薄毛や脱毛症は治る?治らない?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い、勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。
この記事を読んでわかることはコレ!
- いわゆる「ハゲ」を脳科学で説き明かします。
あなたも頭皮環境を見直そう
ハゲの脳科学
- ハゲの原因にはAGAと頭皮環境があります。
- 頭皮環境によるハゲは治る可能性があります。
- AGAによるハゲは自然現象によるハゲなので治るかどうかは疑問です。
- 今後のハゲの研究成果に期待しましょう。
薄毛や脱毛症…いわゆる「ハゲ」に悩んでいる人は決して少なくはないでしょう。
特に男性では髪が薄くなることは悩みのタネの1つですよね。
男性の薄毛の原因にはいくつか報告があります。
男性の薄毛の原因の1つはAGAです。
AGAとはAndrogenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」の意味です。
成人男性によくみられる髪が薄くなる状態です。
おでこの生え際や頭頂部の髪が薄くなっていきます。
AGAの原因は遺伝や男性ホルモンが影響しています。
抜け毛が進行しうす毛が目立つようになります。
AGAは病院やクリニックで治療を行うことができます。
くわしくは『UUTANさんのブログ』で勉強してみてください。
専門家の知識がもっとも有益です。
男性の薄毛の原因のもう1つは頭皮環境です。
頭皮の血行不良はストレス、偏食、睡眠不足などの生活習慣の乱れが影響します。
それ以外にも紫外線、帽子やヘルメットによる蒸れ、過剰な手入れなども頭皮にダメージをあたえます。
頭皮環境によるハゲは原因がある程度はっきりしているので予防改善が可能です。
抜け毛予防や発毛促進などの効果が期待できる大豆、生姜、胡麻、卵などをバランスよく摂取するのも1つの方法です。
帽子やヘルメットの中は蒸れて雑菌が繁殖しやすくなり頭皮トラブルの原因となります。
頭をゴシゴシと長時間かけて洗いすぎるのも考え物です。
脳はあまりに使いすぎると容量が増えすぎて毛根が下からグイグイと圧迫されてその圧力で毛根がダメになってしまうのだそうです。
男としてはハゲになる背景には「男らしさ」や「勤勉さ」があるのでハゲになることで拍がついて女性から「カッコイイ」と思われるなんて発想もあります。
ハゲについての一般的な話はここまでにしてここから先は「薄毛や脱毛症は治る?治らない?」について探るべくハゲを脳科学で探っていきましょう。
ハゲってそもそも治したほうがいい?
2012年に東京理科大学の辻孝博士(現在は国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター)がマウスの植毛実験に成功しメディアやネットで大きな話題になりました。
Toyoshima KE, et al, Nat Commun 3:784. doi: 10.1038/ncomms1784, 2012
生まれつき毛のないヌードマウスに通常のマウスの毛根由来細胞を移植したところ発毛したという発見です。
単に毛が生えてきただけではありません。
毛が抜けたら自然と生え替わるのです。
そして現在では再生医療の技術を用いてふさふさの髪を復活させるための臨床研究行われています。
体の器官の再生医療としては世界初です。
頭皮から採取した毛髪のもとになる細胞を培養し大量に増やした毛包(毛穴の奥にある髪を作り出す器官組織)を移植するのです。
育毛剤とは異なり最先端の再生医療による新しい治療です。
ハゲ治療が世間で話題になるのはそれだけ薄毛や脱毛症に悩む人が多いということです。
実際育毛関連グッズは全世界で4兆円を超える巨大市場となっています。
ところでそもそもハゲって治すべきなのでしょうか?
1999年に「リアップ」という発毛薬が認可されました。
この当時世間の反応の多くは表層的な興味本位にとどまりました。
本当に毛が生えてくるの?
