なぜ男子は既読スルーをしがちで、女子は返信を待てずにイライラするのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- ステレオタイプの脅威を脳科学で説き明かします。
既読スルーして平気な男子と返信がないと不安になる女子
ステレオタイプの脳科学
- 「既読スルーする男子に返信を待てない女子」の理由の1つは、脳内のセロトニンという幸せホルモンの産生能力の差にあります。
- 忖度(そんたく)に関係する脳の中の前帯状皮質という部分の性別による働きの違いも理由の1つです。
- すぐに返信することで自分の承認欲求が満たされて社会的報酬を得ることができるのであれば、男子でもすぐに返信するようになります。
- しかし「既読スルーする男子に返信を待てない女子」というのはあくまでもステレオタイプのイメージです。
- ステレオタイプに惑わされすぎると、「既読スルーする男子に返信を待てない女子」から抜け出せなくなります。
- 身の回りの多くのステレオタイプをうまく利用した発想を心がけてみてください。
ステレオタイプの脳科学
LINEなどのSNSで既読スルーをしてなかなか返信をしないのは男子。
なかなか返信がないと不安になってイライラしてしまうのは女子。
そんな傾向があります。
これはSNSでなくても当てはまる傾向です。
男性は頼んだ仕事に取り掛かるのが遅くて、本当にこの仕事にやる気を出しているのだろうかと心配になります。
一方で、女性は頼んだ仕事を計画的にきちんとこなしてくれて安心できます。
そんな風に思っている人は少なくないはずです。
もちろん男性でも綿密な計画を立ててきちんと仕事をする人もいますし、女性でもおおらかなでのんびりの人もいるでしょう。
しかし男性と女性では行動パターンに差があるのは確かなことです。
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脳科学的に男性と女性の行動パターンの差を調べるとある神経伝達物質が関係していることが分かります。
それは”幸せホルモン”と言われている「セロトニン」です。
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女性は男性に比べてセロトニンを産生する能力が低いということが確かめられています。
セロトニンは”幸せホルモン”と言われるように幸福感や安心感の源になる物質です。
つまり女性の方が男性よりも幸福や安心を感じにくく不安になりやすいというわけです。
ある研究では、脳の中のセロトニンの産生能力は男性の方が女性よりも50%近く高いことが証明されています。
セロトニンの産生が低く、あまりにも不足していると”うつ”的な症状が出現してきます。
実際にうつ的な症状は女性の方が男性よりも約2倍の確率で高く出現することが示されています。
「セロトニンが少ないことが不安の強さと相関する」ということは、どのような振る舞いの差として表れてくるのでしょう?
不安感の強さが極端に反映されるのは「リスクの見積もり」です。
セロトニンが少ないと、不安感が強くなるためより現実主義で先々のリスクを正確に見積もり、その結果今できることを先延ばしにしません。
長い人類の歴史において楽観的になりすぎず常に危険に対処しようとする傾向が女性にあったことが、私たち人間が生き残っていくためには必要な条件だったのです。
なぜなら女性の不安傾向が高いことによって、その子どもがリスクを回避できる確率が高くなり、より多くの個体が生き延びられるようになるからです。
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ただしセロトニンが少なすぎると不安が強くなりすぎて、脳も身体も思うようにうまく動けなくなってしまいますので要注意です。
人類が今こうして地球上で生きていられるのは、女性のお陰であることは間違いのない事実です。
一方セロトニンの産生能力の高い男性はどうでしょう?
