#名前一文字変わってても気づかないだろ”って何ですか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 思い込みで始まる“#名前一文字変わってても気づかないだろ”を脳科学で解き明かします。
思い込みで始まる”#名前一文字変わってても気づかないだろ”
#名前一文字変わってても気づかないだろ
- “#名前一文字変わってても気づかないだろ”は変化盲という変化に気づかない脳の思い込みです。
- しかも選んでしまったことに気づかない選択盲の意味合いも含まれる奥深い言葉です。
- 無意識での変化盲と選択盲によって変化のない今のままの世界を脳は求めています。
- ですから思い込みをなくす方法なんて存在しないのです。
- 思い込みの効果でわれわれの世界はうまく回っているのです。
最近流行っているのが“#名前一文字変わってても気づかないだろ”
どなたか『こざとへん』拾った方おりませんか? pic.twitter.com/aDsAxSDkB1
— 阪急交通社【公式】 (@hankyu_travel) September 29, 2020
若手県 pic.twitter.com/7BUzPT0k9L
— 岩手県広聴広報課 (@pref_iwate) September 29, 2020
それは“変化盲”です。
思い込みの秘密-その1
変化盲とは変化に気づかない脳の思い込みです。
変化盲には”change blindness”というちゃんとした英語も存在するくらいちゃんとした現象です。
変化盲は言葉だけでなくさまざまな場面で起こり得る現象です。
”まさか名前の文字が入れ替わっているはずがない”
そんな暗黙の前提に縛られています。
思い込みの秘密-その2
思い込みが目の前で実際に起こった変化を感知できなくしているのです。
そう思っている人も多いかもしれません。
思い込みの秘密-その3
変化盲は思い込みで始まるので自分のミスに気づきません。
ですから自分の間違いを自覚しないのです。
思い込みをなくす方法を探るために変化盲の脳科学について考えてみましょう。
思い込みで始まる変化盲の脳科学
変化盲は脳科学で証明されています。
変化盲の研究を1つご紹介します。
2人の女性の写真を見せてどちらの女性が魅力的かを選んでもらいます。
一度写真を戻して相手が選んだのとは違う写真を“あなたが選んだ写真です”といって相手に渡します。
この時写真が入れ替わったことに気づくかを調べる実験です。
結果は80%の人が入れ替わったことに気づきませんでした。
そんな風に疑う人もいると思います。
しかし写真を色々入れ替えてもこの80%という数字はほぼ変わりませんでした。
しかもこの研究にはもっと驚くべき続きがあります。
自分が最初に選んだのとは違う女性の写真を渡されたことに気づいていない人に対して、
“どうしてあなたはこの女性を選んだのですか?”
と質問します。
ここまでくると自分の間違いに気づきそうですよね。
でも実際は違います。
“微笑んでいる笑顔が素敵だから”
“イヤリングが似合っているから”
などと手渡された写真の女性の特徴をひょうひょうと並びたてるのです。
もともと自分が最初に選んだ女性が微笑んでいなくてもイヤリングをつけていなくてもです。
自分がその女性を選んだ理由を後付けで一生懸命作り上げるのです。
なんとも奇妙に思うかもしれませんがこれは“錯誤帰属”という脳に仕組まれたちゃんとした機能の1つです。
“錯誤帰属の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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たとえばショッピングをしていて気に入った服が2つあったとします。
あなたはどちらか一方を買うお金しか持っていません。
さんざん悩んだ挙句どちらか一方を選びます。
最初は自分の買った服を気に入っていますがだんだん“言い訳”が始まります。
自分がこの服を選んだことがいかに正しかったかの正当性を探し始めます。
その服が気に入った理由を並べ立てたり買わなかった服の欠点を並べ立てたりします。
もっともらしい“言い訳”を探し出すのです。
脳は後悔を嫌います。
脳はなにかにつけてこじつけて“報酬系回路”を発火させて快楽を感じて幸福感に浸っていたいのです。
