サウナが大好きで夢中になりサウナ依存となるのは良いこと?悪いこと?
どちらなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
中毒の意味を脳科学で説き明かします。
サウナジャンキーを考える
サウナジャンキーの脳科学
- ”好き”の感覚が自分でコントロールできなくなり暴走してしまった状態が”中毒”です。
- 一度中毒になると脳の報酬系回路のプログラムが書き換えられてしまうため中毒からは抜け出せなくなります。
- しかし中毒は決して悪いことばかりではなく、脳にとっては快感を求める自然の感情や行動であり逆に良いこととも言えます。
- サウナトランス=サウナでととのうを一度でも体感してしまうとサウナ中毒になります。
- サウナ中毒だからといって無理はせず、正しい知識を持って正しく楽しむことで、真のサウナジャンキーになりましょう。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ好きの人が増えて、時にはサウナ室の前に行列ができるほどです。
中にはほぼ毎日サウナに通っている人もいますし、1日にいくつものサウナをはしごする人もいます。
「SAUNA JUNKIES(サウナジャンキーズ)」ではさまざまなサウナジャンキーのグッズが発売されています。
最近では日帰り温泉施設のリニューアルで人気の楽久屋さんとサウナジャンキーズのコラボTシャツ「爆風ジャンキーズ(中毒)」が発売され人気を集めています。
楽久屋さんの施設ではミュージックロウリュが行われ話題を集めています。
ミュージックロウリュとは、音楽に合わせて蒸気と熱風が発生するエンターテインメント型ロウリュです。
“ミュージックロウリュの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ミュージックロウリュが行われているのは、「南柏天然温泉 すみれ」「佐倉天然温泉 澄流」「COCOFUROたかの湯」です。
なかでもCOCFUROたかの湯では初めてサウナ室でのミュージックロウリュが導入されました。
“COCOFURたかの湯の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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たかの湯では毎日3曲+サイレントのロウリュが20分毎に行われています。
ミュージックロウリュでは邦楽、洋楽のさまざまなジャンルの音楽が日替わりで流れています。
このミュージックロウリュにはまり、ミュージックロウリュ中毒になっている人が最近続出しています。
では“サウナ好き”と“サウナ中毒”の違いはどこにあるのでしょうか?
サウナが好きすぎて夢中になりサウナ依存となるのは良いことなのでしょうか?
それとも悪いことなのでしょうか?
“好き”と“中毒”の違いとは?
日本語の“好き”にはさまざまな意味が含まれています。
簡単に言ってしまえば、英語でいうところの「Like」と「Love」です。
Likeは軽い感じの“好き”や“惹かれる”や“興味がある”といった感情や感じ方です。
一方で、Loveとなると特定の人や物を愛し、相手を想い、大切な存在だと認識する態度や状態です。
つまりLikeは思いにとどまりますが、Loveでは行動が伴うということです。
世界的ベストセラーである『愛するということ』の著者エーリッヒ・フロム氏は次のように解説しています。
“Love”=愛は能動的な活動であり、受動的な感情ではない。
そのなかに『落ちる』ものではなく『みずから踏みこむ』ものである。
Loveは何よりも与えることであり、もらうことではない。
つまり、Loveとは能動的に生み出すものであるということです。
一方でLikeは感情なので、「好き」という感情が生まれた時、その後の行動を選択することはできても、「そう思った」「そう感じた」ことについては、「感情が降りてきている」だけの状態にすぎないので、その瞬間は完全に受け身であり、受動的であるといえます。
以上のことから、Loveは相手の感情に左右されず愛を与えるもので、Likeは感情的に「好き」だけど愛を与えるほどではない思い、ということになります。
“性欲の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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そもそもいきなり中毒になることはありません。
まずは好きになることから始まります。
そして好きの感覚が自分でコントロールできなくなり暴走してしまった状態が依存症…いわゆる中毒と言えるでしょう。
中毒になるとただ好きなだけでは終わらず、自己コントロールができなくなり、それによって自らの生活に支障を来したり、社会的な問題が生じたりするようになります。
よく中毒で問題になるのは、お酒(アルコール)、たばこ(ニコチン)、覚せい剤などの薬物といった「物質依存」と、ギャンブル、ゲーム、パチンコ、インターネット、ショッピングといった「行為依存」の2種類があります。
このように聞くと中毒には負のイメージがつきまとうので、とても悪い病気のように思えてしまいますよね。
しかし決して中毒は悪いことばかりではありません。
脳にとって中毒は、自然の感情や行動であり逆に良いこととも言えます。
ただし中毒の対象がアルコールやたばこであれば自分や他人の健康に害を与えますし、ギャンブルやゲームであれば社会的な害を与えます。
ですから負のオーラが漂うわけです。
サウナ中毒=サウナジャンキーは決して悪いことばかりではありません。
「サウナでととのう」は健康的な脳のトランスであり、脳にとっても体にとっても良いことと言えるでしょう。
しかしサウナにはまりすぎるあまり、「毎日サウナに行かないと心が落ち着かない」「サウナでととのわないとイライラしてしまう」などの症状が出始めたら黄色信号です。
なぜ中毒になる?
