日常の脳科学 脳を科学する

日本代表の試合結果にあなたは何を求めますか?日本人の美学である利他行動を脳科学で探る

2021-03-23

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あなたは日本代表の試合結果に何を求めますか?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 日本人が美学として好む利他行動とは何なのかを脳科学で説き明かします。

 

日本代表の試合結果に求める美学こそが日本人の本音

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利他行動の脳科学

  • 日本人は日本代表の試合に、勝ち負けよりも美しさを求めています。
  • 歴史においても悲劇のヒーローやヒロインを好み、美化することを好みます。
  • 美と善という一見関係のない感覚が脳の中で融合し、社会脳を作り上げ、わたしたちを支配しています。
  • 他人を優先する利他行動は社会脳の象徴的な行動です。
  • 日本人は利他行動を美化しすぎるあまり、ルールから外れた人を攻撃する性質があります。
  • 美しさを求めるあまり、合理的な選択ができなくなるのも考えものかもしれません。

サッカー、ラグビー、野球、バレーボール、バスケットボールなどなど、スポーツの世界には日本代表チームが存在し世界の強豪と闘っています。

 

ワールドカップやオリンピックなどは、まさに日本代表が躍動する晴れ舞台でしょう。

 

大きな試合であればあるほど試合の翌日にはマスコミが試合結果をこぞって報道し、誰しもがあたかも監督のような口ぶりで評価を下します。

 

へなお
勝者は称えられ敗者はなじられる…なんとも恐ろしい世界です。

 

しかしここまでは世界中どこでもそんなに変わらない風景ではないでしょうか。

 

日本人が独特なのは、「たとえ勝者となっても美しく勝たなければ意味がない」ということです。

 

勝つための戦法であってもはたから見て醜(みにく)さを感じてしまうような勝ち方では納得できません。

 

正々堂々と戦い温存していたヒーローが途中出場で活躍して得点を挙げ勝つようなストーリーをわれわれは求めています。

 

逆に「たとえ敗者となっても、美しく負ければ賞賛される」こともあります。

 

へなお
試合で負けたのに美しい…なんてなんだか妙ですよね。

 

日本人が求めているのは試合内容よりも、たとえ負けても勝利した相手に賛辞を送り、負けても礼儀正しくです。

 

使用したロッカールームをきれいに清掃し、感謝のメッセージを残していたらもう大絶賛です。

 

試合を見に来た観客にも美しさは求められます。

 

試合に負けて暴動を起こすなんてもってのほか、勝利した相手にエールを送り帰り際には客席をきれいに清掃する。

 

このような試合とは関係ない部分を取り上げて「惜敗するも美しい敗北だった」とねぎらうのです。

 

試合の勝敗そのものよりも、美しく振舞うことの方がずっと大事であると言わんばかりです。

 

へなお
このような、なんとも難しいことを試合結果に求めてくるのは、世界中で日本人くらいでしょう…

 

多くの素人たちがこぞってより美しいエピソードを探し出して

 

へなじんさん
ねえ…知ってる?

 

なんて評論家張りの解説をし合うわけです。

 

そんな光景に対しては当然賛否両論があるわけですがそれでも日本代表の試合が行われるたびに毎回同じ光景が繰り広げられるのです。

 

『美しく勝ってこそ意味がある』

 

『醜く勝つくらいなら、美しく負ける方が価値がある』

 

これがまさに日本人の本音でしょう。

 

多くの人はこのことを暗黙の了解として、さまざまな議論をして日本代表を時に賞賛し、時になじるのです。

 

「戦略はどうであれ、勝てばいいのであって、勝つことこそ素晴らしい」

 

なんてもっともらしいことを言おうものならあっという間に批判されて、ますます日本人の求める美学が強調される羽目になります。

 

”美学の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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一見すると日本人の本音は素晴らしく思えるかもしれません。

 

しかし時に、日本人の大好きな美学は牙をむいて個人を攻撃し、とても危険な状況を作り出します。

 

そのような危険な出来事は何度となく繰り返されてきたにも関わらず、時がたてば皆忘れてしまいます。

 

そして日本代表の試合が行われるとまた同じことが繰り返されるわけです。

 

ではどうして日本人は勝ちにも負けにも「美しさ」をこんなにも求めるのでしょうか?