“報酬系回路の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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思い込みの秘密-その4
変化盲に関わる脳の一連の働きは”#名前一文字変わってても気づかないだろ”にも通じています。
思い込みから始まる勘違いには気づきづらくたとえ気づいても自分の正当性を並び立てる…そんな無意識での脳の働きが作用しているのです。
たとえ変わっていても変わっているはずがないという無意識の思い込みです。
これは突きつめると変わって欲しくない、今のままを維持していたいという脳の本能です。
脳は変化を嫌い現状が維持されることを好むのです。
しかも変化盲がさらに進化したものまであるのです。
思い込みの秘密-その5
変化盲の進化版は“選択盲”です。これは思い込みの究極形です。
では選択盲の脳科学についても考えてみましょう。
思い込みが進化した選択盲の脳科学
これは髪型が変わるはずがない…という思い込みによる変化盲です。
思い込みの秘密-その6
選択盲とは“選んでしまったことに気づかない”という現象です。
例えばある会議で何か意見を求められたとします。
自分としてその時は正しいと思う意見…言い換えれば正しいと思い込んでいた意見を述べたとします。
自分の選びだした意見がもっともいい意見であるという思い込みです。
その後自分の意見に反対する意見が出てきます。
そんな時は自分がなぜその意見を選択したのかはもうどうでもよくなっています。
意見の内容はどうであれとにかく自分の選択が正しいことだけを主張します。
これは“いまさら意見を変えたらかっこ悪い”といった意地や見栄などの表面的な簡単な問題ではありません。
自分の選択したものを守ることで自分という存在をなんとか保持しようとするいわば脳の本能です。
思い込みの秘密-その7
変化盲では自分の意見に対する思い込みですが選択盲では自分の意見よりもその意見を選択したことに対する思い込みです。
“自分の意見を引っ込めないものは真理より自分自身を愛している”
そんな名言があります。
こんな人は”他人から聞いた情報や意見を受け入れることは自己崩壊につながる”とさえ思っています。
誰だって気づかぬうちに選択盲になっています。
そんな発想は気づかぬうちに思い込みで選択をしているのです。
思い込みの秘密-その8
選択盲を突きつめるとその根源は変化盲と同じで“今のままがいい”という“恒常性の維持”を求める脳の本能に行きつきます。
思い込みをなくす方法なんて存在しない
今までの話から“#名前一文字変わってても気づかないだろ”を考えるとなかなか奥深い言葉です。
”名前一文字変わっても気づかいない”のは変化盲です。
思い込みの秘密-その9
もっとも奥深いなあと思うのは“気づかないだろ”の方です。
“気づかない”ではなく“気づかないだろ”なのが脳科学的には意味深です。
自分だけでなくみんなも“気づかないよね”と同意を求めて自分を正当化しているのです。
“気づかない”という自分の選択が正しいことにみんなにも賛同してほしいというのは選択盲です。
ですから“気づかない”ではなく“気づかないだろ”の方が脳には強い印象を残すのです。
思い込みの秘密-その10
変化盲、選択盲が無意識で飛び交っているからこそ平和な時間があるのです。
思い込みの効果でわれわれの世界はうまく回っているのです。
そうは言ってもどうしても思い込みをなくす方法を知りたい方はこちらをご参照ください。
“#名前一文字変わってても気づかないだろ”のまとめ
思い込みで始まる“#名前一文字変わってても気づかないだろ”を脳科学的に解明してみました。
今回のまとめ
- “#名前一文字変わってても気づかないだろ”は変化盲という変化に気づかない脳の思い込みです。
- しかも選んでしまったことに気づかない選択盲の意味合いも含まれる奥深い言葉です。
- 無意識での変化盲と選択盲によって変化のない今のままの世界を脳は求めています。
- ですから思い込みをなくす方法なんて存在しないのです。
- 思い込みの効果でわれわれの世界はうまく回っているのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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