”好き”でとどまっているうちは、ほとんど問題になることはありません。
しかし”好き”の感覚が自分でコントロールできなくなり暴走してしまった”中毒”になるといろいろな問題が起きてきてしまいます。
好きなものに没頭している時は、楽しい、心地よい、気持ち良いという感情が生まれます。
これらの感情を、脳は「快感」という報酬…簡単に言えば「ご褒美」と認識します。
脳が快感を感知すると、脳の中の報酬系回路と呼ばれる神経伝導ネットワークが刺激され、さまざまな脳内麻薬が分泌されます。
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この時分泌される脳内麻薬の中でもっとも重要な役割を果たすのが「ドーパミン」です。
ドーパミンは最終的に脳の中の側坐核と前頭前野という2つの領域を刺激します。
側坐核が刺激されると、幸福感や高揚感が高まります。
普通の快感であれば、分泌されたドーパミンは時間とともに吸収されてなくなっていくので、幸福感や高揚感は自然と終息していきます。
しかしアルコールや薬物などの強い刺激による快感の場合はちょっと様相が変わってきます。
刺激的な快感はドーパミンの吸収を邪魔するので、いつまでたってもドーパミンは側坐核を刺激し続けて幸福感や高揚感が持続する…いわゆる「お祭り状態」となります。
一度脳の中がお祭り状態となるとドーパミンの吸収はますますブロックされるので無限にお祭りが続く状態となります。
ドーパミンが刺激するもう1つの脳の部位…前頭前野ですが、ここでは側坐核が発した幸福感や高揚感を鮮明に記憶していきます。
一度快感が記憶されると、「またあの快感を得たい!」という衝動が強くなり、ますます中毒にのめり込んでいきます。
そしてまた快感を得てしまうと、その快感は上書き保存され、どんどん欲求が強くなっていきます。
しかもやっかいなのは、一度中毒になると脳の報酬系回路のプログラムが書き換えられてしまうため、依存対象を完全に断ったとしても、一度書き換えられたプログラムは元には戻りません。
薬物をやめてはまた手を出して…と繰り返してしまうのはこのためです。
中毒から抜け出せないのは、決して意志が弱いからではありません。
中毒とは、意志を司(つかさど)っている脳がダメージを受ける病気であり、意志が強い、弱いは一切関係ありません。
「二度とやるまいと心の底から誓っても、また楽しく気持ちよくなりたいという脳の渇望には勝てない」
サウナジャンキーで何が悪い?
それではサウナ中毒は悪いことなのでしょうか?
それとも良いことなのでしょうか?
