日常の脳科学 脳を科学する

絵本を子供に読み聞かせる効果ってなに?~絵本を脳科学で探る

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絵本を子供に読み聞かせる効果って何なんでしょう?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い手術、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • 絵本が脳に及ぼす影響について脳科学で説き明かします。

 

絵本の読み聞かせが脳に効果科的な理由

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絵本の脳科学

  • 子供に絵本を読み聞かせることで読解力や学力を向上させひいては推論力や他人を思いやる能力まで身につきます。
  • しかし脳科学的な難しい絵本の効果などに捕らわれることなく絵本を読み聞かせること自体を楽しんでください。
  • 絵本は大人になっても影響を及ぼすような自分の人生を映し出すまさに鏡のような存在です。
  • 絵本はヒトが生まれながらに持っているプレ知識を存分に盛り込んでいて普遍的な魅力があります。
  • ですから子供に気楽に絵本を読み聞かせてあげてみてください。

絵本の脳科学

子供への早期教育の方法の1つとして絵本の読み聞かせが有効とされています。

 

皆さんの中にも子供のころ絵本を読み聞かせてもらった記憶がある人も少なくないはずです。

 

絵本の脳科学-その1

絵本の読み聞かせが重要とされる理由にはさまざまありますがそのうちの1つは後の読書習慣につながりそれが読解力ひいては学力全般に影響を与えるというものです。

 

“読書の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

 

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読解力は国語のみならず数学や理科など他の教科の学力にも影響する学力の基礎となります。

 

絵本の脳科学-その2

脳科学的に見た絵本の読み聞かせの効果は次に2点にあります。

① 子供の識字能力獲得以前の語彙力の発達

② 子供の識字能力獲得以後の読書習慣の定着と読解力および学力の向上

 

へなお
なんとも難しい感じがしますよね。

 

では実際に子供のころに絵本を読み聞かせていると本当に将来の学力向上に繋がるのでしょうか?

 

子供が識字能力を獲得する…つまり字を読めるようになるのは5-7歳くらいが一般的です。

 

字が読めなければ当然ですが本を読むことはできませんし読解力を身につけることもできません。

 

そのため絵本を読み聞かせてあげる必要があるのです。

 

読解力はこの5-7歳までの期間にどれくらい読み聞かせの機会があったかに左右されます。

 

平均的な5歳児が獲得する語彙は約1万語と言われています。

 

その主な獲得源のひとつが読み聞かせです。

 

日常の会話からは学ぶことのできない多くの言葉や文法や言い回しを読み聞かせで学ぶことができます。

 

ですから読み聞かせをたくさんしてもらった子供はそうでない子供と比べて本特有の言い回しを多く習得することができます。

 

生後6か月ころには脳の視覚システムが完全に機能するようになるので絵に対する理解力が向上します。

 

生後18か月ころには絵やモノには名前があることが分かるようになります。

 

絵本の脳科学-その3

幼い脳は絵からの視覚システムと名前から認知システム及び言語システムから情報を結合させるのです。

絵本の読み聞かせは視覚システム、認知システム、言語システムなどのさまざまな脳のシステムを向上させて言語の習得に効果的なのです。

 

読み聞かせをするのとしないのとでは5歳になるまでに単語数としては3200万語もの差がつくとも言われています。

 

また読み聞かせをすることで物語のシナリオを推論する能力が身に着いたり他人の感情を理解する能力が身についたりもします。

 

このように絵本の読み聞かせにはさまざまな可能性が秘められているのです。

 

へなお
何げなく絵本を開いて読み聞かせるだけでもこんなにも効果があるのであればやらない手はないですよね。

 

絵本は来歴を映し出す鏡

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へなお
ここまではちょっと堅い話でしたね。

 

へなじんさん
絵本の読み聞かせにここまでの効果と影響があるとは思ってもみなかった…

 

なんて声が聞こえてきそうです。

 

へなお
ここからはちょっとくだけた話です。

 

皆さんは「絵本」という存在に対してどんな感情を持っていますか?

