サウナや銭湯に入った後に頭痛がするのはなぜなのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
頭痛を脳科学で説き明かします。
サウナや銭湯と頭痛
頭痛の脳科学
- サウナや銭湯に入った後に頭痛がする理由は、主に一般的な理由、心理的な理由、脳科学的な理由があり、これらが重なり合って頭痛が起こります。
- ですから、サウナや銭湯に入った後の頭痛のへの対策もさまざまなものがあります。
- サウナや銭湯に限らず、日常生活ではさまざまな頭痛が発生します。
- 頭痛はとてもつらく、不安という二次災害を引き起こします。
- ぜひ、頭痛について学んで正しい知識を身につけて、快適な生活を送りましょう。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
しかし、ととのうことばかり考えていて、「気がついたら頭が痛い」なんて経験をしたことはないでしょうか?
サウナや銭湯に入った後に頭痛がすることは決してめずらしいことではありません。
サウナや銭湯に入浴するのは気持ちが良くて好きなのに、頭痛がするから不安…そのような悩みを抱えている人は少なくないはずです。
では、なぜサウナや銭湯に入った後に頭痛がするのでしょうか?
頭痛が起きた時にはどうしたらよいのでしょうか?
また頭痛が起きないようにするにはどうしたらよいのでしょうか?
サウナや銭湯に入った後に頭痛がする理由
サウナや銭湯に入った後に頭痛がすることは決してめずらしいことではありません。
湯上りにすぐに頭痛がする場合もあれば、湯上り後しばらくたってから頭痛がする場合もあります。
では、サウナや銭湯に入った後に頭痛がするのはなぜなのでしょうか?
その理由はさまざまあり、一言ではなかなか言い切れません。
ここでは、一般的な理由、心理的な理由、脳科学的な理由にわけてわかりやすく説明します。
サウナや銭湯に入った後に頭痛がする一般的な理由
サウナや銭湯に入った後に頭痛がする理由としてもっとも多いのは“脱水”です。
サウナや銭湯では大量に汗をかくため、体内の水分が不足しがちです。
”サウナにまつわる水分補給”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナにまつわる水分補給を脳科学で探る
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脱水状態になると、体内の血液の流れが悪くなり、脳への血流も減ってしまうため、頭痛が起こりやすくなります。
次に多い理由は“のぼせ”です。
長時間入浴したり、熱いお湯やサウナに入ったりすると、のぼせることがあります。
のぼせは、血圧の急激な変化によって引き起こされると考えられており、頭痛やめまいなどの症状を引き起こすとされています。
”ヒートショックの恐怖”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】ヒートショックを体験したからこそ分かるヒートショックの恐怖を脳科学で探る
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サウナや銭湯に入った後に頭痛がする心理的な理由
サウナや銭湯に入った後の頭痛には、身体の生理的な理由に加えて、心理的な要因も関係していると考えられています。
心理的な理由でもっとも関係するのは“ストレス”です。
サウナや銭湯は、日常のストレスや緊張を解放する場として多く利用されます。
しかし、急激なリラックス状態はかえって心身のバランスを崩し、頭痛を引き起こすことがあるとされています。
これはストレスによって緊張していた血管がリラックスすることで急に拡張するために起こると考えられます。
特に普段からストレスがたまりやすいような環境にいる人はリラックスすることに慣れていないため、このような頭痛を感じやすいかもしれません。
“ストレス”と同じくらい心理的に頭痛に関係するのが“自己認識による知覚過敏”です。
サウナや銭湯では、普段よりも自分の身体に意識が向きやすくなります。
その結果、普段は気にならないような身体の変化(例えば、軽い血管の拡張や筋肉の緊張など)にも意識が向いてしまいます。
自分に向き合うことで、自己認識が強くなり、そして身体の感覚が過敏になり、その結果として頭痛を感じやすくなることがあります。
また、「サウナに入れば気持ちよくなるはず」「体の不調が治るはず」といった期待が大きすぎると、逆に「もし効果がなかったらどうしよう」「体調が悪くなったらどうしよう」という不安も同時に抱えてしまうことがあります。
このような期待と不安の入り混じった状態は、自律神経のバランスを崩し、頭痛につながる可能性があります。
サウナや銭湯に入った後に頭痛がする脳科学的な理由
脳科学的にサウナや銭湯に入った後に頭痛がすることにもっとも関与しているのは”血管”です。
サウナや銭湯では血管は拡張しますが、水風呂に入ると血管は収縮します。
