本物と偽物の違いを見分けるのはどうしたらよいのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 本物と偽物の違いを見分けるために必要な「能力の輪」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
“ホンモノ”と“ニセモノ”の違い
「能力の輪」の脳科学
- “ホンモノ”と“ニセモノ”の知識の違いは紙一重であり、わかりやすそうでわかりにくいものです。
- 「能力の輪」の内側と外側にいるかどうかで“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いが生まれます。
- 「能力の輪」の外側の「わからない」ことを「わからない」と正直に言える人こそが“ホンモノ”なのです。
とは言っても高級ブランドの“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いではなく、人の脳の“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いです。
ある講演を聞きに行ったとしましょう。
その世界では有名な大学教授の講演で、その教授の名前は知っていましたが顔までは知りません。
講演が始まって話を聞いていても特に違和感はありませんでした。
話が終わり、「とても有意義で勉強になる講演だったなあ…」と素直に思いました。
質問の時間になり誰かが手を挙げて質問をしました。
すると演者の教授は
そう言うと一番前の席に座っていた助手と名乗る人が質問に答え始めました。
その時初めてあなたは事のカラクリに気がつきます。
実は舞台で講演していた人は教授の助手で、質問に答えた助手と名乗る人こそが教授だったのです。
長年教授の研究の手伝いをし、何度も講演を聞いていた助手にとって教授の代わりに講演を行うことはたやすいことでしょう。
研究の内容も講演で話ことも助手の脳にはすべて刻み込まれています。
しかしいざ質問をされると助手はそれに答えるだけの技量は持ち合わせていません。
代わって答えた助手と名乗る教授の話を聞いたとたん多くの聴衆はきっとピンと来たはずです。
“ニセモノ”の教授として演題に上がった助手の話よりも、助手として登場した“ホンモノ“の教授の話の方が何十倍も何百倍もわかりやすく心に響いたはずです。
脳の中の知識には2種類あります。
1つは“ホンモノの知識”。
時間をかけて脳を精一杯働かせて身につけた知識です。
そしてもう1つは“ニセモノの知識”。
時間はまったくかけず手に入れた見せかけの知識です。
”知識の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ニセモノの人はニセモノの知識をひけらかして自分の能力以上に自分自身を誇示しようとする、いわゆる“知ったかぶりの人”です。
そのような人は魅力的な声で説得力を持って話をするかもしれません。
しかしその知識にはまったく中身が伴いません。
雄弁ではあるかもしれませんが空虚な言葉でしかないのです。
“ホンモノ”と“ニセモノ”は紙一重
先ほどの話では“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いは簡単に見分けがつきそうですが、現実的には“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いを見分けるのはそう簡単ではありません。
たとえばニュース番組を見ていてアナウンサーがさまざまな分野のニュースを読み上げていきますが、アナウンサーもある意味“ニセモノ”です。
その分野では決して“ホンモノ”ではなく、ただ原稿を読んでいる役者でしかありません。
しかしアナウンサーと言うだけで多くの聴衆から敬意をはらわれています。
自分だけではとうてい太刀打ちできないような議論であっても、専門家たちの話をまとめて司会進行するだけで多額の報酬が払われています。
専門家と言っても過言ではないような深い知識を身につけて何年、何十年もあるテーマを追いかけ続けてきたジャーナリストは間違いなく“ホンモノ”です。
しかし中にはインターネットから情報を収集した程度の知識だけで多くのテーマを次から次へと短時間で記事にしていくようなジャーナリストは“ニセモノ”と言ってよいでしょう。
しかし“ホンモノ”と“ニセモノ”を見分けることはそうたやすいことではありません。
特にエンターテイナーとしての資質、いわゆるコミュニケーション能力が高い人ほど“ホンモノ”と“ニセモノ”を見分けるのは難しくなります。
“コミュニケーション能力の脳科学“についてはこちらの記事もご参照ください。
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なぜならパフォーマンスが上手な人ほど、たとえ“ニセモノ”であっても“ホンモノ”と勘違いをされて大きな成果を上げやすいと信じられているからです。
しかしこれはあくまでも勝手な思い込みにすぎません。
“ホンモノ”と“ニセモノ”の見分け方
一見難しいように思えますが、“ホンモノ”と“ニセモノ”にはちゃんとした違いがあります。
“ホンモノ”の知識を持ち合わせている人は自分が知っていることと知らないことを自分自身でよく理解しています。
一方で“ニセモノ”の知識しか持ち合わせていない人は知っていることも知らないこともすべてがごちゃ混ぜになっています。
アメリカの投資家であるウォーレン・パフェット氏は脳に刻み込まれた知識について「能力の輪」という言葉を用いています。
「能力の輪」とは…
輪の内側にあるものについては専門家のように理解している。
しかし輪の外にあるものについては理解できていない、あるいは部分的にしか理解していない。
自分の「能力の輪」がわかっていればその内側に留まっていればいいのです。
その輪がどれくらいの大きさであるかは問題ではありません。
自分がその輪の内側にいることをちゃんと理解していることこそが大切なのです。
「能力の輪」の内側にいれさえすればいつだって“ホンモノ”でいられます。
しかし無謀にも「能力の輪」から外に飛び出してしまうと途端に“ニセモノ”になってしまいます。
ですから自分の才能がどこにあって、自分の「能力の輪」がどのようなものなのかをちゃんと理解しておくことが何よりも重要なのです。
「能力の輪」から外れて自分の能力を超えたところで成功しようとしてもうまくいくはずがありません。
みじめな結果が待っているだけです。
“失敗学の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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「能力の輪」の内側と外側の能力差は何百倍、何千倍もの開きがあるものです。
みなさんも“ニセモノ”のパフォーマンスにだまされないでください。
中身のない言葉で人の気を惹(ひ)いたり、型にはまった言葉で落とし入れようとする人を“ホンモノ”の知識を持った人と混同しないことです。
“ホンモノ”の知識を持ち合わせている人は自分が知っていることと知らないことを自分自身でよく理解している…そう言いましたがその証拠に、
“ホンモノ”の知識を持った人は自分の「能力の輪」の外側のことに関しては何も発言しないか、「わからない」と正直に言うものです。
「わからない」と言うのはとても勇気のいることです。
誰しも自分の弱みや欠点を他人には見せたくないものです。
“弱みの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ですから自分が「能力の輪」の外側にいても「わからない」と言えず適当な発言をする“ニセモノ”が出てくるわけです。
「わからない」ことは「わからない」と正直に言える人…それこそが“ホンモノ”なのです。
“「能力の輪」の脳科学”のまとめ
本物と偽物の違いを見分けるために「能力の輪」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- “ホンモノ”と“ニセモノ”の知識の違いは紙一重であり、わかりやすそうでわかりにくいものです。
- 「能力の輪」の内側と外側にいるかどうかで“ホンモノ”と“ニセモノ”の違いが生まれます。
- 「能力の輪」の外側の「わからない」ことを「わからない」と正直に言える人こそが“ホンモノ”なのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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