 

悲劇のヒーローやヒロインを好む日本人

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試合において最も大切なことは勝つことです。

 

しかし日本人の暗黙の了解のなかでは決してそうではありません。

 

勝っても負けても、美しくなければ意味がないのです。

 

このことは日本の歴史を振り返ってみてもよく分かります。

 

歴史上の人物で日本人が好み何度もドラマや映画の主役となっているのは悲劇のヒーローやヒロイン達です。

 

天下統一を目前にしていた織田信長を倒したにも関わらずその後すぐに倒された明智光秀

 

戦国時代に豊臣秀吉につくしていたにも関わらず大坂夏の陣で敗北した真田幸村

 

幕末に大政奉還と明治維新に大きく関わり時代を動かしたにも関わらず暗殺された坂本龍馬

 

江戸幕府を作り上げそして潰した愛憎渦巻く大奥

 

自分は歴史にはあまり詳しくはありませんが、それでもこれらの悲劇のヒーローやヒロインたちに興味を持ってしまいます。

 

これは悲劇の中にも美しさを感じ、つい肩入れしてしまうという日本人独特の趣向を表しているのではないでしょうか。

 

非凡な力を持ちながらも、見果てぬ夢の前に散りゆく美しさが、日本人の心をとらえているのは間違いのない事実です。

 

社会脳によって支配されている日本人

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へなお
話を戻しましょう。

 

どうして日本人は勝ちにも負けにも「美しさ」をこんなにも求めるのでしょうか?

 

その疑問の答えを探るには、脳の中でどのようにして「美しさ」を感じているのかを考えてみる必要があります。

 

脳の中で「美」を感じる部分はおおよそ分かっています。

 

「美」を感じる部分は、「社会脳」と呼ばれる一群の領域のひとつでもあります。

 

社会脳とは、他人への配慮、共感、同情、利他行動などいわゆる「良心」を司っています。

 

つまり自分の行動が正しいのか間違えているのか、善なのか悪なのか、そのようなことを識別する能力です。

 

わたしたちは、社会脳が備わっているからこそ真っ当な社会生活を送ることが可能になっています。

 

社会脳は、そもそも美しい、美しくないという基準と理屈の上でははまったく別物で、それとは独立した価値観です。

 

しかし脳の中では、この2つの能力は同じ場所で処理されているために混同されやすくなっています。

 

へなお
よく人の正しい行動を「美しい振る舞い」と言ったり、不正な行動に対しては「汚職」と表現したりしますよね。

 

これは脳の中で美の感覚と社会脳の感覚が入り混じっている証拠です。

 

社会脳は動物の中では人間が突出して発達していてそのおかげで、人間は地球上でここまで繁栄して来れたと言えます。

 

他の動物と比べて肉体的に脆弱で逃げ足も遅い人間が生き延びて繁栄していくには、それなりの知恵が必要であったというわけです。

 

社会脳を維持するには、個人個人が利他性を高める…つまり自分の利益よりも他人や全体の利益を優先するという行動が求められます。

 

一見すると素晴らしい能力に思えてしまいますが、自分が生き延びるためにはなりふり構わず個人の利益を優先するという、動物としての根本的な性質には反しています。

 

しかし人間の脳は、「美醜」や「善悪」という基準を無理やりでも備え付けて、「美」あるいは「善」と判定された時に脳の中に快楽物質が放出されるようにして、何とか人間を利他的に振舞うように仕向けてきたのです。

 

これは個人ではなく、人間という種族として生き延びるための工夫なのでしょう。

 

ですから自分の利益、自分の勝利だけを優先して戦略を立てるという行動は、脳に植え付けられた社会脳に真っ向から反しています。

 

”自己犠牲の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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社会脳は、人間の世界では暗黙のルールであり、それゆえこの掟を破るような行動に対しては厳しく攻撃されるのです。

 

ですから私たちはどんな状況においても美や善を求めてしまうわけです。

 

特に日本人でこの傾向が強いのは、幸せホルモンと称されるセロトニンが関係しています。

 

へなお
これについては次の項で探っていきましょう。

 

他人のために…が行き過ぎる日本人

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人間は社会脳によって支配されていて、他人の利益や勝利を優先する利他行動を重んじて生き延びてきました。

 

とはいえ、自分の利益を追求するという行動を完全に止めてしまうとどうなるでしょうか?

