好感度を上げるにはどうしたらよいのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 「好感度」の意味についてわかりやすく脳科学で説き明かします。
好感度と有能さ…どちらが必要?
「好感度」の脳科学
- 「好感度」と「有能さ」…より重要なのは「好感度」です。
- 好感度を上げるにはまず相手を好きになることから始めましょう。
- 脳は自分と似ていれば似ていると感じるほど相手のことを好きになります。
- しかし好感度を信頼しすぎると時に痛い目に合うこともありますので注意が必要です。
人を評価する時の指標としてよく用いられるのは「好感度(likability)」と「有能さ(competence)」の2つの資質です。
当然この2つを持ち合わせていれば何も言うことはありません。
しかし実はこの2つは相殺しあう関係であり、どちらかを持っていればどちらかを失うという傾向があります。
極端な言い方をすれば「好感度」が飛びぬけて優れている人は「愛される愚か者」、「有能さ」が飛びぬけている人は「できる嫌な者」という感じでしょうか。
多くの日本人には「できる嫌な者」の方がリーダーにふさわしいという考えが根強く残っています。
“リーダーシップの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考リーダーに求められる資質と素質とは何か?リーダーシップ論を脳科学で探る
リーダーに求められる資質と素質って何なのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向 ...
続きを見る
しかし最近この風潮は変わりつつあり、「愛される愚か者」が評価されつつあります。
実際にIQ(知能指数)が成功に寄与するのは20%にすぎず、残りの80%はEQ(こころの知能指数)…共感力や対人関係力であるとする報告もあります。
“共感力の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考「共感」と「同情」~似て非なる2つの感情の違いを脳科学で探る
他人を思う気持ちの「共感」と「同情」ってどう違うの? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気 ...
続きを見る
つまり人生において成功するには「有能さ」よりも「好感度」の方が重要とする考えの方が主流になりつつあります。
実際に世界のトップ企業の多くはIQではなくEQを鍛えるトレーニングを導入しています。
「上から目線で他人を見下し自分が一番だと思っているが仕事ができる有能な人」よりも「仕事ができなくても相手の気持ちを理解して共感してくれる好感度のある人」の方が成功をおさめやすいのです。
グーグルのサンダー・ピチャイ氏、アップルのティム・クック氏、マイクロソフトのサチャ・ナデラ氏、楽天の三木谷浩史氏などなど、世界的な大企業のCEOはいずれも社員と同じ目線に立ちその力を存分に引き出す高い共感力を持ち合わせており好感度のある人が成功をおさめている象徴でしょう。
当然彼らはずば抜けて有能なのですが、そこを強調することなく他人に愛される力も持ちあわせているのです。
では好感度を上げるにはいったいどうしたらよいのでしょう?
好かれるためには好きになれ!
好感度を上げる手っ取り早い方法はいくつかあります。
笑顔で明るく機嫌がいい
誰にでも優しく親切に接して気配りがある
相手の意見や主張を受け入れ聞き上手である
清潔感がある
付かず離れずの心地のよい距離感が保てる
まだまだ色々ありそうですが、とりあえずこれらを実践すれば好感度は上がるでしょう。
しかし言うは易しですが実行するのはなかなか難しいものです。
しかもこれを持続して実行しなければ好感度は維持できません。
脳科学的に好感度を上げる方法は相手を好きになること、好きであることを伝えることです。
世界でもっとも偉大で有名な自動車のトップセールスマンとして知られるジョー・ジラード氏は数多くの名言を残していますが、その中で成功の秘訣についてこのように語っています。
「自分がその客のことを大好きだと客に信じ込ませることほどいい方法はない」
彼の必殺テクニックはすべての得意先に毎月あいさつ状を送ることです。
そこにはたった一言だけ書かれていました。
「あなたが好きです」
「あなたが好き」と言われてもすぐに自動車を買うわけではありません。
しかし「あなたが好き」と言われて悪い気がする人はいないでしょう。
少なくとも「感じがいい人だ」と思うでしょう。
脳は相手のことを「感じがいい」と思えば思うほどその人の好感度は上がり、その人から商品を買ってしまったり、その人を助けてあげようという気になってしまったりするのです。
好感度を上げるのに難しいことを考える必要はありません。
相手に好かれてほしいのならば、まずは相手のことを好きになればいいのです。
好感度が上がる3つの理由
あなたが相手のことを「感じがいい」と思うのはどんな時でしょうか?