そのあと、ととのいイスで休息をするとリラックス状態となり、ふたたび血管は拡張します。
このように、サウナや銭湯では温冷交代浴によって血管の拡張と収縮を繰り返し、そしてサウナトランス…いわゆる“ととのう”の状態になるわけです。
これらの変化は主に自律神経が関係していて、交感神経と副交感神経という2つの神経の働きが入れ替わって起こります。
自律神経は体の恒常性を保ち、普通に生きていくために働いている神経で、交感神経と副交感神経があります。
交感神経はいわば“闘争”の神経です。
闘志を燃え上がらせ戦いに挑む…そんな時に働く神経で、血管は収縮し脈拍数は増加するので血圧が上がります。
一方で、副交感神経は“静寂”の神経です。
心穏やかにリラックスして心休まる状況で働く神経で、血管は拡張し脈拍数は減少するので血圧は下がります。
交感神経と副交感神経は同時に同じ程度に働くことはなく、状況に合わせてそのどちらかの神経が優位に働きます。
ちなみに自律神経は本能の神経なので自分の意思で調整することができません。
つまり自分の意思で血圧を上げたり下げたりは出来ないということです。
ですから、急に自分の回りの環境が変わると、交感神経と副交感神経の切り替えが自分の意思とは関係なしに急激に起きて、体に異変を引き起こします。
その異変の1つが”頭痛”です。
頭痛は血管が拡張しても収縮してもどちらでも起こります。
しかし血管が拡張する時の頭痛と収縮する時の頭痛では、同じ頭痛でもタイプが異なります。
血管が拡張して起こる頭痛
サウナや銭湯に入った後は身体が温まっているので一般的には熱を発散させようとして血管は拡張します。
この時に発生する頭痛は“片頭痛”と関連が深いとされています。
片頭痛は、何らかの原因(ストレス、ホルモンバランスの変化、気圧の変化など)で、脳の血管が急激に拡張すると、血管の周囲にある三叉神経が刺激されます。
この刺激によって炎症物質が放出され、さらに血管が拡張し、炎症が広がります。
これが、片頭痛特有のズキンズキンと脈打つような痛みを引き起こします。
サウナや銭湯に入ると、体温が上昇するため、体は熱を放出しようとします。
この体温調節の過程で、自律神経(副交感神経)が活発に働き、血管の拡張や発汗などが起こります。
これが、時に片頭痛を引き起こすのです。
特に普段から片頭痛持ちの人は、サウナや銭湯の入浴後には片頭痛がより起こりやすくなりますので注意が必要です。
血管が収縮して起こる頭痛
サウナや銭湯に入って一気に身体が熱くなると自律神経(交感神経)が活発に働き血管は収縮します。
その後休息をとると通常は脳はリラックスモードに入り、今度は自律神経(副交感神経)が活発に働き血管は拡張します。
しかし、自分ではリラックスしているつもりでも、長時間同じ姿勢を続けたり、精神的なストレスが続いたりすると、肩から首、そして頭部にかけての筋肉の血管が収縮し続けて、筋肉の血流が悪くなり頭痛を引き起こします。
このような頭痛は“筋緊張型頭痛”と呼ばれます。
また、筋肉の緊張によって神経が過敏になり、痛みを感じやすくなることも関係しています。
筋緊張型頭痛は入浴に関わらず、一般的に起こる頭痛の原因でもっとも多いとされています。
普段からストレスや疲労が蓄積している人は筋肉の血管が収縮した状態が継続していため、ちょっとした刺激でも筋緊張性頭痛が引き起こされやすくなっていますので注が必要です。
頭痛の種類によってその発生メカニズムは異なり、本人の頭痛の感じ方も変わってきます。
自分自身で頭痛のタイプをある程度判別することは不可能ではありません。
しかし多くの場合、頭痛は1つだけの原因というよりは、いくつかの原因が重なることで痛みの閾値の上限を超え、頭痛を自覚するようになります。
サウナや銭湯に入った後の頭痛の脳科学的な対策
サウナや銭湯に入った後の頭痛の一般的な対策としては水分補給や休息ですが、脳の反応や血管の動きに着目することで、より効果的な対策が見えてきます。
水分補給で脳の血流を維持する
脱水状態になると、血液の粘度が高まり、脳への血流が低下します。
脳は血流の変化に非常に敏感で、血流が低下すると酸素や栄養の供給が滞り、頭痛を引き起こす可能性があります。
そのため、サウナや銭湯に入る前からこまめに水分を補給し、血液の粘度を維持することが重要です。
特に、電解質(ナトリウム、カリウムなど)を含むスポーツドリンクや経口補水液は、水分だけでなくミネラルも補給できるためより効果的です。
また、サウナや銭湯の入浴後に頭痛が起きた場合は、まずは水分補給をすることを脳科学的にもお勧めします。
”サウナにまつわる水分補給”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナにまつわる水分補給を脳科学で探る
サウナではなにを、いつ、どれくらい飲むのが効果的なのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多 ...