 

自分の生存自体が危うくなってしまいます。

 

”自己中心の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

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ですから社会脳にはある程度の柔軟性が備わっています。

 

『他人に対しては「他人の利益や勝利を優先しなさい」と利他行動を求めていても、自分自身の利益はちゃっかり優先できてしまう。』

 

社会脳はそんなゆるゆる設定になっています。

 

へなお
しかしここに大きな落とし穴が待ち構えています。

 

人は相手に得をしてもらいたいと利他行動が働く一方で、当然自分も得をしたいと考えるものです。

 

自分を取るか他人を取るかの微妙な駆け引きを行い、最終的な落としどころを探ります。

 

世の中の多くの人は、どうしても自分の得が多くなるように配分し、自分の取り分を8割、他人の取り分は2割になるように決着させることが多いようです。

 

しかしすべての人が必ずしも同じ行動をとるわけではありません。

 

中には他人に対してより多くの得が出るような配分をする人もいます。

 

そのような人は、利他行動のできる素晴らしい人と言うことになるわけですが、話はそんなにすんなりとは終わりません。

 

自分のとった利他行動が他人に尊重されないとリベンジに走ろうとします。

 

へなじんさん
自分は利他行動を優先して他人が得をするように配慮しているのに、なぜ正当に評価されないのか?

 

へなじんさん
なぜあなたは自分の利益ばかり優先して、利他行動をとらないのか?

 

そのような心情が働き「社会脳という暗黙のルールに従わない人にはペナルティが課されるべきだ」として社会的制裁を求めようとするのです。

 

ここで登場するのが幸せホルモンと称される「セロトニン」です。

 

協調性の高い利他行動を優先できる人は一般的に、セロトニンを運ぶ役割をするセロトニントランスポーターという物質が少ないとされています。

 

セロトニントランスポーターが少ないとセロトニンはうまく働きません。

 

セロトニンが働かないと精神のバランスが崩れ攻撃的となり、

 

へなじんさん
社会のルールに従わないものはペナルティを負うべきだ!

 

へなじんさん
自分を不当に扱うものは許せない!

 

という気持ちが強く働きます。

 

利他行動の脳科学

日本人はもともとセロトニントランスポーターが少ない人種とされています。

ですから日本人は他人のために身を粉にしてでも尽くす利他行動を美化したがります。

そして利他行動を逸脱しルールを破った人に対しては激しくバッシングをしてしまうのです。

 

へなお
これが日本人が勝ちにも負けにも「美しさ」を求める真の理由です。

 

この日本人の特性は何も日本代表の試合に限った話ではありません。

 

政治家や芸能人に利他行動を求めそれを実行した人は素晴らしいと賞賛する。

 

しかし一度社会のルールを破ると徹底的に闇に葬り去ろうとする。

 

決して間違えた思考ではないでしょうが、熱い気持ちで美しさを称賛するあまり、時に冷静さを失って合理的な選択ができなくなってしまうのも考えものかもしれません。

 

へなお
日本代表について学びたい方はこちらがお勧めです。

 

 

へなお
ぜひ参考にしてみてください。

 

“利他行動の脳科学“のまとめ

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日本人が好む利他行動とは何なのかを脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 日本人は日本代表の試合に、勝ち負けよりも美しさを求めています。
  • 歴史においても悲劇のヒーローやヒロインを好み、美化することを好みます。
  • 美と善という一見関係のない感覚が脳の中で融合し、社会脳を作り上げ、わたしたちを支配しています。
  • 他人を優先する利他行動は社会脳の象徴的な行動です。
  • 日本人は利他行動を美化しすぎるあまり、ルールから外れた人を攻撃する性質があります。
  • 美しさを求めるあまり、合理的な選択ができなくなるのも考えものかもしれません。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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