スチームサウナはドライサウナとくらべると、脳や体への影響や効果はどう違うのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
スチームサウナの効果を勝手に脳科学で説き明かします。
サウナには乾式と湿式がある
スチームサウナの脳科学
- 一般的に“サウナ”というと、乾式(ドライ)サウナを思い浮かべる方が多いですが、他に湿式サウナもあり、その中でもスチームサウナはスーパー銭湯などでよく見かけます。
- スチームサウナはドライサウナよりも低温高湿で、サウナが苦手という人でも比較的入りやすくなっています。
- スチームサウナはドライサウナよりも深部体温が上昇しやすく体が芯から温まり、脳や体にさまざまな効果をもたらしてくれます。
- 実はスチームサウナの方がドライサウナよりも「ととのう」の状態になりやすく、また「ととのう」の時間を長く感じられます。
- ドライサウナばかりでなく、ぜひスチームサウナも体感してみてください。
第3次サウナブームの日本ではサウナ人気がとどまることを知らず、時にはサウナ室の前に裸の行列ができるほどです。
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特にスーパー銭湯と呼ばれる施設では、入浴のみならず食事やリラクゼーション、中には宿泊もできる施設もあり大人気です。
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スチームサウナの中には塩や薬草を用いた特殊なサウナも数多く見られます。
ではドライサウナとスチームサウナでは何が違うのでしょう?
ドライサウナとスチームサウナの一番の違いは乾式(ドライ)と湿式の違いです。
実際サウナ室内に入ってみるとその違いが実感できます。
乾式(ドライ)サウナ
乾式サウナは、日本では主流のサウナで、その代表的なものがタワーサウナです。
室温は80~90℃前後、湿度は10%程度と高温低湿であることが特徴です。
座るところが階段状になっていて、前方にサウナストーブが設置されています。
サウナストーブにもいろいろ種類があります。
サウナストーンが積み上げられているのがロッキーサウナ。
ロッキーサウナの中でも最近流行なのがikiサウナです。
METOSという会社が販売しているサウナストーンを山積みにしたサウナストーブでアウフグースには最適です。
その他にも次のようなものがあります。
ストーブが放射する遠赤外線の輻射熱を利用した遠赤外線サウナ。
サウナストーブが壁の中に格納されているボナサウナ。
これ以外にもさまざまな種類があります。
室内は湿度が低いのが一般的なので、ロッキーサウナではサウナストーンに水をかけて蒸気を発生(ロウリュ)させることで、心地よい空間を演出しています。
基本的な入り方は、サウナで十分発汗した後に水風呂で体の熱を冷ます温冷交代浴です。
休憩をとりながらこの流れを繰り返すことで、脳内や全身の爽快感が生み出され、いわゆる「ととのう」の状態に導かれます。
湿式サウナ
湿式サウナは、室温40~60℃、湿度80~100%と低温高湿であることが特徴です。
室温は低めなので、身体への負担が少なく高温が苦手な人や体力に自信のない人でも気軽に利用が可能です。
しかし40℃~60℃程度の室温では体は温まりません。
そこで蒸気やミストによって高湿度を保つことで体感温度を上げています。
サウナ室内には石でできた座席があり、水で洗い流すことも可能なので清潔感があります。
また室内は蒸気やミストによって常に霧がかっています。
湿式サウナは大きく分けると、気体である「蒸気」で温めるスチームサウナ、液体である「ミスト」で温めるミストサウナの2種類があります。
ミストサウナは、細かい霧状の温水を噴霧させて上方から温められた霧が降ってくるイメージです。
主に家庭用として浴室暖房乾燥機にミストサウナの機能をプラスした製品が東京ガスやリンナイから販売されています。
一方、スチームサウナは、水を沸騰させて発生した蒸気により室内を温めます。
蒸気は室内下部より吹き出し、サウナ室内が豊潤な蒸気で満たされます。
サウナ好きの人の多くは、ドライサウナでタワーの上段に座ってロウリュを楽しむパターンなのではないでしょうか?
