男と女でサウナの環境に違いがあるのはなぜなのでしょう?
男と女で「サウナでととのう」に違いはあるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
男女でのサウナの違いを勝手に脳科学で説き明かします。
男と女でサウナはどう違う?
男女でのサウナの違いの脳科学
- 多くのサウナでは男性の方が室温が高く環境も整っていることが多い傾向があります。
- しかし熱さに強く、より快感度の高い「ととのう」を体感できるのは女性です。
- 男女で「ととのう」を体感する時に作用する脳内麻薬には違いがあるので、男女で「ととのう」の感じ方はまったく異なってきます。
- とはいえ「男だから」「女だから」にこだわらず、自分なりに最高の「ととのう」が体感できればそれでよいのです。
第3次サウナブームで沸きあがる日本では、男女問わず多くの銭湯施設でサウナはにぎわっています。
“サウナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナと言うと“男性のもの”というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、それはそもそも間違えた発想です。
サウナが日本に誕生して普及したのは、1956年のメルボルンオリンピックがきっかけと言われています。
日本初の本格的なサウナ施設である「東京温泉」が東京銀座に誕生したのは1951年です。
このサウナを造った許斐氏利(このみ うじとし)氏は、1956年のメルボルンオリンピックに射撃の日本代表として参加し、選手村で体験したドライサウナを東京温泉にも取り入れました。
実はこの時から女性にもサウナは人気で、その後何度も女性のサウナブームは訪れています。
しかし現在の日本では多くの施設で浴室やサウナの環境には男女差が見られます。
”性別の違いの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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中には“男性専用で女性側にはサウナなし”といった施設も決してめずらしくはありません。
また女性側にサウナがあっても温度設定が異なることもめずらしくはありません。
ですから“レディースデー”を開催して、普段は男性専用の浴室やサウナを定期的に女性に開放している施設もあります。
ではどうして男女ともに人気のあるサウナなのに、男と女で環境に違いがあるのでしょうか?
サウナに対する考え方の違い
2021年にLINE株式会社が運営するLINEリサーチからサウナに対する考え方についての調査が行われその結果が発表されました。
それによると、「とても好き」「どちらかといえば好き」を合わせた「サウナが好き」な人の割合は、男性61%、女性44%で、男性のほうが好きな人の割合がやや高い傾向が示されました。
「サウナが好き」と回答した人に、サウナの好きなところを聞いたところ、男女ともに約7割の人が、「汗をかく / デトックスになる」と答え、第1位でした。
2位も男女同じで、「血行がよくなる」でした。
男女差が出たのは3位以降で、男性では3位に「リラックスできる」、5位に「ストレス解消になる」、6位に「疲れがとれる」、7位に「心身のバランスがよくなる」など精神面への効果を挙げる回答が目立ちました。
一方で女性は「美容にいい」(4位)、「ダイエットになる」(6位)、「冷え性が改善される」(9位)、「むくみが改善される」(10位)など美容に関する回答が目立ちました。
この結果は後ほど説明する「脳科学的な男女でのサウナの違い」をよく反映した結果となっています。
サウナの環境の違い
サウナ室の温度設定を調べた研究では、男性のサウナ室は女性と比較して平均11℃も室温が高いことが示されています。
また室温の最大値を比較すると男女の差は平均13℃とひらき、施設によっては20℃以上の差があるところもありました。
男性のサウナ室では85℃未満はありませんでしたが、女性のサウナ室では60~70℃台の施設もあり、また105℃以上の施設はないという結果でした。
この結果は男女両方にサウナがあり、サウナ室の数が同じ施設に限った研究であり、男性専用施設や男性側のみにしかない高温サウナは含まれていませんので、実際にはもっと差があるのかもしれません。
男女で違いがあるのは温度設定だけではありません。
サウナ室の種類にも違いがある施設が多く見られます。
その場合、たいてい男性側はドライサウナ、女性はスチームサウナとなっています。
“スチームサウナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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また先ほども言いましたが、”女性側はサウナなし”あるいは”サウナ室はあっても水風呂なし”…なんて施設もめずらしくありません。
たとえ男女で同じようにサウナ室や水風呂があっても、「サウナストーブの種類やサウナ室の広さや設備が男性側の方が質が高そう」と感じさせる施設もあるようです。
体質の違い
先ほど示した調査結果では、「サウナが好き」の人の割合は、男性61%、女性44%で、男性のほうがサウナが好きな人の割合が高い結果でした。
それは男女には体質の違いがあるからです。
女性は月に1週間程度生理の期間がありサウナには入れません。
生理の周期や日数は人それぞれですが、「そろそろ生理かもしれない」であったり「整理が終わったかもしれないけど念のためもう少しがまんしよう」と思って、サウナに行きたくても行けない時間がどうしても発生します。
1週間…つまりひと月のうち1/4は、女性はサウナに行けないわけです。
気の利いた施設であればレディースデーを開催する場合、毎月同じ週ではなく、月によって週を変えたり、月に複数回開催するなど考慮していますが、すべての施設がそうとは限りません。
そうなると女性の場合は人によっては、純粋に「サウナが好き」と言い切れないのかもしれません。
「熱さに強い」のは男女どっち?