女性と比べて楽観的な男性は、基本的に「明日でいいものは今日やらなくてもいい」という発想です。
ですから仕事や頼まれた用事などにはすぐ手を付けず、のんびり構えているのです。
男子は既読してもすぐに返信する必要がないと判断すればなかなか返信しません。
一方、女子は既読したのになかなか返信しない男子に対して、不安を感じイライラしてしてしまうのです。
学生のころの成績を思い出してみてください。
「女子の方が男子よりもテストの成績が良かった」なんていう記憶を持っている人は少なくないでしょう。
この現象もセロトニンが大きく関わっています。
「テストに対する不安が強いと、頑張って勉強して成績が良くなる」という相関関係が成り立っているわけです。
ただし話はそんなに単純で簡単には終わりません。
女子で成績が良すぎると、男子よりも妬みや嫉妬を買いやすく、ネガティブメッセージを受け取る頻度が高くなるという事実があります。
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すると女子の中には無意識的に勉強を放棄して成績を落としてしまう人が表れます。
ステレオタイプの脅威は根の深いやっかいな問題です。
男子からの返信が遅いのにはちゃんとした理由がある
脳内の”幸せホルモン”であるセロトニンの影響で、男子と女子で物事のとらえ方に違いがあることはご理解いただけたでしょう。
男性は物事を楽観的にとらえ、
と考え、タスクを先延ばしする傾向があります。
一方で、女性は理屈をこねるよりも恐怖感や不安感が先に立ってしまい
と不測の事態のイメージが自然に湧き上がりコツコツとタスクをこなす傾向があります。
これにはセロトニンが大きく関係していますが、決してセロトニンの産生能力の違いによるものだけではありません。
そのひとつが脳の中の「前帯状皮質」と呼ばれる部分です。
前帯状皮質は相手の気持ちを察して、読み解く働きをしています。
女性は前帯状皮質の活動が男性と比べて活発である傾向が強いとされています。
つまり女性は相手の気持ちを先回まわりして考え、それを基準に自分の意思決定をすることを得意としています。
一方、男性は前帯状皮質の活動が女性と比べて低いため、女性ほど忖度(そんたく)はしません。
忖度しようと意識していても
そんな傾向が男性にはあります。
女性から見れば
と見えてしまい男性に対してイライラしてしまいます。
LINEやメールの返信に関しても同様です。
そんな気持ちから、女性は不安がつのり疑心暗鬼になってしまいます。
そんな男性と女性の脳の働きの違いが「既読スルーする男子に返信を待てない女子」を生み出すのです。
しかし男性からすれば、相手に関心がないわけでもなく、ただ慌ててメッセージを送る必要がないと考えているだけで、そこに深い意味はありません。
逆にまめまめしくメッセージを送ってくる男性はきっと他の女性にもまめまめしくメッセージを送っているかもしれません。
もっと言えば、嫉妬心が強く女性の行動を監視したり束縛が強くなったりして、挙句の果てにはストーカー化してしまうことさえもあります。
他人から評価されてこそ気持ちよくなる男性
それでは既読スルーするしてなかなか返信を送ってこない男子にすぐに返信をさせる方法はないのでしょうか?
男性は女性にくらべて、脳が「ドーパミン」という物質を必要とする傾向があります。
ドーパミンは”快楽物質”と言われ、脳に快感や幸福感をもたらしてくれます。
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つまり男性は女性よりも快感の刺激に対して中毒になりやすいという特徴があります。
快感の中でも、特に「社会的報酬」に男性は弱く、他人から評価されることに対してより強い快楽を感じます。
社会的報酬というのは名誉を得ること、多くの人から賞賛されること、有名になること、尊敬している人に認められることなどです。
つまり自分が他人に対して認められたいという欲求=「承認要求」が満たされることによって得られる心理的な報酬です。
時には「金銭を支払ってでも自分を認めてもらいたい」と感じています。
キャバクラでは経済力がそのままその場における社会的地位に相当します。
ですから多くの金銭を支払えば、女性からたくさん褒めてもらい、心理的な報酬を得ることができます。
女性から見れば、なんともばかばかしい行為に見えるかもしれませんが、男性にとってはお金で買った嘘の報酬であっても褒めてもらうというのは、とても気持ちが良く大切なことなのです。
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つまり男性の脳をうまく操ることが出来れば、仕事や恋愛関係をよりスムーズにすることが可能ということです。
まずは男性に目の前のタスクをこなすことで自分の承認要求を満たすことができると期待させるのです。
すると男性は「自己効力感」…つまり自分を取り巻く環境に対して、自分は何か貢献して影響を及ぼすことができるという自信を湧き上がらせます。
そうやって男性の脳を刺激してモチベーションを上げてあげればタスクをすんなりとこなしてくれるはずです。
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他人から評価されることで気持ちよくなる男性の脳の性質をうまく利用するのです。
既読スルーするしてなかなか返信を送ってこない男子には、すぐに返信することで承認欲求が満たされ社会的報酬が得られることを理解させればよいのです。
女性は社会的報酬のあり方が男性によくみられるような社会経済的地位の向上とはちょっと違います。
女性は誰かに必要とされているかどうかを重要視しそこに社会的報酬を感じます。
そんなメッセージは女性の脳を刺激します。
ステレオタイプに惑わされるなかれ