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急激な温度変化を避けて血管の急な拡張・収縮を防ぐ
サウナや熱いお風呂に入ると、体温が上昇し血管が拡張して熱を放出しようとします。
その後、水風呂や冷水シャワーで急に体を冷やすと、血管は急激に収縮します。
この急激な血管の拡張と収縮は、血管周囲の神経を刺激し、頭痛を引き起こす可能性があります。
特に、もともと頭痛持ちの方は、血管の急な変化に敏感なため、頭痛が起こりやすい状態となっています。
その対処法としては、サウナから出た後は、水風呂にいきなり入るのではなく、ぬるめのシャワーなどで徐々に体を冷やすようにしてみてください。
サウナと水風呂を繰り返す場合も、それぞれの時間を短くし、温度差を小さくすることで、血管への負担を軽減できます。
また、サウナハットをかぶることで、頭部の温度上昇を緩やかにし、血管の急激な拡張を防ぐことができます。
”サウナハットの効果”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナハットは必要なのか?それともお飾りなのか?サウナハットの効果を脳科学で探る
サウナに入る時にかぶるサウナハットは必要なのでしょうか? それともただのお飾りなのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは ...
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自律神経の急激な変化を抑える
サウナや銭湯では、自律神経である交感神経と副交感神経が急激に切り替わります。
この自律神経の急激な変化は、脳内の神経伝達物質のバランスを崩し、頭痛を引き起こす可能性があります。
そのため、サウナや銭湯に入る前には深呼吸をしたり、軽いストレッチをしたりすることでリラックスした状態を作ると、自律神経の急激な変化を抑えることができます。
また、サウナや銭湯から出た後は、静かな場所でゆっくり休憩し心身を落ち着かせることが大切です。
その際には、体を冷やしすぎず、ある程度温かな環境で過ごすことをお勧めします。
脳の感覚過敏を防ぐ
サウナや銭湯は、高温多湿で普段とは異なる刺激が多い環境です。
この独特な刺激が脳に過剰に入力されると、感覚過敏状態になり、頭痛を感じやすくなることがあります。
そのため、サウナでは目を閉じて静かに過ごしたり、リラックスできる音楽を聴いたりすることで、外部からの刺激を遮断し、脳の感覚過敏を防ぐことができます。
これらの対策は、脳の血流、血管の反応、自律神経のバランス、感覚過敏など、脳の様々な機能に着目したものです。
ですから、これらの対策を組み合わせることで、サウナや銭湯後の頭痛をより効果的に予防できるはずです。
頭痛にまつわる豆知識
ここまではサウナや銭湯での頭痛について探ってきましたが、日常生活ではさまざまな場面で頭痛を経験します。
そこで、「ああ!その頭痛経験したことあるある!」…そんな日常生活で時折経験する”頭痛あるある”についての豆知識をご紹介しましょう。
アイスクリーム頭痛
そのような経験を1度はしたことがあるのではないでしょうか。
これは“アイスクリーム頭痛”と呼ばれていています。
なんだかふざけた名前のように聞こえるかもしれませんが正式な医学用語です。
ちなみに、冷たい水を頭からかぶると頭痛がしますが、そのメカニズムもアイスクリーム頭痛と同じです。
冷刺激による反射的な血管の変化
口腔内(あるいは皮膚)の温度受容器が急激な温度変化を感知し、その情報が脳に伝達されます。
この刺激に対して、体は体温を維持しようとする反応を起こします。
その一つが、血管の収縮です。
特に、頭部の血管は急激に収縮し、その後反動で拡張することがあります。
この急激な血管の収縮と拡張が、頭痛を引き起こす要因となります。
三叉神経の刺激
三叉神経は顔面の感覚を司る神経で、温度変化にも敏感です。
アイスクリームを食べたり、冷たい水が頭にかかったりすることで、三叉神経が刺激され、その信号が脳に伝わります。