しかしスチームサウナをあなどってはいけません。
実はスチームサウナの方が、体が芯から温まり、「ととのう」の状態になりやすいと言われています。
スチームサウナの一般的な効果とは?
なんて思っている人もいるかもしれません。
スチームサウナはボイラーで水蒸気を発生させ、その水蒸気(気体)によって体を温めます。
蒸気は水の粒が細かく、その蒸気が肌に触れることで乾燥を防ぎながら新陳代謝を促します。
全身が高濃度スチームに包まれるので、入浴後も肌と髪の潤いを保つ効果があります。
足元からスチームが噴き出す場合は冷え性の改善も期待できます。
また、適度な発汗作用もちゃんとあります。
このように体熱効果、発汗効果があり、同時に美容効果もあるスチームサウナは、老化や体型が気になっている男性には特におすすめなのです。
スチームサウナは、ドライサウナのように熱さで皮膚がひりひりしたり、熱気で息苦しい感じがしないので、「サウナが苦手…」なんて人でも気軽に利用できます。
リラクゼーション効果
スチームサウナでは温かい蒸気に全身が包まれて、まるでセイロの中で蒸されているような感覚になります。
蒸気には古くから脳を癒してリラックスさせる効果があるとされています。
ですから蒸気を利用した治療法も存在します。
美容効果
スチームサウナでは温かい蒸気によって顔、体幹、手足の毛穴が開き、目孔の汚れや皮膚の角質を汗と一緒に洗い流してくれます。
加齢臭の原因となる毛穴に詰まった皮脂も洗い流されますので、皮膚が清潔に保たれます。
さらに蒸気が皮膚に浸透することで保湿され、柔らかくきめの細かい肌が作られます。
1回きりの入浴ではここまでの効果は出ませんが、継続してスチームサウナを使用することで、潤(うるお)いのある美肌効果が期待できます。
またスチームサウナで体が温まると、ヒートショックプロテイン(HSP)という物質が作られます。
HSPは細胞修復の働きがあり、肌の新陳代謝を促(うなが)し、シミ予防や紫外線によるダメージ回復といった効果をもたらしてくれます。
そのような方には特にスチームサウナによる美容効果はお勧めです。
微妙というのは、正しいとも間違いとも言い難いということです。
サウナでは大量に発汗して、さらに脂肪が燃焼されて痩せる…というイメージがあるかもしれません。
しかしサウナのあとには当然水分や食事をとりますので、サウナに入っただけで痩せることはありません。
”サウナ飯の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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しかしサウナに入り続けていると、新陳代謝が活発になり体内のエネルギーを消費する習慣が自然と身につくので、その結果痩せやすい体になりやすい…という解釈でダイエット効果があるとも言えなくはありません。
睡眠効果
サウナと睡眠に関する研究は、意外にも少なく、1976年に発表された論文がもっとも有名です。
この論文によれば、サウナ入浴から2時間後では通常に得られる深い睡眠が70%以上増加。
サウナ入浴から6時間後では45%増加。
Putkonen PT, Elomaa E: Sauna and physiological sleep: Increased slow-wave sleep after heat exposure. In: Teir H, Collan Y, Valtakari P (eds) Sauna studies. The Finnish Sauna Society, Helsinki, pp270–279, 1976
サウナが睡眠におよぼす有益な効果は、体内の深部体温を上げることで入眠しやすくなり、しかも深い睡眠の時間が増加する、ということが関係しているようです。
スチームサウナは、後ほど説明しますが、ドライサウナとくらべて体内の深部体温が上昇しやすいと言われています。
またサウナ入浴後は脳内にセロトニンという“幸せホルモン”が多量に分泌され、脳はリラックスして心地よい睡眠をとることができます。
“睡眠の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ですからスチームサウナに入った後は、しばらくは体がポカポカしてその後リラックス状態となってゆるやかに体温が低下していき、脳が冷却されて質の高い睡眠をとることが可能となるのです。
疲労回復効果
さきほども話に出てきましたが、スチームサウナの最大の特徴は、体内の深部体温を上昇させることです。
体全体が温まり、しばらく体内に熱がこもった状態になるので、全身の血流が増加して体内の老廃物が洗い流されます。
これにより日ごろのハードワークで凝り固まった全身の筋肉がほぐされ疲労回復につながるのです。
筋肉がほぐされると、眼精疲労や筋肉痛、頭痛も改善されます。
マッサージや鍼灸(しんきゅう)に行かずとも、体全体をリフレッシュすることができます。
美髪効果
髪は高温と乾燥にとても弱く、髪を守らずにドライサウナに入っていると髪はパサパサになってダメージを受けてしまいます。
ですから多くの人はサウナハットをかぶったり、タオルを頭に巻いたりするわけです。
‘サウナハットの脳科学“についてはこちらの記事もご参照ください。
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しかしスチームサウナでは髪のダメージを心配する必要はありません。
スチームサウナ内では温かい蒸気によって、髪のキューティクルが開いた状態となります。
そこにトリートメントをつけると髪の内部に浸透しやすくなり、キューティクルが閉じた時にサラサラで手触りがツルツルの状態…いわゆる“美髪”になりやすいのです。
ではスチームサウナは脳にどのような効果をもたらすのでしょう?