 

絵本の脳科学-その4

もし絵本に対してそこはかとなく心温まるものを感じるとしたらそれはきっと幼かったころに絵本を通じてあふれんばかりの愛情が注がれたであろう証(あかし)です。

 

子供のころに絵本を読み聞かせてもらっていた子供は脳の前頭葉という部分が強く活動していることが知られています。

 

子供は他人とのコミュニケーションが多ければ多いほど脳は強く活性化します。

 

ここでいうコミュニケーションとは言葉のやりとりに限りません。

 

「指で差す」や「見つめ合う」などの言語以外のやりとりも含まれます。

 

また絵本を読み聞かせれば聞かせるほど大人も子供に対する愛情が高まります。

 

つまり絵本は大人と子供が心の波長を共鳴させる舞台なのです。

 

そんな絵本の記憶は脳の中にしっかりと刻み込まれています。

 

ですから絵本は自分が育んできた歴史を映し出す鏡と言えるのです。

 

しかし多くの人は子供のころに絵本を読んでもらった記憶は何となくあってもはっきりとは覚えていませんよね。

 

特にお気に入りの絵本があれば別ですがそうでなければどんな絵本を誰に読んでもらったなどはすっかり忘れてしまっていますよね。

 

しかし脳には絵本の読み聞かせの記憶がちゃんと残っています。

これはどういうことなのかを探ってみましょう。

 

この謎が解ければ「絵本は来歴を映し出す鏡」の意味がもっと理解していただけるでしょう。

 

絵本の潜在的効果を探る

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絵本の記憶はふわふわとしたどこかとらえどころのない不思議な存在です。

 

長い人生において生まれてからのほんの数年間に人生で触れるであろう絵本の大半に接します。

 

絵本は仮想世界との接点であり大人になっても脳の中のどこかで自分を映し出す鏡として生きています。

 

へなお
皆さんは「ローレンツ刷り込み」を聞いたことがあるでしょうか?

 

ローレンツ刷り込みは脳内プログラムの1つである物事がごく短時間で覚え込まれ長時間持続するという現象です。

 

動物で例えれば卵からかえったばかりのヒナは最初に目に入ったものを親だと信じ込んで追いかけまわします。

 

ヒトではここまでの強烈な原体験の焼きつけはなかなかありませんが似たような現象は知らず知らずのうちに起きています。

 

たとえばハイハイのできるようになった10か月くらいの赤ちゃんに黄色い車のおもちゃを見せておもちゃに近づいてきたらミルクを飲ませてあげます。

 

これを何度も繰り返すと赤ちゃんはおもちゃに近づけばミルクがもらえることに気づきます。

 

すると最初は黄色い車のおもちゃに興味を示さなくてもそのうち何度も黄色い車に近づくようになります。

 

知らず知らずのうちに黄色い車を好きになるのです。

 

これは「快の転移」と呼ばれる現象です。

 

本来黄色い車のおもちゃそのものには価値はなかったはずです。

 

しかしミルクという脳にとっては快楽の信号が引き金となって黄色い車のおもちゃへの行為が生まれます。

 

“快楽の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

 

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おもしろいことに黄色い車のおもちゃが引き起こす効果はそれだけではありません。

 

「汎化」と呼ばれる現象も引き起こします。

 

汎化とは黄色い車のおもちゃによってこのおもちゃだけではなく他の黄色い車も好きになるのです。

 

それどころか黄色いもの全般が好きになるのです。

 

このようにして幼いころに植え付けられた「嗜好」はその後も脳に残り続けます。

 

小学生の被る黄色い帽子が好きだったり黄色の鮮やかなひまわりが好きだったり酸っぱい黄色のレモンが好きだったり黄色いに色づいたイチョウの葉が好きだったりさまざまですが大人になっても何となく黄色に惹かれる…なんて影響を残します。

