ストレスに満ちた自粛しながらの生活の中で自己責任ってどんな意味があるの?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、主に一般の方に向けて脳の病気、治療から脳の科学まで幅広くわかりやすく解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- ストレスに満ちた自粛生活における自己責任の意味を脳科学で説き明かします。
自粛生活に求められる自己責任
自己責任の脳科学
- ストレスに満ちた自粛生活では自分の行動に自己責任が求められます。
- 自己責任を果たすための自由意志を人は持っていません。
- しかし自己責任を果たすための自由否定を人は持っています。
- 今までの自由な判断ではなく一度立ち止まって脳に反抗して行動してみましょう。
自粛ばかりでストレスがたまっちゃいます…
何かにつけては自己責任ですからね。
多くの方がそんな風に思っているのではないでしょうか。
そもそも自粛とはどういう意味でしょう。
自粛:自分から進んで行動や態度をつつしむこと。
引用元:広辞苑
自粛とは他人からどうこう言われるのではなく最終的には自分で判断して大人しくしていなさいよということになります。
ですからすべては個人の自己判断にゆだねられているわけです。
そして、
自己責任
自己判断によってとられた行動の責任をとるのは自分であり、自分の行動でなにか過失があればそれはあなたの責任ですよというのが自己責任です。
こう言われると、
ということになります。
しかし人はいつでも自由でありたいという願望を持った生き物です。
まさか自分には“自由意志がない”などいうことは、とてもじゃないけど認めたくないものです。
そんな強い願望から、
現実からそっと目を背けて、自分の欲求や希望だけで行動してしまいがちです。
自己責任って言いますが自由意志で決めたことに責任なんてとれるのでしょうか?
そこで今回はストレスに満ちた自粛生活においてよく言われる自己責任について脳科学的に考えてみようと思います。
自己責任のための自由意志を人は持っていない
自己責任
自己責任は自分で自由に考えて決定した行動に関しては過失があった場合には自分で責任を取りなさいよというものです。
そんな考えのもとで生まれた発想です。
しかし現実的には自己責任なんてなかなかとれないことの方が多いはずです。
自分の軽率な行動がさまざまな人に迷惑をかけてしまった、大きな損害を与えてしまった、それに対してどうやって責任を取るのでしょう。
責任を取るというよりは社会的な制裁が加えられるくらいでしょう。
そうならないためには責任ある行動をとる必要があります。
人が行動を起こすときには無意識的な行動もありますがたいていは意識して色々と考えて最終決断を下しています。
多くの人はそう考えますよね。
簡単な行動で“手を動かす”という動作です。
手を動かすには4つの作業が必要です。
手を動かそうとする意思
手を動かすための脳の準備
手を動かすための脳からの指令
実際に手が動いた感覚
普通に考えるとこの順番で信号が送られていくと考えますよね。
実際は、
手を動かすための脳の準備
手を動かそうとする意思
手を動かすための脳からの指令
実際に手が動いた感覚
脳の準備が意思よりも早く動き始めているのです。
この準備は実際には手を動かそうとする意思の7秒前に準備は始まっています。
自分が手を動かそうと思った時にはもうすでに脳はそのための準備を始めているのです。
自由意志-その1
自分で考えて意識してとったつもりの行動でも、すべての行動は脳であらかじめ決まっていてただ決められた通りに振る舞っているだけなのです。
人の行動は無意識的に脳の自動プロセスを経て自動的に決定されているのです。
それでは脳はどうやって行動の決定を行っているのでしょう。
自由意志-その2
今まで生きてきた環境やその中で受けた刺激、そこから生まれた普段の習慣などの影響を受けた脳はそれらによってできた”ゆらぎ”によってさまざまな決定を行っています。
その時々によって脳の活動電位は大きく異なります。
活発に動いている時もあれば穏やか時もあります。
脳の活動は波のようにゆらいでいます。
ですから同じことを決めるのでも脳のゆらぎの程度で結果は変わってきます。
脳のゆらぎの詳しい説明に関してはこちらの記事(じゃんけんで勝つ確率をあげられる?じゃんけんを脳科学で説く)を参照してみてください。
自由意志-その3
自分で自由に考えたつもりでいてもそれはあくまでも自分の意識の上だけであって、実際には脳からの指令に操られているに過ぎないのです。
自己責任のための自由は実は自由否定にある
自分の生きてきた環境やさまざまな刺激が脳のゆらぎのパターンを決定してくれている。
だからこそ人の行動は完全なランダムではなくて場面や状況が似ていれば、毎回だいたい同じ行動を取ることができるのです。
自分は自由意志のもと自分で決めたつもりになっているかもしれません。
しかし実は脳のゆらぎによってたいていのことは決定されて自分はただそれに従っているだけなのです。
色々と考えたつもりでも自分の行動は自動的にすでに決まっているのです。
その方が楽だし、効率が良いし、現状に差し障りがなくて本人が満足ならばなんの問題もありません。
でもそれってなんか悲しくないですか?