言い換えれば、あなたが相手に好感を覚えるのはどんな時でしょうか?
それぞれを探っていきましょう。
外観が魅力的
テレビのCMで考えてみましょう。
CMは魅力的な人たちであふれかえっています。
見た目が醜(みにく)い人は心地よい印象を与えないので広告の担い手としてはふさわしくありません。
“見た目の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考見た目で第一印象が決まる!~メラビアンの法則を脳科学で探る
第一印象は見た目で決まるって本当なの? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務 ...
続きを見る
出身、人間性、関心が向いている方向が自分と似ている
CMでは外見がとても魅力的な人と並んで、“あなたやわたしのような”普通の人も登場します。
外見や話し言葉、生活の背景が見ている側と似ている人です。
脳は自分に似ていれば似ているほど相手を好ましく感じます。
相手が自分に好意を抱いてくれている
CMではお世辞や褒め言葉を並べることも珍しくありません。
“あなたにふさわしい”というような言葉はとても効果的です。
脳は「自分のことを好ましく思っている」という信号を送ってくれた人に対して好感を持つ性質があります。
「褒め言葉」はまったくの嘘であっても奇跡を起こすことがあるので不思議なものです。
これは「ミラーリング」の効果です。
“ミラーリングの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考なぜ人を愛せない?人を愛する方法を脳科学で探る
なぜ人を愛せないのでしょう? どうしたら人を愛することができるようになるのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外 ...
続きを見る
ミラーリングとは好意を寄せている相手の仕草を無意識のうちに真似してしまうという効果ですが、ミラーリングは好感度を上げるのにとても効果的です。
セールスでもミラーリングのテクニックは利用されています。
営業している時は顧客の仕草や話し方を真似るのです。
相手がゆっくり静かに話したり、額をたびたび掻(か)いたりすればそれを真似するのです。
あなたも同じようにゆっくり静かに話し、時々額を掻(か)くと効果的です。
顧客の目には、目の前のあなたが好意的に映り、それによって営業がうまくいくはずです。
好感度の信頼しすぎにご注意を!
ここまでは好感度を上げる方法をいろいろと探ってきました。
しかし好感度を信頼しすぎると痛い目に合うこともあります。
たとえば友人を通して売買をするマルチ商法はまさに好感度をうまく利用したものと言えるでしょう。
同じような商品がスーパーでは半額以下の値段で買えると分かっていても、ついつい友人の誘いに乗って買ってしまうものです。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
それは友人があなたに好感を与える条件を完璧に満たしているからです。
自然保護団体も好感度をうまく利用しています。
絶滅の危機にある生物を救うポスターにはパンダやゴリラやコアラやアザラシなどの動物がよく使われています。
一方で同じように絶滅の危機に瀕しているクモやミミズや海藻が使われているのを見たことがあるでしょうか?
きっとないはずです。
生態系にとってはむしろクモやミミズや海藻の方が重要かもしれません。
しかし人間の脳はクモやミミズや海藻などに対しては親しみを感じません。
「人間と似たような姿をした動物」の方により大きな親しみがわくのです。
名前も形もわからない生物が絶命しても「仕方ない」程度にしか感じないのです。
政治家も好感度をうまく利用しています。
選挙演説では聴衆に合わせてさまざまな共通点を見つけ出し力説します。
ある時は学校のこと、ある時は仕事のこと、ある時は子どものこと、またある時は年金のことに重点をおいて、感じの良さをばらまきます。
わたしたちはそれを聴いて決して悪い気はしないでしょう。
ひとりひとりが必要とされているような気分にさせられていきます。
ある友人が営業の仕事をしていて何十億円という大きな契約をとってきました。
とたずねると友人は首を横に振って、
お金よりも好感度の方がずっと価値が高いのです。
だからこそ好感度の信頼しすぎには注意が必要です。
特に物を買う時には売り手の人柄で商品の価値を判断しないことです。
売り手のことは存在しないと考えるか、あるいはその人は感じの悪い人と考えるようにすべきでしょう。
それくらい好感度は脳にとって刺激的なのです。
”「好感度」の脳科学”のまとめ
今回のまとめ
- 「好感度」と「有能さ」…より重要なのは「好感度」です。
- 好感度を上げるにはまず相手を好きになることから始めましょう。
- 脳は自分と似ていれば似ていると感じるほど相手のことを好きになります。
- しかし好感度を信頼しすぎると時に痛い目に合うこともありますので注意が必要です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
最後にポチっとよろしくお願いします。