スチームサウナの脳科学的な効果とは?
℃
ドライサウナでは室温が100℃近くあるので、ものすごく体が熱くなるイメージがあるかもしれません。
しかし深部体温は基本的には38℃をなかなか超えません。
ドライサウナとウェットサウナの深部体温を比較した研究では、平熱が36.8℃の場合、91℃のドライサウナに15分×3セット入ったところで38℃を超えました。
一方で、ウェットサウナでは60℃で15分×2セット目の10分経過した時点で38℃を超えています。
ここでなぜ38℃が基準になるかというと、その鍵は先ほど登場したヒートショックプロテイン(HSP)にあります。
体温が38℃以上になるとHSPが増加します。
HSPは細胞を修復し、細胞の再生能力を促(うなが)して新陳代謝を促進します。
つまり体が受けたさまざまなダメージを回復させてくれるわけです。
風邪をひいた時に発熱するのも、体がHSPを増加させて風邪をやっつけようとしているからです。
ではなぜスチームサウナの方が体内の深部体温が上昇しやすいのでしょうか?
スチームサウナとドライサウナに入った後で発汗量を比較すると、スチームサウナの方が湿度が高いのでより多くの汗をかくように感じてしまいます。
実際にスチームサウナに入った後の方が皮膚に付着している水滴は多くなります。
しかしこの水滴がすべて汗というわけではないのです。
汗以外の水滴は、湿度の高い空気中から結露して液体に変わった水分です。
まさにこの状態です。
だらだら流れる水分は汗ですが、皮膚に付着した水滴状の液体のほとんどは大気が結露してできた液体なのです。
スチームサウナでは低温と言っても体温よりはかなり高い温度になりますので、湿度が100%であれば体の表面で結露が起きても不思議ではありません。
人は暑いと汗をかき、その汗の蒸発によって体温を調整しています。
ですから汗をたくさんかけば、よりはやく体温が低下しやすくなるわけです。
ドライサウナではより多くの汗をかきますので、熱が放散されて体温が上がりにくく、しかもサウナ室から出た後は下がりやすくなっています。
ですからいくらサウナ室で高温で蒸されていても、深部体温が上がっていないと、部屋から出て水風呂に浸かると急に寒く感じます。
一方でスチームサウナは汗の量が少なく、しかも湿度が高いので汗が蒸発しにくい環境になっています。
そのためサウナの熱が体内にこもり深部体温が上がりやすいのです。
体内の深部体温とスチームサウナの脳科学的な効果とどう関係があるのでしょう?
