じゃんけんで勝つための必勝法って何でしょう?
じゃんけんの勝率を上げるにはどうすればよいのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い手術、血管内治療、放射線治療を中心に勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- じゃんけんで勝つための必勝法、勝率を上げる方法、そしてじゃんけんの心理をわかりやすく脳科学で説き明かします。
じゃんけんで勝つための心理学
じゃんけんの脳科学
- じゃんけんで勝つ確率を脳科学的に上げることは可能です。
- じゃんけんの勝負は脳のゆらぎに支配されています。
- じゃんけんに勝つだけが真の勝者ではありません。
じゃんけんとは
じゃんけんは公平にそして迅速に勝ち負けを決めることのできる極めて優れた方法です。
グー、キョキ、パーのいずれかをいかにして出すかの心理戦です。
そしていかにしてじゃんけんでの勝率を上げるかはおおかたの結論が出ています。
人がじゃんけんをした場合に手の出し方はグー、キョキ、パーそれぞれ1/3とはなりません。
最も多いのはグー、次はパー、最も少ないのはチョキとなりその出しかたにはバラツキがあります。
その理由は簡単でグーは出しやすく、チョキが出しにくい、だからパーを出せば勝ちやすいという人間の心理が働いています。
じゃんけんで勝つ方法
じゃんけんの勝率を上げるには相手が前回に出した「手」を覚えておき、次回はその手に「負ける手」を出します。
つまり1回目に相手がグーなら、2回目はグーに負けるチョキを出します。
これを繰り返すとかなりの確率で勝てます。
つまり一度グーを出したら次に続けてグーを出す確率は低く、パーかチョキを出す可能性が高いと考えられます。
したがってチョキを出せば勝つか引き分けになるわけです。
じゃんけんで負けない方法
じゃんけんで勝つというより負けない法則は、最初はパーを出して2回目以降は前の回に相手が出した手に負ける手を出していくのが基本です。
これがよく言われるじゃんけんの勝率をあげる法則です。
なんてことはありませんから安心してください。
ここからが本題です。
いかに最初にチョキを出す人が少ないとはいえチョキを出す人はいます。
じゃんけんをする時に脳はどのように働いているのでしょうか。
脳は常に動き続けている
じゃんけんをした時に、
と質問すると,
という人もいると思いますが、
という人の方が多いのではないでしょうか。
なんとなくの時間にも脳は活動しているのです。
1つの有名な脳科学の実験があります。
実際に目で見た情報の違いで脳の活動は変わるのかを比較した研究です。
この研究では、
✔ ごく普通の自然の風景
✔ ランダムドットいうテレビの放送が終わった後に流れる深夜の砂嵐の画像
✔ 真っ暗な部屋に閉じこもって光がない暗闇の画像
まったく異なる3つの画像を見た時の脳の活動の違いを比較しました。
結果はほぼ同じ脳の活動が認められました。
もっとも脳の活動が低下すると予想された暗闇の画像でも脳の活動は10%程度低下する程度でした。
つまり目からはいる外からの情報はその種類は色々であっても脳のニューロン(神経細胞)は常にほぼフル活動していて変わりはないのです。
József Fiser, et al, Nature 431:573-578, 2004
車に例えて言えばエンジンはいつもかかっていてフルスロットルの状態を維持しているもののクラッチはつないでいない状態を維持していることになります。
これはただガソリンを消費していて一見非効率に思える状態ですが、脳にとってはとても大切な状態です。
もともと生物は常に食うか食われるかのサバイバル状態にさらされて進化してきました。
もし脳が常に自発活動をしていれば外敵に急に襲われてもすぐに対応できます。
敵に襲われてから脳のスイッチを入れているようでは敵に食べられてしまいます。
ですから一見無駄に思えるほどの大量のエネルギーを使ってでも脳はいつも積極的に自発活動をしているのです。
脳がずっと働き続けているのであれば寝る必要はないのではないでしょうか。
ココがポイント
脳は深い眠りに入っている時こそ最も活発にニューロンを働かせているのです。
睡眠中はほぼすべてのニューロンが一斉に活動しています。
逆に起きている時は3割程度のニューロンしか活動していません。
脳は寝ている時間にこれまでに入ってきた情報を整理してつなぎ合わせてまた新しい事態に備えているのです。
そうすることで最適な状況をつねに作り続けいています。
脳は大変な浪費をしている
脳は体重のわずか2%程度の重さしかありません。
しかし脳は全身で消費するエネルギーの20%も使っています。
成人男性が1日に2000キロカロリーを摂取しているとすると、そのうち400キロカロリーは脳で消費されています。
そのほとんどは脳の自発活動に使われています。
脳の自発活動とは実際に脳が情報や指令をいつもで発信できるように準備状態を維持する活動です。
何もしていなくてもエンジンがかかっている状態です。
これに脳のエネルギーの80%が消費されているのです。
しかし脳が自発活動を一時でも停止したらどうなるでしょう。
脳に空白の時間ができてしまうので記憶を時間軸につなぎとめることができなくなってしまいます。
つまり脳がいったん活動を完全に停止してから再起動すると過去の出来事が過去ではなく新しい出来事となってインプットされてしまい記憶の順序が混乱してしまいます。
