「ありえないこと」が起きた場合にはどう対処したらいいのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 「ありえないこと」が起こる「ブラックスワン」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
誰も予想しなかった「黒い白鳥」
「ブラックスワン」の脳科学
- とてつもなく大きな影響をおよぼす、予想外の突発的な「ありえないこと」が起こることを「ブラックスワン」と呼びます。
- 現代社会では頻発して「ブラックスワン」が発生しています。
- どのような「ありえないこと」が起きても驚くことなく備えて生きることが求められています。
- あなたにとってポジティブな「ブラックスワン」が起きた時はその波に乗っかることが得策です。
「白鳥はすべて白いのが当たり前」
数百年もの間、誰もがそう信じていました。
白い白鳥を見るたびに、脳はそれが真実であるという確証をますます強めました。
白以外の色の白鳥が存在するなど誰も想像すらしていませんでした。
白くなくては“白鳥”ではありません。
英語では“ブラックスワン(黒い白鳥)”=“無駄な努力”というたとえすらありました。
オランダ人のウィレム・ド・ヴラミン氏がオーストラリアを探索中に“黒い白鳥”=“ブラックスワン”に出くわしたのです。
それ以来、想定外の「ありえないこと」が起こり得ることのたとえとして「ブラックスワン」が使われるようになりました。
「ブラックスワン」という言葉が世に浸透したのは、2006年に認識論学者であるナシーム・タレブ氏が著書である「ブラックスワン(The Black Swan)」で解説した「ブラックスワン理論」による影響です。
今日では、「ブラックスワン」は確率論や従来からの知識や経験からでは予測できない極端な現象が発生し、その現象が人々に多大な影響を与えることを総称したものとなっています。
「ブラックスワン」の恐怖
ブラックスワン理論
『ブラックスワン』
人生において資金状況や健康状態や事業などさまざまなことにおいて、とてつもなく大きな影響をおよぼす、予想外の突発的な出来事のこと。
ブラックスワンは事前に予測ができないために起きた時の衝撃はすさまじく、混乱を引き起こします。
2001年09月:米国で同時多発テロが発生
2008年09月:米国でリーマン・ショックが発生
2011年03月:日本で東日本大震災が発生
2016年06月:英国が国民投票でEU離脱
2016年11月:米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選
2020年02月:世界でコロナショックが発生
どれも大きな事件ばかりです。
ナシーム・タレブ氏は著書である「ブラックスワン」の中で次のように記しています。
ブラックスワンの特徴は
予測不能
非常に強いインパクトを持っている
実際に起こると後付けで説明がなされ、偶然ではなく最初からわかっていたような気にさせられる
「ブラックスワン」が刊行された翌年にリーマン・ショックに端を発した“世界金融危機”が起こっており、この事件をあたかも予見していたかのようなタイミングでの出版となったため、なおさらブラックスワンの概念は大きな注目を集めるようになりました。
“リーマン・ショック”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ブラックスワンに関してはさまざまなことが言われています。
その中でも注目すべき発言は、イラク戦争を主導したアメリカのブッシュ大統領のもとで国防長官を務めたドナルド・ラムズフェルド氏の記者会見での考察です。
ものごとには
わたしたちが知っていること=知られている事実
わたしたちが知らないこと=知られていないと知られていないこと
わたしたちが知らないと知らないこと=知らないと知らされていないこと
以上の3つがある。
これらはすべて「知られていないと知られていないこと」です。
十分に労力を費やせば、いつかはこれらの問いに答えを出せる日が来るかもしれません。
しかし「知らないと知らされていないこと」の場合はそうはいきません。
現在のようなウイルスに脅かされる日々が続くことを誰が予想したでしょう?
「知らないと知らされていないこと」こそがまさに「ブラックスワン」なのです。
「ブラックスワン」に備えて生きよう
わたしたちは矛盾しているかもしれませんが予測できない「ブラックスワン」を常に意識して生きなければなりません。
なぜなら異例の出来事であるはずの「ブラックスワン」が出現する回数が近年確実に増えているからです。
わたしたちはこれからも未来の計画を立て続けるでしょう。
しかし度重なる「ブラックスワン」によってその計画は幾度となく台無しにされ続けています。
脳は変則的な出来事が起きるとその対応を誤ることが多くなります。
なぜなら脳はそもそも狩猟採取社会の生活に合わせて作られているからです。
石器時代には“異例“と言えるほどの出来事はほとんど起こりませんでした。
人間が狩ったシカは平均的なシカよりも足が早かったり遅かったり、太っていたり痩せていたりしたかもしれません。
しかしその度合いは平均値から“異例”なほどはずれていることはなかったはずです。
“人類史の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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しかし現代社会では事情が違います。
あなたの人生に突然“異例”の変化が訪れて、平均収入の何十倍もの大金を稼げるようになることもあり得ます。
グーグルの共同創業者のラリー・ページ
投資家のジョージ・ソロス
「ハリー・ポッター」んも作者のJ・K・ローリング
このような超富裕層は、かつては存在しませんでした。
これほど大きな収入の振り幅は誰も予想していませんでした。
人類の歴史においてこのようなことが起きるようになったのはつい最近のことです。
そのためわたしたちは極端な未来予想図の修正に翻弄(ほんろう)されています。
“未来予想図の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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どのような出来事でも起きる確率がゼロを下回ることはありません。
ですからどんなに「ありえないこと」と思っていても起こる可能性があると考えて備えておく必要があるのです。
ポジティブな「ブラックスワン」に乗っかろう
ここまでの話の流れでは「ブラックスワン」はとてもマイナスなイメージになっているでしょう。
しかしブラックスワンにはポジティブなものもあります。
トランジスターの発明
LEDの発明
スマートフォンの登場
SNSの流行
これらもブラックスワンと言えるでしょう。
ポジティブなブラックスワンにうまく乗ることができる状況に身をおくことが何よりも大切です。
ブラックスワンを恐れて無難な道を歩むのも悪くはありません。
その方がきっと真っ当な人生を送れるでしょう。
しかしそんな人生にもブラックスワンは襲いかかってきます。
ブラックスワンを回避しようと株式などの投資を避けて銀行預金に頼っていても、突然その銀行が経営破綻して全財産を失うことだってあります。
ブラックスワンは想定外である以上、いかなる手段をもってしても避けることはできません。
ですからせめて、ネガティブなブラックスワンの生息域からは距離を置き、借金をせず、貯蓄を投資する時には保守的に、成功を収めたとしてもぜいたくはせず生きることです。
そしてポジティブなブラックスワンが訪れたら迷わずにその波に乗っかることです。
“「ブラックスワン」の脳科学”のまとめ
「ありえないこと」が起こる「ブラックスワン」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- とてつもなく大きな影響をおよぼす、予想外の突発的な「ありえないこと」が起こることを「ブラックスワン」と呼びます。
- 現代社会では頻発して「ブラックスワン」が発生しています。
- どのような「ありえないこと」が起きても驚くことなく備えて生きることが求められています。
- あなたにとってポジティブな「ブラックスワン」が起きた時はその波に乗っかることが得策です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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