サウナ室内ではスチームサウナであってもそれなりの高温ですので、脳は戦闘状態となり、交感神経が活発に働きます。
交感神経とは、自律神経の1つで体を活発に働かせる神経です。
戦闘状態では交感神経が興奮状態となり、血圧が上がり、脈拍が早くなり、汗を大量にかきます。
一方、サウナ室から出て、水風呂、そして外気浴へと移行する温冷交代浴では、脳は戦闘状態から一気にリラックス状態となり、今度は副交感神経が活発に働きます
副交感神経も自律神経の1つで、体を休ませる神経です。
水風呂や外気浴ではリラックス状態となっているので、副交感神経が興奮状態となり、血圧が下がり、脈拍が遅くなり、汗はほとんどかきません。
このようにサウナにおける温冷交代浴では、脳からの指令で交感神経と副交感神経の働きが激しく入れ替わります。
日常生活ではこのような状態になることはまずありません。
脳は交感神経が興奮するとたくさんの脳内麻薬を放出します。
脳内麻薬はさまざまな効果をもたらしますが一番は幸福感です。
そして交感神経と副交感神経の働きが入れ替わる状態、いわば中途半端な状態では脳はバグを起こして混乱し、脳内麻薬の影響も重なってトランス状態となります。
これがいわゆる「ととのう」の状態です。
ですから、交感神経がより激しく興奮し、さらに交感神経と副交感神経のどちらの神経も中途半端に働くトランス状態が長く続けば、より「ととのう」に遭遇(そうぐう)しやすくなり、また「ととのう」の時間を長く感じられるわけです。
”「ととのう」の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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スチームサウナでは、ドライサウナよりも体内の深部体温が早く確実に上昇します。
ですから交感神経は比較的早期から興奮状態となります。
そのため脳内麻薬もより多く分泌されます。
さらには、水風呂(スチームサウナの場合は水シャワーの場合もありです)、外気浴でもすぐに体温は低下しません。
体が芯からポカポカに温まっているので、体温の低下速度も緩やかで、副交感神経も緩やかに興奮していきます。
ですから交感神経と副交感神経の働きが入れ替わる脳のバグの状態…つまりトランス状態が長く続くわけです。
そのためスチームサウナに入った後の方がドライサウナよりも、「ととのう」により遭遇しやすく、「ととのう」の時間を長く体感できるのです。
ドライサウナでも、サウナ浴に慣れている人であれば、確実に体内の深部体温を上昇させて、確実な「ととのう」を体感できます。
しかしサウナ浴に慣れていなかったり、熱い冷たいが苦手だったりすると、体表の皮膚の体温が上下して「熱い」「寒い」を繰り返すだけで、深部体温は上昇せず「ととのう」はなかなか体感できません。
それにくらべてスチームサウナは、比較的誰でも入浴しやすく、長く入っていられるので、「ととのう」を体感しやすいわけです。
熱いサウナに入ることを不快に感じる人も当然います。
無理をして熱いドライサウナに入っていると、交感神経が過剰に興奮して、重度の高血圧や脱水を引き起こし、時には心臓や脳に重篤な異常を発生させてしまうリスクも指摘されています。
そのような人には、スチームサウナがお勧めです。
スチームサウナのススメ
いかがだったでしょうか?
多くのスーパー銭湯では塩サウナや薬草サウナなどがスチームサウナになっていて簡単に楽しむことができます。
ドライサウナが混んでいても、スチームサウナは比較的空いていることが多いので、ドライサウナ派の人も一度体感してみることをお勧めします。
スチームサウナでは塩サウナや薬草サウナなども効果的なので、ぜひお試しください。
“スチームサウナの脳科学”のまとめ
スチームサウナの効果を勝手に脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 一般的に“サウナ”というと、乾式(ドライ)サウナを思い浮かべる方が多いですが、他に湿式サウナもあり、その中でもスチームサウナはスーパー銭湯などでよく見かけます。
- スチームサウナはドライサウナよりも低温高湿で、サウナが苦手という人でも比較的入りやすくなっています。
- スチームサウナはドライサウナよりも深部体温が上昇しやすく体が芯から温まり、脳や体にさまざまな効果をもたらしてくれます。
- 実はスチームサウナの方がドライサウナよりも「ととのう」の状態になりやすく、また「ととのう」の時間を長く感じられます。
- ドライサウナばかりでなく、ぜひスチームサウナも体感してみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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