この信号が、脳で痛みとして認識されることがあります。
ちなみに、このメカニズムは片頭痛と関連が深いと考えられています。
片頭痛は、三叉神経の活性化が重要な役割を果たしており、アイスクリームや冷たい水による刺激が片頭痛を誘発するのです。
筋肉の緊張
アイスクリームを食べたり、冷たい水が急にかかったりすると、反射的に首や肩の筋肉が緊張しやすくなり、この筋肉の緊張が血管を圧迫し、血流が悪くなることで頭痛を引き起こすことがあります。
このメカニズムは、緊張型頭痛と関連が深いと考えられます。
寒冷刺激による頭痛(寒冷性頭痛)
寒冷刺激によって引き起こされる頭痛は、医学的には”寒冷性頭痛”または”寒冷刺激による頭痛”と呼ばれています。
これは、冷たい外気にさらされたり、冷たい水に触れたり、冷たいものを食べたりすることで誘発される頭痛で、通常は数分以内に自然に治まります。
症状の特徴としては、刺すような、またはズキンとするような痛みが、おでこやこめかみに現れることが多いとされています。
…などなどいろいろな原因が考えられています。
アイスクリーム頭痛は実はとても複雑なメカニズムで発生しているのです。
二日酔いの頭痛
二日酔いは、お酒を飲む人は1度は経験したことがあるではないでしょうか。
アルコールにはもともと血管を拡張する(血管をひらく)作用をもつヒスタミンという物質が含まれていて、片頭痛発作を誘発しやすいとされています。
これによってアルコールを飲んでいる時から頭痛が起こる人もいます。
ちなみに、赤ワインにはヒスタミンが多く含まれているので頭痛が起こりやすく、白ワインにはヒスタミンが含まれていないので頭痛は起こりづらいと言われています。
また、焼酎やブランデーなどの蒸留酒にもヒスタミンは含まれていないので、飲んでいる時に片頭痛はあまり起きません。
では、アルコールを飲んでいる時は頭痛なく楽しく飲んでいるのに、次の日になると二日酔いがして頭が痛くなるのはなぜなのでしょう?
飲酒後時間が経つと、体内のアルコールが分解されてできた成分(アセトアルデヒドや酢酸など)が悪さをして二日酔いの頭痛を引き起こします。
これらの成分が体の中で処理されると頭痛はなおります。
この処理がうまくできない人は、お酒が弱くお酒を飲むとすぐに顔が赤くなって頭痛がしてきます。
逆のこの処理が非常に速い人は”お酒の強い人”と呼ばれます。
お酒を飲んでいる時は大声で会話したり、興奮したり、たばこを吸ったりなどの体にあまりよくないであろう行動が集約して起こりますが、これらの要素も二日酔いに関与しています。
なお、二日酔いの頭痛には痛み止めが有効です。
そのほかには血管を収縮(血管をちじめること)する作用のあるカフェインを含んだコーヒーや濃い渋めのお茶が効果的です。
基本的にはアルコールが分解されてできた成分が体内からなくなれば頭痛はなおります
お酒に強い/弱いはアルコールの分解産物の処理能力の違いであり、これはもともとの体質なので、ご自身の体質をしっかり理解したうえでお酒は飲みましょう。
ちなみに、当然体質は変化するので、以前はお酒が全然飲めなくてすぐに酔ってしまったのに年をとるにつれてお酒が強くなる人もいれば、逆に年をとってお酒が弱くなったなんて人も当然います。
ホットドック頭痛
ハム、サラミ、ソーセージなどの加工食品には亜硝酸塩という添加物が入っていることがあります。
亜硝酸塩は商品のつや出し、味付け、防腐などの効果があるのですが、血管の拡張(血管をひろげること)作用があり、頭痛の原因となります。
しかし、日本人はホットドック頭痛にはほとんどなりません。
なぜなら、海外では日本人と比較して非常にたくさんのハム、サラミ、ソーセージなどの加工食品を食べる習慣があり、特にこれをパンにはさんでホットドックにして好んで食べます。
ホットドック早食い競争までありますが、日本人はそこまでたくさんは食べる習慣がありません。
また日本人は無添加のものを好む傾向にあります。
したがって日本人にはホットドック頭痛はとても少ないのです。
ですから、安心してハム、サラミ、ソーセージ、そしてそれらをはさんだホットドックを食べましょう!