先ほども言いましたが、脳にとって中毒は、自然の感情や行動であり決して悪いことばかりではありません。
サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」にあります。
“サウナトランスの極意の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ、水風呂、内外気浴での休息タイムで温かいと冷たいを繰り返す温冷交代浴によって、身体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になります。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
脳が一度でもサウナトランスの快感を味わってしまうと、否が応でも報酬系回路が書き換えられて“サウナ中毒”となります。
サウナトランスでは自律神経が活性化します。
自律神経には交感神経と副交感神経という2つの神経回路があります。
この2つの神経回路は同時に働くことはなく、どちらか一方が働いている時は、もう1つの神経は休んでいます。
ですからこの2つの神経は相反する働きをしています。
交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれていて、敵と闘い狩猟をする、敵から逃げる、といった緊張時に働きます。
一方で副交感神経は寝る、食べる、休息する、といったリラックスする時に働きます。
サウナ室内は高温多湿の異常空間であり、脳は生命の危機を感じ戦闘モードになりますので、交感神経が盛んに働きます。
その結果として、体内の血管が拡張します。
血管を拡張させることで、少しでも血液を冷やそうとするのです。
一方で水風呂、休息タイムでは一気にリラックスモードとなりますので、副交感神経が盛んに働きます。
その結果として、体内の血管は収縮します。
血管を収縮させることで血液から熱が逃げるのを防ごうとします。
たとえばせっかくお風呂で温まっても冷え性の人はすぐに体が冷えきって湯冷めしてしまいます。
これは温まって拡張した血管をそのままにしておくと熱がどんどん放散されていってしまうからです。
しかし冷たい水を浴びて血管を収縮させることで熱を閉じ込めて湯冷めを防ぐことができるのです。
つまり温冷交代浴では血管の拡張と収縮によって温かさを持続させる効果があります。
またそれと同時に血管が拡張と収縮を繰り返すことで血管のポンプ作用がアップして全身の血行が良くなる効果もあります。
当然脳にもたくさんの血液が流れ、血液に含まれる酸素もたくさん脳に取り込まれます。
それにより深いリラクゼーション効果が生み出され「ととのう」の境地にたどり着けるわけです。
サウナトランスを体感するためには、いかに2つの自律神経を交互にうまく働かせるかが重要であるわけです。
ですからサウナ中毒になると自律神経が否が応でも鍛えられます。
サウナで温冷交代浴を繰り返すには相当な体力を使いますので、思っている以上に脳も体も疲弊(ひへい)します。
毎日サウナに通い詰めて何セットもこなし続けていると、場合によっては疲労で起き上がれなくなることすらあります。
などと思っていませんか?
完璧主義の人はall or nothingの発想で中毒になりやすいと言われています。
なにも毎回必ずととのう必要などないのです。
自分で決めたセット数をこなしきれずに何が悪いのでしょう?
サウナ室で上段ではなく下段に座って何が悪いのでしょう?
ロウリュで熱すぎてサウナ室から逃げ出してもかまわないのです。
たいていの人は目標の80%をこなせれば成功体験として満足します。
しかし完璧主義の人は「20%も達成できなかった」と失敗体験としてとらえてしまいます。
そんな人は黄色信号です。
時には「1セットで済ませる」「サウナ、水風呂で済ませて休息は取らずトランス状態にならずに終わりにする」「ロウリュの時間は避けてじっくりサウナで蒸されるだけで終わりにする」など普段のルーチンよりも軽めに済ませる日があっても良いのです。
そうすることで脳や体への負担をぐっと軽減できるはずです。
「サウナの正しい知識を持って正しくサウナを楽しむ」
これこそが真のサウナジャンキーなのではないでしょうか?
“サウナジャンキーの脳科学”のまとめ
中毒の意味を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- ”好き”の感覚が自分でコントロールできなくなり暴走してしまった状態が”中毒”です。
- 一度中毒になると脳の報酬系回路のプログラムが書き換えられてしまうため中毒からは抜け出せなくなります。
- しかし中毒は決して悪いことばかりではなく、脳にとっては快感を求める自然の感情や行動であり、逆に良いこととも言えます。
- サウナトランス=サウナでととのうを一度でも体感してしまうとサウナ中毒になります。
- サウナ中毒だからといって無理はせず、正しい知識を持って正しく楽しむことで、真のサウナジャンキーになりましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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