再起動してすべてのことをちゃんと元通りに認識できる保証はありません。
ですから脳はエネルギーを浪費しても活動し続けているのです。
脳のゆらぎにわれわれは支配されている
そう聞くと、
脳の中での直感的な意思の決定をする時は、脳の中で別の強い意志を持った自分がいてその指示によって自分としては無意識的に行動を決定しているだけ。
そんな風に思っている人も多いでしょう。
心理的にはそうなのかもしれませんが、脳科学的にはそれは違います。
脳科学的な直感
脳は常に自発活動を続けていて働き続けいていてこれを『脳のゆらぎ』と言います。
脳は何もしていないときでもゆらゆらとゆらいで働き続けます。
突然の意思決定を求められた時はその時の脳のゆらぎの状態ですべてが決定されるのです。
無意識かもしれませんがゆらぎの波が強い方向に意思決定がなびいているのです。
これが脳科学的な直感です。
ですからじゃんけんで何を出すかはよほど「チョキを絶対に出すぞ」という強い意志がないような場合には、基本的に脳のゆらぎに支配されているのです。
脳のゆらぎがチョキを出すことを指示すれば無意識的にチョキを出すのです。
脳はきまぐれでゆらいでいる
それを検証した研究があります。
机とか椅子とか服などの日常にあふれた簡単な単語が書かれたカードを見せて覚えてもらいます。
数十分後に再びカードを見せた時にそのカードが先ほど見せたカードの中にあったカードかを確認するテストを行います。
研究の結果は、どんなカードを見せると正解しやすいか間違いやすいかはということは一切ありませんでした。
カードの種類に関わらずテストを行う2秒前の時点ですでに正解できるか不正解になるかは決まっているというものでした。
Leun J Otten, et al, Nat Neurosci 9:489-491, 2006
この研究ではテストの成績は集中力や記憶力の問題ではなく脳のゆらぎに影響を受けていることを示しています。
つまりテストを行う際に脳のゆらぎが激しく高波を立てていればあれば正解しやすく、ゆるやかな波の状態であれば不正解になるのです。
なかなか思い出せないものが急に思い出せるようになるのも脳のゆらぎが変化して高波になった時にふと思い出すのです。
高い波の時もあればおだやかな波の時もあります。
では脳のゆらぎは自分の意識でその波の高さを変えられるのでしょうか?
そのためには自分の脳の状態を把握しておくことが大切です。
たとえば血圧を下げたいと思っても自分が今どれくらいの血圧でそれが高いのか低いのかを把握する必要があります。
その血圧からどれくらい下げたいのかをわかっていないと漠然とただ血圧を下げたいと思っていてもどうしたらいいかわかりません。
しかし血圧を測定して血圧の数値を確認してそこから血圧を10下げることは現実的には可能です。
これをバイオフィードバックと言います。
バイオフィードバック
バイオフィードバックとは生体の情報を提示してあげることで意図的に生体の活動を自力で変えることです。
その理論からすれば究極的には常に脳のゆらぎを脳波という器械を用いて数値化して観察していれば脳のゆらぎを調整できるはずです。
脳のゆらぎが穏やかで脳の活動が低下していれば活動性を上げる訓練をすればよいのです。
それによって記憶力が上がったり学習効率のアップにもつながります。
そんな訓練が現実的に可能かは別問題として理屈としては可能です。
気まぐれな脳のゆらぎがじゃんけんの勝負を決める
一方でコンピューターにゆらぎはありません。
AIにじゃんけんのデータをいれて勝負すれば限りなく勝率は高くなるでしょう。
ゆらぎによる気まぐれがないので常に勝つことにこだわるはずです。
しかし人は違います。
ココがポイント
じゃんけんに限らず解答として正解なことをしているだけがいつも正しいとは限りません。
あえて今は正解ではない選択をしても将来的にはそれが正解だったなんて選択もあります。
脳のゆらぎは常に正解を求めるのだけでなくファジーな感覚も持ち合わせています。
ココがポイント
確実に正解なものを常に選択するのではなく、ふと違う選択をしてみたくなる不確実性を内発的に生み出すのも脳のゆらぎの仕業なのです。
人間がそのほかの動物と大きく違うのは、原始的本能的な行動欲求を高度で知的な学習能力が上回りそれを支配していることにあります。
このバランスをうまく整えているのが脳のゆらぎなのです。
脳のゆらぎが人間らしい理性や健全な社会性を構築して人間らしさを築き上げているのです。
究極的には『じゃんけんで勝つことが真の勝者なのか?』ということになってきます。
じゃんけんの勝負を決めるのはじゃんけんの理屈や心理的な要素です。
ですからじゃんけんの勝率を上げることはいくらでも可能です。
しかしそれだけが勝負ではありませんし、勝負の行方は脳のゆらぎに支配されているにすぎません。
そんな人はこちらの本を参照してみてください。
”じゃんけんの脳科学”のまとめ
じゃんけんで勝つための必勝法、勝率を上げる方法、そしてじゃんけんの心理をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- じゃんけんで勝つ確率を脳科学的に上げることは可能です。
- じゃんけんの勝負は脳のゆらぎに支配されています。
- じゃんけんに勝つだけが真の勝者ではありません。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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