なぜアウフグースやブロワーの熱波を浴びた瞬間、特定の場所だけ「もげるような激痛」が走るのでしょうか?
100℃近い高温環境で、私たちの繊細な「脳」は本当に茹で上がらずに無事なのでしょうか?
男女で熱さを感じる部位に違いはあるのか、そして「痛みを防ぐ医学的な対策」はあるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
サウナの熱波が身体と脳に与える「痛烈な真実」を脳科学で説き明かします。
脳神経外科医が解き明かす、熱波の衝撃と「脳」の真実

サウナの熱波が身体と脳に与える「痛烈な真実」
- 弱点部位の正体:乳首や耳、脇の下は皮膚が薄く、熱センサー(TRPV1)が密集しているため激痛が走る。
- 自律神経の警告:耳と脇の下は血管と神経のハブ。熱波による刺激は自律神経をパニックにさせる。
- 神経のVIP待遇:乳首は脳への直通回線。感度が高すぎて、熱波を「痛み」として過剰に処理してしまう。
- 性別を超えた痛み:男女問わず、皮膚の薄い部位は熱波に対して等しく脆弱である。
- 脳の水冷システム:強力な血流と脳脊髄液が脳を熱から守っている。
- BDNFの恩恵:適度なサウナ刺激は、脳の肥料(BDNF)を増やし、メンタルや認知機能を向上させる。
- サウナハットの医学的意義:頭部の過熱を防ぎ、脳の熱暴走(のぼせ)を回避するための必須デバイス。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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しかし、最近のサウナシーンは「ととのい」を求めるあまり、時に過激な方向へ進化しています。
そう、「熱波(アウフグース)」や「強力ブロワー」による爆風です。
熱波師がタオルを振り回し、あるいは工事現場で見かけるようなブロワーから放たれる熱風は、まさに「灼熱の暴力」。
その瞬間、私たちは心の中でこう叫びます。

全体としては気持ちいいはずなのに、なぜ特定の部位だけがこれほどまでに悲鳴を上げるのでしょうか?
そして、そのとき私たちの「脳」の中では一体何が起きているのでしょうか?

なぜそこだけ激痛!?熱波に狙われる「身体の弱点」を解剖する

サウナ室で熱波を浴びた際、多くの人が「乳首」「耳」「脇の下」に刺すような痛みを感じます。
脳神経外科医として、まずお伝えしたいのは、これはあなたの気のせいでも、あなたが根性なしなわけでもないということです。
これらの部位が痛む最大の理由は、「皮膚の薄さ」と「感覚受容器の密度」にあります。
人間の皮膚は場所によって厚さが全く異なります。
背中や太ももの皮膚は分厚い装甲のように熱を遮断してくれますが、乳首や耳の皮膚は極めて薄く、いわば「防御力ゼロ」の軽装備状態です。
そこに100℃近い熱風が直撃すれば、熱エネルギーは一瞬で皮下の神経に到達します。
さらに、これらの部位には「痛み」や「熱」を感知するセンサーである「TRPV1(トリップ・ブイワン)」という受容体がこれでもかと密集しています。
このセンサーは43℃以上でスイッチが入るのですが、熱波の刺激はこれらを一斉に、かつ過剰に起動させます。
脳には「熱い」という情報よりも先に「破壊される!痛い!」という緊急信号が送られるため、私たちは「アチチ」ではなく「イタタ!」と叫ぶことになるのです。
脇の下と耳のミステリー:毛細血管と自律神経の防衛本能

次に「脇の下」や「耳」について深掘りしましょう。
脇の下は、医学的に見ても非常に特殊な場所です。
太い血管(腋窩動脈など)や神経の束が表面に近い場所を通っており、身体の「温度センサー」としての役割が非常に強い部位です。
自律神経は、脇の下の温度変化を敏感に察知して、全身の発汗をコントロールしようとします。
そのため、ここに強烈な熱波が当たると、自律神経が「オーバーヒートの危機だ!」とパニックを起こし、脳に強烈な警告(痛み)を発するのです。
一方、耳はさらに過酷です。
耳はほとんどが軟骨と薄い皮膚で構成されており、熱を逃がすための「肉(筋肉や脂肪)」がほとんどありません。
つまり、一度熱を吸収してしまうと、冷めにくい構造なのです。
アウフグースの後半、耳が「ちぎれるほど痛い」と感じるのは、血流による冷却が追いつかず、組織が物理的に熱ダメージを受けそうになっているサインです。
脳神経外科の手術でも、顕微鏡下で神経を扱う際は乾燥や熱に細心の注意を払いますが、サウナ室での耳は、まさに剥き出しの神経のような状態なのです。
乳首がもげる!?熱波で真っ先に悲鳴を上げる「最弱にして最強のセンサー」の悲劇

