直観に頼って思いつきで判断すると失敗するって本当ですか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 直観に頼りすぎると失敗することを証明する「認知反射」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
「世界一簡単なIQテスト」をご存じですか?
「認知反射」の脳科学
- たった3問だけの「世界一簡単なIQテスト」で、あなたの思考回路が「直観型」か「熟慮型」かを見極めることができます。
- 「直観型」と「熟慮型」の違いは、脳の衝動をコントロールする力の強弱にあります。
- 脳の衝動をコントロールできず直観に頼りすぎると、多くの場合正しい答えにはたどり着けず失敗に終わります。
- 反射的に思いついた答えを正しいと思い込まず、「意志の力」を鍛えて熟慮する習慣を身につけてみてください。
ちょっとしたひっかけ問題なので厳密には正確なIQを計測するわけではありませんが、全問答えられたらかなり高いIQの持ち主と言えるでしょう。
問題はたったの3問です。
時間制限はありません。
直観で答えても、じっくり考えても構いません。
しかし認知反射を調べるテストなので、できれば急いで回答することをお勧めします。
ちなみに日本語版にちょっとアレンジしてあります。
問題①
あるデパートで卓球のラケットとボールがセットで1,100円で売っています。
ラケットの値段はボールよりも1,000円高いです。
ではボールの値段はいくらでしょう?
1.500円
2.100円
3.50円
問題②
ある工場では5枚のシャツを作るのに5台の機械を使って5分かかります。
では100台の機械を使って100枚のシャツを作るのには何分かかるでしょう?
1.100分
2.50分
3.5分
問題③
睡蓮(すいれん)が生育している池があります。
睡蓮の増殖のスピードはかなり速く、睡蓮におおわれている水面は毎日倍になっています。
このままですと48日後には池全体がおおわれてしまいます。
では池の半分が睡蓮におおわれるまでには何日かかるでしょう?
1.24日
2.36日
3.47日
どうでしたか?
という人もいれば
と感じた人もいるでしょう。
実はどの問題にも「直観的にでてきやすい答え」と「正しい答え」の2つがあります。
そこがこの問題のひっかけです。
問題を読んで最初に頭に浮かぶ直観的な答えは…
問題① 2.100円
問題② 1.100分
問題③ 1.24日
しかしこれらの答えは「直観的にでてきやすい答え」でありすべて間違えています。
この3つの問題は「認知反射テスト:Cognitive Reflection Test(CRT)」と言って、アメリカの名門大学であるイェール大学で教授を務めるシェーン・フレデリック先生が2005年に考え出した世界的に有名なテストです。
「認知反射」とは“知識を得る働き、すなわち知覚、記憶、推論、問題解決などの知的活動において、どのような反応をとるのか”というものです。
大別すると、思いついたままを衝動的に反応する「直観型」と、熟慮してくわしく分析してから反応する「熟慮型」にわけられます。
フレデリック先生は何千人という学生にこのテストを行いました。
結果が最も良かったのはボストンのマサチューセッツ工科大学の学生で、正解数の平均は2.18でした。
次に良い結果だったのはプリンストン大学の学生で、平均正解数は1.63でした。
一番結果が悪かったのはミシガン大学の学生で、平均正解数は0.83でした。
全体でみると3問とも正解したのはわずか17%であり、33%は全問不正解という散々な結果でした。
このテストは「世界一簡単なIQテスト」と評されていますが、全問正解できたからといって決して“頭がいい”とか“賢い”という訳ではありません。
“IQの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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実際にアメリカの優秀な大学の学生でも平均正解数は大したことはありません。
このテストの真の目的は、正解数の平均値ではなく、「正解数の多かった人と少なかった人では、いったい何が違うのか?」ということを探ることにあります。
つまり「直観型」と「熟慮型」の違いを見極めるということです。
「世界一簡単なIQテスト」の答え合わせ
話を進める前に「世界一簡単なIQテスト」の答えが気になっている人も多いかと思いますので、まずは答え合わせをしましょう。
直観的にすぐに思いつくのは100円という答えでしょう。
実際の研究でも、もっとも多い間違いは100円でした。
しかし100円が間違いであることはちょっと注意深く確認すればすぐにわかるはずです。
ボールが100円で、ラケットがボールよりも1,000円高いのであれば、ラケットは1,100円となり、合計金額は1,200円になってしまいます。
正解は50円です
ボールが50円、ラケットが1,050円であれば、その差は1,000円で、合計金額は1,100円となります。
この問題では直観的にすぐに思いつくのは100分という答えでしょう。
5枚で5台で5分…だから100枚で100台では100分
反射的に思いつく答えはこうなります。
しかしよく考えてみてください。
5枚のシャツを5台の機械で5分かけて作る。
つまり1台の機械で1枚のシャツを作るのにかかる時間は5分です。
となると100台の機械で100枚のシャツを作るのにかかる時間は…5分となります。
この問題では直観的にすぐに思いつくのは24日という答えでしょう。
48日の半分だから24日。
しかしこの回答はあまりにも短絡的です。
睡蓮でおおわれた水面が毎日倍増するわけですから、24日目に池の半分がおおわれているのであれば、25日目には池全体が睡蓮でおおわれているはずです。
しかし問題では池全体がおおわれるのは48日目だと言っています。
ですから正解は48日目の1日前の47日となります。
これら3つの問題に共通するのは、問題を読んで直観的、反射的に頭に思い浮かぶ答えは間違えているということです。
正解を導き出すには、思いつきの答えを口に出すのをがまんして、少し冷静になってちょっとした計算をすることが必要です。
