読書すると頭が良くなるって本当なの?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 読書の効果と意味を脳科学で説き明かします。
読書はなぜ大切?
読書の脳科学
- 読書はとても大切です。
- 読書は情報や教養を習得するだけでなく自分磨きに活用してこそ意味があります。
- 読書によって得られた能力は視覚情報を高速に処理する能力をたかめ頭を良くします。
- あなたも読書して頭を良くしませんか。
「読書は大切」とよく言われますが本当なのでしょうか?
よく子供のころに「本を読みなさい!」と口うるさく言われたことのある人は少なくないのではないでしょうか。
「きっと読書は大切なんだろうなあ…」と何となく信じていませんか?
読書の効果について調べてみると色々なことが書かれています。
ストレスが解消される
創造力が磨かれる
脳が活性化する
仕事や日常のヒントをもらえる
視野が広がる
教養が磨かれる
読解力が高まる
知識が増える
ボキャブラリーが増える
メタ認知能力が高まる
英語が学習できる
中国には「書を読まねば愚人になる」という古諺(こげん)があります。
古代ローマの哲学書にも「書物なき部屋は魂なき肉体のごとし」といった記述があります。
ネット社会の現代においては読書をしなくてもインターネットを通じていくらでも知識を仕入れることができます。
“ネットリテラシーの脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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インターネットから得られる情報は膨大であり読書よりもよほど時間効率がよい良いくらいです。
確かに「読書は情報や教養を習得するためのもの」という考え方はかなり昔の時代から否定的に考えられてきました
ある哲学者は読書を「自分の代わりに他の誰かに考えてもらうこと」と格下げしています。
ある政治家は「読書して考えないのは食事して消化しないのに等しい」と警告しています。
ある作家は「読書は人を聡明にしない」と断言しています。
結局のところ読書の効果は本を読むという行為そのものよりも読書で得た知恵を自分の人生にどう活かすかに重点が置かれていると言えます。
つまり読書によって多くの情報や教養を習得するだけでなくそれらを自分磨きに活用してこそ意味がありその点が読書の大切さであり読書の効果と言えるのです。
では読書を脳科学で考えると読書にはどのような魅力があるのでしょうか?
読書の魅力を脳科学から学ぶ
読書には「脳が活性化する」という効果があります。
本を黙読すると目から入った視覚情報を処理する「後頭葉」や思考や創造性に関わる「前頭前野」など脳のさまざまな部位が活性化します。
本の音読も脳を活性化させ学習効果を2~3割向上させることが期待できます。
文字を読んでいる最中の脳を調べるとVWFAが活動していることが分かります。
VWFAとはVisual Word Form Areaの略で効率的に文字を処理する単語の専門回路が備わった脳の領域です。
VWFAは脳の中の左脳の「頭頂葉」と「側頭葉」の間に位置する小さな領域ですが詳しい組織の構造は未知の領域です。
読書の脳科学-その1
普段わたしたちは特に意識していませんが脳が文字を認識する能力は実に驚異的です。
1秒間に平均10文字という高速で似た形状の文字を読み解いていきます。
たとえば
ひらがなであれば「あ」と「ぬ」と「め」
カタカナであれば「チ」と「テ」と「ラ」
感じであれば「堅」と「竪」、「捨」と「拾」、「鋼」と「綱」
VWFAはこれらの似通った複雑な字形を瞬時に識別し文章を解読していきます。
こうした識字訓練を幼少期からしているか否かは当然ながら脳回路に大きな違いを生むはずです。
さまざまな人が文字を見た時の脳の電気信号=脳波を測定します。
Pegado F, et al, Proc Natl Acad Sci USA 111(49):E5233-42. doi: 10.1073/pnas.1417347111, 2014
文字を読むのが上手な人ほど文字に対する脳応答が強く反応精度も高いことが分かりました。
この研究では幼少時代に読み書きをあまり習う機会がなくほとんど文字を読むことのできない人の脳でも測定を行っています。
そのような人では文字に対しては最小限の脳反応しか観察できませんでした。
重要なポイントは成人になってから学習して文字を読むことができるようになっても脳反応は思ったほど上昇していかないことです。
読書の脳科学-その2
読書には「脳が活性化する」という効果が確かにありますがこれは幼少期に多くの本を読んで文字に対する脳応答を訓練しておくことが前提条件です
そのかわりに幼少期から文字に慣れ親しんだ脳は成人になっても読書することでさらに活性化されて能力を高めていきます。
あなたが読書に魅力を感じていればそれは子供のころからよく読書をして文字に慣れ親しんできた証拠です。
読書には頭を良くする効果あり
読書の脳科学-その3
読書すると文字を認識する能力が高くなるばかりでなく頭が良くなります。
先ほどの研究では文字を読むのが上手な人ほど文字に対する脳応答が強く反応精度も高いことを証明しています。
しかし文字を読むのが上手な人の能力は読書だけにとどまりません。
読書の脳科学-その4
文字を認識する能力は文字だけでなく人の顔や日常用具や建築物に及ぶまで目から入ってくるあらゆる視覚情報への反応精度も高めます。
文字を認識するにはとても高度な能力が求められます。
まったく形状の違う文字の並びであればさして高度な能力は必要ありません。
しかし文字には先ほどご紹介した「あ」と「ぬ」と「め」のように単に見た目の形態が似ている組み合わせがあるだけでなく
「本」や「文」のように左右対称な文字や
「さ」と「ち」のように裏表が逆の鏡像によって意味が変わる組み合わせもあります。
読書をしているとそのような文字が次々と登場してきます。
ちょっとした読み間違いによって文章の意味が大きく違ってきてしまうこともよく起こり得ることです。
文字に長時間接しているとこうした微妙な違いに気付く能力が無意識のうちに身に付いていきます。
文字の認識能力は文字以外の広範囲にわたる視覚情報全般に汎用化されるのです。
目で見た対象物が「左右対称か否か」であったり「似ているようで実は全然異なっている」であったりを正確にしかも迅速に判断できるようになるのです。
「文字を読む」ということは「読書」という枠を超えてわたしたちの豊かな視覚経験の糧になっているのです。
このような能力はそう簡単に訓練して高めることはできません。
長年の積み重ねによって鍛えられていくものです。
「頭が良くなる」ということがそもそもどういうことなのかを考えると難しい問題です。
ですから読書には頭を良くする効果が間違いなくあるのです。
子供のころからよく読書をすることが大切と言いましたが日本はとても恵まれた環境にあります。
学校教育では否が応でも多くの文字に接して読書する機会がたくさんあります。
多くの人は子供のころ夏休みに嫌々本を読んで読書感想文を書いた記憶があると思います。
ですから自分が思っている以上に実際には子供のころから文字に触れて読書をしてきているのです。
読書の脳科学-その5
読書によって脳を活性化してそれによって磨かれた能力を他のことにも応用して頭を良くするチャンスを誰もが持っているのです。
“読書の脳科学“のまとめ
読書の効果と意味を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 読書はとても大切です。
- 読書は情報や教養を習得するだけでなく自分磨きに活用してこそ意味があります。
- 読書によって得られた能力は視覚情報を高速に処理する能力をたかめ頭を良くします。
- あなたも読書して頭を良くしませんか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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