 

しかし本人に「なぜそんなに黄色が好きなの?」と聞いてもなかなかうまく答えられません。

 

1歳になる前の記憶は意識の上には表れません。

 

へなお
まさか黄色い車のおもちゃがそんな影響を及ぼしているなんて夢にも思わないでしょう…

 

自分でもはっきりと理由を説明できないのにただなんとなく好みの色が黄色なのです。

 

絵本の脳科学-その5

絵本はまさに潜在的な親近感の結晶のようなものです。

 

大人になっても絵本を好む人は決して少なくはありません。

 

子供に読み聞かせるのではなく自分で絵本を楽しみ心温まる感情が湧きたつ人はきっと子供のころに絵本を通じて脳が快感で満たされるような素敵な体験をしてきたに違いありません。

 

うまくは表現しきれず実態に迫ろうとすると手の中で溶けて消えていってしまいそうな…そんなデリケートな淡い体験です。

 

そんな人は心も脳も豊かであるに決まっています。

 

絵本は今まで生きてきた自分の歴史である来歴を映し出すまさに鏡です。

 

ですから絵本を読み聞かす効果をあれやこれやと考える前に絵本自体を楽しむことをまずは第一に考えてみてください。

 

プレ知識を呼び覚ます絵本の魅力

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絵本には潜在的な親近感の他にもう1つ脳に影響を及ぼす大きな効果があります。

 

それは「プレ知識」です。

 

プレ知識とはこの世に生まれる前から存在する記憶のことです。

 

たとえば脳には誰かから教えられなくてもある特定の傾向が生まれながらにして備わっています。

 

たとえば赤ちゃんは甘いものが大好きです。

 

これは世界のどの文化のどの民族でも同じです。

 

赤ちゃんのデフォルトの嗜好は万国共通です。

 

甘いものだけではありません。

 

赤ちゃんは温かいもの、ふわふわしたもの、丸いもの、赤みがかったもの…こうしたものを赤ちゃんは誰からか教えられることなく好みます。

 

へなお
これがプレ知識です。

 

絵本には長く愛され続けている名作が普通の本以上にたくさんあります。

 

その理由は名作の絵本には脳のプレ知識にフィットするような要素が必ず含まれているからです。

 

だからこそ絵本の魅力は国境を越え民族を超え時代を超えて普遍的なのです。

 

描かれるモチーフや背景やテーマ設定はもちろんのこと登場するキャラクターまで共通性が見られます。

 

へなお
そんな視点で絵本をあらためて眺めてみるとすっかり見慣れてしまった絵本がまた新鮮に息づいて見えてくるかもしれませんね。

 

仕事や勉強や家事に追われなかなか子供とゆっくりと過ごす時間が取れない人もたくさんいると思います。

 

しかしもし空いた時間があるのであれば子供に絵本を読み聞かせてあげてみてください。

 

その時間は子供にとってかけがえのない時間となるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

“絵本の脳科学“のまとめ

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絵本を子供に読み聞かせる効果について脳科学で説き明かしてみました。

 

今回のまとめ

  • 子供に絵本を読み聞かせることで読解力や学力を向上させひいては推論力や他人を思いやる能力まで身につきます。
  • しかし脳科学的な難しい絵本の効果などに捕らわれることなく絵本を読み聞かせること自体を楽しんでください。
  • 絵本は大人になっても影響を及ぼすような自分の人生を映し出すまさに鏡のような存在です。
  • 絵本はヒトが生まれながらに持っているプレ知識を存分に盛り込んでいて普遍的な魅力があります。
  • ですから子供に気楽に絵本を読み聞かせてあげてみてください。

今回の記事がみなさんに少しでもお役に立てれば幸いです。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も『脳の病気』、『脳の治療』、『脳の科学』について現場に長年勤めた脳神経外科医の視点で皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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