さて、耳や脇の痛みも相当なものですが、熱波を浴びたサウナーが最も恐れ、そして最も「無防備」な場所……それこそが「乳首(ちくび)」です。
強力なブロワーの風が当たった瞬間、

と確信した経験はありませんか?
時には「皮がむける」という、文字通り身を削るような思いをすることさえあります。
なぜ、私たちの乳首はこれほどまでに熱波に対して無力なのでしょうか。
脳への直通回線!「感度全振り」の神経密度
乳首は、生物学的に「授乳」や「生殖」に関わる重要なコミュニケーションツールです。
そのため、皮膚の感覚受容器(センサー)の密度が、背中や腕とは比較にならないほど「異常に高い」のです。
脳科学的に言えば、脳の感覚野(体の各部位からの刺激を感じ取る場所)において、乳首は非常に大きな面積を占めています。
つまり、乳首への刺激は脳にとって「超重要ニュース」として扱われます。
熱波が当たると、脳内では「乳首緊急事態宣言」が発令され、他の感覚をすべてシャットアウトして「痛い!」という信号を爆音で鳴り響かせるのです。
「断熱材ゼロ」のむき出し構造
乳首の皮膚は驚くほど薄く、さらにその直下には脂肪層(断熱材)がほとんどありません。
脳神経外科の手術でも、細い神経を扱う際は乾燥や熱に細心の注意を払いますが、乳首はまさに「むき出しの精密神経」。
しかも、乳首は体表面からポコッと「突起」していますよね。
熱力学的に見ると、突起物は表面積が大きく、対流熱(風による熱伝導)の影響を最も受けやすい形状をしています。
熱波師がタオルを振るたびに、乳首は熱エネルギーを効率よく、かつ徹底的に吸収してしまうのです。
タンパク質が「ゆで卵」になる?皮むけの恐怖
「皮がむける」というのは、医学的には「熱凝固(ねつぎょうこ)」の一種です。
私たちの皮膚はタンパク質でできていますが、乳首のような薄い組織に100℃近い熱風が当たると、組織内のタンパク質が変性し始めます。
生卵が熱で固まってゆで卵になるのと同じ現象が、あなたの乳首の表面で起きているのです。
「乳首がととのう」なんて悠長なことは言っていられません。
これは脳が「組織が破壊されるぞ!」と全力で警告を出している証拠です。
結論:乳首は「タオルで隠す」のが脳科学的にも正解
乳首の痛みを根性で耐えても、脳にBDNF(脳由来神経栄養因子)が増えるどころか、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰分泌されてしまいます。

それは恥ずかしがっているのではなく、「脳に届く過剰なアラートを物理的にフィルタリングしている」という、極めて知的な防御行動なのです。
女性のサウナ事情:熱波に対する感受性に性差はあるのか?

ここで一つ、興味深い疑問が浮かびます。
「女性も男性と同じように乳首や耳が痛いのか?」という点です。
結論から言えば、女性も、あるいは女性の方がより熱波の痛みを感じやすい可能性があります。
皮膚の構造自体に大きな男女差はありませんが、女性の身体はホルモンバランスの影響で、皮膚の水分量や血流の動態が繊細に変化します。
特に乳房周辺は血管が非常に豊富であり、熱伝導率が高いため、熱波による温度上昇をダイレクトに感じやすい傾向にあります。
また、女性の方が「冷え」に敏感なのと同様に、急激な温度変化に対しても自律神経が鋭敏に反応することが多いのです。
したがって、女性専用サウナであってもアウフグースが行われる際は、男性と同様に(あるいはそれ以上に)「弱点部位」を保護することが重要になります。
サウナ施設で女性がタオルを胸元までしっかり巻いているのは、恥じらいだけでなく、実は「医学的に理にかなった防衛策」でもあるわけです。
脳神経外科医が教える「サウナ中の脳」:100℃の部屋で脳は大丈夫?