ためしに使ってみるかあ…
そんな感じです。
しかし医療関係者にとっては発毛薬の承認はある意味衝撃的な出来事でした。
本来薬といえば病気を治療したり予防したりすることが目的です。
あくまでも病気が対象です。
ハゲの脳科学-その1
頭皮の脱毛は生物学的には加齢に伴う自然な経年変化です。
ある意味自然な現象です。
このような正常な変化をあえて薬物で軌道修正しようとするのは言うならばドーピングにも通じる考え方です。
発毛薬が正式に認可されたという事実は製薬業界において「生活改善薬」という新しいジャンルを生み出しました。
育毛剤の他には勃起不全治療薬、経口避妊薬、睡眠改善薬、禁煙補助薬、手足の冷えの改善薬などが生活改善薬として認可されています。
ハゲの脳科学-その2
病気によって日常生活に支障となるような症状を改善するのではなく生活の質を改善し快適に過ごすことを目的とした薬や治療法が近年ますます増えています。
ハゲの遺伝子を考える
ハゲの脳科学-その3
最初に説明したハゲの原因のうち頭皮環境によるハゲは治すことができるハゲです。
一方で治すことのできないハゲは遺伝によるものです。
そもそもハゲは“何らかの理由”があって毛をうしなったのですからその原因を取り除かなければ育毛剤や発毛剤を使っても毛を移植しても結局は脱毛してしまいます。
ハゲが遺伝すること自体はよく知られています。
祖父から孫へと隔世遺伝するという考えが一般的です。
遺伝の性染色体にはXとYがあります。
男性はXとYの性染色体、女性は2つのXの性染色体を持っています。
隔世遺伝するということは遺伝子学的には性染色体Xに原因があるということになります。
男性の場合性染色体Xは母親から性染色体Yは父親から必ず受け継ぎます。
父親から性染色体Xを受け継いでしまうと女性になってしまいます。
つまり性染色体Xは50%の確率で母系の祖父母由来となります。
ですからハゲは祖父母から孫へと隔世遺伝するのです。
ある程度というのはハゲの原因遺伝子はたくさん存在していてその一部が判明しているということです。
2005年ハゲの原因遺伝子の1つが同定されました。
それは男性ホルモンの受容体遺伝子で性染色体Xに存在していました。
Hillmer AM, et al, Am J Hum Genet 77(1):140-148. doi: 10.1086/431425, 2005
2008年には別のハゲの原因遺伝子が同定されています。
Richards JB, et al, Nat Genet 40(11):1282-1284. doi: 10.1038/ng.255, 2008
Hillmer AM, et al, Nat Genet 40(11):1279-1281. doi: 10.1038/ng.228, 2008
しかしこの遺伝子は性染色体Yに存在していました。
ハゲの脳科学-その4
つまりハゲは隔世遺伝だけではなく直接親からの遺伝子の影響もあるということになります。
今まで信じられていた「ハゲは祖父母から孫へと隔世遺伝する」という概念が覆されたことになります。
ついでにもう1つ。
ハゲは以前はアジア圏では少ないと信じられていました。
これはハゲの遺伝子による影響でアジア圏の人種の性染色体にハゲの原因遺伝子はそもそも少なかったことに起因します。
しかし最近ではアジア圏でもハゲ率は欧米並みにまで増加してきています。
これはアジア圏でも欧米風の生活スタイルを取り入れて食生活も大きく変わったことが影響しています。
つまりハゲは遺伝だけでなく食生活などの環境の影響も大きく受けているということの証明になります。
しかしこれも数年、数十年たつと非常識な事実になっているかもしれません。
薄毛や脱毛症…つまりハゲは治る?治らない?という疑問は一筋縄では解決しない問題です。
ハゲは簡単に脳科学で割り切れる問題ではなさそうです。
“ハゲの脳科学“のまとめ
薄毛や脱毛症は治る?治らない?についてハゲを脳科学で探ることで説き明かしてみました。
今回のまとめ
- ハゲの原因にはAGAと頭皮環境があります。
- 頭皮環境によるハゲは治る可能性があります。
- AGAによるハゲは自然現象によるハゲなので治るかどうかは疑問です。
- 今後のハゲの研究成果に期待しましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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