サウナで胡坐(あぐら)をかくのは善なのでしょうか?
それとも悪なのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
胡坐(あぐら)の意味を脳科学で説き明かします。
サウナにまつわる胡坐(あぐら)問題
胡坐(あぐら)の脳科学
- 健康学からみると、胡坐は骨盤を立てる姿勢がとりやすいお勧めの座り方です。
- 脳科学からみると、胡坐は瞑想によるマインドフルネスを実践するにはお勧めの座り方です。
- サウナ室で頭や体だけでなく足先まで温まるには胡坐はお勧めの座り方です。
- 総合的に考えると「サウナで胡坐」は圧倒的に善です。
- 「サウナで胡坐」を悪にしているのは、一部の人による自分勝手なマナー違反です。
- 「サウナで胡坐」を善にするのも悪にするのも自分次第です。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
多くの人は普通に腰かけて座っていますよね。
正座をしている人は見かけたことがありませんが、胡坐(あぐら)をかいている人はよく見かけるのではないでしょうか?
胡坐をかいて目を閉じて瞑想している…そのようなスタイルで蒸されている人は決して少なくないはずです。
しかし胡坐をかくと、どうしても普通に座っているよりも幅をとります。
広いサウナ室では問題ないのでしょうが、狭いサウナ室であったりサウナ室が混んでいたりする時は、時に胡坐をかいている人がいるせいで座れなくなる人がでてくることがあります。
しかし胡坐をかいて目を閉じて瞑想している人に、「胡坐をかくのをやめて、つめて座ってください」とはなかなか言いづらいものです。
とはいえ、胡坐をかくことで2人分のスペースを占拠していたり、胡坐をかいている膝が隣の人に当たったりする光景を見るのは、あまり気持ちのいいものではありません。
ではサウナで胡坐をかくのは本当に悪なのでしょうか?
それとも善なのでしょうか?
胡坐(あぐら)の起源
あぐらを漢字で書くと「胡坐」あるいは「胡座」になります。
「胡」は昔の中国において異民族を意味します。
ずっと以前、あぐらは「胡床」と表記されていました。
「胡床」は大陸から渡ってきた異民族の習慣であった椅子を意味していました。
しかし日本は「畳」の文化です。
庶民が「椅子に座る」ことは、家の縁側や縁台、茶店などの外食時に使用する「腰掛け」などに限られていました。
多くの人は足を組んで床に座るのが普通でした。
そのため「胡床」は「胡坐」「胡座」へと変化していったと言われています。
ちなみに「坐」あるいは「座」は座るための場所を意味します。
今では「胡坐」といえば、うちとけた、楽な、くだけた姿勢で座ることを指します。
畳の上での正式な座り方は「正座」であり、胡坐はどちらかといえば行儀が悪い座り方とされています。
正座が生まれたのは室町時代と言われています。
茶の湯が普及することで正座は普及していきました。
家の中に畳が敷き詰められるようになったのも同じ頃です。
ただし茶の湯をふるまう側は正座でも、招かれた側はあぐらをかいているケースが当初は一般的だったようです。
そして、それ以降は正座が正式な座り方であり、胡坐は坐禅などの特別な場面以外では比較的下品な座り方ととらえられるようになったのです。
健康学からみた胡坐(あぐら)
健康学からみた座り方でもっとも正しい座り方とは、どのような座り方なのでしょうか?
もっともおすすめの座り方は、まっすぐに椅子に座ることです。
正座?
正座をくずして足を左右に広げたお姫様座り(割坐)?
正座をくずして両足を横に崩した横座り?
日本人独特の体育座り?
床に座る時に、健康学的にもっともおすすめの座り方は胡坐です。
ではそもそも健康学的に正しい座り方とは何のでしょう?
それは骨盤を立てる座り方です。
「骨盤を立てる」とは、骨盤をひねったり傾けたりせず、左右均等に体重を乗せることを指します。
骨盤を立てた姿勢を保つと身体が疲れにくくなり、肩こりや腰痛の予防にもつながります。
しかし、骨盤が立っていないと姿勢が悪くなりやすく、体全体の骨格が歪む原因にもなります。
骨盤が立った状態で座ると、骨盤の高さが地面に対して水平になり、左右の坐骨(ざこつ)へ均等に体重が乗っている状態になります。
骨盤を立てないで座ると、猫背や反り腰などの不良姿勢に直結します。
骨盤が後方に傾いた状態が続くと、背筋が丸まってしまうため、猫背の姿勢が日常化してしまいます。
一方、骨盤が前に傾いた状態が続くと、腰が反りすぎてしまうため、反り腰という不良姿勢につながります。
猫背や反り腰が長期間続くと、頑固な肩こりや腰痛、お腹のたるみなどにもつながります。
胡坐は他の座り方と比べて、骨盤を立てて座りやすいとされています。
欧米では床に座る時は正座ではなく胡坐が勧められています。
インド発祥のヨガの基本姿勢も胡坐です。
子供の頃から学校でおなじみの体育座りですが、膝を抱えこむ体育座りは、どうしても骨盤が後ろに傾き、背骨も丸まってしまうため、骨盤、背骨、腰への負担が大きくなります。
「場所を取らない」というメリットから、体育座りは昔から学校で採用されてきましたが、体への負担が考慮され、最近では見直されてきています。
成人が1日に座っている時間は平均して約7時間にもなります。
脳科学からみた胡坐(あぐら)
みなさんはマルチタスクに追われて脳も体も疲労していませんか?