実際にはたいした計算ではありませんし、たいした手間でもないはずです。
しかし「直観的にでてきやすい答え」を抑え込むことはことのほか難しいのです。
脳の衝動をコントロールしてこそ成功がある
「直観」は決して悪いものではありません。
直観はいわば脳が生み出した“ひらめき”であり“知的な推論”です。
“直観の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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しかし直観に頼りすぎていると、時に人生を狂わせることがります。
「手の中にいるスズメと屋根の上にいる鳥では、どちらの方が好きですか?」
この問いの答えにあなたの「直観」が隠されています。
先ほどの3つの問題の「認知反射テスト」で正解数が少なかった人は、「手の中にいるスズメ」を好む傾向があります。
つまり「今あるもので十分満足」というように、すぐ目の前にある安全な選択肢を好む「直観型」です。
それに対して2問、あるいは全問正解した人は、「屋根の上にいる鳥」を好む傾向があります。
つまりリスクの大きい選択肢を好む「熟慮型」です。
ちなみにこの傾向が認められるのは、主に男性です。
「正解数の多かった人と少なかった人では、いったい何が違うのか?」の質問の答えがここにあります。
「正解数の多かった人」と「少なかった人」、つまり「直観型」と「熟慮型」の2つのタイプを分けるものは「衝動をコントロールする力」です。
脳は「将来もらえる報酬」よりも「今もらえる報酬」の方が、価値があるように感じる「双曲割引」と呼ばれるクセをもっています。
「今3400ドル手に入るのと、ひと月後に3800ドル手に入るのとでは、どちらの方がいいですか?」
テストの正解数が少なかった「直観型」の人の多くは「今手に入る3400ドル」を選ぶ傾向がありました。
目の前にあるものを獲得したいという欲求が抑えられないのです。
つまり「直観型」タイプの人は「衝動をコントロールする力」が弱く、衝動的ということです。
衝動買いをしやすいのもこのタイプの人です。
一方で、テストの正解数が多い「熟慮型」の人の多くは「ひと月後に手に入る3800ドル」を選ぶ傾向がありました。
つまり「熟慮型」タイプの人は「衝動をコントロールする力」が強く、今すぐに手に入る喜びをがまんして、その代わりに後でもっと大きな報酬を手に入れようとするのです。
どちらのタイプの人が“良い”あるいは“悪い”ということではありません。
しかし人生において成功をおさめるのはどちらのタイプなのかということは自ずとわかるはずです。
”成功の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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「考えること」は「感じること」よりも骨が折れる作業です。
合理的な吟味をするには、「直観」に従うよりも「熟慮」、すなわち「意志の力」が必要です。
そのため「直観型」の人はそうでない人よりも、ものごとの背景をあまり探ろうとはしません。
アメリカの研究では、「認知反射テスト」で正解数が少なかった「直観型」の人の多くは、神や不死の魂を信じるという傾向が認められ、神がかった経験をしたことのある人も多く存在していました。
決断を「直観」に委ねる度合いが強くなるほど、スピリチュアルな世界観にとらわれて、その背後にある複雑な論理を探ろうとはしなくなるのです。
“スピリチュアルの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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「お盆には祖先の霊が私たちのところに訪ねて来る」って言いますが、それってどういうことなのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログ ...
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一方で「認知反射テスト」で正解数が多かった「熟慮型」の人の多くは、無神論者であり、熟慮すればするほど「神は存在しない」という確信が強くなる傾向がありました。
つまり「意志の力」が強いほど、スピリチュアルな世界観に空虚感を感じてしまうのです。
もしあなたが自分の「認知反射テスト」の結果が不満で、正解数を上げたいと思うのであれば、神がかった「直観」に頼らずに、懐疑的に、そして論理的にじっくりと取り組み、「熟慮」してみてください。
反射的に思いついた答えは、一見するともっともらしく思えるかもしれませんが、その多くは正しくなく間違えているのです。
とにかく最初に頭に浮かんだ答えが正解だと思い込まないようにしてください。
問題
あなたは車を運転していて時速100キロでAからBに向かい、帰りは時速50キロでBからAまで戻ってきました。
あなたの往復の平均速度は時速何キロでしょうか?
注意してじっくり熟慮してみてください。
これが習慣づけば、あなたもきっと成功を手に入れられるはずです。
“「認知反射」の脳科学”のまとめ
直観に頼りすぎると失敗することを証明する「認知反射」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- たった3問だけの「世界一簡単なIQテスト」で、あなたの思考回路が「直観型」か「熟慮型」かを見極めることができます。
- 「直観型」と「熟慮型」の違いは、脳の衝動をコントロールする力の強弱にあります。
- 脳の衝動をコントロールできず直観に頼りすぎると、多くの場合正しい答えにはたどり着けず失敗に終わります。
- 反射的に思いついた答えを正しいと思い込まず、「意志の力」を鍛えて熟慮する習慣を身につけてみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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