中華料理による頭痛
”中華料理店症候群”とよばれる頭痛があります。
自分は料理には詳しくないのですが、うま味調味料の主成分にグルタミン酸というものがあり、これが頭痛の原因となります。
中華料理はこのグルタミン酸を大量に使う場合があります。
食べてから30分くらいすると頭痛がしてきて1時間ほど続きます。
原因はよくわかっていませんが、グルタミン酸には脳の血管を拡張(血管をひろげること)する作用と、神経を興奮させる作用がありそれが頭痛の原因となっていると言われています。
中華料理による頭痛では、片頭痛のようにズキズキと頭が痛くなります。
特に空腹の時にグルタミン酸を含むスープを飲むとが頭痛を起こしやすいので、頭痛を起こしやすい人はグルタミン酸を含まないものをまず食べるようにしましょう。
実際にどのような料理にグルタミン酸が多く含まれているかは皆さんで調べてみてください。
エクササイズ頭痛
これは“エクササイズ頭痛”と呼ばれていて、これも正式な医学用語です。
スポーツをしたり、ジムやヨガに通ったり、筋トレをしたり、今は多くの人が積極的に運動をしています。
体のエクササイズについつい夢中になって、水分を取り損ねて脱水になったり、もう少しもう少しと体力の限界を超えてがんばりすぎたり、前の日にお酒を飲んで二日酔いなのにがんばりすぎたり、などさまざまな要因で頭痛が引き起こされます。
エクササイズ頭痛の原因はこれらによって脳の中の血管が拡張(血管をひろげること)して頭痛が起こります。
ですからエクササイズ頭痛の症状は片頭痛のようなズキズキした頭痛がします。
片頭痛持ちの人はエクササイズによって片頭痛が誘発されることもありますので注意が必要です。
エクササイズに夢中になってしまう気持ちもわかりますが、エクササイズの途中で、適度な休息や水分補給をとることが大切です。
頭痛がしたらエクササイズを中断することも大切です。
あくまでも無理は禁物です。
月経関連頭痛
月経のたびに頭が痛くなる…そのような経験をされている方は少なくないはずです。
月経関連頭痛は、女性ホルモンであるエストロゲンの変動によって引き起こされる片頭痛発作です。
この片頭痛を生理痛ととらえて頭痛に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
月経時や排卵時はエストロゲンが体内で急激に低下し、片頭痛発作を引き起こしやすくなります。
妊娠するとエストロゲンは増加するので片頭痛は起こりづらくなりますが、出産するとエストロゲンが急に低下するので片頭痛は再び起こりやすくなります。
月経に関連した片頭痛は通常の片頭痛と違って、頭痛の程度が強く、吐き気を伴うことが多く、持続する時間も長く、痛み止めが効きづらく、とてもつらい頭痛です。
市販の痛み止めを服用しても痛みが解消されずお悩みの人は、片頭痛の特効薬であるトリプタン系薬剤が有効ですので、脳神経外科の外来にご相談ください。
宇宙頭痛
宇宙に行くと頭痛が起こりやすくなります。
原因はよくわかっていませんが、宇宙飛行士はかなり高い頻度で頭痛に悩んでいるそうです。
飛行機頭痛
宇宙旅行はまだ先の未来の話ですが、飛行機に乗って国内はもとより海外を旅する人はたくさんいます。
鼻の奥は副鼻腔(ふくびくう)という空洞になっていますが、そこに自然孔(しぜんこう)という穴が開いていて空気が出入りしています。
飛行機に乗ると上昇、下降によって気圧の差が生じます。
すると自然孔が気圧の急激な変化でふさがってしまい、鼻がつまりことにより頭痛が発生します。
飛行機頭痛が心配な人は、飛行機に乗る前にあらかじめ痛み止めを飲んでおくことをお勧めいたします。
日常生活で装具する可能性のある頭痛について説明しました。
頭痛が引き起こす二次災害にもご用心
頭痛はサウナや銭湯をはじめとして、さまざまな理由で発生することがおわかりいただけたのではないでしょうか。
頭痛はとてもつらい現象です。
ですから、頭痛が起こるととても不安になります。
また、頭痛が起きなくとも、「頭痛が起きるかもしれない」と思うだけでも不安になります。
この不安は、脳内で複雑なプロセスを経て感じられ、心身に様々な影響を及ぼし、二次的な症状を引き起こします。
では、脳は頭痛に対してどのようなメカニズムで不安を感じ、そしてどのような影響が起こり得るのかを最後に説明しましょう。
痛みの情報伝達と情動への影響