ここまでの話の流れですと「既読スルーする男子に返信を待てない女子」の理由は脳の中のセロトニンの産生能力や前帯状皮質という脳の一部の構造や機能の性別の違いによるものということになります。
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つまり生まれつきの男性と女性という性別の違いが大きな原因になっています。
そんな風に思う人もいるでしょうが、実は「既読スルーする男子に返信を待てない女子」の理由はそれだけではありません。
「男性だから…」「女性だから…」と頭ごなしに決めてしまうのはあまりにも乱暴な発想です。
この「男性だから…」「女性だから…」という発想自体が、「既読スルーする男子に返信を待てない女子」を生み出すそもそもの原因になっているのです。
このような脳に染みついている固定観念や思い込みを「ステレオタイプ」と言います。
聞いたことがなくても、多くの人は「ステレオタイプ」によって支配されていると言っても過言ではないでしょう。
「ステレオタイプ」は国籍・宗教・性別など特定の属性を持つ人に対して付与される単純化されたイメージです。
「ステレオ」と聞くとサウンドをイメージする人は多いかもしれません。
しかしステレオタイプの語源は印刷用語であり、新聞や辞書などの活字印刷のために使われていたステロ版(鉛版)印刷からきていて、サウンドとは無関係です。
ステロ版で印刷すると型を抜いて作ったかのように似たものができることから、「ステレオタイプ」という言葉が生み出されました。
ステレオタイプには以下のような特徴があります。
過度に単純化されていること
不確かな情報や知識に基づいて誇張されゆがめられた一般化・カテゴリー化であること
好悪、善悪、正邪、優劣などといった強力な感情を伴っていること
新たな証拠や経験に出会っても容易に変容しにくいこと
ステレオタイプは否定的な感情を伴い、上記を満たすものであれば偏見や差別にもつながりかねません。
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「男性だから…」「女性だから…」はまさに性別のステレオタイプそのものでしょう。
他にも「日本人だから…」「血液型がA型だから…」などもステレオタイプの典型です。
ステレオタイプに頼らず日常生活のすべての物事を新たに認識しようとすれば多大な労力と時間が必要です。
しかしステレオタイプでイメージを固定化してしまえば、人は思考を省略してすでにあるイメージに基づいて判断を行うことができます。
例えば車の運転中に高齢者が視界に入った場合、ほとんどの人は、
というステレオタイプの認知をします。
すると高齢者のそばを注意して運転するといった判断が瞬時にできます。
これがもしステレオタイプの認知が機能しなかったらどうなるでしょう。
などと脳内で情報を網羅的に処理していたら、適切な判断に時間がかかってしまうでしょう。
つまりステレオタイプの認知はわたしたちを取り巻く膨大な情報を一定の型にはめて把握することで、情報を効率的に処理することに役立っているわけです。
しかしステレオタイプに頼る過ぎることはとても危険です。
ステレオタイプが引き起こす一番の問題は思考停止です。
「男性だから…」「女性だから…」といって理由付けしてしまえば、目の前の事態についてそれ以上思考する必要がなくなります。
しかし思考することをやめると単純化された「男性」「女性」のイメージはより肥大化し、いずれ偏見や差別を肉付けしていくこともあります。
このようなステレオタイプに振り回されて
などと間違えた方向に進んで行ってしまいます。
ステレオタイプには本人が無意識的にその言葉に合わせようとして言葉通りの結果が本当に誘導される作用があります。
これが「ステレオタイプの脅威」です。
自分が得意とする課題でも「苦手かもしれない」という不安を与えただけで成績が低下する可能性が証明されています。
逆にその不安を取り除いてやれば成績が回復することも証明されています。
ステレオタイプに捕らわれてしまうと潜在的に持っている実力を発揮できなくなってしまうのです。
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ステレオタイプのイメージにとらわれないコミュニケーションを積極的に開いていくことが、ステレオタイプの脅威を打破する第一歩になります。
「既読スルーする男子に返信を待てない女子」というネガティブ思考に惑わされ、変なレッテル貼りをせず、逆に性別の特徴をうまく生かした思考を心がけることが大切なのです。
“ステレオタイプの脳科学”のまとめ
なぜ男子は既読スルーをしがちで女子は返信を待てずイライラするのかを脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 「既読スルーする男子に返信を待てない女子」の理由の1つは、脳内のセロトニンという幸せホルモンの産生能力の差にあります。
- 忖度(そんたく)に関係する脳の中の前帯状皮質という部分の性別による働きの違いも理由の1つです。
- すぐに返信することで自分の承認欲求が満たされて社会的報酬を得ることができるのであれば、男子でもすぐに返信するようになります。
- しかし「既読スルーする男子に返信を待てない女子」というのはあくまでもステレオタイプのイメージです。
- ステレオタイプに惑わされすぎると、「既読スルーする男子に返信を待てない女子」から抜け出せなくなります。
- 身の回りの多くのステレオタイプをうまく利用した発想を心がけてみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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