目先の利益にとらわれてしまうのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- つい目先の利益にとらわれてしまう理由をわかりやすく脳科学で説き明かします。
今を精一杯生きることは大切なのか?
「目先の利益のワナ」の脳科学
- 多くの人は「明日のことは考えず今を精一杯生きること」を美徳とします。
- 「目先の利益」にとらわれるのは脳の本能なのでなかなか避けることはできません。
- しかし「目先の利益」にとらわれずに生きてこそ人生において成功をつかみ取ることができます。
- 「目先の利益」にとらわれるのは本当の人生最後の日だけにしておきましょう。
「Carpe Diem(カルぺ・ディエム)」
今日まで語り継がれているラテン語の格言の中でも比較的有名で人気の高い言葉です。
日本語に訳すと、
「その日を思う存分に楽しもう、明日のことは気にするな」
このような意味になります。
後先のことは深く考えずとりあえず今を精一杯生きよう。
今日が人生最後の日のつもりで今を精一杯生きよう。
こうした言葉を今まで何度も聞いたことがあるはずです。
自己啓発本には必ずといっていいほど登場するお決まりの文句です。
しかしよくよく考えてみると、この言葉は決して自分のためにならないことがわかるはずです。
今日から歯も磨かなければ、髪の毛も洗わない。
部屋の掃除をしなければ、仕事も勉強もしない。
自分のしたいことだけをして楽しくすごす。
そんなことをしていたらあっという間に身も心も貧しくなり、病気になり、生きてはいけなくなるでしょう。
そもそも今日が人生最後の日でないのに、明日のことを気にしないで生きるなんて現実的ではありません。
しかし多くの人は「Carpe Diem(カルぺ・ディエム)」に非常に強い憧(あこが)れの思いを持っています。
それはすぐ目の前にあるものへの憧れです。
「目先の利益」にとらわれる理由
わたしたちが「目先の利益」にとらわれてしまうのは、目の前に迫っていることにとても価値があると感じてしまうからです。
しかし目の前のものに実際にはどれくらいの価値があるのかを正しく判断できていないことがほとんどです。
つまり、わたしたちは“目の前にあるから”という理由だけで理屈に合わないような価値をつけてしまっているのです。
たとえば「1年後に10万円をもらう」のと「1年1か月後に11万円をもらう」のでは、あなたならどちらを選ぶでしょうか?
たいていの人は「1年1か月後に11万円をもらう」を選ぶはずです。
これにはちゃんとした意味があります。
なぜなら1か月待つだけで元金の10%の利子がもらえるといった話は他にはなく、かなりお得だからです。
この利息であれば1か月の待ち時間の保証と考えても十分納得できる金額なはずです。
では次の質問はどうでしょう?
「今日10万円をもらう」のと「1か月後に11万円をもらう」のでは、あなたならどちらを選ぶでしょうか?
今度はたいていの人は「今日10万円をもらう」を選ぶはずです。
なぜなら先ほどのケースと同じく待たなければならない期間は1か月であり、多くもらえる金額も1万円で同じです。
しかし多くの人の答えは違ってきます。
きっと最初のケースでは多くの人はこう言うでしょう。
しかし2番目のケースではそうはいきません。
同じ1か月でも目の前に10万円があるとないのとでは最終的な意思決定は異なってきます。
“意思決定の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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脳は「目先の利益のワナ」にすぐにはまり込みます。
つまり脳には期限の到達する時期によって矛盾した決断を下してしまうクセがあるのです。
決定していることが起こる時期が現在に近ければ近いほど、脳は“感情的な利率”が上昇して、目先の利益にとらわれ、実際の損得勘定が正確にできなくなってしまうのです。
「目先の利益」にとらわれない人ほど成功する理由
『Carpe Diem(カルぺ・ディエム)』
「その日を思う存分に楽しもう、明日のことは気にするな」
この言葉はまさに「目先の利益にとらわれなさい」と言っているようなものです。
脳が「目先の利益」にすぐにとらわれるクセを持っている以上、「目先の利益」にとらわれずに生きるのはなかなか難しいものです。
そもそも「目先の利益」にこれほどまでに惹(ひ)きつけられるのは、人間が過去に持っていた動物的な本能の名残りの影響です。
“人類史の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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専門家たちでさえも「目先の利益」にとらわれて感情的に異なる利率で予測をしています。
しかもこのことをちゃんと理解している専門家はほとんどいないはずです。
無意識的に「目先の利益」に惑わされた計算をしているので、その予測はなかなか当たらないのです。
“予測の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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動物は基本的に本能で生きています。
ですから将来たくさんのエサをもらえるからといって今すぐにもらえるエサを我慢することはしません。
たとえ人間の思い通りに行動できるように訓練したとしても、今チーズを1つもらうのを我慢させて、明日2つもらえるようにさせることはほぼ不可能でしょう。
動物の本能は自分の行動をコントロールする能力とは関係ないことは証明されています。
では人間ではどうでしょう?
4歳児の目の前にマシュマロを置いて、「すぐに食べてもいいが、食べずに15分待ったらご褒美にもう1つマシュマロがもらえる」と伝えます。
子どもたちはどのような反応をするのでしょうか?
当然の結果ですが、食べずに我慢できた子どもはわずかしまいませんでした。
ここまでは想定内の結果です。
重要なのはここからで、ご褒美をもらえるまで我慢できる能力がある子どもは、その後大人になってからも仕事上で成功をおさめる確率が高かったのです。
“マシュマロテストの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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人間は年をとればとる程、自制心が高まれば高まる程、ご褒美をもらう時期を先延ばしできるようになります。
追加で1万円を受け取れるなら1年だって待てるはずです。
確実な利益が得られるためにはどうするのが最も良い方法なのかわかっているはずです。
ですから、今もらえるご褒美を先延ばしにして「目先の利益」にとらわれずにいられるのは、その先に大きな見返りが期待できる時だけです。
その最たる例がクレジットカードのキャッシングや消費者金融といった高利貸付金でしょう。
脳は欲しいものが目の前にあると、今すぐにでも手に入れるために借金までするのです。
「目先の利益のワナ」に気をつけよう
目の前にあるご褒美はとても魅力的に見えてしまいます。
ですから本能のまま生きていれば「目先の利益」に簡単にとらわれて落とし穴に落ちていってしまいます。
「目先の利益のワナ」にはまらないためには衝動を抑える力を鍛えることが必要です。
『Carpe Diem(カルぺ・ディエム)』
「その日を思う存分に楽しもう、明日のことは気にするな」
決して悪い言葉ではありません。
しかしこのような生き方をするのはお勧めできません。
“「目先の利益のワナ」の脳科学”のまとめ
つい目先の利益にとらわれてしまう理由をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 多くの人は「明日のことは考えず今を精一杯生きること」を美徳とします。
- 「目先の利益」にとらわれるのは脳の本能なのでなかなか避けることはできません。
- しかし「目先の利益」にとらわれずに生きてこそ人生において成功をつかみ取ることができます。
- 「目先の利益」にとらわれるのは本当の人生最後の日だけにしておきましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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