頭痛による痛みの情報は、三叉神経などを介して脳に伝達されます。
この情報は、感覚を司る領域(体性感覚野)だけでなく、情動や感情を司る領域(扁桃体、前頭前野など)にも伝達されます。
特に、扁桃体は不安や恐怖といった情動の中枢として知られており、痛みの情報を受け取ることで活性化されます。
扁桃体が活性化されると、不安や恐怖、警戒心などの感情が高まり、「また痛くなるかもしれない」「何か大変な病気かもしれない」といったネガティブな思考に繋がりやすくなります。
前頭前野は、思考や判断、感情のコントロールなどを司る領域です。
扁桃体からの情報を受け取り、状況を評価し、適切な反応をしようとします。
しかし、痛みが強い場合や慢性的な場合は、前頭前野の機能が低下し、感情のコントロールが難しくなり、不安が増幅されることがあります。
ストレス反応系の活性化
痛みや不安は、ストレス反応系であるHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)を活性化します。
HPA軸が活性化されると、コルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、血糖値を上昇させたり、免疫機能を抑制したりする作用がありますが、慢性的なストレス状態では、HPA軸が過剰に活性化され、不安や抑うつ、睡眠障害などの原因となることがあります。
また、不安や痛みは、自律神経系にも影響を与えます。
交感神経が優位になると、心拍数や血圧が上昇し、筋肉が緊張し、発汗などの身体的な反応が現れます。
これらの身体的な反応は、さらに不安を増幅させる要因となります。
脳内物質の変化
頭痛は脳内物質であるセロトニンを低下させ、グルタミン酸を増加させます。
セロトニンは心の安定や幸福感に関わる神経伝達物質です。
慢性的な痛みやストレスは、セロトニンの分泌を低下させることが知られています。
セロトニンが低下すると、不安や抑うつ、イライラなどが起こりやすくなります。
また、グルタミン酸は神経の興奮を伝える神経伝達物質です。
痛みやストレスによってグルタミン酸が過剰に放出されると、神経が過敏になり、痛みを過剰に感じたり、不安や興奮が高まったりすることがあります。
学習と記憶の影響
過去の痛みの経験は、脳に記憶として蓄積されます。
特に、強い痛みや繰り返し起こる痛みは、記憶に残りやすく、「また同じような痛みが起こるかもしれない」という予期不安に繋がりやすくなります。
さらに、痛みと特定の状況や環境が結びついて記憶されると、その状況や環境に遭遇するだけで不安を感じるようになることがあります(条件付け)。
例えば、「サウナや銭湯に入った後に頭痛が起こった」という経験があると、サウナや銭湯に入るだけで不安を感じるようになることもあります。
不安が脳に及ぼす影響
不安は痛みを増強する作用があります。
不安を感じることで、脳の痛みを処理する領域が過敏になり、同じ程度の痛みでもより強く感じるようになることがあります。
また、痛みによって不安が引き起こされ、その不安がさらに痛みを増強するという悪循環が形成されることもあります。
この悪循環は、頭痛を慢性化させる要因の一つとなります。
このように頭痛は二次災害的に不安を引き起こし、時には”頭痛の無限ループ”にはまり込むこともあります。
不安は行動を制限したり、日常生活に支障をきたしたりすることもあり、生活の質の低下を引き起こします。
ですから、今自分に起きている頭痛に適切に対処して、不安を少しでも軽減することが何よりも大切なのです。
“頭痛の脳科学”のまとめ
頭痛を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- サウナや銭湯に入った後に頭痛がする理由は、主に一般的な理由、心理的な理由、脳科学的な理由があり、これらが重なり合って頭痛が起こります。
- ですから、サウナや銭湯に入った後の頭痛のへの対策もさまざまなものがあります。
- サウナや銭湯に限らず、日常生活ではさまざまな頭痛が発生します。
- 頭痛はとてもつらく、不安という二次災害を引き起こします。
- ぜひ、頭痛について学んで正しい知識を身につけて、快適な生活を送りましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
最後にポチっとよろしくお願いします。