さて、ここからが私の専門領域、脳のお話です。
サウナ室の温度が100℃に達しているとき、私たちの脳はどうなっているのでしょうか?
「脳が茹で上がってバカになったらどうしよう」と心配する方もいるかもしれませんが、ご安心ください。
人間には、脳を死守するための驚異的な「水冷システム」が備わっています。
脳は常に、全血液の約15〜20%を独占して受け取っています。
サウナに入ると、心拍数が上がり、脳への血流も一時的に増加します。
この勢いよく流れる血液が、頭部の熱を奪って体幹へと運び去る「冷却水」の役割を果たしているのです。
また、脳は「脳脊髄液」という液体に浸かっており、これが物理的なクッション兼、温度のバッファー(緩衝材)として機能します。
しかし、注意も必要です。脳には良い点と悪い点の両面があります。
脳にとっての良い点:脳の肥料がドバドバ出る!
サウナによる熱刺激は、脳内で「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質の分泌を促します。
これは言わば「脳の肥料」です。
神経細胞の成長や修復を助け、記憶力を高めたり、うつ症状を改善したりする効果が期待されています。
脳にとっての悪い点:過剰な熱は細胞を疲れさせる
一方で、頭部が熱せられすぎると、脳の神経細胞内のタンパク質がストレスを感じ始めます。
これが「のぼせ」の正体です。
過度なのぼせは、脳内の細い血管を拡張させすぎ、脳浮腫(軽いむくみ)のような状態を引き起こすこともあります。
そうなると、ととのうどころか、ひどい頭痛や倦怠感に襲われることになります。
結論、サウナハットは「脳のエアコン」である

脳科学的な視点から言えば、サウナ室で最も守るべきは「頭部」です。
サウナは上に行くほど温度が高いため、座っている状態では足元よりも頭の方が圧倒的に高温にさらされます。
これは脳にとって、冷却システムがフル稼働し続けなければならない過酷な状況です。
そこで登場するのが、今やサウナーの必須アイテムとなった「サウナハット」です。
“サウナハットの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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参考【サウナの脳科学】サウナハットは必要なのか?それともお飾りなのか?サウナハットの効果を脳科学で探る
サウナに入る時にかぶるサウナハットは必要なのでしょうか? それともただのお飾りなのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは ...
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脳神経外科医として断言しますが、サウナハットは単なるファッションではなく、脳という超高性能コンピュータを熱暴走から守るための「サーバー室のエアコン」のようなものです。
ウールやフェルトの断熱性能によって頭部の温度上昇を緩やかにすることで、のぼせを防ぎ、脳が「快適なストレス(適度な熱刺激)」だけを受け取れるように調整してくれるのです。
頭部を保護し、足元を温める工夫(胡坐をかくなど)をすることで、全身の血流が均等になり、脳への負担を最小限に抑えつつ、最高級の「ととのい」を引き出すことが可能になります。


まとめ:熱波を制する者は、脳と身体の対話を知る者

熱波を浴びたときの痛みは、身体が発する「防衛反応」です。
脳神経外科医の立場からすれば、その痛みを楽しめるのも健康な証拠ではありますが、無理は禁物。
自分の身体の「弱点」を理解し、適切にガードすることこそが、知的なサウナの楽しみ方と言えるでしょう。
次回のサウナで熱波師がタオルを構えたら、「さあ、私のC触覚繊維とTRPV1がどう反応するか観察してやろう」と冷静に(心の中で)微笑んでみてください。
そして、痛いときは迷わず耳を隠し、乳首を守りましょう。
それが、あなたの脳を最高に「ととのわせる」ための最短ルートなのです。
今回のまとめ
- 弱点部位の正体:乳首や耳、脇の下は皮膚が薄く、熱センサー(TRPV1)が密集しているため激痛が走る。
- 自律神経の警告:耳と脇の下は血管と神経のハブ。熱波による刺激は自律神経をパニックにさせる。
- 神経のVIP待遇:乳首は脳への直通回線。感度が高すぎて、熱波を「痛み」として過剰に処理してしまう。
- 性別を超えた痛み:男女問わず、皮膚の薄い部位は熱波に対して等しく脆弱である。
- 脳の水冷システム:強力な血流と脳脊髄液が脳を熱から守っている。
- BDNFの恩恵:適度なサウナ刺激は、脳の肥料(BDNF)を増やし、メンタルや認知機能を向上させる。
- サウナハットの医学的意義:頭部の過熱を防ぎ、脳の熱暴走(のぼせ)を回避するための必須デバイス。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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