男女でこのようにサウナ室の環境に差があるのは、一般的に女性の方が「熱さに弱い」と思われているからかもしれません。
しかし実際にはその逆で、女性の方が熱さや冷たさに強い体の構造になっています。
これは生命科学的に人類史を考えれば当然のことです。
“性欲の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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人類が地球上に誕生して子孫を残していくためには生殖活動をして繁殖することが必要です。
男女の体の構造で決定的に違うのは生殖能力を備えているかどうかということです。
そして生殖能力を備えているのは女性だけです。
ですから女性は熱さ、寒さといった過酷な環境の中でも生き残っていく必要があったのです。
そのため女性は男性とくらべて皮下脂肪が厚く、外気の温度差に強い仕組みになっています。
また女性は男性とくらべて基礎代謝が少ないので、そもそも体内の熱産生量が少なく、少ない汗で体温調整ができるようになっています。
そのように思っている人もいるかもしれません。
実際に女性は男性にくらべて皮膚の厚さは0.5mmくらい薄いと言われています。
しかしそれよりも皮下脂肪の方がずっと厚いので皮膚の薄さはほとんど影響はしません。
汗のかき方にも男女差があります。
一般的には女性の方が男性よりも汗をかきづらく、同じ熱さであれば女性は男性の半分程度の汗しかかきません。
また女性の方が汗が出始めるまでに時間がかかると言われています。
汗は蒸発することで体温を低下させるので、体温調整には重要な役割を担っています。
女性は熱さに強いので、サウナに入っても体温が急激に上昇することがないので汗をかきづらいのです。
スチームサウナでは湿度が高いため、皮膚の表面に結露が起きて水滴がつきやすいので汗をたくさんかいたように感じやすくなっています。
しかし実際に皮膚についている液体は蒸気が液化した水分がほとんどです。
とはいえ汗と結露した水分を見極めるのは難しいので、スチームサウナでは汗をかきやすいと思われがちです。
もともと汗をかきづらい女性にとっては、蒸気によって美容効果が期待できるスチームサウナの方が人気が高いのもうなずけます。
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最近ではサウナ室の設定温度や設備、水風呂などの環境を男女区別なく同じにしている施設も増えてきています。
実際にTwitterなどの書き込みを見ると、かなり高温のサウナで平気でアウフグースをうけている女性を数多く見かけます。
では実際にサウナに入浴した後の「サウナでととのう」に男女で違いはあるのでしょうか?
男女で「サウナでととのう」に違いはあるのか?
高温のサウナで蒸された状態は、脳にとってはまさに戦闘状態です。
そこから水風呂、そして外気浴へと移行する温冷交代浴で、脳は戦闘状態から一気にリラックス状態となります。
この時に脳ではさまざまな脳内麻薬がたくさん分泌されて得も言われぬトランス状態が訪れます。
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多くの人が「サウナでととのう」を体感したい理由は、日常生活ではなかなか得られない幸福感を得るためです。
この幸福感にもっとも関係している脳内麻薬は“セロトニン”です。
セロトニンによって得られるのは、“やすらぎ”や“癒し”や“気分の幸福感”です。
実はセロトニンの産生能力は男女で違いがあり、女性の方がセロトニンを分泌しにくいと言われています。
つまり男性の方が女性よりも幸福や安心を感じやすいということです。
ある研究では脳の中のセロトニンの産生能力は男性の方が女性よりも50%近く高いことが証明されています。
セロトニンが少ないと不安感が強くなるためより、現実主義で先々のリスクを正確に見積もりその結果今できることを先延ばしにしません。
長い人類の歴史において楽観的になりすぎず常に危険に対処しようとする傾向が女性にあったことが私たち人間が生き残っていくためには必要な条件だったのです。
なぜなら女性の不安傾向が高いことによってその子どもがリスクを回避できる確率が高くなり、より多くの個体が生き延びられるようになるからです。
一方でセロトニンの産生能力の高い男性は基本的に楽観的で「明日でいいものは今日やらなくてもいい」という発想です。
学生のころの成績を思い出してみてください。
「女子の方が男子よりもテストの成績が良かった」なんていう記憶を持っている人は少なくないでしょう。
この現象もセロトニンが大きく関わっています。
「テストに対する不安が強いと頑張って勉強して成績が良くなる」という相関関係が成り立っているわけです。
ですから女性の方がテストで成績が良いのは脳科学的には当然のことなのです。
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女性はセロトニンを分泌しづらいだけで、一度分泌されればその量は男性と変わりありません。
