お笑い芸人はどうしてあんなに多くの人を笑わせることができるの?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 笑いのセンスを磨くために必要な技の1つであるメタファーの効果がわかります。
”お笑い”は文化遺産である
あなたも笑いのセンスを磨こう!
- お笑いは間違いなく文化遺産です。
- そんな笑いを自由自在にあやつるお笑い芸人のしゃべりはまさに神業です。
- お笑い芸人はメタファーを活用してわれわれを笑いの渦に巻き込んでいきます。
- メタファーは受け手が主導のコミュニケーションを送り手が主導に逆転することができる必技です。
- あなたもメタファーを活用して笑いのセンスを磨いていきましょう。
なぜならほんの数秒、数分で多くの人を笑わせることができるからです。
このような芸当はなかなかできるものではありません。
自分がもし相手を笑わせて楽しませたいと思った時にほんの数秒、数分で相手を笑わせることができるだろうかと考えると…
ギャグやジョークなどの笑いの世界を楽しむことができる動物はヒトだけです。
ヒトにおいてもお笑いは地域、環境、知性、知識、性格、年齢などさまざまな影響を受けます。
たとえばアメリカンジョークを聞いてもちっともおもしろく感じないなんてことあると思います。
洋画を見ていて外人の方が笑うタイミングとわれわれ日本人が笑うタイミングが違うことを感じたことがある人もいるはずです。
おそらく日本語に翻訳された時点で笑いの内容やタイミングがズレてしまうのでしょう。
そのように考えるとお笑いは間違いなく文化的産物といえるでしょう。
こんなお笑いを自由自在にあやつる芸人のしゃべりはまさに神業としか思えません。
この記事のポイント
今回は笑いのセンスを磨くことを脳科学で探ります。
そして特に笑いの1つの技でもあるメタファーを脳科学で解き明かしていきます。
笑いの脳科学
脳がお笑いを理解しておもしろいと感じるのにはほんとさまざまな要素が影響してきます。
ですから同じお笑いでもおもしろいと感じる人もいれば全然おもしろくないと感じる人がいるのも当然です。
このように笑いには個人差があり、特にその人の個性が大きく影響しています。
ここで個性の違う2人の笑いに対する脳の反応を調べた研究があります。
外向的で人とコミュニケーションをとるのが得意な人と内向的で神経質な人に参加してもらいます。
お笑い系のマンガを読んでもらいそのおもしろさを10点満点で評価してもらいます。
結果ですがお笑いへの理解度や反応する時間には両者に差はありませんでした。
つまり2人とも少なくとも外観上はお笑いを同じように理解して楽しんでいるのです。
ところが2人の脳の反応には違いがありました。
お笑いを感じている時に活発に働いている脳の場所はぜんぜん違っていたのです。
笑いの秘密-その1
一見すると同じようにお笑いを楽しんでいるように見えても実は性格によってお笑いに対する脳の反応の仕方は人それぞれなのです。
笑いは脳の中で右の脳の前頭前野という部分が深くかかわっていることはわかっています。
しかし実際にはそのほかにも扁桃体や中脳などさまざまな部分が関わっています。
ですから外見上は笑っていても脳の中でそのお笑いをどのように感じとりどのように処理しているのかはバラバラなのです。
このようにさまざまな脳の反応があってもお笑いはわれわれに共通の笑顔を届けてくれます。
そう考えるとお笑いはなんとも奥深いものだと改めて感慨深くなります。
メタファーはお笑いの秘技
お笑いをわれわれに届けてくれるのは基本的には“言葉”です。
お笑い芸人たちはその言葉を巧みにあやつってわれわれの脳を刺激してきます。
笑いの秘密-その2
基本的に言葉によるコミュニケーションの主導権は言葉を受ける側にあります。
たとえばお店で買い物をしていて店員から商品を勧められた時に買うか買わないかを決めるのは受け手である消費者です。
恋人に告白してそれを受け入れるか断るかを決めるのは受け手である告白された側です。