自分の考えには自由はないんですか?
自由とは完全とまではいかなくても、他人、条件、物など自分以外のすべてによって自分の行動や意志が制限されないことです。
そのためにも自由には3つのことが必要なんです。
自由意志-その4
自分の意図とそれによる結果が一致すること
自分の意図が結果よりも時間的に後にくること
自分の意図の他に原因となるものが見当たらないこと
自由意志を考える時普通は”自分の行動する内容を自由に決められる”とあくまでも意思は行動の前に感じるものと思われがちです。
しかし本当は逆で、
自由意志-その5
自分の行動を振り返った時にその行動が自分の思い通りであり自分の意図しない他の影響がないのであれば“ああ自分は自由だ”と自由意志を感じるものなのです。
行動の結果が伴わない限り自由意思は感じないのです。
自由否定-その1
われわれにある本当の自由は自由意志ではなく”自由否定”です。
先ほどの話で手を動かそうと思ってもすでに脳はその7秒も前に動き始めています。
ですからそれに従っていれば手は自動的に動き始めてしまいます。
自分の意志で手を動かすと言ってもそこに自由はありません。
しかしあえて”今は手を動かさない”という拒否権はまだわれわれには残されています。
自由否定-その2
人が意識的にできる残された自由は”手を動かす”というオートマティックされた自由意志の工程をかき消すことであり”手を動かさない”という自由否定なのです。
人は成長するとともに自由否定がうまくなり上達します。
たとえば子供は反射的に見たもの思ったことを口にします。
しかし数々の経験を積んできた大人は自分も同じような思いを持って口に出そうとしても、
とっさにそのように判断してその行動を止めることができます。
そこが大人と子供の自由の違いでもあります。
ある意味子供はまだ本当の自由を手に入れてないのかもしれません。
自由否定-その3
われわれにできることは自動的に脳から発生してきたアイデアを自由否定するかどうか、つまり脳の自由意志を採用するか不採用にするかという選択です。
そのような堂々巡り的な連鎖を“リカージョン”と言います。
脳が最初は手を動かすと決定したけれど最終的には動かさないという決定に変更しただけで、それさえもすべてが脳のゆらぎできまってたものにすぎない…
それがリカージョンです。
自由意志は人が今まで生きてきた環境やその中で受けた刺激、そこから生まれた習慣などの影響を受けます。
しかし自由否定はそれよりもはるかに大きな影響を受けてその決定がなされます。
自由否定という選択肢が生まれたこと自体人が生きてきた経験が影響しているのです。
自粛生活の中で個人にさまざまな決定が求められています。
出かけてもよいの?
食事に行ってもよいの?
人の行動の80%以上はおきまりの習慣に従っているとされています。
今まで無意識の自由意志に任せてきたこと、意識していても極めて自由に行動しているつもりでいたことは知らず知らずのうちに脳のゆらぎによって活動パターンが規制されてうまく回っていたにすぎないのです。
“自分で判断した”と自信満々に勘違いをして過ごしてきたにすぎないのです。
自由否定-その4
変化が求められている今の時代こそ自分の経験をもとに正しい自由否定をして今までと違った選択をして行動することが求められているのです。
自由意志のみでとった行動には責任はなかなか取れないものです。
しかし自分の意志で選択した自由否定で決めたことであれば自己責任はとれるのではないでしょうか。
脳が決めた自由意志の判断に流されるのではなく、今まで生きてきた時間の中で培ってきた経験をもとに脳のゆらぎに背いた自由否定で責任ある行動をとってみませんか。
”自己責任の脳科学”のまとめ
自粛しながらの生活の中で求められている自己責任について脳科学で説き明かしました。
今回のまとめ
- ストレスに満ちた自粛生活では自分の行動に自己責任が求められます。
- 自己責任を果たすための自由意志を人は持っていません。
- しかし自己責任を果たすための自由否定を人は持っています。
- 今までの自由な判断ではなく一度立ち止まって脳に反抗して行動してみましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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