しかも女性はセロトニンが分泌されると男性には見られない脳の活動がみられます。
その活動によって女性は我を忘れるくらいの究極の快楽を感じます。
時に快楽が振り切れると脳はパニック状態となって頭の中が真っ白になって、最終的には気を失ってしまうことさえもあります。
ですから女性の方が圧倒的に最高の「ととのう」が体感できるのです。
男性は「ととのう」を体感しやすいが、女性の方がより快感度の高い「ととのう」を体感できる。
このように言えるでしょう。
セロトニンの効果によって、性交の時には女性の方がオルガスムの頂点がより高く、しかも短時間のあいだに何度もピークが訪れます。
男性では決して味わえない感覚ですね。
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ここまで読んで男性の方は
などとがっかりしているかもしれません。
しかし脳内麻薬はなにもセロトニンだけではありません。
男性の方が多く分泌され、「ととのう」に導いてくれるホルモンも存在します。
それは“ドーパミン”です。
ドーパミンは目標を達成した時に分泌される、いわば成功のホルモンです。
ですから多くの人は“幸福”を考えた時まずドーパミン的幸福感を考えます。
「成功したい」「出世したい」「お金持ちになりたい」…このような欲望はすべてドーパミン的幸福感です。
ドーパミン的幸福感を得ることが生きていく原動力になるわけです。
男性は女性にくらべてドーパミンの働きが強く、分泌量も多いとされています。
それによって男性は女性よりも快楽の刺激に対して中毒になりやすい特徴があります。
さらに、快楽の中でも特に社会的報酬に弱く、他人から評価されることに対してより強い快楽を感じます。
社会的報酬というのは名誉を得ること、多くの人から賞賛されること、有名になること、尊敬している人に認められることなどです。
つまり「自分が他人に対して認められたいという欲求=承認要求」が満たされることによって得られる心理的な報酬です。
ですから男性は「ととのう」を体感するだけでなく、「ととのう」を体感したことを他人に伝えて賞賛してもらい快楽を得るのです。
女性にも同様の快感は存在しますが男性ほどではありません。
このほかにもさまざまな脳内麻薬が「ととのう」には関係していて、それぞれ男女差が見られます。
つまり脳科学的に男女どちらの方が「ととのう」の快楽が得やすいということはありませんが、快楽の種類が異なっているのです。
当然脳内麻薬の分泌のされ方は絶対的なものではありません。
ですから「ととのう」の感じ方は人それぞれです。
「男だから」「女だから」と考えるなかれ
今回は男女でのサウナの違いを脳科学で探ってみました。
ここまでいろいろ言ってきていまさらですが、「男だから」「女だから」とあまり深く考えず、自分の好みで自分なりの「ととのう」ができればそれが一番です。
その時の体調や心理的な状態で熱さに強かったり弱かったりさまざまです。
サウナに限らず「男だから」「女だから」という発想がそもそもあまり良くないのかもしれません。
これはまさにステレオタイプのワナにはまった発想であり、正しくはありません。
”ステレオタイプの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ステレオタイプは否定的な感情を伴い時に偏見や差別にもつながりかねません。
とは言えステレオタイプは何も悪いことばかりではありません。
たとえば車の運転中に子どもが視界に入った場合、多くの人は
このようなステレオタイプの認知によって、子どものそばを車で走る時は速度を落として注意して運転するといった判断が瞬時にできます。
もしステレオタイプに認知が機能しなければ、
など脳内で情報を網羅的に処理して判断する必要が出てきます。
しかしこれでは適切な判断に時間がかかってしまいます。
とはいえ、「男性だから…」「女性だから…」といって理由付けしてしまえば、目の前の事態についてそれ以上思考する必要がなくなります。
思考することをやめると単純化された「男性」「女性」のイメージはより肥大化しいずれ偏見や差別を肉付けしていくこともあります。
「このような考え方もある」…そのような気軽な気分で読み流していただければ幸いです。
“男女でのサウナの違いの脳科学”のまとめ
男女でのサウナの違いを勝手に脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 多くのサウナでは男性の方が室温が高く環境も整っていることが多い傾向があります。
- しかし熱さに強く、より快感度の高い「ととのう」を体感できるのは女性です。
- 男女で「ととのう」を体感する時に作用する脳内麻薬には違いがあるので、男女で「ととのう」の感じ方はまったく異なってきます。
- とはいえ「男だから」「女だから」にこだわらず、自分なりに最高の「ととのう」が体感できればそれでよいのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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