つまり言葉を投げかけてもそれをどのように受け止めるのかは言葉を投げかけられた相手側にあるのです。
主導権は言葉を投げかけた側ではなく言葉を受けた側にあるということです。
お笑いでもいくらおもしろいことを言ってもそれを聞いている側がおもしろいと思わなければ笑ってはもらえません。
笑いの秘密-その3
お笑い芸人はこの普遍的な原則を崩して言葉をぶつけてくるのでわれわれの脳はたまらずあっという間に刺激されて笑ってしまうのです。
つまり言葉を受ける側ではなく言葉を投げかけた側が主導権を握っている状態です。
この魔法のような言葉の主導権を逆転する技の1つに“メタファー“の活用があります。
メタファーとは簡単に言ってしまうと“たとえ”です。
1つは直喩(ちょくゆ)と呼ばれる方法です。
”人生は旅のようなものである”
人生を旅にたとえてそれをきちんと言葉で“~のような”と表現しています。
もう1つは隠喩(いんゆ)と呼ばれる方法です。
”人生は旅である”
これも人生を旅にたとえていますがたとえをしめす表現が含まれていません。
メタファーの効果-その1
実際に人生は旅ではないので相手に“きっと人生は旅のようなもの”と言いたいのだろうなあと想像してもらわないといけません。
相手にとってはひと手間かかりますがこれが脳には効果的なのです。
“人生は旅のようなもの”と言われるよりも“人生は旅だ”と言われた方が相手の脳をより活性化させるのです。
多くのヒトの脳で言葉を理解するのは主に左の脳とされています。
左の脳には言語野という部分があってここで言葉を理解しています。
“人生は旅のようなもの”という言葉を聞くと言語野が働いて言葉を理解して終了です。
“人生は旅だ”という言葉を聞くと当然言語野が働いて言葉を理解します。
言語野に加えてそのほかの脳の広い範囲も連動して活発に働くのです。
脳が活発に働くのは言語野のある左の脳にとどまらず右の脳も活発に働き始めます。
メタファーの効果-その2
メタファーを理解するということはただその言葉を理解するだけでなくその前後の文脈からも言葉を理解して裏の意味を推測するという作業が必要になってきます。
脳の単純作業ではなく脳全体を使った高次機能が必要となってくるのです。
つまりメタファーを活用することで相手の脳のさまざまな部分を刺激して“人生は旅”とはどういうことなのだろうと相手の脳を激しく働かせることができるのです。
しかしこのちょっとした技を使うだけで言葉の主導権を自分に持ってくることが可能なのです。
メタファーの効果-その3
メタファーは“受け手が主導”のコミュニケーションを“送り手が主導”に逆転することができる必技なのです。
きっとメタファーがあらゆるところに散りばめられていることでしょう。
知らず知らずのうちにあなたの脳はメタファーの効果で刺激されまくっているのです。
そう考えるとお笑いはますます奥深いものだとさらに感慨深くなっていきます。
あなたもメタファーの効果を利用してぜひ笑いのセンスを磨き上げてみてはいかがでしょうか?
お笑いについてもっといっぱい学びたい!そんな人には以下の本がぜひお勧めですよ。
”笑いの脳科学”のまとめ
笑いのセンスを磨くために必要なメタファーの効果について脳科学的に解明してみました。
今回のまとめ
- 笑いは文化遺産です。
- そんな笑いを自由自在にあやつるお笑い芸人のしゃべりはまさに神業です。
- 笑いには個人差がありその人の個性が大きく影響しています。
- それでもお笑いはわれわれに共通の笑顔を届けてくれます。
- お笑い芸人はメタファーを活用してわれわれを笑いの渦に巻き込んでいきます。
- メタファーは受け手が主導のコミュニケーションを送り手が主導に逆転することができる必技です。
- あなたもメタファーの効果を利用して笑いのセンスを磨いてみてはいかがですか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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