そんな時に効果的なのがマインドフルネスです。
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マインドフルネスとは、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態でただ観ること」です。
マインドフルネスには次のような効果があるとされています。
ストレスの低減効果
自律神経を整え、副交感神経を優位にすることによる睡眠の質の向上
考え方が前向きになる変化
集中力の向上
脳の中の怒りの感情を生み出す領域の縮小
学習や記憶の向上
脳の幸福を感じる領域の発達
脳疲労の回復
マインドフルネスによって脳を鍛えるのに効果的な方法が「瞑想」です。
瞑想で大切なのは、「調身(姿勢を調える)」「調息(呼吸を調える)」「調心(心を調える)」の3つです。
脳科学的に瞑想を行うのに理想的とされる座り方が「胡坐」です。
瞑想というと、足を胡坐に組んだ蓮華(れんげ)座という姿勢が思い浮かぶ人が多いでしょう。
これは昔、インドなど椅子がないところで長時間瞑想するために行われていた座り方で、骨盤を真っすぐに立てやすく、かつ肺を広い状態に整えやすい姿勢です。
さらにお勧めなのは、丹田(おへその約9センチ下の奥)を意識することです。
丹田に力を入れてお腹をへこませる姿勢を保つと、自然と呼吸も心も整ってきます。
瞑想をしてマインドフルネスを効果的に行う秘訣は、とにかく実践して継続することです。
短くても頻度を上げることで瞑想の効果はだんだん上がってきますので、やり方にこだわらず「今ここ」に集中することが何よりも重要です。
「今ここ」に集中することは、どの瞬間でもできます。
ヨガやストレッチをしている時だけでなく、日常生活の中でも、洗顔しながら、移動中の電車内、歩いている時、そしてサウナで蒸されている時など、自分の脳に何らかの刺激や感触がある時に、その感覚に集中するのがもっとも取り組みやすい方法です。
瞑想を1週間に数回でも実践していれば、「すっきりする」「落ち着く」という脳疲労が回復する実感が得られるようになります。
サウナで胡坐(あぐら)は善?悪?
多くのサウナ室は階段状になっていて、椅子に座るように腰を下ろし、そのまま下の段に足をつく…多くの人がそのような体勢で蒸されています。
しかしこの体勢は決してベストな座り方ではありません。
サウナ室は高いところほど高温になり、低いところほど室温は差がります。
そのため、椅子に座った体勢では頭の温度が高いのに対して、足先は比較的温度が低くなります。
その結果、頭や体が熱いと感じていても、意外と足は温まっていないと感じる人は少なくないはずです。
ですからサウナ室では、できるだけ体の高低差をなくすのが効果的な座り方です。
そのような意味では、横になることがもっとも効果的ですが、プライベートサウナでもない限り、サウナ室で寝転がることはNGです。
胡坐をかくことで足の高さを上げて、足先までしっかり温まることが可能となります。
しかしこれはあくまでも理想を追求した場合です。
プライベートサウナで自由にサウナ室を使えるのであれば、「サウナで胡坐」は何も問題はありません。
「サウナで胡坐」が悪とされるのは、一部の人がマナーを守らないからです。
公共のサウナ室で、マナー違反を犯してまでも、自分勝手に自分の理想のみを追求したらどのようなことが起こるでしょう?
4人座れるところに2人しか座れない。
胡坐をかいた足が隣に座っている人にぶつかってしまう。
などによってトラブルにも繋がりかねません。
すべての人が気持ちよくサウナ室を利用するためには、時には妥協してマナーを優先させることは大切なことです。
“マナーの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】銭湯やサウナでマナーを守らない理由はどこにある?マナーを脳科学で探る
銭湯やサウナでマナーを守らない人がいるのはなぜなのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの ...
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マナーを守らない人がいることで、たとえサウナ室が空いていて胡坐をかける環境でも胡坐をかけないくなる、といった迷惑を被(こうむ)ることになります。
胡坐をかいて瞑想にふけっていても、混雑してきたら胡坐をくずして普通に座る、1人分のスペース内で胡坐をかく、などの工夫が求められます。
本来であれば「サウナで胡坐」は圧倒的に善です。
だからこそ「サウナで胡坐」が悪とされないような心がけを、1人1人がすることが大切なのです。
“胡坐(あぐら)の脳科学”のまとめ
胡坐(あぐら)の意味を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 健康学からみると、胡坐は骨盤を立てる姿勢がとりやすいお勧めの座り方です。
- 脳科学からみると、胡坐は瞑想によるマインドフルネスを実践するにはお勧めの座り方です。
- サウナ室で頭や体だけでなく足先まで温まるには胡坐はお勧めの座り方です。
- 総合的に考えると「サウナで胡坐」は圧倒的に善です。
- 「サウナで胡坐」を悪にしているのは、一部の人による自分勝手なマナー違反です。
- 「サウナで胡坐」を善にするのも悪にするのも自分次第です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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