苦痛などを強く感じてしまう人もいるでしょう。
このような状況ですと脳では報酬系回路ではなく同情系回路が活発に働き始めてしまいます。
“同情系回路の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
こちらもCHECK
半沢直樹にみる土下座で謝罪から理想的な謝罪の仕方を脳科学で探る
半沢直樹はどうしてあんなに怒って土下座して謝罪させるのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年…多く ...
続きを見る
ピグマリオン効果-その3
勘違いや不安、苦痛などの感情を引き起こす同情系回路と快感や幸福感を生み出す報酬系回路は表裏一体、紙一重です。
期待や自信は大きな成果につながる可能性もあれば自分を失墜させかねない危険もはらんでいます。
脳の活動はつねに“ゆらぎ”の中にいるのでどちらに転んでもおかしくはないのです。
うまくいけば美談になりますがうまくいかなければ話のネタにもならないかもしれません。
自分たちは無意識のうちに脳とだまし合いをしています。
そんな経験ありますよね。
こんな風に脳にだまされることなんて度々です。
ですから時には“自分は期待されているんだから絶対出来る”なんて脳をだましてみてもいいのです。
それでうまくいけば儲けものです。
うまくいかなくて当然。
ピグマリオン効果-その4
ピグマリオン効果だって”効果があったら儲けもの…効果がなくて当然…”そんな心持ちで生きてみませんか。
教育におけるピグマリオン効果についてもっと知りたい方はこちらをぜひ読んでみてください。
人気のあるものには当然反論もつきものです。
ぜひ知っておきたいピグマリオン効果のまとめ
恋愛や子育てで期待した通りの成果を生み出す秘伝の方法であるピグマリオン効果とは何なのかについて脳科学的に解明してみました。
ぜひ知っておきたいピグマリオン効果のまとめ
- ピグマリオン効果とは期待されることでその通りの成果を生み出す秘伝の方法です。
- ピグマリオン効果は脳科学的に証明された効果です。
- ピグマリオン効果は恋愛や子育て、教育などあらゆるものに効果を発揮します。
- あなたもピグマリオン効果を理解して脳に快感や幸福感を味あわせてみませんか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
最後にポチっとよろしくお願いします。